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レッドキングさん
平均点: 5.25点 書評数: 823件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.48 5点 七つの時計- アガサ・クリスティー 2021/02/04 21:03
題名からして本格もの?と期待させといて、読み始めたら「続チムニーズ館」で、まーたスパイ・秘密結社ものか、と辟易させながら、結局は、叙述・人間関係トリックものだった。多重に騙され、その分面白かったので点数1点オマケ。

※これで、アガサ・クリスティーの1920年代の全長編9作の採点修了したんで、
 私的「20年代アガサ・クリスティ」ベスト3(4)

   第一位:「ゴルフ場殺人事件」  
   第二位:「アクロイド殺し」 
   第三位:「七つの時計」
   同三位:「スタイルズ荘の怪事件」 

No.47 3点 チムニーズ館の秘密- アガサ・クリスティー 2021/02/03 20:58
架空のバルカン小国の政権争いと失われた宝石を巡り、冒険家、凄腕政商、大物外交官、怪盗、豪邸貴族、いい女、元気娘、謎の女、探偵、英仏刑事etc入り乱れてのクリスティー「スパイ冒険活劇もの」の集大成。幾つかの人物入代りネタの他、ほんのちょびっと宝探し暗号物のオマケも付く。

No.46 3点 青列車の秘密- アガサ・クリスティー 2021/01/28 18:32
列車内で顔を潰され殺された大富豪の娘。容疑者は二人の色男・・娘の愛人と婿。そこに婿の愛人の超絶いい女や富豪の秘書や娘のメイドや、さらに加えてもう一人の莫大遺産相続ラッキー女やら古物商父娘やら名探偵ポワロが絡み、伝説的なルビー盗難事件を巻き込んだ国際ミステリが・・・なんか20年代のクリスティー小説って、「秘密機関」だの「スパイ組織」だのが跋扈して鼻白むのだが、これも最後に「怪盗」「謎の怪女」みたいなの出しちゃったなあ。

No.45 3点 茶色の服の男- アガサ・クリスティー 2021/01/22 17:29
アガサ・クリスティー第四作。1924年てことは日本で言えば大正時代か。わが国では「明治風厳めしさ」と「昭和軍国」の狭間の、儚い明るさのあった「浪漫ちっく」な時代(「孤島の鬼」もこの時代を舞台にしてた)。英国でも「禁欲ヴィクトリア朝」と「第二次欧戦」の間の、多分ロマンチックな時代だったんだろう。しかも舞台は南アフリカ・・労働争議こそあれ「アパルトヘイト」の概念すらなかった、白人植民地支配が当然だった世界で・・「美しい白人」男女が浪漫サスペンスを展開する。ミステリとしては・・被害者フー?、ラスボス「大佐」フー?、あと幾つかの人物入代りネタってとこか。※ 1/4~1/3アクロイド先行ネタのオマケも付く。

No.44 2点 ビッグ4- アガサ・クリスティー 2021/01/14 15:00
世界征服を企む秘密結社の四大幹部:ビッグ4・・米国大富豪のナンバー2、恐怖の女科学者のナンバー3、ナンバー4の「怪人二十面相」、そしてナンバー1の謎の中国人。対するは、変装、アクション、果ては飛び道具プレイまで行うアグレッシブ・ポワロ。ビッグ4フー?ネタを連載少年漫画の様につなぎ、ハラハラドキドキ感なかなかに良い。たーだ、ナンバー4、それ以上にナンバー1のラストが肩透かしで残念。ラスボスフー?に期待したのに・・・

No.43 7点 ゴルフ場殺人事件- アガサ・クリスティー 2021/01/06 23:32
アガサ・クリスティー第三作にしてポワロ第二弾。探偵も巻き込んだ「顔無し死体殺人」事件企図が、もう一つ別の殺人企図と、更に別の偶然および誤解との複合によって、「変な」二重殺人を現象させてしまう。ポワロが現象を解き明かす丁寧な解釈が実に見事。この現象が「密室」「不可能現象」だったら、クリスティー最高作として、8~9点つけていた。女容疑者にのぼせてしまったワトソン役とのドタバタも大変に面白い。ただ、タイトルが頂けない。
※この人物トリック(顔無しなり損ねだが)、横溝「悪魔の手毬唄」の源流筋なんだろな。

No.42 2点 運命の裏木戸- アガサ・クリスティー 2020/12/29 19:52
1922年出版の「秘密機関」では二十歳そこそこだった若き未婚男女が、1973年出版のこの最後のミステリでは七十を超えた老夫婦へ変貌を遂げ、それでも追い求める物は相も変わらずスパイ・フー?で・・ソシアリズム・ファシズム・コミュニズム・ナチズムの秘密結社で・・アガサ・クリスティーって左右の全体主義になんか拘り持ってたのかな。「秘密機関」「NかMか」「親指のうずき」と前三作では、必ず二人のうちどちらかが、背後から脳天を鈍器で殴られ失神させられ、いくらなんでも障害残るだろと余計な心配したが、ここでは銃弾がかすっただけ(?)ですんで良かった。
※矍鑠たる老大佐が七十過ぎの老人に向かって「なあ、マイボーイ」てのに大うけ。

No.41 3点 秘密機関- アガサ・クリスティー 2020/12/26 19:16
デビュー作「スタイルズ荘の怪事件」に続くアガサ・クリスティ第二弾。もう出版から百年近く経つのか。国家揺るがす機密文書を持った行方の分からない女。女の行方を追う若き探偵男女が、謎の指導者「ブラウン」率いる秘密結社相手に虚々実々のスパイサスペンスを展開。「どんな機密か知らないが、たかが文書一つが国家揺るがすはずないだろ」て突っ込み置いといて、少年向け冒険小説の面白さはあった。ミステリとしては・・ブラウン・フー?ってとこかな。※アガサ・クリスティーって、ナチよりも「左翼」のことが嫌いだったのかな。

No.40 4点 NかMか- アガサ・クリスティー 2020/12/24 18:46
対ドイツ戦時下の英国、海沿いの屋敷に集う老若男女の中から、NとMというナチの大物スパイ男女を探り出す為に、正体を偽装し潜入した探偵夫婦。「容疑者」のうち、4人の男の方はともかく、6人の女の設定が実に良い。
「あの3人の方は違うだろな、こっちの3人のうちの誰かがスパイだろなあ」てとこまでは当たったが、最後のフーまではとても。途中のサイドエピソードが、「犯人当て」の鮮烈にして隠された見事な伏線だった。
※興奮して政治国家を熱く語る軍人が、「があがあ、ガチョウさん」てちゃちゃ入れられ、「ぶ、ぶぁっかぁもおーん!」と怒る場面に爆笑。が、その怒りに合理的理由があることが暴露され、チト興ざめ。

No.39 5点 親指のうずき- アガサ・クリスティー 2020/12/13 13:40
老婦人たち・・賢婦、妖婦、頑婦、狂婦、活婦、怪婦、魔女そして初老ヒロイン・・の饗宴。老婦たちが老嬢の顔を晒し、ホラーでメルヘンなミステリが展開する。
※も少しオドロオドロしく描いてたら、鬼子母神譚やホラー映画「スウィートホーム」みたくなっていたかも。

No.38 6点 マギンティ夫人は死んだ- アガサ・クリスティー 2020/11/25 22:11
金を奪われ殺された雑役婦の中年女。殺される前に女が切り抜いていた新聞記事には、数十年前の犯罪絡みの4人の若い女の写真が。時を経て名を変え身分を偽って暮らしているはずの、ある初老婦人。雑役婦は過去を持つ誰かの現在を発見し、殺されたのか。早いテンポで次々と容疑者達が紹介され、ちと消化不良のまま話が進み・・もう誰が犯人でもいいよってなったあげく・・え?っと驚く真犯人の告発が「血の轍」の物語と共に明かされる。人が古い写真を捨てられないのは「虚栄」「感傷」「憎悪」からってポアロの分析が良い。
※登場する女流作家オリヴァが、自作の主役探偵を語り・・「何か書くとするわね・・なかなか評判いいらしい・・いい気になってジャンジャン書き飛ばす・・気付いた時には、思っただけで不愉快になる奴(探偵)が、あたしに一生つきまとって離れなくなっちゃってんのよ・・(こんな探偵)実際に会ったら片付けてやるわよ、今まで書いてきた方法より、ずっと・・」「・・そりゃいい、グッドアイデアだ。殺しちゃって、死後出版するといい・・」アガサ・クリスティー、本当はポアロのことが嫌いだったのかな・・とりあえず「カーテン」の予告してたんだな。

No.37 4点 ひらいたトランプ- アガサ・クリスティー 2020/11/23 21:02
ブリッジゲームの傍らで刺殺された奇人。容疑者はゲームを行っていた男女4人。大胆な男、慎重な男、冷静かつ果断な女、臆病な女。殺害状況から「~のタイプの人間の犯行」と判断するポアロ。うーん、その判断ちょっとなあ・・・。せっかく部屋の見取り図あんだから、隣室の人物の動きとも絡めたの期待したが、隣室の4人は容疑者になりえない設定の人物だし。
登場する3人の女が良い。「火車」「白夜行」ヒロインの原型の様な若い美女、ブリッジ狂いの端整な老婦人、そして、どう見ても作者の自己パロディとしか思えない女流作家。あのミステリ作家・・オリヴァて言ったか・・が実に面白い。あれ主役にしたら、ヘンリー・メリヴェール卿並みに面白いキャラだと思うが。

No.36 5点 雲をつかむ死- アガサ・クリスティー 2020/09/18 22:00
「黄色い毒蜂」とか「二匹のハチ」てなタイトルの方が良いのでは。
「家ついて行ってイイですか」に出てきそうな、半ばゴミ部屋に住んでる、あのエキセントリックなミステリ作家が実にいい。事件推理の「とんでもトリック」には大爆笑。ミステリはこうありたい。フェル博士メリヴェール卿ではよくある事だが、ポアロはあまり笑かしてはくれんな。
「人殺しは・・たいてい女性にもてる・・」って、そうなのか?

No.35 6点 復讐の女神- アガサ・クリスティー 2020/09/16 18:25
この犯人を「愛しすぎたが故の悲劇」の主役として、もっともっと美的劇的に描くことができたかもしれない。だが、クリスティは老女探偵を、「美」を「悪」として冷眼視するネメシスとして描き、主役の座を犯人に明け渡させることを拒否した。

No.34 5点 カリブ海の秘密- アガサ・クリスティー 2020/09/13 20:58
二人の女を殺した男の噂を喋る老人が、ふと前方の「何か」に眼を留め、驚愕の表情で口を閉ざす。老人の視線の先には、曰くありげな二組の夫婦が。そして老人はその翌日急死する・・。カリブ海西インド諸島のリゾートホテルを舞台にした連続殺人事件。義眼をキーにした左右のロジックが事件を解き明かす。

No.33 5点 スリーピング・マーダー- アガサ・クリスティー 2020/09/08 21:35
理想の新居を求めた新婚の女が心惹かれた家は、はるか幼少期に家族と暮らしたことのある海沿いの屋敷だった。追想の断片に閃くおぞましい殺人の情景。行方不明になったはずの継母は、実は殺されていたのか。BGMなしホラー映画にしたら、かなり怖いサスペンスミステリになりそう。筆跡鑑定のロジックからのフーダニットもストンと決まり・・あとは、あの「猿の前肢」ネタが、も少しホラーなオチだったらなおよく。

No.32 4点 ハロウィーン・パーティ- アガサ・クリスティー 2020/09/07 22:45
パーティーで、「むかし人殺しを見た」と自慢して殺された虚言癖の少女。容疑者はパーティー参加者数十人プラスα。「○○に○○ていた唯一の人物が犯人」てなロジックが、クイーン並みに極まっていれば見事に本格してたかもしれない。終盤までは「鏡は横に~」並みに退屈だが、真相解明ラストの味わいと犯人造形は悪くない。
※クリスティ自身のパロディの様な女流作家の他、さり気なく出てくるワキ役の若者二人・・「一人は肩まで髪を長く伸ばしフクロウのような眼鏡をかけ」「一人は頬ヒゲをはやしスペイン人風に」・・これ、69年のジョン・レノンとポール・マッカートニーのパロディではないか。

No.31 3点 蒼ざめた馬- アガサ・クリスティー 2020/08/25 21:45
歴史学者が偶然に耳にした「殺し屋プロ集団」の噂話。にわか素人探偵コンビが挑むのは、怪しげな三人の「魔女」、怪しげな富豪、怪しげな元弁護士・・そこにクレイジーな薬剤師やクリスティ自身のパロディのようなミステリ作家が絡み、最後にフーダニット一捻りのオマケが付いて決着。

No.30 5点 殺人は容易だ- アガサ・クリスティー 2020/08/17 21:50
車内に居合わせた老女から「連続殺人」の逸話を聞いた元警官。単なる偶然の事故と眉に唾つけて聞き流した話だったが、後日、老女の予言した人物が死に、さらに老女自身も死んだことを知る。好奇心から探求に乗り出すのだが・・・
なんか気だるくピリっとしないフー・ホワイダニットミステリが、終盤でグッとミステリアスに盛り上がり、サイコなサスペンスにひと捻りし・・操りネタをおまけに付けて決着する。
「自尊心を傷つけられた女の復讐心ほど怖いものはありません」「好きだということは、愛しているということよりもずっと大切・・」相変わらずミステリ小説で人生を教えてくれるアガサさん。

No.29 4点 牧師館の殺人- アガサ・クリスティー 2020/08/05 07:40
ユーモラスだか、そこはかとなくダークな匂いのする第一人称叙述。「ん?アクロイド?」と疑いつつ注意して読み進めたが、いつもの十八番トリックが待っていた。医師はともかく牧師に人殺し役はさせられないか。
※にしても、せっかく完全犯罪を達成しかけた美男美女カップルを絞死刑(当然そうなったろう)にするために、芝居うって罠にかけるミス・マープル、容赦ねえなあ・・でも大好きよ。

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.25点   採点数: 823件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(33)
二階堂黎人(27)
カーター・ディクスン(25)
アーサー・コナン・ドイル(23)
トマス・H・クック(23)
麻耶雄嵩(21)
ジェフリー・ディーヴァー(19)