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レッドキングさん
平均点: 5.25点 書評数: 823件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.743 5点 大菩薩峠- 中里介山 2023/09/18 20:46
ついでにこれも。これは凄い。文庫本数十冊に及ぶ超大長編浪漫。剣豪小説・・ほぼチャンバラ劇画・・に始まり、信じがたいまでに複雑壮大化して行く主題・・ついには、ファンタジー・信仰書のレベルに・・結局、未完・・ミステリアスに終わるけれどね。そこがまたよい。

No.742 4点 邪宗門- 高橋和巳 2023/09/18 20:44
「飢餓海峡」の事書いてたら突然これも思いだした。こっちは、明治期に誕生し、昭和にかけて大教団化しながら、国より凄惨な弾圧を受けて崩壊した新興宗教「ひのもと救霊会」(大本教て言う実際のモデルあり)の群像劇。もちろん本格でもなんでもないが、宗教自体がミステリなんで、そのテーマの稀有壮大さに敬意を表して・・でも、山本周五郎水上勉なんかより小説は下手だなあ、高橋和巳。

No.741 3点 飢餓海峡- 水上勉 2023/09/18 20:39
「飢餓海峡」! おお懐かしい。松本清張「ゼロの焦点」や映画(清張でなく)「砂の器」、「白夜行」や「火車」なんかと同様に、The twilight(darkでなく) Side of The modan日本 の半ピカレスク浪漫やね。

No.740 4点 毒を食らわば- ドロシー・L・セイヤーズ 2023/09/16 23:06
ドロシー・セイヤーズ第五作。最近評したクロフツ諸作や、それ以上に後期クイーン作品に頻出する有罪判決条件の、必要条件:「犯人で在り得る(その可能性がある)」と、十分条件:「犯人でない事は在り得ない(明晰判明である)」の問題が、冒頭の裁判シーンで鮮やかに描かれる。判事自身、被告側には無罪証明(=必要条件の否定=「在り得ない」の証明)の義務はなく、検察にこそ有罪の十分条件(=明晰判明)の証明が求められると宣言をする・・・すなわち、「疑わしき状況」だけでは無罪、があくまでも大原則だ、と。が、そんな裁判の大原則では話にならず、主役「貴族探偵」は、被告以外の真犯人の有罪を明晰判明にする事(できたか?)で、被告の無罪を証明せざるを得ない、そりゃ、ミステリ小説だからね。

No.739 7点 殺す手紙- ポール・アルテ 2023/09/15 22:55
ヘレン・マクロイ「月明かりの男」同様、これまたナチススパイもの。親友からの手紙に書かれた奇怪な指示どおりに、目的の見えない行動を起こす傷心の男。幻覚の如き危機展開と悪夢の様な逃走劇。舞台ドンデン返しに予期せぬ殺人事件が混入し、ディーヴァーツイストをテンポ良くショートカットさせたジェットコースター展開が、あっと言う間に二重三重返りして、ラスト落ちも決まる。こういうのも書くんだな、ポール・アルテ。

No.738 6点 月明かりの男- ヘレン・マクロイ 2023/09/15 22:54
ヘレン・マクロイ第二作。対独(対日もオマケ)戦時下の米国大学で起きる連続殺人のWho・Whyミステリ。加えて全編被うナチススパイねたがサスペンスしてて面白い。如何にもクセある教官、理事、学生ら容疑者達。逃走者の風体が目撃者三人三様に異なる「心理」ロジックや、供述の虚偽を見破る客観的ロジック・・読み返せば見取図ないままにキチンと描写されてた・・が、美味しい。「事実を述べる時には心情は隠されるが、本音が出て来ると物語=噓が始まる」・心理的推理良いが、客観的証拠のタイピングネタがいまいち。

No.737 2点 ベローナ・クラブの不愉快な事件- ドロシー・L・セイヤーズ 2023/09/12 23:03
ドロシー・セイヤーズ第四作。前作「不自然な死」に続き相続殺人もの。クラブで死体で見つかった老軍人。当初見立てられた自然死が、「捻くれた」遺言書に死亡順番が絡む毒殺疑惑へと変じ、居合わせた「貴族探偵」が首を突っ込み、真相は、前作に輪をかけてシンプル(=ひねり無さすぎ)な相続金目当Whoダニットだった。
※英国の「クラブ」って、男性専用かつ極めて階級的な存在に思えるが、大富豪貴族ボンボンとカミさんに喰わせて貰ってる失業軍人上がりが、一緒のクラブに加入しているって普通なのか? 会費、どれ位なんだろ。

No.736 4点 死の舞踏- ヘレン・マクロイ 2023/09/09 22:36
ヘレン・マクロイ処女作。怪死した社交界(どんな世界じゃ)売出しの少女。容疑者・・影武者の従妹、少女の継母、そのツバメの画家、伯父、執事、コンサルタントの女、求婚実業家、ゴシップ屋・・達によるWho・Whyミステリ。
※クリスティ「鏡は横にひび割れて」、て言うより、映画「クリスタル殺人事件」思い出す。動機は「違う」けどね。

No.735 3点 不自然な死- ドロシー・L・セイヤーズ 2023/09/07 20:37
ドロシー・セイヤーズ第三作。暇つぶしの好奇心から、自身には何の関係もない老婆の死に、犯罪の臭いを嗅ぎ付けて嗅ぎまわる「貴族探偵」。しかも、公僕の友だち巻き込み、女スパイまで雇って・・都合よく別件起きるけどね(*^^*)
※この作の、真の主題=裏のテーマは、lesbian版「Farewell, My Lovely」だな。

No.734 4点 すり替えられた誘拐- D・M・ディヴァイン 2023/09/05 21:37
ディヴァイン第八作(これで全13作の邦訳揃った)。原題は、"Death Is My Bridegroom"=「死が我が花婿」。詩的な死を感傷しながら、身体の痛みを恐怖した女子大生の悲惨な最後。実の花婿と名目の花婿、二人の死を迎えた大学職員の女。初めての男に宿命の花婿を重ねた少女。そして、最後のヒロインが、人を愛せなかった学者の男の心の壁を砕き、死ではない生きた花婿を得るのか、の希望は余韻として残る。サスペンスロマンとしては見事。ミステリとしては・・あと、一トリック、一捻りあれば・・6~7点だった(かな)。
※てことで、ディヴァイン全十三作の採点を完了したが・・順位付けは止めとこ・・

No.733 7点 死体の汁を啜れ- 白井智之 2023/09/02 22:19
識字力喪失のミステリ作家、守銭奴(「パンツ売ろうかナ」)女子高生、悪徳の美人刑事、深夜ラジオマニアのヤクザ・・奇矯極まる面子による、架空小都市を舞台にした連作短編集。
   「豚の顔をした死体」・・皮を剝がされ豚の頭を被せられたヤクザ組長死体のWhy。5点 
   「何もない死体」・・手製ギロチン惨殺巡るトリック解釈のファンキー三段落ち。8点(長編に膨らませてほしい) 
   「血を抜かれた死体」・・逆さ吊り男女惨殺死体と仰天密室How(斬新な密室ネタに間違いなし)。8点 
   「膨れた死体と萎んだ死体」・・アリバイトリックのトンデモ(笑)顛末のロジック。6点 
   「折り畳まれた死体」・・展示処刑具で死んだ少年・・からのツイストちょっとイイ話、からのbadな・・ 6点 
   「屋上で溺れた死体」・・水無き屋上で水死したカルト教祖の謎(これワラける)。5点 
   「死体の中の死体」・・大女の屍体に縫い込まれた子供の死体のWhy・What。8点(これも長編にできるな)
   「生きている死体」・・四肢切断され眼球抉られ鼓膜破られ・・残虐ここに極まる殺人未遂事件の顛末。5点
各編冒頭に付く、探偵役作家のライバル(と言うより宿敵)ミステリ作家の事件コメントが、中学生レベルなのに、一回りして「正解」着地てな趣向に唸らせられる。全体で、7点。

No.732 8点 イン・ザ・ブラッド- ジャック・カーリイ 2023/08/30 20:59
作者第五作。「毒蛇の園」は、「リベラル派」富豪一族の偽善を嘲る劇画だったが、これは、「白人至上主義・宗教右翼」の偽善(むしろ偽悪かな)を暴く戯画。ミステリであり、かつ、SFを掠めたファンタジー、いやもう、メルヘン! この、信じられないまでの「希望」は、信じたい気にさせられる。
※ミステリとしてはオマケしても、5点だが・・もう、おーまけにオマケ(^^♪・・8点!

No.731 2点 雲なす証言- ドロシー・L・セイヤーズ 2023/08/28 00:01
ドロシー・セイヤーズ(ミドルネーム「L」入れないと作者お冠だったらしい)第二作。主人公「貴族探偵」の妹の婚約者が「射殺」され、主人公の兄にあたる「公爵」に殺人容疑が。兄を絞首刑から救うべく奔走(どう見ても愉しみ半分)する弟「貴族探偵」。だが、肝心なアンちゃん本人がアリバイ証言を頑なに拒み・・真相は「本陣殺人」「そして誰も~」等であった・・・なかなかに面白く、でも、「密室」「不可能」じゃないのがねぇ・・

No.730 3点 誰の死体?- ドロシー・L・セイヤーズ 2023/08/24 20:53
ある朝、民家の風呂場に突如出現した死体と、離れた屋敷から消えた金融家ユダヤ人。二人の相貌は似て非なる・・・
ん?「唇の捩れた男」オマージュ?てワクワクさせといて・・・ありゃりゃあ・・(+o+)。
※「貴族探偵」のおカアちゃん(先代公妃!)とイカにもな英国執事キャラがgood、1点オマケ。

No.729 5点 蜘蛛と蠅- F・W・クロフツ 2023/08/22 22:05
クロフツ第二十六作。邦題「蜘蛛と蠅」。蜘蛛=金貸し・恐喝者。惨めな蠅達が絡み取られる蜘蛛の巣は、賭博と情事と「好事魔多し」・・いつの世も。十八番のアリバイトリックに犯人Whoネタがタイトに決まり、素人女探偵達のプチ冒険譚も付く。前作同様、必要条件=「犯人であり得る」だけで、確証のないまま、有罪=絞死刑の危機が迫る被告。しかも官憲に悪意はない(こういうのは、もう勘弁してほしく)。今回、フレンチは救い主役だが、活躍は脇役。

No.728 6点 そして誰も死ななかった- 白井智之 2023/08/19 22:14
作者の第五(前作の連作短編集も数えて)長編。これまでのグロあざとタイトルに比べると、グッと「保守的な」標題で、ん?作者、守りに入ったか?思わせて、ところがドッコイ、とんでもSF(?)設定、グロへど描写に、マニアックロジック相変わらず・・よいなぁ。(特に、風俗嬢作家のダミーばかネタ、じつーにgoodよ!「鯨爆発」\(^o^)/って・・)
※マズいことに、この作者のこと、好きになってしまいそうだ・・我ながら不本意ながら・・

No.727 7点 お前の彼女は二階で茹で死に- 白井智之 2023/08/17 00:55
拉致した異形少女を探偵役に使役する暴虐警官。へど・グロ・残酷コミックにして、「超」本格ミステリな連作短編集。
    第一篇・二編の、緻密かつ変態的ロジックに、各6点。
    第三篇の、閉ざされた山間旅館での、密室二件付き連続殺人のトリック・ロジックに8点。
このまま行くか? と思わせといて、三篇終盤でトンデモどんでん返しが来て、
    第四編の、密室・人物入換えトリック及びロジック等てんこ盛りに、7点。
で、とりあえず、HappyなEndだが・・・こいつら、こんなに幸せにしといてイイの?と、腑に落ちない所で、
    「後始末」エピローグで、めでたくBad End・・・腑に落ちた(かな)
※あの異形少女を探偵役に残して、警官とのコンビシリーズ物にしても、良かったか・・・ちと、日和り過ぎか。

No.726 6点 死まで139歩- ポール・アルテ 2023/08/14 23:07
「幻の女」浪漫、「赤毛連盟」展開、足跡と鍵の二重密室からの犯人消失と屍体出現、貫くは「クツ収集狂事件」。そして、なんちゅう居直った・・実際ツイスト博士に居直り語りさせてる・・ベタ道具トリック。虎ステッキやカーテンナイフ同様、こういうチンプ(ホメ言葉よー)で笑ける脱力感、いかにも、アルテらしくて・・(*^^*)

No.725 4点 ブラッド・ブラザー- ジャック・カーリイ 2023/08/12 00:08
第四作目。面白い! 処女作二作目にチョイ出の、魅惑的な殺人鬼サイコお兄さん、ついに主役に。本拠地アラバマからマンハッタンに舞台を移し、女性屍体の下腹部に、切断頭部を埋め込む猟奇殺人を巡る、警察 vs 殺人鬼の虚々実々サスペンス。皮肉なことに、オモシロ度アップに連れて、ミステリ度はダウンするこのシリーズ。ディーヴァー「コフィン・ダンサー」ツイストが決まるが、兄のシリアルキラー汚名の雪辱Happyとは祝福できず、作者のヒヨリと失望せざるを得ない。ので・・減点。   ・・・思えば、レクター博士クラリス捜査官の逃亡エンドは見事だった・・・

No.724 4点 誘拐犯の不思議- 二階堂黎人 2023/08/09 17:08
水乃サトル不思議シリーズ第五弾。アリバイ時間トリックに特化した長編。なかでも、内臓が掻き出された死体ネタ、島田荘司小島正樹以外にも、こんなWhy利用もあんだなあ、とカンプク・・「バカWhy」だけどね。

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.25点   採点数: 823件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(33)
二階堂黎人(27)
カーター・ディクスン(25)
アーサー・コナン・ドイル(23)
トマス・H・クック(23)
麻耶雄嵩(21)
ジェフリー・ディーヴァー(19)