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[ SF/ファンタジー ] 狼男だよ アダルトウルフガイ |
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平井和正 | 出版月: 1972年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1972年01月 |
祥伝社 1974年08月 |
角川書店 1983年08月 |
角川春樹事務所 1999年11月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2024/01/31 14:55 |
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さてウルフガイやろうか。「狼の紋章」は中学生の犬神明でジュブナイル、ロマンの色合いが強いエンタメだけど、本作のアダルト犬神明の方がちょっとだけ登場が早い。1969年だということを考えると、結構凄いなあ。皮肉屋で饒舌な一匹狼のルポライター、「陽気な狼男」で、ハードボイルドを気取るけど、コミカルなあたりに面白味が出る。
満月で変身こそしないが、どうやっても死なないくらいのタフさが真面目。この最初の中編集は「夜と月と狼」「狼は死なず」「狼狩り」の三本を収録。吸血鬼を思わせる殺人秘密結社の話の「夜と月と狼」、生物兵器を巡りCIAと中共諜報機関のライバルの林石隆と事を構える「狼は死なず」、芸能界の暗部と狼女の消息を追う「狼狩り」のどれもこれも、エロとバイオレンスの大サービス。 ...なんだけどもね、エロくないんだなあ。満月時の狼男は体力限界なんてない絶倫を誇るけど、心理的には不感症かというくらいに溺れない。バイオレンスも殺しても死なないくらいのタフさだし、意外にピンチにならない。それよりも「尻尾が股の間にひっこむ」とかしおらしい辺りに、「人(狼か)がいい」感じがある。 あとこの小説、風俗描写に固有名詞を出しまくるのが、忖度なくって妙に面白い。平然とチャンドラーを口真似してみたり、丸山明宏とニアミスするとか、佐賀潜や戸川昌子の名前が出てり、新宿ACBとかゴーゴー喫茶を徘徊し、関西から上京するSF作家大杉酔狂(判る?)の大騒ぎに閉口する。 人懐っこく楽しいには違いないけど、躁っぽい軽薄な騒ぎっぷりは好き嫌いが分かれるだろうなあ。伝奇バイオレンスの元祖の一つだけど、伝奇の「暗さ」みたいなものがなく、「オリジナルのないパロディ」といった印象が、この本の特色というものか。 |