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レッドキングさん
平均点: 5.27点 書評数: 889件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.729 5点 蜘蛛と蠅- F・W・クロフツ 2023/08/22 22:05
クロフツ第二十六作。邦題「蜘蛛と蠅」。蜘蛛=金貸し・恐喝者。惨めな蠅達が絡み取られる蜘蛛の巣は、賭博と情事と「好事魔多し」・・いつの世も。十八番のアリバイトリックに犯人Whoネタがタイトに決まり、素人女探偵達のプチ冒険譚も付く。前作同様、必要条件=「犯人であり得る」だけで、確証のないまま、有罪=絞死刑の危機が迫る被告。しかも官憲に悪意はない(こういうのは、もう勘弁してほしく)。今回、フレンチは救い主役だが、活躍は脇役。

No.728 6点 そして誰も死ななかった- 白井智之 2023/08/19 22:14
作者の第五(前作の連作短編集も数えて)長編。これまでのグロあざとタイトルに比べると、グッと「保守的な」標題で、ん?作者、守りに入ったか?思わせて、ところがドッコイ、とんでもSF(?)設定、グロへど描写に、マニアックロジック相変わらず・・よいなぁ。(特に、風俗嬢作家のダミーばかネタ、じつーにgoodよ!「鯨爆発」\(^o^)/って・・)
※マズいことに、この作者のこと、好きになってしまいそうだ・・我ながら不本意ながら・・

No.727 7点 お前の彼女は二階で茹で死に- 白井智之 2023/08/17 00:55
拉致した異形少女を探偵役に使役する暴虐警官。へど・グロ・残酷コミックにして、「超」本格ミステリな連作短編集。
    第一篇・二編の、緻密かつ変態的ロジックに、各6点。
    第三篇の、閉ざされた山間旅館での、密室二件付き連続殺人のトリック・ロジックに8点。
このまま行くか? と思わせといて、三篇終盤でトンデモどんでん返しが来て、
    第四編の、密室・人物入換えトリック及びロジック等てんこ盛りに、7点。
で、とりあえず、HappyなEndだが・・・こいつら、こんなに幸せにしといてイイの?と、腑に落ちない所で、
    「後始末」エピローグで、めでたくBad End・・・腑に落ちた(かな)
※あの異形少女を探偵役に残して、警官とのコンビシリーズ物にしても、良かったか・・・ちと、日和り過ぎか。

No.726 6点 死まで139歩- ポール・アルテ 2023/08/14 23:07
「幻の女」浪漫、「赤毛連盟」展開、足跡と鍵の二重密室からの犯人消失と屍体出現、貫くは「クツ収集狂事件」。そして、なんちゅう居直った・・実際ツイスト博士に居直り語りさせてる・・ベタ道具トリック。虎ステッキやカーテンナイフ同様、こういうチンプ(ホメ言葉よー)で笑ける脱力感、いかにも、アルテらしくて・・(*^^*)

No.725 4点 ブラッド・ブラザー- ジャック・カーリイ 2023/08/12 00:08
第四作目。面白い! 処女作二作目にチョイ出の、魅惑的な殺人鬼サイコお兄さん、ついに主役に。本拠地アラバマからマンハッタンに舞台を移し、女性屍体の下腹部に、切断頭部を埋め込む猟奇殺人を巡る、警察 vs 殺人鬼の虚々実々サスペンス。皮肉なことに、オモシロ度アップに連れて、ミステリ度はダウンするこのシリーズ。ディーヴァー「コフィン・ダンサー」ツイストが決まるが、兄のシリアルキラー汚名の雪辱Happyとは祝福できず、作者のヒヨリと失望せざるを得ない。ので・・減点。   ・・・思えば、レクター博士クラリス捜査官の逃亡エンドは見事だった・・・

No.724 4点 誘拐犯の不思議- 二階堂黎人 2023/08/09 17:08
水乃サトル不思議シリーズ第五弾。アリバイ時間トリックに特化した長編。なかでも、内臓が掻き出された死体ネタ、島田荘司小島正樹以外にも、こんなWhy利用もあんだなあ、とカンプク・・「バカWhy」だけどね。

No.723 6点 だれもがポオを愛していた- 平石貴樹 2023/08/07 21:27
ポオ見立て連続殺人。「黒猫」に「ベレニス(知らんぞ)」に詩ネタが二編付くが、メインは「アッシャー家の崩壊」の見立て。何で見立て殺人?、をアクの無い二階堂蘭子の様な和人姉さんが、クイーン・有栖川有栖の如きロジックで解読して、その見立Why設定に感服した。「ポオは単なる推理作家ではない」等、子供の頃からサンザ聞かされる耳にタコ話だが、ここでは、耽美ポオより論理ポオに比重が傾いて・・作者はヒロインの口を借りてアリバイめいた言い訳をしているが・・チト残念。あと、せっかくのポオオマージュなんだから「猿密室」も欲しかった(いろいろワガママやね) 
バドワイザー、ハインツ、ナビスコ、ケロッグ、ジョン・ハリスン、ポール、ロン、ヤース・・・警官マスコミ等脇役たちの名前に微(苦)笑 (*^^)v

※ちなみに、ポオねたでは、オムニバス映画「世にも怪奇な物語」の、フェデリコ・フェリーニ「悪魔の首飾り」が素晴らしかった。

No.722 4点 山師タラント- F・W・クロフツ 2023/08/01 21:36
クロフツ第二十五作。原題「(James)Tarrant, Adventurer」。山師=アドベンチャーねぇ。アドベンチャーには冒険家の匂いがするが、山師って言うと詐欺師の臭いが・・・。もともと和英共に「起業家」てな趣なんだろが、資本主義米国と違い、階級社会英国でも家系社会日本でも、起業家・資本家には「成り上り者」の胡散臭さが付きまとう。
で、この作品、その詐欺師まがいの起業家男の死を巡る殺人法廷劇がハイライト。たとえ死刑でなかろうとも、被告を有罪として裁くには、「Aは犯人であり得る」=必要条件だけでなく、「Aは無罪ではあり得ない」=十分条件を満たさねばならんだろうが。ましてや、死刑判決においてをや・・にも拘らず、フレンチも、検事も、ついでに結局は判事も、必要条件:「あり得る」をもって被告を弾劾可能としている。そもそも、あれが殺人だったって言う確実な十分条件の証拠さえないじゃん。クイーン「ニッポン何とか鳥」の親父警視とかの「ロジック」まだしも・・これは・・我慢できんなあ。もちろん、取って付けた様な冤罪救済をトってツけてるけどねぇ。 ※話自体は法廷サスペンスとして面白い。

No.721 6点 おやすみ人面瘡- 白井智之 2023/07/26 18:43
第三作目。これまた、トンデモSF設定・・体中に意識ある人面瘡(!)が繫茂する伝染病て(*_*;)・・を大道具に、緻密なロジックとイマイチな入代りトリックで展開される本格ミステリ。コミカルにしてグロい不快感を残す登場人物達、目を背けさせる程の残虐行為、吐き気を覚えさせる位のヘド描写・・飛鳥部勝則思い出す・・。宿主大脳の推理を否定する人面瘡A、人面瘡Aの別解推理を否定する人面瘡B、笑かしてくれるが、せっかく、意識ある人面瘡・・むしろ奇形多生児・・設定なんだから、二階堂黎人「幽霊マンモス」や門前典之「灰王家の怪人」を飛び越えた、超トンデモ密室トリックの大技一発もの・・麻耶雄嵩「翼ある闇」発展完成形・・こしらえてほしく・・

No.720 4点 毒蛇の園- ジャック・カーリイ 2023/07/24 21:12
作者第三作目。如何にもな怪しげ倒叙、スピーディな(チト溜めに欠ける)カットバック、絵に描いた様な(悪役でないわけがない)超富豪ファミリー(ケネディ家パロディか)。お、今回こそ、ディーヴァーやんの?思わせて、特にツイストもない、実に楽しい刑事活劇であった。惜しむらくは、ラスボスを即死させちゃったこと・・あれは、も少しクルシマセナイとねぇ・・・あと、あの、サイコあんちゃん出さないと。

No.719 7点 東京結合人間- 白井智之 2023/07/18 20:21
第二作。なんたるBいやC級タイトル。SFパラレル設定いいことに、とんでもグロ描写( 綾辻「殺人鬼」か)のやりたい放題と思わせ、何気に、王道の孤島かつ密室物。それ以上に、なんちゅうNiceなロジック!・・SF縛りとは言え。
 ※ 「X」は犯人。6人(A・B・C・D・E・F)の中の2人が「X」。うち4人(A・B・C・D)の中で、もし、Aが犯人であれば、
  Bは「X」で、Bもまた犯人となるが、この場合、CもDも連鎖的に「X」となり、「X」は2人という前提が崩れる。
  よって4人の中に「X」はおらず、したがって、残りのE・F2人が「X」で、E・Fが犯人・・・素晴らしい。
こんな、ミステリ的感銘、麻耶雄嵩「木製の王子」逆家系図以来よー。しかも、惜しげもなくダミーに使い捨てて・・

No.718 6点 殺人七不思議- ポール・アルテ 2023/07/15 23:52
世界七大不思議に見立てた、七つ(一見豪勢!)の密室・不可能殺人。で、トリック七つを平均評価
   「大灯台」見立ての発火トリックに3点
   「アルテミス」見立ての、「くたばれ健康法」「仮面劇場の惨劇」オマージュに7点
   「空中庭園」見立ての、鮮やかなる消失・入代りトリックに7点
   「ゼウス像」「ロードス島巨像」「マウソロス霊廟」見立てに各3点づつ
   「ピラミッド」見立ての足跡トリックに4点。で、平均で約4点(内実ちとショボイ)
そこに、真犯人キャラ一捻りトリック・・クリスティ十八番の・・付いてプラス1点。
葉を二枚・・一枚でなく・・隠すには、のユニークWhyにプラス1点。で、計6点。
※カー描く悪女は非英国人でも英国風なのに、アルテの悪女はなんかラテン風。

No.717 5点 時計泥棒と悪人たち- 夕木春央 2023/07/13 22:38
大正の元泥棒美青年・・「絞首商會」主役・・が探偵役の中短編集。
   「加右衛門氏の美術館」・・死を前にした蒐集家老富豪の建てる奇妙な美術館の秘密。4点
   「悪人一家の密室」・・密室殺人の、HowでもWhoでもない、唖然! 脱力(';')のWhy・Whom。6点
   「誘拐と大雪」・・誘拐された娘の救出劇と対強盗団活劇と贋金造りのユニークWhy。チョビっと雪密室。5点
   「晴海氏の外国手紙」・・異人からの遺書手紙と相次いで同じ男に嫁いだ姉妹のちょっといい話。3点
   「光川丸の妖しい晩餐」・・船上の蛮食会で皆殺しを企む殺人鬼の呆然(*_*; Why。マーヴェラス! 7点
   「宝石泥棒と置時計」・・聖画に時計、ドレス、腕輪、無関係な諸物から、ルビーのみ取外された事件の謎。4点
※この作者の本領は、Who(犯人当て)でも、How(トリック解明)でもなく、ロジック超えて、Why(何でや?)のトンデモいかれ具合なのね・・・

No.716 4点 黄金の灰- F・W・クロフツ 2023/07/10 11:49
クロフツ第二十四作。1940年作で、クロフツ後期・・前中後あるとして・・に入るのかな。古き大邸宅を舞台にした、おや、珍しく本格館物?思わせ、そこはクロフツ、十八番の乗り物アリバイトリックとリアル機械仕掛け物であった。フレンチが出て来るまでの、マッタリ物語感が、ナカナカ心地よく、点数オマケ。

No.715 5点 ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密- トマス・H・クック 2023/07/07 23:21
「青髭公」ジル・ド・レ男爵に、「吸血鬼」エルジェーベト・バートリ伯爵夫人の両伝説的大物の他、ウクライナの猟奇殺人鬼チカチーロ、ナチやアルゼンチン暗黒時代の恐怖・残虐譚をルポタージュし続けた作家の自殺。彼の自殺の真相を探る友人の文芸評論家と作家の妹。作家がアルゼンチンで出会い、行方不明となった先住民族の女を求めての旅路が、なぜ、彼は自殺を選んだのか、のWhyミステリ解決にも「行き着き」。でも、その「解決」は・・ミステリ的多重解決超えて、アンチミステリ超えて、もう、「文学」そのもので・・・。「子供は戯れにカエルを殺すが、カエルは真剣に死ぬ」

No.714 5点 ハーモニー- 伊藤計劃 2023/06/28 06:36
近未来ユートピア=ディストピアのSF。疫病と核戦争の「大災禍」以後、人類は、生府(政府でなく)による完全なる衛生と福祉と慈愛の世界を生きていた。そこは、ブッダ言うところの四苦・生老病死・のうち、「病」がほぼ駆逐され、「躰」のみならず「心」の病すらも、完全に予防・治療・ケアされるシステム完備のユートピア世界。だが、ブッダ四苦の「生」の苦悩の解決には、意志・意識の軋轢を除去せねばならず、「生の苦悩」=「意識の軋轢」の駆除は、結果、意識そのものの消失を意味した。そんなユートピア世界をディストピアとして拒否し、「私」の自由を証しする唯一の行為:自殺を決行した女子高生と、彼女の軌跡を追うヒロイン霧慧(キリエ)トァン。これは反「幼年期の終わり」ミステリとして評価。
※そういえば、「悪霊」のキリーロフ(キリエで思い出した)も、自己が、「神人」=自由である事を証明するだけの為に自殺しちゃったなぁ。

No.713 5点 幼年期の終わり- アーサー・C・クラーク 2023/06/28 06:32
現実世界を、見ることなき上位次元への憧憬に置き去りにする超進化論SF。壮大にしてタイトなWhyWhatミステリとして評価。※超越的異星人Overlord達の風貌が、ヤギづら悪魔って設定が良く。

No.712 7点 混沌の王- ポール・アルテ 2023/06/24 21:34
メインは過去の密室殺人で、サブに現在進行の不可思議な雪上殺人が付く。メインの密室・・Locked Room3/4にして雪密室1/4・・は4/4完全密室(しかも凶器消失付き)にもできたのに、あえて、1/4を「雪足跡不可能」に開け放った所が、Très Merveilleux !(^^)! 
サブの雪原不可能トリック及びオマケ諸事件のバカミス度、もうバカ超えてアホ (;O;)・・・素晴らしい!

No.711 5点 デス・コレクターズ- ジャック・カーリイ 2023/06/21 23:09
作者第二作。タイトルからして、ディーヴァー系?思わせて、あんなアクロバティックツイストはないWho・Whyワン落ちミステリで、むしろ、楽しいエルロイ、スマートなフロスト。スター殺人鬼達の遺品・関連品を、モネセザンヌの如く高価買取愛玩する「死の蒐集家」達と、彼らを逆手に取って操る殺人犯。マンソン麻原カリスマを連想させるカルト犯罪グループの、甦りの如き連続殺人事件を求めて、主役刑事・相棒・ファンキーな女ジャーナリスト・コレクター老女・やなヤツ上官・サイコお兄さんetc・・劇画にしたら、まぁ、ジツに絵になりそなキャラ達・・のミステリ活劇。
「人生はあまりに短いが、一日はあまりにも長すぎる」・・うーん、まさしく・・

No.710 3点 フレンチ警部の多忙な休暇- F・W・クロフツ 2023/06/14 12:17
クロフツ第二十三作。豪華賭博船を運営するチーム内の撲殺事件、というより、殺人事件オマケ付きの英国沿海クルージング小説。フレンチの奥さんを・・器量は悪いが人の好さそうな白髪交じりの、て・・シオ描写の作者・(*_*;

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.27点   採点数: 889件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(34)
二階堂黎人(30)
アーサー・コナン・ドイル(26)
カーター・ディクスン(25)
トマス・H・クック(23)
麻耶雄嵩(21)
ジェフリー・ディーヴァー(21)