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クリスティ再読さん
平均点: 6.41点 書評数: 1326件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1066 4点 ボートの三人男- ジェローム・K・ジェローム 2022/11/07 12:29
「三人男」ユーモア小説つながりで本作。だけどちょいと失敗。

ヴィクトリア朝ユーモア小説の代表格。1889年だからホームズのデビューと同じ時期にあたる。ウッドハウスみたいなものを期待したんだが、「クスッ」とは笑えるけども、ストーリー性が薄い。

主人公の「ぼく」が二人の友人と犬と一緒に、ロンドン近郊からオックスフォードへ、テムズ河をボートで遡上する二週間の旅の話。本来旅行案内として書かれたらしい。ボート旅行の奮闘記やら沿岸の名所旧跡の由来話、それに大げさな美文による自然礼賛...でも話はいつもいつも脱線し、ヘンテコなエピソードを次から次へ紹介する「小話」の連続体みたいなものである。

一言でとりとめのない小説。話を追っちゃったりせずに、テキトーに読むのがたぶん正しい。それこそ夜寝る前に5ページくらい読んで、幸せな気分になってぐっすりオヤスミ。そういう小説だろうね。

言うまでもなくミステリ味はなし。失礼しました。

No.1065 8点 雪の中の三人男- エーリヒ・ケストナー 2022/11/06 09:56
「消え失せた密画」が面白かったからね~ケストナー・ユーモア三部作は全部やろう。主人公は百万長者なんだが...

人間てものが実際どんなもんだったか、もうちっとでおれは忘れっちゃうとこだったからねえ。おれは自分のはいっているガラス室をぶち毀してみたいんだよ。

枢密顧問官でコンツェルンの主、べらんめえが素敵なトーブラーは自分の工場主催のコピーライト懸賞に偽名のシュルツェで応募した。結果は二位入賞。一位は失業中の青年ハーゲドルン。この懸賞の賞品は「アルプスの高級リゾート十日間」。百万長者は貧乏人シュルツェに身をやつすが、トーブラーの下男(というか従僕?)のヨーハンを身代わりの「金持ち」に仕立てて同行させる。失業青年ハーゲドルンは一張羅を着込んでホテルへ....トーブラーの身を案じる娘ヒルデは、滞在先のホテルに「百万長者が身をやつして滞在する」のを知らせたが、ホテルでは失業青年ハーゲドルンが百万長者だと思い込んでしまった!

という設定。本当の百万長者シュルツェはホテル側から「そぐわない客」として冷遇されるが、シュルツェの側ではそんな冷遇を「人間観察の好機!」と逆に楽しんでしまう。ハーゲドルンとはヨーハンともども親交を深めるが、ハーゲドルンに思惑から言い寄る貴婦人が、邪魔なシュルツェを排除しようと策謀する。さらに父を案じる娘ヒルデもそのホテルに泊まりに来てしまう。幾重にもこんぐらがった「偽装」の結末は?

いや~実に面白い。ユーモアと言ってもそれが設定とシチュエーションから来るものだから、この設定ですでに勝っているようなもの。さらに「三人男」それぞれのキャラが「見かけ通りじゃない」ヒネリが入っていて、これが絶妙の面白さを生んでいる。「三人男」が高級スキーリゾートを堪能する開放感もあるし、最後はみんな幸せになるイイ話。もともとハリウッドから依頼された映画脚本を自分で小説化したものだそうだから、身元偽装が定番の「スクリューボール・コメディ」の典型かつ最上の出来のものじゃないのだろうか(1934年だから「或る夜の出来事」と同じ年!)

「消え失せた密画」よりも面白いけども、ミステリ味は「密画」よりも薄い。でもね、

みんなが見かけどおりの人間じゃなかったんだねえ。ぼくって大馬鹿者はそいつを全部真に受けたんだ。ぼくは探偵にならなくってしあわせだったよ!

ひょっとして「反-探偵小説」かしら(苦笑)ミステリファンにこそオススメ。

No.1064 7点 予告された殺人の記録- ガブリエル・ガルシア=マルケス 2022/11/04 14:34
昔映画を見て、その流れで原作を読んだ記憶がある。映画は当時評者がご贔屓だったフランチェスコ・ロージの監督作。ボリビア・ロケを敢行し、ギラギラ・埃っぽい映画だった記憶がある。

改めて読んでみて、何というのかな、大変「儀式的」な事件だったようにも感じる。「宿命」の流れが街の無意識と化して、祝祭によって解き放たれた...それが演出する、一大ページェントのような事件なのだ。だから誰もがサンチャゴ・ナサールが「殺される」ことを予期し、さらにはそれを止めようとした友人たちも「無意識」に呑まれてしまって、止めることができない...いやいや「犠牲の羊」たるサンチャゴでさえ、例のセリフによってあたかもこの結末を予期していたかのようなのである。こういう事情が事件に関わったそれぞれの人物の視点で何度も何度も繰り返し語られる構成。記述は重複しつつもそれが「ゼロ時間」である殺人の現場へと次第に吸い寄せられていくような複雑な運動感を示している。

「ジュリアス・シーザー」みたいなものなのである。予言されたからには、それに呪縛されて誰もそれが止められない...

これほど十分に予告された殺人は、例がなかった。

この「予告」は「予言」やら「神託」と同等のものなのである。「予告された殺人の記録」というタイトルに、この作品の内実がすべて集約されている。

No.1063 5点 死はいった、おそらく......- ボアロー&ナルスジャック 2022/11/03 13:40
ボア&ナル本サイトに全部あるか?と思ってたら本作まだのようだ。
なので中期の作品。初期ほどには心理的な混乱がないので、読みやすいスリラー。

保険会社の社員ローブは、ニースの自殺防止協会の視察で、自殺予告の電話対応を見ていた...深夜に電話をかけてきた女への懸命の説得も甲斐なく電話を切った女。その通報を受けた警察はホテルで自殺を図った女の命を救う。ローブは自殺を図った女ズィナを見舞い、ズィナの身の振り方の相談に乗って、友人の香水工場に仕事を紹介した。ローブはズィナに恋をするのだが、ズィナは度重なる事故に追い詰められて自殺を図ったらしい。しかし、新しい環境でもズィナを巡ってさまざまな「事故」が起きていく....この「事故」の真相は?

という話。「自殺念慮の強い女性」に恋をしてしまう男、というのもまあ厄介なもので、そんな男のややこしい心理を主体にしたサスペンス、ということにはなる。ボア&ナルの通例で登場人物はごく少ない。だから、真相は...といえば何となく見当がついてしまうのが「ミステリ」としては不満だし、それを押し切れるほどの「強烈なサスペンス」というまでのものは立ち上らない。

結論としては標準的なボア&ナルのサスペンス。手の内が分かっているから、ごく普通に楽しめるけど?というくらい。
ただし、タイトルのセンスが素晴らしい。マネしたいくらい。

No.1062 5点 カリオストロの復讐- モーリス・ルブラン 2022/11/01 18:41
「カリオストロ伯爵夫人」をやったからには、その後日譚の本作。
「伯爵夫人」がルパンが「ルパンになる前」のデビュー戦を描いた作品のわけだが、この「復讐」ではもう50歳、老境に入るルパン。「伯爵夫人」では、クラリスの産褥による死と生まれた子供ジャンの誘拐という悲劇が幕切れに用意されているのだが、この誘拐されたルパンの子、ジャンの話が落着しないと、「ルパンの人生」が落着しない....そういう大きな構成で書かれた「ルパン、完結編」のわけである。
実際、ルブランは「虎の牙」で一度ルパンものを止めようと思ってたそうだが、そうもいかずリブートした「八点鐘」に続く長編が「伯爵夫人」(1924)。この時点で本作(1935)の構想が出来ていた、ということになる。とはいえ、本作の後に2作ありそれが時系列で本作より後にはなっているけども、「ルブランの名誉を傷つける」とルブランの息子が封印したという話。だからやはり、本作がルパン・サーガ最終作、と捉えるのが収まりがいい。

なんだけども、やはり71歳のルブランの筆力は衰えている。「伯爵夫人」の熱気と比較したら全然だめ。本作は過去作の登場人物をいろいろ登場させたりとか、大団円を目指した「老境のルパンの心境小説」みたいなもの。だから冒険が盛り上がらない。ルパンの息子、と思われる人物が登場するのだが、その「息子」にカリオストロ伯爵夫人がかけた呪い「息子を泥棒にせよ、できれば殺人者に。そして父親と対決させよ」が効いているのかそうでないのか?を巡って、父親ルパンが悩む話。カリオストロ伯爵夫人の死もそれに立ち会った人物の証言が作中で語られる。

バレだけども、最後まで「親子の名乗り」なんてない。そんなの粋じゃないからね。そういう節度は最後までしっかりある。面白いとまではいかないけども、がっかりまではしない。

No.1061 6点 太鼓叩きはなぜ笑う- 鮎川哲也 2022/10/30 15:34
評者今回徳間文庫版で。「竜王氏の不吉な旅」はこの本には収録されていないから要注意(評者は推理小説年鑑'73「殺しの一品料理」で評済み)。言うまでもなく三番館シリーズの第一集。

鮎哲さんらしいアリバイ系トリックを、安楽椅子探偵が話だけで推理して解明する話。だから鮎哲ミステリの骨格部分だけを取り出したような短編、ということになるから、長編に親しんでいるとパターンが読める...という印象がある。この長さだとミスディレクションを仕掛ける余地があまりない。まあだから、鮎哲入門編にはかなりいい作品集かもしれない。

というか、70年代初期って都筑道夫も「退職刑事」をやるし、ケメルマンとかヤッフェとか安楽椅子って言わなくても、ちょっとした「ホームズ・ライバル」風の短編作風というのが流行ったような印象もある。そう見たら吉田茂警部補もそうかも。ユーモラスなキャラクター小説+切れ味系パズラーというあたりが、都筑道夫の落としどころだったような気もしているんだよ。そんな流れで見たらどうかしら。

このシリーズの探偵役は「三番館のバーテン」で定着しているわけで、イチャモン言うのは何だけども、バーでお酒を作ってくれる人を「バーテン」って呼ぶと、嫌な顔をされることが多いから皆さんお気をつけを。今は「バーテンダー」が正しいから。確かにバイオレットフィズが流行った時代だけどね~バイオレットフィズみたいな甘くて香りの強いカクテルを5杯も飲んだら、気持ち悪くならないかしら(それ以前にオッサンが飲む酒?)

No.1060 6点 ながい眠り- ヒラリー・ウォー 2022/10/29 09:28
ハヤカワと創元、カラーの違いが頭に刷り込まれている部分があるからか、本作みたいにポケミスで読んだ記憶がしっかりある作品を、改めて新訳の創元で読み直す、となると何となく違和感(苦笑。「ユダの窓」もそうだけど)
まあカーなら気にしないけど、ヒラリー・ウォーなんだよね。解説もそれとなく「本格」側に持っていきたがる....いや、それが創元のカラーというものなのかしら。いや警察小説だって「ロジック」なしに逮捕してたら人権侵害、というものでしょうよ(苦笑)

だから本書の一番の「警察小説らしさ」ってこういうセリフなんだと思うんだ。

フェローズは肩をすくめた。「知るもんか」

パズラーだったらすべてが合理的に割り切れないといけない。警察小説だったら、理屈で割り切れなくても「う~ん、そういうバカなこと、あるよね」で十分。それが「警察小説のリアル」なんだと思う。いや実際、改めて犯人の行動を真相から省みたら、ヘンなことばっかりしている小説だとも思うんだ。

だから逆に「本格にしたがる傾向」というものが、70年代あたりの「ミステリのモダン」を主導したハヤカワのカラーからの離脱、カッコよく言えば「ポストモダン化」みたいなものを象徴するようで、作品を離れてヘンに興味深い。(作品はもちろんウォーらしく手堅く面白い。ちなみにタイトル「長いお別れ」+「大いなる眠り」に加え、原題「SLEEP LONG, MY LOVE」だと「FAREWELL, MY LOVELY」にも似てる...)

No.1059 7点 赤い橋の殺人- シャルル・バルバラ 2022/10/27 14:13
タイトルに「殺人」とついていて、光文社古典新訳文庫から出ている....え、こんな作品、聞いたことない! ってのが、やはりミステリマニアの普通の反応だと思う。
本屋で見かけてずっと気になっていた作品をやっと、読んだ。

「フランス版罪と罰」ってオビは煽り過ぎ。方向性は「罪と罰」とは真逆の作品だと思うよ。それよりもボードレールの「悪魔主義」との親近性が印象に残る。
というか、ドストエフスキーの場合には、進歩思想をいったん受け入れたうえでの幻滅から、ロシアの大地とやらにひれ伏すことになる(今生きてたらプーチン支持してると思う....)ポピュリズムめいたものを結論にしたがるところがあるのだが、本書のラスコーリニコフ、クレマンは生きながら地獄に落ちつつも、地獄の中で「善行をなしながら生きた」という、極めて矛盾した生を生きる。
いや実際、ラスコーリニコフは言うほど犠牲者を悼んでなくて「自分がナポレオンではありえない」凡人性に打ちのめされるわけだけど、クレマンは「悪の象徴を背負いながら、それでも善をなす」という、矛盾の生を生きる甚だロマン的な生き方なんだよ。評者、ちょっとヤラれる。「さまよえるオランダ人」みたいなものなんだ。

リアリスティックに悪と犯罪を描きながらも、それが最後でつっと「聖」の方向にズレていくあたりが、極めて印象的。キリスト教道徳を誰も信じなくなっても、それでも「奇蹟」が起きていたりするゲーテの「親和力」に近い、矛盾の只中での「罪と罰」を描いた作品だと思うんだ。
読みようによっては、「罪と罰」にも勝る「モデルネ」な部分が出てくる作品だと思うよ。

No.1058 5点 メグレ式捜査法- ジョルジュ・シムノン 2022/10/26 21:43
邦題はスコットランドヤードから派遣されて「メグレ式捜査法」を学ぶ目的で派遣された刑事パイクが、メグレに同道することから来ているんだけども....いや、この仕掛けが全然効いてない。まあ「メグレ式捜査法なんて、ない!」というのがメグレの持論でもあるわけで、だったらうまくいくわけないじゃん...という懸念が残念ながら中る作品。
舞台はコートダジュール沖に浮かぶポルクロール島。「なんらかの理由で人生のレールを脱線した人たちが、みんなここに集まる」吹き溜まりのような保養地。「ポルクロールぼけ」という言葉があるくらいの、時間が止まったようなリゾートである。というとね、舞台柄からして戦前の「紺碧海岸のメグレ」を連想する。そうしてみるとリゾート客たちが集まる宿屋兼バーの「ノアの箱舟」は「リバティ・バー」に相当するし、だとすればパイク刑事も遊び人風の地元刑事に相当するのかしら。いや「紺碧海岸のメグレ」も焦点がはっきりしない作品だったけども、この作品の焦点もはっきりしない。

「メグレは友人だ」とこの「ノアの箱舟」で啖呵を切った元ヤクザが、その晩に殺された....こんな事件なので、研修中のパイク刑事を引き連れてメグレがこの島を訪れる。確かにメグレの「お世話になった」ご縁のある男だが、実際には半グレくらいの小物。一番いいキャラはこの男の愛人で結核を病んでいたジネット。男の逮捕をきっかけにメグレが手配してサナトリウムに入れて、今では元気になって娼家の経営補佐をしている女。ちょっとした再会、同窓会効果みたいなものがある...けどもあまり本筋に絡んでこないや。

ボート生活者とか、確かにシムノンお得意の設定をいろいろ投入した作品なのだけども、それがために逆に散漫になってしまったのかな。こんな失敗のしかたもあるものだ。

No.1057 6点 ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻- P・G・ウッドハウス 2022/10/26 08:40
「才気縦横の巻」に続く、バーティ&ジーヴス物後半。20世紀初頭のイギリスの有閑階級(金利生活者)というものが、いかにノラクラと日常を過ごしていたか....というのが、ユーモラスに語られる名物シリーズ。ホントさあ、ギャンブル・スポーツ・オシャレ・女にしか関心がないんだな(苦笑)。
オトコってヒマがあると、とにかく賭け事したがるわけである。ブックメーカーの本場だもんねえ。この本「トゥイング騒動記」に収められた3作だと、牧師の説教の長さを競馬に見立ててハンデやオッズを設定して...やら、村の小学校での運動会の玉子スプーン競争やらお母さんの袋跳びレースやらに、賭けちゃうわけだ。金がかかっちゃうと裏工作などライヴァルとのウラの掻き合いが...で「ジーヴス、助けて~」になるわけ。

冷静沈着で頭が切れる執事ジーヴス、なんだけども、よくよくその解決策を見てみたらバーティ君のオツムがヘン、というオチを付けているケースが結構、目立つ。おやおや確かにイカレポンチだけどさあ、執事にコケにもされているんだが......まシアワセならば、いいんじゃない?

ジーヴス、悪魔的、といえば悪魔的なあたりが「比類ない」名物キャラクター、ということである。

No.1056 8点 カリオストロ伯爵夫人- モーリス・ルブラン 2022/10/25 19:29
皆さんカリ城が好きすぎるんだね....確かに名作だけど、クラリスといえば「ロリコン」という言葉を流行らせたネタ元だし、当時は「へのへのもへじ」という批判も大きかった記憶があるんだがなぁ。

それはともかく、本作は至って大人向き。「黒蜥蜴」で言うなら、エロスに満ちた乱歩原作側よりも、愛の不条理の三島由紀夫の戯曲のテイストが強い。ラウールとジョセフィーヌとのガチの恋愛劇と読むのがいい。ちなみにジョセフィーヌは「カリオストロ伯爵夫人」ではないからね。「夫人」じゃないのだよ。comtesse だけど、設定上「カリオストロ伯爵」の女性継承者だから、しいて言えば「カリオストロ女伯爵」。しかも「ルパンになる前」のラウールの愛人かつ師匠の立場で、修道院の秘宝を巡って、愛人であっても競争相手であることを両者が熟知しつつ、愛しあいながら騙しあい戦いあう、という評者の絶妙の萌えポイントを突いてくれたのだ!

わたしの美しさは嘘ではないわ、ラウール。戻ってくれるわよね。だってわたしの美貌は、あなたのものなんだもの

いやいや、愛の名セリフというべきでしょうよ。この「地獄の女」ジョセフィーヌが発揮した残忍さに、ラウールは「突然あらわれた肉食獣の顔」を見てしまう....それまでは「勝ち負け」はあっても愛は変わらなかった二人の関係も、ついに決裂。ラウールがジョセフィーヌの愛を断ち切るためには、何としてもこの「勝負」に勝ち、「師匠」を弟子が圧倒的に凌駕しなければならないのだ!

そういう小説。このオリジナリティ溢れる愛のかたち。これがあるから、クラリスなんてどっかに吹っ飛んでしまうよ。

No.1055 7点 レベル3- ジャック・フィニイ 2022/10/22 14:45
さてこっちがフィニイの第一短編集。もちろん「ゲイルズバーグの春を愛す」より前の作品になるわけだけど、ほとんどの短編がこの人お得意のタイムトラベル物とその変形。甘口恋愛小説の「雲のなかにいるもの」「青春一滴」と、高所恐怖との闘いで日常冒険系の「死人のポケットの中には」以外の8作すべてにタイムトラベルが関わるのが固執的と言っていいくらい。

まあだから全体の印象としては「ゲイルズバーグ」と比較すると「多彩さ」には欠けるかな。でも、ギスギスした現代からタイムトラベルでどんどんと過去に人間が逃げ出して現代文明が崩壊する「おかしな隣人」の奇想は長編化したらいいんじゃないか....と思うのだけど、フィニイだとそういう感覚とも思えないか。要するにタイムトラベルというアイデアを介して、実存的な「選択」を省みるというのがフィニイの狙いかつ、らしくて魅かれるあたり。mini さんもご指摘だけど、SFとしての扱いじゃないんだよね。
それでもちょっとパラドックス的なオチがつく「潮時」とか「第二のチャンス」といったあたりに、「選択したこと」「選択できなかったこと」がもつれあって、後悔しつづけたことが不思議にも実現されてしまい、それによる「満足感」みたいなものが漂うのが、一番のフィニイらしさであり、泣かせどころ。センチメンタルにイイところがあるし、そんな甘さが女性ファンのココロを鷲掴み?

まあだけど、とりあえずこんなところでフィニイも打ち止めにしようか。ミステリ系・異色短編はすべて済、ファンタジーに傾いた作品は、また別の機会に。

No.1054 7点 ケニルワースの城- ウォルター・スコット 2022/10/21 11:47
今年はエリザベス二世が亡くなったわけで、それにちなむわけでもないのだが、エリザベス女王(一世)の御代を舞台にしたクラシックはいかが。
ロマン主義の代表選手でデュマやらユーゴーの先輩にあたる作家...文学とエンタメの境界がまだはっきりしない時代。ミステリ的な筋立てではないけども、秘密にしなければならない人間関係の綾と、それを自身の出世に絡んで利用したり陰謀を企む奴がいたり、とミステリ的興趣が漂う作品である。

女王の寵臣レスター伯ダドリーは、秘密のうちに結婚した妻エミリーがいるのだが、女王が寄せる愛情と専制君主に対する恐怖、目の前にぶら下がる王配の地位への野心との間で引き裂かれ、エミリーを謀臣ヴァ―二―の手で軟禁せざるを得なくなった。エミリーに想いを寄せる騎士トレシリアンは、ヴァ―二―の手からエミリーを解放しようとするのだが、エミリーのレスター伯への愛は変わらない...レスター伯に直接訴えたいエミリーは脱出して、女王の御幸をレスターの居城ケニルワースに迎える祝典のさ中に、城に忍び込んだ...

という話。祝典の華麗はしっかり描くが、チャンバラなど活劇要素は少ない。エミリーにしてみれば、自身の愛を貫くと夫の野心の妨げ以上に、二股かけた夫の命も危ない。トレシリアンがいくら助けてくれてもトレシリアンは圏外で、それでもレスター伯一筋なのが厄介。これを利用するのが悪知恵の働く家臣ヴァーニー。自身の野心からも主君レスター伯をエリザベスの夫にせずにいられるものか、と策謀するわけだ。このヴァ―二―の悪辣さが状況を掻きまわし、善意のトレシリアンの優柔不断やら、レスター伯の板挟みを利用して状況が錯綜していく....ここらへんの三竦み的な状況の面白味がミステリ的と言っていい。でも「真犯人」のヴァ―二―、レスター伯への忠誠だけは一貫していて、イアゴー風の極悪人でもないキャラの面白さがある。

まあとはいえ「ロマン主義」らしく華麗な祝典の描写は詩的に念入りで、展開だけを追うのだとまどろっこしい。さらにヴァ―二―の手先になる悪党のラムボンが、フォルスタッフみたいな悪党なりのコメディ・リリーフの役割を果たすなど、シェイクスピアに似た味わいがある。作中でも同時代人としてのシェイクスピアへの言及も多いし、またウォルター・ローリー卿が自分のマントを水たまりに敷いて、女王の足を汚さずに渡らせたエピソードも作中で再現。

いやいや、クラシックながらしっかりエンタメしてる。

No.1053 5点 ベティー- ジョルジュ・シムノン 2022/10/16 19:57
シムノンでも本作はミステリ的興味はほぼない作品。しかも、女性主人公、というのはかなり珍しい。強いていえばシムノンなら「ペペ・ドンジュの真相」、あるいは「テレーズ・デスケールー」に近い話。要するにフランス伝統の人妻心理小説。SEXと「罪」が主題で自分から破滅を求めていく女性が主人公だから、神父とか登場しないけども一応純文学のカトリシズム小説の部類だろうか。

≪穴≫は終着駅だ。奇人、変人たちの終着駅! 精神病院や死体置場にいく前の最後の停留所。

このバー≪穴≫で酔い潰れた女、ベティー。偶然のことながらベティーを放っておけずに、医師未亡人のロールは、ベティーを自分のホテルに連れ帰り介抱する。ベティーは自身が抱えるトラウマと夫に対する不満から、不倫にふけった報いで、家を追い出されたところだった...

というような話。いや実に話はシンプルで、女性のSEXと罪をテーマにした小説なんだけども、結末もやや釈然としない。シャブロルが映画化したこともあって、訳されたようだが、どうやら日本未公開。

う〜ん、こんなのもシムノン、描くのね。

No.1052 5点 海の牙- 水上勉 2022/10/14 21:50
今の若い人たちって「水俣病」を知らない人もいる?どうだろうか。

この本とその評価って、水俣病というものの実態を知らしめて、さらにその原因がチッソの工場廃液にあることを断定してその非を鳴らしたこと、その先駆性に強く影響されているようにも感じるんだ。「社会派ミステリ」が即物的に社会の「お役に立った」代表的な作品にもなる。アンガージュマンとかそういう文脈で評価すべき作品なのだ。

しかし、ミステリとしては....何かつまらないんだよね。人妻と動機の件は、それまでの前振りだったら、どんなドラマを持ってこれるようなものだし。オリジナルなドラマの部分では、成功しているとは言い難い。医師と刑事の狂言回しコンビも全然魅力的でもないしなあ。警察嘱託医であそこまで積極的に捜査しちゃうのは違和感が強いしね。

もちろん、死体発見シーンの凄惨さが直接水俣病の悲惨さを訴えるものだったり、冒頭の初の患者の発生シーン、エピローグなど、陰鬱な美しさがあるシーンがあることも確か。こういう箇所には水上勉らしい良さがある。あと、漁民と工場労働者が対立する水俣という都市の現実もしっかり描いているしね。

まあだけど結局のところ、水俣病の文学だったら「苦海浄土」を読んだ方がずっといい。時の流れを越えきれなかった作品だろう。

No.1051 5点 死はわが踊り手- コーネル・ウールリッチ 2022/10/13 20:55
晩年のウールリッチって総じて評判が悪いんだけども、じゃあ「何が悪いのか?」というと、なかなか難しい問題をはらんでいる。いや実際、本作はラス2の作品だが、1作前は晩年でも評判のいい「聖アンセルム923号室」で、「アンセルム」が7年ぶりの母の死後の新作、これから毎年続いて本作と「運命の宝石」という順番。う~ん、客観的には「前作よかったのだから、新作大期待!」じゃないのかなあ。

いやそれは、晩年のウールリッチが「形式としてのミステリ」に関心をなくしてしまった、というあたりの問題もあるだろう。「ミステリ」を読者が期待したら....そりゃ肩透かし。ウールリッチよりも、受容する読者の側にも問題があろう。バッドエンドが嫌われる、というのなら 1947年の「暗闇へのワルツ」あたりからバッドエンドが続いているしね。「呪われた結婚」とでもいうべき固執的なテーマは、本作ではそう目立たないけども、相変わらずある。

いやでも、本作あたりだと、読んでいて妙に「芝居がかってる」という印象が強いんだ。もちろんウールリッチ一流の美文、というのはそうなんだが、その技巧性がマンネリ化して飽きが来る。昔は「都市の詩情」とでもいうような良い方向に、この凝った美文が評価されるわけだけども、本作あたりだと随分とわざとらしい。いやそう感じさせるあたりに、ウールリッチの魔術が通用しなくなってきている証拠が顕れているわけである。

本作なんてジャンル的なコダワリなく観るのなら、

見物客が死ぬことがある『死の舞踏』を踊る女と、彼女と形式的な結婚をして連れ出し、女を売り出し話題の人にした男。二人は一躍大人気になるが、舞踏が引き起こす不吉な事件から忌まれるようになる....その経緯と愛憎。

と実にキャッチーな話なのだよ。ホントか嘘か分からない「死の舞踏」というネタは実にいいし、ウールリッチお得意の男女関係の縺れをうまく絡めて作劇しているわけで、超自然を気にしないならとくに「悪い」要素がない作品でもある。さらに中盤のヒロインの拒否っぷりがほぼハードボイルドなくらいだから、そうキャラが悪いわけでもない。
それでも本作は詰まらない。困った。

「気の利いたセリフ」を登場人物が嫌々言っているような、何か心にもないような、言ってみればキャラが「生きていない」ようなヘンな気持ちになるんだ。ウールリッチ、もう書きたくなかったのかなあ....

No.1050 7点 雁の寺- 水上勉 2022/10/13 08:46
直木賞受賞作の「雁の寺」は、孤峯庵の和尚を殺して慈念が逐電するまでの中編でなんだけども、続編で「雁の村」「雁の森」「雁の死」と慈念のその後を描いたシリーズが続く。「雁の寺(全)」というタイトルで出ている文春文庫などはそのすべてを収録、「越前竹人形」を併録した新潮文庫は最初の「雁の寺」だけを収録。ちょっとややこしい。
直木賞の選考はほぼ全員一致。清張に刺激されて書いた「霧と影」「海の牙」といったミステリですでに流行作家だったわけだが、この受賞が「今更」視されくらいの堂々の受賞。自身の生い立ちをベースにミステリ手法を取りいれたわけだから、ミステリ手法による文学、というあたりが評価されたことになろう。

ある意味「社会派ミステリ」でもある。「仏教界の腐敗」を衝いたといえば、そう。孤峯庵の慈海和尚は「雁の寺」の由来になった画家南嶽の妾里子を、南嶽の死後に梵妻として寺に入れた....いやもちろん「破戒」であるし、この慈海はこの寺で養う小僧の慈念の師であるのだけども、「軍艦頭」と蔑視されるような異様な肉体の慈念に辛く当たる....もちろん禅寺の修行は厳しいのは当たり前だが、その伝統に隠れるかのように、和尚は贅沢な生活をし、小僧は作務と修行と仏事の手伝いに追われて、さらには学校・時代柄で軍事教練....

お寺の質素な生活が健康にイイなんてトンデモない、寺の裏には若くして亡くなった僧侶の墓が大量に並んでいる..なんてことを水上勉は別なところで言っていたよ。自身の小僧生活のルサンチマンが作品に昇華されているわけで、このシリーズ自体が水上のビルドゥングス・ロマンであり、また仏教界批判を込めた「社会派ミステリ」でもある。

うん、まあだけどまあ続編はやや落ちる。慈念は故郷の村に舞い戻り、自分の母親を探す話になるのだけども、最終的には雲水になって、事故死する(ネタバレ回避)。ミステリ度が落ちたのが、やはり続編が今一つの原因と言ってもいいのかもしれないよ。

で川島雄三の映画は大名作。若尾文子映画で、絶頂にキレイな頃。日本家屋の構造というものを徹底的に映画的に使いこなしてみせた川島の手腕が凄まじい。

(けどさ、ジョージ秋山の「アシュラ」って本作を意識したのかしら?)

No.1049 9点 暗闇へのワルツ- ウィリアム・アイリッシュ 2022/10/08 15:16
ウールリッチでも最長、だよねえ。いや~ほぼ一気読み。リーダビリティが半端ない。としてみると、美文調はやや抑え気味? というか、地の分の詠嘆は抑えて、セリフや行動で泣かせる作品だと思う。スタイリッシュなウールリッチ調というよりも、一般的なノワールに近い印象。

でもね、ウールリッチの固執的なテーマが「結婚」で、その「結婚」がもたらす男女の愛憎のドロドロに正面から立ち向かい、「変化」をベースに最後は純愛に転じちゃうという、プロットの綾が泣かせる。ウールリッチも書いていて、プロットに呑まれるような気持を持っていたんじゃないかな。

もちろんウールリッチの「結婚」ってどの作品でも「呪われた」と付けたくなるような不吉さがあって、それがウールリッチらしいロマンチックとサスペンスの原動力なんだけども、そういう「結婚」が持つ原始的で荒々しい男女、いや雄と雌の宿命的な結びつきを描き切った傑作だと思う。このテーマを生かし切るための納得の大長編。
ウールリッチの最高傑作が「幻の女」って大嘘。本作とか「死者との結婚」の方がずっといい。

No.1048 7点 メグレの拳銃- ジョルジュ・シムノン 2022/10/06 09:26
中期メグレらしい「良さ」がある作品。いやこれ「奇妙な女中の謎」とちょっと似ている気もして、評者とかイカれやすいタイプの作品のようだ。メグレの父性っぽい魅力がキラキラしている作品。

しかも、問題の青年の父親のキャラというのが、よく描けていて、だからこそメグレが父性を発揮せざるを得ない、というのが何か納得する。空想的にいろいろな商売を思いついては失敗し、金銭的にルーズで悪い意味で「夢を追ってる」男、でしかも度胸のない臆病者だったら、そりゃ「負け組」もいいところ。そんなダメオヤジでも、3人の子供を自分の手で育てるんだが、上の二人の子供はダメな父親に幻滅して....だったらさ、末っ子の問題の青年というのもなかなか気の毒じゃないか。メグレは迷惑をかけられたわけだが、「人情警視」とか呼ばれるのは遠慮しつつも、それでも青年のことを気にし続ける。ロンドンでも有数の高級ホテル、サヴォイのグリルで二人が食事するシーンなんて、シムノンならではの味わいを評者は満喫。

さいごまですばらしい一日だった。まだ夕陽は沈みきらないで、人々の顔をこの世のものとも思われないような色に染めていた。

ロンドンといえばいつでも天気が悪いのが相場。でもたまには「日本晴れ」とでも言いたい「いい日」があるようだ。そんな作品。

No.1047 9点 りんたとさじ- オガツカヅオ 2022/10/02 11:14
評者「ネムキ」ってもう20年近く愛読している...だから本作も連載で読んでいて、単行本にまとまったときに即購入。本が絶版品切れになったあたりで火がついて、今では「知る人ぞ知る」ホラーの名作に出世。
最近本作が、ミステリマガジン2017年7月号の「このミステリ・コミックが大好き」で紹介さていることに気がついて、じゃあ本サイトでも、いいんじゃない?と思って取り上げる。同年11月号にはこの作者の「ふくろねこ」が掲載されたりしたから、やはり中の人にも好きな人がいるんだな~

クールなメガネ男子「リン太」に恋した関西弁の少女佐藤順子(略して「サジ」)。しかしリン太は「ゲン担ぎオタク」と評される奇人で、「カゴメ」と呼ばれる謎の団体でアルバイトをしている。サジはリン太と付き合うようになり、「カゴメ」が扱う奇怪な事件に関わるようになり、リン太の影響で「見える」ようになる....

というのが枠組みで単行本で8作が収録。リン太にとっての「カゴメ」の先輩の三国さんは、子供の頃初恋の幼馴染が交通事故死したのを知らずに一緒に添い寝したことが縁で、今その初恋の幼馴染と同棲している。リン太とサジにカレーを振る舞う三国さんは、恋人が向こうの部屋の炬燵に隠れていて、二人を驚かそうとしているんだ...と耳打ちする(「炬燵の人」)

サジ、まあ落ちつけや。あとで説明したるけど、害はないんや。だけど...後ろは見るな。そっちはちょっと、縁起が悪い。

怪異は日常のふとした瞬間にまぎれて起きてしまう。気がつかなければそれまで。それに気がついてしまえば....「誰にでも突然そうなる可能性があり、そのことは誰にも選べないし、避けられないのです」
それは善悪でもないし、因果応報でもない。ただ「落ち込むだけ」というのが、この作品で一番「恐ろしい」あたりなんだと感じる。本作では派手な警察沙汰は「傘の人」くらいで、あとは怪異なんだか怪異じゃないのかわからないような「日常の怪異」が主体。これみよがしに怪奇現象が起きる「ホラー」ではない、微妙な日常の断層みたいな怪異を描き、しかも意外なオチを付けて見せるあたりが作者の手腕。主人公のサジに●●●を食べさせてしまう「また会う人」なんて本当に容赦ない(苦笑)

いやいや、電子書籍になってから人気が出ていろいろ知られるようになったのが「らしい」といえばらしい、というか、本作自身が「都市伝説」みたいな作品。都市伝説ついでに言えば、単行本の後にまだ連載が続いていて、4編ほど未収録がある。赤ちゃんをあやすために、投身自殺した男の霊が訪れる話(「鳥の人」)とか、未収録にも凄い話がまだ残っているのが本当にもったいない。リン太とサジが別途登場する次作の「ことなかれ」も、「リン太、投身自殺?」という絶妙の引きで単行本1巻目が終わっていたりする。2巻目のボリュームが足りなそうなので、「りんたとさじ」の未収録がカヴァーされるかな、と期待していたんだけども、どうも出そうな雰囲気がない。

いやいや、本当に、もったいない。ネムキは面白い作品が多いのに、朝日新聞出版は商売が下手過ぎる。

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クリスティ再読さん
ひとこと
大人になってからは、母に「あんたの買ってくる本は難しくて..」となかなか一緒に楽しめる本がなかったのですが、クリスティだけは例外でした。その母も先年亡くなりました。

母の記憶のために...

...
好きな作家
クリスティ、チャンドラー、J=P.マンシェット、ライオネル・デヴィッドスン、小栗虫...
採点傾向
平均点: 6.41点   採点数: 1326件
採点の多い作家(TOP10)
ジョルジュ・シムノン(99)
アガサ・クリスティー(97)
エラリイ・クイーン(45)
ジョン・ディクスン・カー(31)
ロス・マクドナルド(26)
ボアロー&ナルスジャック(24)
アンドリュウ・ガーヴ(18)
ウィリアム・P・マッギヴァーン(17)
エリック・アンブラー(17)
アーサー・コナン・ドイル(16)