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レッドキングさん
平均点: 5.29点 書評数: 1014件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.934 4点 シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞- 高殿円 2025/04/18 23:00
ホームズパティッシュ第三弾は、「四つの署名」と「ボヘミアの醜聞」が元ネタ。そこへ「ボスコム谷」だの「マズグレイヴ家」だの仄めかして、でーも内容は、一弾二弾より、さらに本格を離れて、生物SFに社会派SF、政治サスペンスに冒険アクションとテンコ盛り、が、なんと言ってもフェミニンハードボイルドで、ヒロインはレディ・ホームズではなく、すっかりミズ・ワトソンとなってしまった。※次は、「恐怖の谷」か「まだらの紐か」・・・

No.933 4点 シャーリー・ホームズとバスカヴィル家の狗- 高殿円 2025/04/15 20:28
前作「緋色の憂鬱」よりも、もっとパスティッシュしてて、犯人まであれで・・それ以前に題名からして、まんま「犬」「狗」違いだけだし・・。ここまで原作擬えて、どこでツイストすんだ?思っていたら、「本格物」飛び越えて、「歴史奇譚」からプチ「冒険SF」にスライドして行っちゃって・・その展開もまたドイルらしくて悪くない。
※これ、コロナ・ウクライナ前に書いてるんだよな、偶然とは言え、すげぇ先見の明。

No.932 5点 シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱- 高殿円 2025/04/13 22:07
これまた、このサイトで教えてもらい意外な拾いモンだった。ホームズ・ワトソン・モリアーティ・レストレード・・おなじみ諸キャラを女に入換え、現代に移植して、「緋色の研究」パスティッシュして、メインの四連続殺人事件は結構ホンカクしてて。「毒入り○○○○ (⊙∀⊙)」ネタは・・女流らしからぬと言うか女流らしいと言うか・・グッドよ(モチっとエゲつないネタでもザッツOK ^m^) 。犯人のWhyダニットはタイトル意味と共々に、さすが女視点と唸らせられる。(男には、こんな事・・「○○○○使うのは○○〇」(?_?)・・は、書けないなぁ) 点数オマケ。

No.931 7点 恐ろしく奇妙な夜- ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ 2025/04/11 22:30
あの素晴しき怪作「赤い右手」作者の中短編集。原作文体に魅力あるのか、夏来健次って訳者の文体力が巧みなのかは・・多分両方なんだろ・・分らん

「人形は死を告げる」 魔人人形の不気味な示唆とジゴロ殺人構図の一転から二重三重ツイストおまけに四転 7点
「つなわたりの密室」 密室で殺された資産家男と隣室女。猫神父ノッポ弁護士はじめキャラフリークぶり良く 8点
          ( 「赤い右手」同様、「本格伏線あんふぇあ」イチャモンもっともだが、まあイイじゃん(^-^; )
「殺人者」 ん、倒叙サスペンス?ミスリード煙幕?・・この作家の十八番なんやね・・で、ツイストエンド。4点
「殺しの時間」 作家志望男の、上階「爆弾娘」ネタ投稿原稿が、ヒッチコック「裏窓」風サスペンス呼び寄せて。6点
「わたしはふたつの死に憑かれ」 叙述者が未成年時代に出会った、男と異国人妻とベビーシッター娘の悲劇。
               数年後、長じてラジオ脚本家となった彼に再現する、事件の驚愕真相。8点。
               (こういう「直球文体」のも書くのね)
「恐ろしく奇妙な夜」 タイトル作だが、ミステリではなく、まんま「ウルトラQ」怪獣小説。(採点対象外)

※本の作者紹介に「アメリカの大衆小説家」とあるが、かくも「日常」「常識」「穏健」・・すなわち「大衆」・・から外れた文体世界が「大衆の文学」のわけがなく、これは「非常」「異常」「異端」・・すなわち「純粋なる文学」・・の世界、「純文学」としか呼び様が在るまいて ^m^

No.930 6点 風ヶ丘五十円玉祭りの謎- 青崎有吾 2025/04/09 21:43
作者の第一短編集とな。 
  「もう一色選べる丼」 学食の食べ残し状況から該当者を選別するロジック(なんか説得力あるんだなぁ) 7点
  「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」 夏祭り屋台の釣銭が悉く五十円玉であるWhy (もうちょい外連味ほしく) 5点
  「針宮理恵子のサードインパクト」 ヤンキー女高生と年下ブラバン少年の胸キュン純情譚かつミステリ 6点
  「天使たちの残暑見舞い」 卒業生のノートに記された教室から消えた二人の少女。その幻の影像の解明 7点
  「その花瓶にご注意を」 破壊された花瓶の謎の解明よりも、二人の少女の「過去の謎」の方が面白く 3点
( 探偵兄妹、お父ちゃんからして「ミスターロジック」だったのね)※オマケ話に点数おまけ。

No.929 5点 明智恭介の奔走- 今村昌弘 2025/04/06 21:11
作者の第一短編集とな。
  「最初でも最後でもない事件」 コスプレサークルの部室侵入泥棒に傷害を負わせた謎の人物Who・Why 8点
  「とある日常の謎について」 女房内緒の週一回千円飲みとボロビル破格購入のチョイとイイ話 3点
  「泥酔肌着引き裂き事件」 真相は「あほらし」の一言だが、「密室トリック物」でないこともなく 3点
  「宗教学試験問題漏洩事件」 研究室から消失した試験問題USBメモリ。そのトリック仕掛け顛末 7点
  「手紙ばら撒きハイツ事件」 ハイツの諸部屋に撒かれた怪手紙とストーカーのWho・Why・What錯綜 6点
(ひーる子ちゃん出て来んと、なーんか拍子抜け)

No.928 6点 ぶち猫 コックリル警部の事件簿- クリスチアナ・ブランド 2025/04/01 20:02
ショートショート・短編・戯曲取り混ぜた作品集。作者の死後出版とな。
 「最後の短編」 従兄に冤罪を着せての相続殺人が策士策に溺れ・・今は昔の電話ネタ倒叙ショートショート。
 「遠い親戚」 これも相続殺人を廻る人物トリックサスペンス。
 「ロッキングチェア」 初老姉妹と三十路女、三人の怪死の真相・深層に沈む痛ましき浪漫の残酷な顛末。
 「屋根の上の男」 雪の古館で死亡した嫌われ者の公爵。館内に凶器はなく状況は密室殺人だった・・・
 「アレバイ」 アリバイでなく「あればい」のショートショート、みぎょと!
 「ぶち猫」 ” 二度目の夫殺しを企む女と愛人" の倒叙三幕劇が十八番の多重ツイスト(し過ぎ)した挙句・・・

No.927 8点 図書館の殺人- 青崎有吾 2025/03/29 07:03
体育館の「密室」、水族館の「何故?」に続く、「館物」ロジックシリーズ第三弾は、図書館「ダイイングメッセージ」。残された物証と状況から、容疑者を絞り込んで行く手際の超絶ぶり。その上、ロジックの説得力と「意外な犯人」の驚きを両立させる見事さ。・・心底感嘆せざるを得ない。!(^^)!

(ここまで褒めといて、こんな事は言いたくはないのだが、犯人(この設定は見事)と探偵を除くと、登場人物たち・特に・少女たちのキャラが、みんな同じ様にしか記憶に残らんのよね。あれほど、様々な諸属性くっ付けられてんのに・・つまり、本格物にむかーしから言い古されたステレオタイプの悪口通り「人間が描けてない」のよねぇ。読んでる間は実に面白いんだが・・(-"-))

No.926 3点 アヒルと鴨のコインロッカー- 伊坂幸太郎 2025/03/29 06:52
♪ Yes, ’n’ how many years can some people exist
  Before they’re allowed to be FREE?
  Yes, ’n’ how many deaths will it take till he knows
  That too many people have DIED?
  The answer, my friend, is blowin’ in the wind
  The answer is blowin’ in the wind ♪    (Bob Dylan)

No.925 7点 ドグラ・マグラ- 夢野久作 2025/03/23 22:17
「三奇書」を「本格ミステリ」としてクールに評価してみよう、その一。

第一人称の「意識者」と、明示された殺人者が、「=」である事を仄めかされながらも、「脳髄所有者≠主体者」と言う珍リロンが、Whoダニットロジック成立要件の近代合理主義をハグラカして・・・・と、やっぱりヤメた、これ、本格ミステリとして評価するの・・・
「精神現象学」や「存在と時間」、「吾輩は猫である」や「家畜人ヤプー」・・こういうのをミステリとみなすのと同様にムリだ。これらを本格ミステリとして括る「のは勿体ない」あるいは「価値がない」。
「アクロイド殺し」や「Yの悲劇」、「黒死館殺人事件」や「虚無への供物」、これらをミステリと呼ぶならば、これ、「ミステリではないもの」である。作者自身、「絶対科学探偵の事実小説」あるいは「胎児の夢」と嘯くところの、「アンチ・ミステリ」なのだ・・・ん? アンチミステリ(何を今さら)? ・・・ブウウ・・・ンンン・・・(;^ω^)< 点数、名誉7点!

No.924 6点 夜より暗き闇- マイクル・コナリー 2025/03/16 22:01
ヒエロニムス・ボッシュシリーズ第七弾。刑事ボッシュが、映画監督を殺人容疑で糾弾する検察側証人となる法廷劇と、心臓移植を受けた元FBIプロファイラーが、ボッシュを「本物のボッシュ(16世紀初頭オランダ画家)」に擬えた殺人者と見立てる猟奇ミステリが、二つの別事件として並行進行する。検察側刑事と殺人容疑者、「二人のボッシュ」をどう繋げるんだ?思いつつ読み進めると、「操り」ミステリ真相・・からの「操りの操り」ツイスト(て、事で良いのか?)エンドへ。ボッシュ心底の洞穴およびプロファイラー移植心臓の" Darkness more than Night " は、ナカナカにくるなぁ。

No.923 8点 水族館の殺人- 青崎有吾 2025/03/10 23:55
容疑者十数人を捌くアリバイ明示とユニークなアリバイトリック。バケツ・モップ(別題「黄色いモップの謎」!)・紙片・血痕・足跡・腕時計等から犯人を絞り込んで行く鮮やかなロジック。そして、「何故、殺人をヒケラかし(隠蔽でなく)て、わざわざ屍体をサメに喰わせた?」Whyの二段オチ・・見事!(クイーンや有栖川有栖より好みかも)

No.922 8点 体育館の殺人- 青崎有吾 2025/03/08 04:57
じつに面白かった。「バカみたいに頭が良いダメ高校生」が探偵役の、密室体育館殺人事件。
「 Aは、その時間、密室状態であった空間に、死体と共に存在した唯一の人物であるが故に、犯人である」 てなロジックに、「 もしAが犯人であるならば、Aは、殺人を犯した空間を密室状態にしておくはずがない」てなロジックで反証。
おー(拍手)。
密室事件は一つだけだが、密室構成のWhy・What(Howでなく)の素晴らしさと、「傘」と「映像デッキ」のあまりにも見事なロジックに、8点あげちゃう。

このサイトで作者の名前を知 ったが、そのタイトルのセンスが好みに合わず(伊坂幸太郎等と同じく)ずっと食わず嫌いだった。もっと早くから読んでりゃ良かった。
それにつけても、相沢沙呼・今村昌弘・方丈貴恵・鴨崎暖炉・早坂吝・白井智之・青崎有吾・夕木春央・・・80年代以降生まれの「ポスト新本格」「新々本格」(勝手に名付けちゃう)世代の本格レベル、あまりにも高過ぎ・・・

No.921 7点 エンジェルズ・フライト- マイクル・コナリー 2025/03/04 22:25
ヒエロニムス・ボッシュシリーズ第六弾。肛門を撃ち抜かれて殺された、アンチ警察の黒人弁護士。男女二人の黒人警官を手駒に、因縁ある警察内警察やFBI捜査官と組まされて、事件解明にあがく主役刑事。容疑者の元同僚警官・管理上司・マスコミ・女監察官等と絡みながら、妻との深刻なトラブル平行描写で進行する警官ミステリが、物語半ばに至り、まるで、アンドリュー・ヴァクス「探偵バーク物」如きネタへと急転し、黒人暴動の最中に、辛く苦いハードボイルドエンドを迎える。

※過酷で非道だった白人警官の黒人への対応と、対する反動的な黒人暴動、その反省より産まれた人権擁護措置。が、その「行き過ぎ」が、警官側への理不尽な扱いへと逆転し、さらにそれが、警官の陰湿な行為を誘発し、更なる黒人暴動を産み・・・果てしなく続く泥沼の道。他人事ながら、タイヘンだなぁ、米国の「人種」「人権」問題。(黒人問題ともかく、じつは他人事でもないんだよな、「人権」問題。)

No.920 2点 人間の証明- 森村誠一 2025/03/02 22:18
「かあさん、あれは好きな帽子でしたよ・・・」  ♪ ままあぁぁ どぅゆうりっめんばあぁぁ ♪

No.919 5点 高層の死角- 森村誠一 2025/03/02 22:16
大型ホテル舞台の二つの殺人事件・・密室物一編とアリバイ崩し物一編・・を繋げた長編ミステリ。
   鍵と目撃証言による堅固な二重密室トリックに3点(満点)。
   殺害時刻アリバイトリックに、2点(3点中)。で、計 5点。
密室トリックは・・最近はこの基本形のブっ飛んだ 応用物イッぱい出てるが・・作者考案で当作初出(いいのか?)とのことなんで特許権付き。アリバイトリックの方は、レジスターカードネタなかなかだが、時刻表ネタは予め全提示してくれてないと「本格フェア」とは言えないなぁ・・でも、んなことしたらブチ壊しだもんな^m^(ところで、インモウは証拠にならんのか?)

No.918 4点 ウォッチメイカーの罠- ジェフリー・ディーヴァー 2025/03/01 12:05
ライムシリーズ第十六弾。「チャールズ・ヴェスパシアン・ヘイルがNYにやって来たのは、リンカーン・ライムを殺すためであった」・・・ついに来てしまいました「ウォッチメーカー最後の事件」。長年、そろそろだと思ってはいたが・・・お別れは突然にやってきて、すぐにすんでしまった。ウォッチメーカー最後の陽動は、必殺凶器「フッ化水素酸」と大型クレーン倒壊惨事を利用したスクリーンプレイ。初っ端から、Who(= ウォッチメーカー)、Why(= ライム殺し)を声高に謳うため、その後のツイスト展開、ネタは派手なのに驚き効果はギクシャクしちゃって、そこは残念。シリーズのラスボス、ライムのモリアーティ、その最後は、ライムとの以心伝心の元に、ニヒリズムの海に沈む、静かなる落陽であった。
※ところで、このシリーズ、次作からは「ウーマンX」てのがラスボスになんのかな? 愉しみ(^o^)丿

No.917 4点 死体を買う男- 歌野晶午 2025/02/24 23:07
「語り手:江戸川乱歩、探偵役:萩原朔太郎 」 てな設定の作中作(白骨鬼)と、その出版の顛末を語る「額縁」部分から成り、終わりに作中作が這い出して来て額縁部と融合する。双子トリックひねりネタなかなかだが、読ませ処は作中作の「乱歩風」文体。
※え! 遠い過去を慕うぅぅ?・・(タイトル、そっちの方がイイじゃん(^_-) )

No.916 6点 0の殺人- 我孫子武丸 2025/02/22 06:14
冒頭、作者に限定提示された容疑者は4人。それが、ひとりふたりと死んでゆき・・そして誰もいなくなって・・・。 標準レベルの短編3作ネタを、「タイトル通り」の顛末解明のWhatダニット長編に纏め上げてあって、Goodよ。

No.915 5点 俳優パズル- パトリック・クェンティン 2025/02/20 07:06
舞台は「舞台」、役者は「役者」、幽霊屋敷の如き劇場で、開演に向け稽古する演劇関係者・・アル中上がり演出家・精神病上がり女優・脚本家・舞台監督・曲者揃いの俳優女優・・達に起きる奇怪(カー「鏡」ネタ+「闇からの声」複合技ナカナカ)な連続事件のWhy・Who。事件の顛末に平行描写される演劇進行もナカナカ魅力的。(コンサートともかく、演劇で観客が大興奮するって感覚、チト分らんが・・)

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.29点   採点数: 1014件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(34)
二階堂黎人(30)
ジェフリー・ディーヴァー(28)
アーサー・コナン・ドイル(26)
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