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レッドキングさん
平均点: 5.25点 書評数: 823件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.703 5点 百番目の男- ジャック・カーリイ 2023/05/26 02:09
"軽口のハードボイルド"風刑事が主役のサイコもの。エルロイよりはライトで、ディーヴァーより全然シンプル。連続首無し殺人の被害者は、いずれもマッチョ男で、殺害順に屍体のマッスル度は上がり、ペニス付近に意味不明な文言が刻まれて・・意味を追わずカナ表記を音読しよう(訳者、工夫したなァ)・・。 相棒刑事・アル中の女検死医・憎まれ役上官等とのファンキー・ダーティなやり取り楽しく、ラストのサスペンス緊迫展開もよし。犯人解明後のサイコ描写ナカナカだが、真犯人判明の驚きがチト物足らず・・え、それって誰だっけ?となったが・・読み返したらチャンと初っ端近くから出てた・・。ドクターレクター役の殺人鬼サイコお兄さん、Very goo・・おっと、もとい・・badよ。

No.702 5点 長恨歌 不夜城完結編- 馳星周 2023/05/22 21:47
日台ハーフの主人公:劉健一物語の第三部にして完結編。第一部:「不夜城」の "傷だらけのダークヒーロー"が、第二部:「鎮魂歌」で "操りのアンチヒーロー"に反転し、この第三部:「長恨歌」では "暗黒のラスボス悪魔"の容貌さえ帯びる。
貧しき大地より経済先進国たる我が歌舞伎町に流れ込んだ、中国マフィアの凄惨な抗争・・は遠く前世紀の光景となり、今や我が国に十倍する人口相当の国力を蓄えつつある中国。それでも故郷からあぶれ、麻薬ビジネスを糧に、この異郷の地でネズミの様に棲息する中国プチマフィア達。歌舞伎町を舞台に日本ヤクザも絡んだグループ間抗争が、主人公:劉健一の戯画の様な脱中国チンピラをワトスン語り役に展開し、いったい、誰が何を目論んで何を起こしているのかの、Who・Why・Whatミステリが完結する。

No.701 7点 あやかしの裏通り- ポール・アルテ 2023/05/18 22:59
迷い込んだ裏路地。奇怪な男女と謎の建物。室内から窓越しに見える幻の光景。逃走し、かえり見れば・・路地自体が消えていた・・・。ドイル・カー風怪奇叙景の合理的解決で、フレンチ風に洗練された(島荘だとウルトラ野暮になる)Who・Why・Whatミステリ調理が完成、見事。

No.700 4点 稀覯人の不思議- 二階堂黎人 2023/05/15 22:03
水乃サトル不思議シリーズ第三弾。手塚治虫マニア団体で起きた稀覯本を巡る密室殺人。メインの「家と部屋」二重密室トリックは、イマイチな短編ネタだが、手塚治虫の稀覯・希少本ウンチク(なかなか面白い)と、第二事件の「意外な」Who・Whyネタが付いて、長編として読ませてくれる。(手塚漫画に関心ない人には・・退屈かなぁ)
※コバルトってアトムの兄貴じゃなかったっけ?作者の勘違いじゃね?・・思ったら、漫画の方では弟で、あってた。

No.699 7点 ナイチンゲールの屍衣- P・D・ジェイムズ 2023/05/14 21:46
おぞましい因縁のある、厳めしく陰鬱な総合病院で起きた看護婦連続毒死事件。他殺?自殺?恐喝?情事?金銭目的? 婦長から看護学生に至る容疑者十数人のみならず、ほんの脇役・・死亡した看護婦をはらませた作家志望青年や、恨みある警官を頭韻罵倒する女中、息子の死亡保険金もダンス費用につぎ込むダンス狂い老女・・までもの描写が見事。
驚きのエンドは、ミステリとしては捻り無さすぎにして堂々たる文学的王道の真犯人Who、ミステリとして「難解」過ぎにして素晴らしき文学的な、Why。ミステリとして4点・文学として8点。間とってオマケ付けて7点 
※つくづく、英国・・独逸でなく・・の女って、怖そうだなア・・実物は知らんが。

No.698 6点 友が消えた夏- 門前典之 2023/05/07 23:31
門前典之第八弾。「閉ざされた館・男女学生・密室・連続殺人」と、「三十路女タクシー誘拐事件」、二つの事件が、同じ日付で交互叙述される。あえて同日付で別エピソード描かれりゃあ、どうしても、因果捜し・叙述トリック注意、となり、結果、・・麻耶雄嵩等の人物叙述トリックと違って・・キチンとミステリ意味をなしてた。
二つの密室トリックは、最初のペケ(~_~)だが、二番目のはグッド(^.^)よ。
終盤の、女流イヤミス系の臭いは、チトいただけないが。
※「携帯電話」「椎名林檎」「安室奈美恵」・・・「イニシエーションラブ」思い出すなぁ。

No.697 5点 フレンチ警部と毒蛇の謎- F・W・クロフツ 2023/05/06 20:04
クロフツ第二十二作。機械毒蛇トリックともかく、アリバイ構成の方がなあ。共犯にして倒叙主役を、クロフツにしては珍しや心象掘り下げして、ちょびっと「罪と罰」させてて、点数オマケ。 ※にしても、あれで死刑てのは・・・

No.696 6点 invert II 覗き窓の死角- 相沢沙呼 2023/05/01 21:49
城塚翡翠シリーズ第三弾。中長編2作の倒叙作組み合わせ。
 「正者の言伝」侵入した別荘で刺殺犯となる少年の倒叙・からのドンデン返し。履物とバッグと雨のロジックに6点。
 「覗き窓の死角」探偵を証人に利用した殺人アリバイトリックの解明と紛失宝飾品からの犯人特定。7点。
超美女にして「てへぺろこっつんさん」ブリっ子キャラの探偵ヒロイン。コロンボ「あと、一つだけ・」、古畑「ん~・・」同様、犯人サイドから倒叙されると、基本、ヒールにして鬼の嚇かし役になってしまい、酉乃初・マツリカに比べると、ちといただけないなあ、ヒスイちゃん。「殺人は絶対だめですぅ」倫理キャラ設定が失敗っだったんじゃないか。ま、好みの問題だけどネ。

No.695 3点 真夜中の密室- ジェフリー・ディーヴァー 2023/04/26 21:00
ライムシリーズ第15弾。今回の敵は、どんな錠前も簡単に解錠し、女の部屋に侵入するピッキング達人。ディーヴァーだもの、当然に操り真犯人ツイスト来るけど、分かり易くあっけないネタなんだなァ、これが。さすがにこれでは弱いと自覚したのか、vs「ウクライナから来た暗黒ボス」ネタ付くんだが・・そっちのが面白い位なんだが・・二つのネタ、絡まないんだなぁ、これが。

No.694 6点 赤髯王の呪い- ポール・アルテ 2023/04/24 01:42
緑色の顔に白目だけの少女幽霊・・んな恐いモンは怖すぎるわ!(T_T) 「火刑法廷」なんかはゴシック・オカルト。が、これは、サイコ・ホラー。両目を潰され殺された少女の密室トリックには、カーの香りするけどね。 ※採点は表題作へ

No.693 5点 サンドリーヌ裁判- トマス・H・クック 2023/04/22 19:49
不治の難病に罹った才色兼備の妻の急死。妻殺し容疑で告発された大学教授の夫。妻との出会いからの重苦しい追想が、数日間の裁判描写に重ねて綴られて行く。ミステリと文学が、ほぼ、fifty-fiftyでリードし合うクックの小説だが、これは、ミステリ興味・・自殺か殺人かWhatダニットと無罪か有罪か評決・・を釣りにした、冷笑主義と自虐的高慢に硬化した男の精神を焙り出す苦渋の小説。言っちまえば、ミステリをダシにした「文学」に過ぎない。
が、最後の一頁の、「驚き」の・・文学にあるまじき・・ミステリ的Happyエンドに点数オマケ。
※「カラマーゾフの兄弟」のゾシマ長老が言ってたな、「地獄とは、人を愛せなくなった心」って。

No.692 7点 不自然な死体- P・D・ジェイムズ 2023/04/19 09:25
海を漂う小舟にはミステリ作家の屍体、屍体は「自然死」なのに両手首が切断されていた。詩人にして警視の探偵・その狷介な叔母・男女の文壇関係者達・不具者の秘書女・女流作家の姪・・半ば閉ざされた岬に住まう、一癖どころか三癖はある容疑者達。クリスティーどころかドロシー・セイヤーズでさえ、ここまで「人が悪く」はなかろうって程に辛辣で「純文学」なドロシー・ジェイムズの精神解剖描写。主役探偵どころか助役警部さえ、作者の残酷なペン先から逃れられない。殺人と手首切断の合理的「Why」に、文学的「何故?」が見事に融合、見事。

No.691 5点 シグニット号の死- F・W・クロフツ 2023/04/15 19:33
クロフツ第二十一作。十八番の船上殺人プロットに、ナンと嬉しや久々の「密室」付き・・カー「爬虫類館」レベルだけどね・・ 期待しなければ、それなりに・・再放送「科捜研の~」「捜査一課長」並みには・・面白いクロフツ。WhoWhyドンデン返しもナカナカよく・・もちっと犯人のキャラ掘下げほしいが・・クロフツだからね・・

No.690 7点 七番目の仮説- ポール・アルテ 2023/04/11 21:41
ペスト病人の消失と死体の出現、「密室」ワンツートリックが実によいなぁ。鳥仮面ペスト医者(なんじゃそれ)、クセ者のミステリ劇作家とミステリ役者、ワケあり風執事と薄幸風美女。多重変装に予告殺人遊戯、怪奇趣味とドタバタ浪漫、ちと無茶な操りドンデン返し。「いいじゃないか。こういうのでいいんだよ、ミステリてのは。(井之頭五郎風)」

No.689 4点 悪徳の輪舞曲- 中山七里 2023/04/08 18:43
トンデモ過去持ちハードボイルド弁護士:御子柴シリーズ第四弾。今回の依頼人は、再婚相手の資産家夫殺しで法廷に立たされた実の母。冒頭の「犯行叙述」を、どう無罪判決へ「叙述トリック」反転させる?がメインとなってしまい、事件真相の方、WhoHowともかく、Whyは・・うーん、ちと説得力無いなぁ・・
※サイコパス遺伝説など一笑に付すべきだが、「たらちね」ネタでヒヨったか?作者、もっともっとハードボイルドさせなきゃ、御子柴礼司。受付の女の子に「兄妹喧嘩ですか」なんて突っ込ませてないで。

No.688 3点 宇宙神の不思議- 二階堂黎人 2023/04/07 17:03
水乃サトル不思議シリーズ第二弾。 今回はUFO宇宙人ネタ絡めたカルト教団もの。
   密室殺人の「針糸」トリック+降格どんでん返しオチに、3点。
   宇宙人UFO遭遇現象の島荘風解釈解決に、+1点。
   魅力なさすぎキャラ達のドタバタ展開つまらな過ぎ※、-1点。
※ユニークなキャラ造りし損ねて、無理にコミックさせても、白けさせてくれるだけの痛い描写が多すぎて・・・

No.687 4点 勇将ジェラールの冒険- アーサー・コナン・ドイル 2023/04/02 19:15
英雄軍人ジェラールの第二(かつ最終)短編集。ナポレオン歴史譚との連作風な絡みは、ラスト二話を除いて薄れ、老兵の過去自慢武勇談てな趣の話が多く、前作のスピンオフ拾遺集て感じかな。突飛な奇譚ネタが増えて、物語構造はSF「失われた世界」と変わらない。こっちには、ラスト二話の哀切浪漫に点数オマケ。

No.686 5点 勇将ジェラールの回想- アーサー・コナン・ドイル 2023/04/02 19:11
ナポレオンの絶頂と失脚の歴史に運命を託した英雄軍人の連作短編集。空想冒険浪漫と歴史叙事譚の結び目鮮やかで、全編おんなじ・・使命 → ピンチ! → 逆転 → 決着!・・展開だが、良くできた少年漫画並みのハラハラドキドキ感が良く、別にミステリではないが、ほとんどの作品に出てくる「味方に変装した敵のトリック」あたりをミステリと無理に評価して・・点数オマケ

No.685 3点 フレンチ警部と漂う死体- F・W・クロフツ 2023/03/29 21:26
クロフツ第二十作。経営者一族・・一人の伯(叔)父と四人(+1人)の甥姪達・・に起きる毒殺未遂事件と船旅撲殺事件。凡庸なアリバイトリックにチョビッと伝奇浪漫風な過去譚とクルージング観光付き。

No.684 5点 七つの丘のある街- トマス・H・クック 2023/03/28 20:44
米国史上最年少の死刑囚少女と一回り年長の巨漢肥満男、二人の起こした残虐な連続殺人を、警察捜査と裁判で綴るノンフィクション。戦慄のサイコパスか滑稽なダメ人間か、心を持たないシリアルキラーか哀れな社会的敗残者か、狡猾な策略的知能犯か愚かな被洗脳者か・・・殺人者像の驚くべき相反する矛盾描写。結局、あいつら・特にあの少女・の本性って何だったのか・・悪魔?何かの犠牲者?Who(何者)?・・多重解釈エンドのミステリと評価してオマケの採点。
※肥満男の絵に描いた様な「ダメ白人」風貌ともかく、わが国にも、「ヒ素カレー毒殺事件」死刑囚や、近隣男児(たしか実の娘も)殺しの女等、その正体が分かりそうで分からない「ノンフィクション」女はおり・・・

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.25点   採点数: 823件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(33)
二階堂黎人(27)
カーター・ディクスン(25)
アーサー・コナン・ドイル(23)
トマス・H・クック(23)
麻耶雄嵩(21)
ジェフリー・ディーヴァー(19)