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レッドキングさん
平均点: 5.27点 書評数: 889件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.509 6点 死者たちの礼拝- コリン・デクスター 2021/10/23 22:41
デクスター第四作。牧師はじめ教会関係者5連続殺人事件。姦通・献金横領にカインとアベル・少年愛ネタのパズル断片散りばめて、「顔無し死体もの」の意表突く応用・・WhoHowからWhatへの・・転生応用。こんな手があんだな、面白い。ただ、楽屋(What)によって仮象された舞台がカー風不思議だったら・・7点・・まあ、やめとこ。

No.508 3点 ニコラス・クインの静かな世界- コリン・デクスター 2021/10/18 18:19
デクスター第三作。試験委員会の委員連続殺人事件。難聴(ほぼ聾啞)者の読唇述ネタや英文縦読みネタ(「文を縦に書くおかしな民族」・・我が国バカにしとる!)、狙いは面白いのに驚きがイマイチ。非英語国民にはチト響きづらかろう。ディヴァイン同様、この人のトリックの肝は、どうやらアリバイ時間トリックのようね。それはよいが、最後の半どんでん返し、一つ前のせっかくの「人間関係トリック」がチャラになり、冒頭の伏線が無意味になるじゃん・・1点減点。

No.507 5点 キドリントンから消えた娘- コリン・デクスター 2021/10/16 17:52
デクスター第二作。引続き主人公にはモース警部。平凡な探偵にして密かに不可能犯罪に心躍らせる独身のワーグナーマニア。「女が生きてちゃつまらない・・私は、不自然な死体を前にした方が力が発揮できるんだ」・・なんとナイスな不謹慎セリフ。ある女学生の失踪から二年、娘から両親に無事の手紙が届き、モースに調査の命が下る。パズル断片として、いかにもな怪しさで描写される容疑者・・校長夫妻、独身教頭、教師夫妻、娘両親、男友達・・たち。刺殺と娼婦、恐喝と梅毒、失踪と入代り、ロジックと妄想・・不器用に繰り返されるパズルのはめ直し。「~から二度消えた娘」事件は見事解明するが、殺人事件の方は多重解決風にぼやかして終わる。※多重解決よいが、あの「書類とホコリ」のロジックはもっとキチンと「多重」に記述してほしかった、「陰獣」みたいに。

No.506 4点 ウッドストック行最終バス- コリン・デクスター 2021/10/12 18:49
デクスター処女作。とある夕暮れ、ウッドストック行バスを待っていた娘二人。深夜、うち一人の性交の跡のある撲殺死体が、行先ウッドストックの酒場駐車場で見つかる・・・スーパースター探偵(ホームズ、マーロウetc.)でもアンチ名探偵(ドーヴァー、フロスト)でもない、平凡な警部(なかなかのハンサム中年と判明するが・)の地道なWhoWhatパズルロジック。「一万人」という容疑者から「一人」を絞り出す「ロジック」に大笑・・数も論拠も何たるアバウト・・でも嫌いじゃないぞ、こういうの。そこはよいのだが、犯人、キャラ的に分かり安すぎ・・驚きまったくなく・・

No.505 7点 くらやみ砂絵- 都筑道夫 2021/10/10 18:29
砂絵師はじめ江戸の異形非人達が探偵役のミステリ短編集第二弾。
・「不動坊火焔」 大店旦那と道楽息子、妾、祈禱師、賭場胴元に主役たちが入乱れての殺し合い騙し合い。4点
・「天狗起し」 通夜の「密室」の遺体が刺殺死体と入代り屋根上で見つかる。ダミーを挟んで捻り解決。8点
・「やれ突けそれ突け」 曲芸とエログロ、二つの見世物小屋を繋ぐ転落死事件の真相。4点。
・「南蛮大魔術」 大旦那衆を前に催された女奇術師の魔術。二重三重に捻ったホワイダニット。6点。 
・「雪もよい明神下」 火の見櫓から落下した刺殺死体と犯人消失トリック。ハウよりもホワットダニット。7点
・「春狂言役者づくし」 羽子板押絵の首が裂かれ、押絵モデルの役者が殺される連続事件の驚愕ホワイ。7点
・「地口行灯」 大店に押し込んだ二人組の強盗は前日に既に死体になっていた事件のホワットダニット。6点
平均6点だが、まるで鼠の様なあの連中が好きなので、1点オマケ付けちゃう。

No.504 6点 ウォリス家の殺人- D・M・ディヴァイン 2021/10/09 18:46
ディヴァイン第十三作にして遺作。ひとかどの社会的身分にありながら情緒不安定な男女、陰湿な感情起伏、緊張過多の家族・男女関係、クリスティーを三割方どぎつくしたWhoWhyパズル、ショボいアリバイ時間トリック・・ディヴァインは最後までディヴァインであった。「グリーン家」先例に従い「違うほう」を犯人と予想してしまった。
※遺作なんで点数1~2点オマケ。ただ、第八作「Death Is My Bridegroom(死は我が花婿?)」のみ未訳・・・再来年あたり翻訳でるかな。

No.503 5点 跡形なく沈む- D・M・ディヴァイン 2021/10/06 16:07
ディヴァイン第十二作。良くも悪くもディヴァイン、作品ボルテージ、上りも下がりもしない。癇癪持ち女と情緒不安定男の元恋人、直情径行気味刑事の三人視点で語られる、地方市議会と役所舞台の、男女関係に不正選挙が絡んだ連続殺人(失踪)事件。終盤サスペンス展開なかなかで、相も変わらずショボいアリバイ時間トリック付き。

No.502 6点 メルカトル悪人狩り- 麻耶雄嵩 2021/10/02 22:44
「残念ながら私は長編には向かない探偵なんだよ」・・・そりゃあ、あんたが非人間的なまでに事件を即解決しちゃうから、長編浪漫に絡めなかったからだよ。あと、キャラ的に・・・。
が、この拾遺+新作短編集のメルカトル、何か「丸くなった」は、言い過ぎだが、従来の「悪人(悪人狩りどころか)」から多少は人間的な顔を見せるようになり・・そこで、どうせなら、麻耶には是非に新作長編を期待したく。
個人的には、御陵みかげ(初代)過去事件帳の超ブラック物を所望。

「愛護精神」・・何故に愛犬は殺されたのかのトンデモ展開・・ブラックファルスかな。
「水曜日と金曜日が嫌い」・・長編には向かない探偵なの分るが、あの黒マント死体消失トリックメインに長編こしらえてほしかった。でも、もう一つ、中~大ネタと捻りが必要かなあ・・。
「囁くもの」・・移動した椅子とアリバイのロジックが見所。にしてもメルカトル、銘探偵どころか神探偵の可能性さえ匂わせて・・舌の火傷の仕込みネタもほしく。
「メルカトル・ナイト」・・美人作家から一夜(ナイト)の警護騎士(ナイト)依頼を受けたメルカトル。依頼者の死は防げず・・にも拘らず本来の目的は達成し・・。
「天女五衰」・・麻耶風「樽」「黒いトランク」短編版。これも長編にするには、もう一ネタ一捻り必要かな。
「メルカトル式捜査法」・・麻耶十八番のアリバイ時間ロジック。でーもメルカトル、何か心身共々弱気になり、霊の意志を受けた霊媒探偵の匂いまで仄めかし・・。

※この新作本の帯に「夏と冬の奏鳴曲」新装版の広告があった。表紙画の舞奈桐璃、おおこれだ!て久しぶりに血が沸いた。あの表紙だけのために絶対買おう。

No.501 5点 三本の緑の小壜- D・M・ディヴァイン 2021/09/28 11:39
ディヴァイン第十一作。13歳同級生少女の三連続殺人(+容疑者の怪死)事件。「五番目のコード」風○○に見せかけた~~事件でなく、ド直球のWhyダニット連続殺人物にして、実に説得力ある・・わかりやすーい・・犯人であった。
相変わらず「ブンガク」に至る程の人物描写、特に知育不全で粗暴な嫌われ者少女の一人称叙述が、魅力的。

No.500 6点 災厄の紳士- D・M・ディヴァイン 2021/09/26 11:36
ディヴァイン第十作。美形だが少しトロいジゴロ主役のピカレスク風に始まり、殺人事件ミステリへと反転し、ラストでWhoダニットパズルが見事に完成する。富豪の有名作家と二人の娘、娘婿、孫、隣家の母子、娘を慕う医師、公私にトラブルを抱えた警部、ジゴロを陰で操る黒幕・・パズルの諸破片に変に文学的なリアリティがある。「何故にハンドルの指紋だけ拭きとった?」の犯人特定ロジック付き。

No.499 6点 紙片は告発する- D・M・ディヴァイン 2021/09/24 09:44
ディヴァイン第九作。町というより小さな市の役所を舞台にした、役人の女がヒロインのWhoダニットパズル。2件の殺人事件容疑で逮捕された書記官・・実質町長・・の冤罪を救おうと奔走する愛人の副書記官。薹が立ちかかったヒロイン始め、屈折した過去と自己を持った登場人物達の描写が魅力的。私的には「二番目に怪しいキャラ」が犯人のパズル完成だった。アリバイ時間トリックくずしのネタも付いてる・・相変わらずショボいが。

No.498 5点 運命の証人- D・M・ディヴァイン 2021/09/22 15:20
ディヴァイン第七作。殺人の罪で被告席に座る弁護士。不利な容疑状況らしいのに、何故か本人は裁判進行に投げやりな様子。5年前の第一の殺人と5年後の第二の殺人。気難し屋で激しやすい主人公と、彼を取り巻く弁護士、医師、会計士・・ひとかどの立場の男達・・とその妻、娘、愛人達。5年の歳月を隔てた物語が、裁判の進行に重ねて語られる。T・H・クックならばウェットな「文学」に仕上がって行きそうな展開だが、そこはディヴァイン、カー風トリックもクィーン風ロジックもなく、被害者Whomミステリから法廷サスペンスへと話が進み、クリスティー風人間パズルが、犯人Whoダニットへとシンプルに決まる。

No.497 6点 月明かりの闇- ジョン・ディクスン・カー 2021/09/19 21:40
フェル博士(カーでなく)最後の事件。米国南部を舞台にした、複数男女の情念殺人劇パズルと、足跡なき密室殺人トリック・・犯人にとっては目撃証人による二重密室トリック・・の解明ミステリ。
島荘「北の夕鶴」「人喰いの木」みたいな大仰なのより、この位の方が品位あるぞよ、トリック仕掛け。

No.496 5点 悪魔はすぐそこに- D・M・ディヴァイン 2021/09/14 20:06
ディヴァイン第五作。デビュー作を褒められたってだけで、クリスティーとは何の関係もないのに、なぜか「あのネタ」いつ出るんだと思ってしまい・・今回、やっと来た!って感じだが・・矛盾した事に、複数者視点 三人称叙述・・教授、講師、事務方、学生・・学園群像ミステリで、悪魔は「すぐそこ」どころか巧妙な「ME of them」であった。
残念なのは、せっかく密室しかけたのに「第三の鍵」トリック作り損ねちゃって・・ディヴァインにカーは無理かな

No.495 3点 こわされた少年- D・M・ディヴァイン 2021/09/11 10:31
ディヴァイン第四作。原題は「His Own Appointed Day=己自身の宿命の日」だが、内容は「スコットランドから消えた少年」。優れた知性と詩的感性を持ちながら、自身が養子であることを知らされ「屈折」し、ある日突然に行方不明となった少年。前三作までの一人称叙述は姿を消し、事件を追う警部と義姉の二視点三人称叙述で話が進む。容疑者達・・養父母、義姉、教師達、少女、友人、実父、養父の愛人、刑事・・のパズル完成ビックリ感がイマイチ。

No.494 4点 ロイストン事件- D・M・ディヴァイン 2021/09/09 20:11
ディヴァイン第三作。第一作の弁護士、第二作の医師ときて今回またも弁護士(元だが)が主人公。「ロイストン事件」て題だが内容は「父の殺人者」で、過去の「不正」裁判事件をめぐり殺された父親弁護士の事件。父親殺しで逮捕されたエリートぼんぼん異母弟(義弟ちゃうぞ)を助けるべく、真犯人捜しに奔走する主人公。犯人摘発ロジック相変わらず冴えてるが、前二作に比べてミステリアスな緊迫感に欠け、アリバイ時間トリックのショボさは第一作を上回る。一人称叙述なのに、今回は「あのネタ」頭をよぎりもしなかった。ところで、お題の「ロイストン事件」の方だが・・あんな奴を糾弾するためなら、あれ位の「不正」ありじゃないの? 熱血主人公や被害者父には悪いが・・・

No.493 6点 そして医師も死す- D・M・ディヴァイン 2021/09/06 20:08
ディヴァイン第二作。処女作の弁護士に続き今回は医師の一人称叙述。共同経営者の不審死を追う、容疑者でもある医師と、怪しげな人物達・・若き未亡人、医師の婚約者とその親、被害者の娘と息子、未亡人の賭博狂従兄、胡散臭い市長・・。こんどこそあのネタ?(クリスティの名がチラつく)疑いつつ、二人の女の間をフラフラ揺れ動く主人公にイライラしつつ、ラストでの意表を突くWhyWhoWhomパズル完成が見事。※医師の最後の女選択・・病める時も健やかなる時にも富める時も貧しき時も・・にグッときた(後悔すっかもしれんけどね)

No.492 6点 兄の殺人者- D・M・ディヴァイン 2021/09/05 18:49
ディヴァイン処女作。夜遅くに共同経営者の兄に呼び出された弟弁護士。そこには兄の殺害死体が・・弁護士として「男」としてヤリ手だった兄は恐喝屋でもあった。審査員アガサ・クリスティー推奨のコンクール応募作品。第一人称叙述ものなので、まさかあのネタ?・・てことはなく、あっちの方のネタのアリバイトリックもので、兄嫁・別居妻・元カノ・秘書と美女4人の豪華容疑者メニューから、まるでクリスティー作品の様な人物入代りオチが待っていた。
※こんな事を言うのヤボだが、「他にはいません、犯人はこの部屋にいるのです」とはいい切れなくね?

No.491 7点 忌名の如き贄るもの- 三津田信三 2021/09/04 13:22
「~の如き~もの」シリーズ長編第八弾。山間寒村の旧家の秘密・・「厭魅の~」思わせる・・に、リレー式目撃証人の「密室」殺人トリックを絡めて、長いがスッキリとしたWhoWhyHowミステリに纏まる。最後には「首無の」同様にホラーどんでん返しオマケも付く。どっこい、まーだまだ終わってなかった三津田信三。
(ここいらで麻耶雄嵩にも長編力作を一発期待したい・・・)

No.490 6点 碆霊の如き祀るもの- 三津田信三 2021/08/31 13:08
「~の如き~もの」シリーズ長編第七弾。陸の孤島の様な極貧漁村に伝わる怪談伝承。四つの怪談発祥場所で起きる四つの事件・・不可思議な餓死、目撃による密室事件、足跡なき密室殺人、そして完全な密室内の死。怪談と連続事件の関係は何なのか。四つの怪談語りの冒頭と、伝承に隠された村の秘密解明は実に魅力的だが、事件の方は・・うーん、第一事件のHowが面白いかなあ。第四の完全な密室事件の真相には逆の意味で驚いたが(それをやんのか)・・

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.27点   採点数: 889件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(34)
二階堂黎人(30)
アーサー・コナン・ドイル(26)
カーター・ディクスン(25)
トマス・H・クック(23)
麻耶雄嵩(21)
ジェフリー・ディーヴァー(21)