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斎藤警部さん
平均点: 6.70点 書評数: 1303件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.50 6点 死が二人を別つまで- 鮎川哲也 2023/02/08 23:58
昭和四十年頃の十短篇。角川文庫。

汚点
小味な偽装アリバイ崩し。まさかの◯◯ネタで雪崩れ込む真相暴露は憎めない。表題「汚点」の物理的意味合いが興味を誘う。舞台が某地方都市なのはそういったわけか。。

蹉跌
某ホームズ譚を思わす奇想背景から脅迫者の殺害へ。随分とギャフンな瑕疵(これは仕方ない..)からアリバイが崩れるが、スズメ焼きの香りが手伝ってか妙にコージーなスリルがある。

霧笛
東京へ戻る客船での連続殺人/傷害事件。容疑者の一人が書いた素人推理小説の筋書通りに事件が起きる。凝った割には何処か地味な趣向と、何気に意外な真犯人。豊富な容疑者構成を含むその枠組み故に割と分厚いミステリを期待させられるが。。


表題のカラスに纏わる雑談に挟まれた犯罪小噺。事件発生までの筋運びに奇想あり。

Nホテル・六◯六号室
ミステリ作家、鯉川哲也先生の作中作という作りを隠れ蓑に、弱過ぎるアリバイトリックをゴリ押し発表したよな小品。ドサクサついでの?後出し無理矢理設定は笑った。

伝説の漁村・雲見奇談
穏やかな旅情の果てに、虚をつく巨大物理トリックへの予感。。果たしてその結末は。。 

プラスチックの塔
手掛かりの意外な展開と、犯人の機転。殺人の動機となった別箇の犯罪も上手に絡ませ、良い意味で手堅い一品。

死が二人を別つまで
表題作は流石の貫禄。他の作には見出せぬ、硬質なストーリーと逆説孕んだ分厚い反転が魅力です。老人ホームでの結婚式に始まる、或る強欲殺人の疑惑。登場人物群の有機的配置も頼もしい。タイトルは泣けますね。

晴れのち雨天
陳腐なネタは使い回し?もいいとこ。そこへわざわざ因縁ドラマを被せて来た。軽い隠喩の方を表に出したタイトルに、通例とは異なるダブルミーニングの妙味が無くはない。

赤い靴下
殺人動機に捻りあり。後出しと捩じ込みの証拠出しは無理があるが、興味は引く。◯◯◯ガスって。。本作、ミステリの大オチより前段階で中オチの様な事実が明かされるけど、ドラマとしては中オチの方がずんと重い。タイトルのへの想いが暖かくクローズアップされるエンディングは、果たして救いとなるのか。。

No.49 5点 葬送行進曲- 鮎川哲也 2022/11/05 14:15
毎篇「読者への挑戦」が挟まれる事もあり、一見小味な推理クイズ風だが、小説としての中身もそこそこ詰まっており、そこそこ意外な結末もあり、無味乾燥に堕ちてはいない。 「失策倒叙」モノが目立つが、フーダニットやホワットダニットも混じる。 しかしいちばん面白いのは、「読者への挑戦」の(いい感じに肩の力抜けた)トボけたヴァリエーション加減かも知れません。

葬送行進曲/尾行/ポルノ作家殺人事件/詩人の死/赤は死の色/ドン・ホァンの死/死人を起す/新赤髪(あかげ)連盟  (集英社文庫)

No.48 8点 しぶとい殺人者 鬼貫警部と四つの殺人事件- 鮎川哲也 2021/07/02 11:05
青樹社がノベルズ版(BIG BOOKS)で’86年末に刊行した中篇集、と書いてるがむしろ長めの初期短篇集。

いかにも昭和末期、80年代ど真ん中らしいおどけた表紙絵(戯画化された鬼貫が、物語に登場する或る証拠物件(?)を突き付けている)が目を引きます。(やたら子ども受け良し)
表紙絵はともかく、読んでみるとあらためて鮎川哲也の相当に独特な、詩情にまで至る淡い、淡過ぎないユーモアとペーソスが本格推理とがっちり手を握った安定感あるスリルを堪能する事が出来ましょう。


悪魔が笑う
舞台は哈爾賓(ハルビン)。アリバイトリックは小味ながら一捻り。人情とその逆転に哀れなる味わい。B級っぽさがあるが、悪くない。

誰の屍体か
この奥深さ、趣深さ、流石です。締めも良いね、紛うこと無きクラシック。ずばり本題そのままの題名にも重み有り。殺人凶器らしき三つの道具が別々の(微妙につながりある)人物に同時に送られて来る、という稚気溢れる発端にさえ、そんな緻密な計算があったとは。。稀代の偏屈者って、そういう事か。。終盤、意外性の高いグロテスクなシーンが爽やかに語られるのは、驚くとともに笑った。被害者(誰?)の恋人と思しき第二の探偵役も存在が光る。振り返れば、細やかな手掛かりがあちこちなんだよな。しかしこの前代未聞(?)の心理的アリバイトリック、大胆な事したもんだねえ。。 

一時一○分
言い訳無用の簡潔なタイトルに見合う、速球勝負にして奥行きのある物理的(補完部分は心理的)アリバイ&真犯人偽装トリックの一篇。締めの文章が胸を突く。。。

碑文谷事件
どこかすっとぼけた前半から、後半の急な発熱が魅力。強烈な不可能興味!実はちょっとした叙述の戯れまで。。アリバイ偽装はかなりの複雑構造。中には薄氷を踏む所もあって。。(それにしては、あの大胆な席外し。。) そっか、逆●●●●●●まで登場か。。 全体通してみると”長旅の時代だったからこそ成立する盲点”のトリックというのが、素晴らしく味わい深いですね。。或るミスディレクションが単なる飾りじゃなくてほぼ核心、という裏を突いた行き方も巧み。●●●●の要素にシレッと覚醒剤が登場したのは笑った(流石に昔のお話)。 最後、ようやく重い腰を上げて犯罪の動機を語り出す鬼貫。だがあの一言だけは言うのを憚った鬼貫。余韻が大き過ぎです。。


著者による「ハルビン回想----あとがきにかえて」は、ほぼ地名や街の構成を淡々と説明したものだが、どうにも、どこからかセンチメントが溢れ出ている。

山前譲氏の解説「凡人探偵鬼貫警部」は、五つのサブタイトル 1 鬼貫の登場 2 鬼貫の実像 3 鬼貫の推理 4 鬼貫の虚像 5 鬼貫の哀愁 で区切って順序立て学術的に解説しているようだが、やはりどういうわけだか情緒に訴えるところ強く、鬼貫警部(見た目以外ほぼイコール鮎川さん)の人物像がセンチメンタルに迫って来る切なさが嬉しい。

No.47 8点 戌神はなにを見たか- 鮎川哲也 2020/03/24 12:56
強めのユーモア、ほど良い旅情、不穏なもの言い、乱歩の縁。 ミステリ分泌の薄いもたせの弛緩帯は無く、冒頭から終結までみっちり詰まった良質の子持ちニシン。ストーリー、趣向、各種ネタに探偵小説蘊蓄の詰め込み感、前半に打ち込まれた古い芸能や男色の要素が後半とんと忘れられるバランス悪さなどは可惜斬れ味を鈍らせているが、もっさりしながらも豪華な主菜副菜勢揃いっ振りはやり過ぎ幕の内駅弁みたいで嬉しい。詰めの甘さは露骨でも大いに許せてしまう作家力。メタ方面に滑り気味の、質実ながらユーモラスな筆致も流石は信頼のブランド。いっけん安易げな際どい所で奇抜さ孕む、念の入ったアリバイトリックに、凝った構えの容疑者絞り。 ところで「一万冊サイン」の件、伏線としては扱われ方が微妙だな。。

No.46 6点 崩れた偽装- 鮎川哲也 2019/02/09 02:19
呼びとめる女/囁く唇/あて逃げ/逆さの眼/扉を叩く/赤い靴下/パットはシャム猫の名/哀れな三塁手  (光文社文庫)

A級半~B級の倒叙短篇集。コンプリートを目指す熱狂的ファン、或いは列車の旅に何か軽い気持ちで読みたい人向け。序盤~中盤と面白いんだが終結部で尻すぼみ、というパターンがやはりこの手の鮎哲には多い。 しかし 「あて逃げ」の大胆過ぎるドタバタ心理劇は何度思い出しても笑ってしまうなア。 あと、プロ野球チーム"北海サーモンズ"…

No.45 6点 完璧な犯罪- 鮎川哲也 2019/02/07 22:36
小さな孔/或る誤算/錯誤/憎い風/わらべは見たり/自負のアリバイ/ライバル/夜の演出
(光文社文庫)

殺人者がへまをして、完璧とはほど遠い犯罪が暴露されまくる物語集。どいつもこいつも小道具使いの小味な倒叙短篇。音楽ネタがチョィチョイ出て来るのは良いぞ。

No.44 4点 白の恐怖- 鮎川哲也 2018/12/30 11:45
鮎川さん、テキトーにやっつけたな(笑)! こりゃ◯●社から「ウチみたいな弱小は手を抜かれる、プンプン!」と言われても仕方なし(作家本人は否定してるらしいですが?)。 短い話の割に、真犯人が割り出されるまでの”持たせ”の微妙な時間が露骨に長くて。。。このヘンなバランスでバレないわけには行かんでしょ、アレが。。 しかしこれ本気で仕立て直せば、、 容疑者(甥姪+α+β)もう少し増やしたりして、もっともっと物語を分厚く、叙述トリックもどき(?)をこんなショボイんじゃなくてもっともっともっと巧妙に埋め込んで、出来たらもう悪魔的な領域まで。。。。 未完の「白樺荘事件」(未読です)の存在が見果てぬ夢に誘っちゃって仕方が無いってなもんですわ。 だけどまあ、作品の出来は度外視で、鮎川ファンとして妙に惹かれる所はあります(測量ボ-イさんご覧になった”眼鏡をかけていない写真”も見てみたい!)。

さて、本作に於ける星影探偵はまるでチャーチルが好んだと言う究極のドライ・マティーニに於けるベルモットのような存在ですな! こりゃァ独特過ぎて椅子から転げ落ちるわ!!

光文社文庫の復刻新刊で読みました。 併録短篇「影法師」は氏の最初期ペンネーム群に引っ掛けた異国ロマンス追想譚、の最後にミステリ要素がポテッと乗っかる小品で鮎さんらしい満州、ロシア語、声楽の趣味推し。 おまけの昭和三十年代新聞・雑誌掲載エッセイがまたよろしおす。 メモリアル写真集(全て眼鏡してる)に、山前譲氏の穏やかな解説もありがたい。

No.43 6点 西南西に進路をとれ- 鮎川哲也 2018/05/30 00:14
昭和40年代後半から50年代初頭の準落穂拾い短篇集。
最初の倒叙3篇、つかみは堅実、中盤は実に面白い展開なのだがオチ(どうしてバレたんでしょうか?)でズッこけるというこの頃の鮎川倒叙悪癖典型のような作ばかり。でも最後に行くまではどれも妙に面白いんです。

ワインと版画/MF計画/濡れた花びら/猪喰った報い/地階ボイラー室/水難の相あり/西南西に進路をとれ (集英社文庫)

後半順叙篇の方が、物語の面白さはまた別として、ミステリとしての締まり具合はぐっと上。とは言えやはり何処か気を張り通せなかったよな緩みのちらつく作品が目立つ。そんな中でも相対的に際立って見えるのが「水難の相あり」。昭和のスキー場をメイン舞台とした謎多き魅力的な犯罪物語だが、それにしてもラスト近くまで不可解なタイトル(スキー場で水難とな?)の意味が明かされるシーンにはアリバイ偽装暴露の創意が光り、感動します。。 惜しむらくは最後の表題作、「本当はA地点までドライブしたのをB地点までと錯覚させる」のが肝なのですが、こりゃひょっとして鮎川三十年代黄金短篇群に匹敵する大きな心理的アリバイトリックに蹂躙されるブツではなかりしかと、ごくうすぅーく期待もしてみましたが、、まさかそんなチャチい小物理トリックがネタとはな!!(やってる事自体は結構壮大なんですけどね) でもトリックが明かされる工程にゃ妙にスリルがあった。 そうさ、短篇集にリアルタイムで収められなかったブツを後年集めた本だそうだが、どの作も決して詰まらなくは無いのさ。

No.42 4点 透明な同伴者- 鮎川哲也 2017/11/08 00:53
透明な同伴者 /写楽が見ていた /笑う鴉 /首 /パットはシャム猫の名 /あて逃げ
(集英社文庫)

軽い軽い、なかなかに弱っちィ倒叙ミステリ短篇集。四十年代後半モノ中心。自分は鮎川さんの文章世界が好きだから読めるけど、人にはとても薦められない。最後の「あて逃げ」が物語としてちょっと面白いくらい、でもミステリ興味は薄い薄い。「写楽」の指紋や「パット」の遺書エピソードあたり、もう二捻りの余地は充分にあるでしょう、って思うんだけど。なんでそこでチャンチャンで終らせちゃうの、ズッコケるよ~。「あて逃げ」だってこんだけ面白いシチュエーションなんだから更に磨きを掛けりゃ相当の傑作に化けられたろうに。。んで言及しなかった残りの三作はどう捻っても叩いてもどうしようも無さそうなポンコツ共。 ま、こんな鮎川さんも嫌いじゃないさ。

No.41 6点 密室殺人- 鮎川哲也 2017/07/09 12:40
赤い密室/白い密室/青い密室/矛盾する足跡/海辺の悲劇
(集英社文庫)

密室トリコロール揃い踏み+小品二つ。ま「青密」も風情は小品。
最後の「海辺の悲劇」、 軽いお話なんだけど、妙に後引く鮎川の抒情があってさ。。

No.40 4点 モーツァルトの子守歌- 鮎川哲也 2017/04/23 12:12
鮎川さん最後のオリジナル単行本作品。鮎川作品でも三番館シリーズだけはやはり私の好みを上滑り、まして世評も低かろう最終作は。。氏への哀悼を誘う特別な作である事は間違いありません。最後の力を傾けながらこの薄味こそが泣けます。今思えば「モーツァルトの子守歌」で作家人生を〆るなんて素晴らし過ぎ。どうぞ安らかに。

No.39 4点 クイーンの色紙- 鮎川哲也 2017/02/02 01:13
鮎哲大好きな私がどうにものめり込めない三番館シリーズ。前半諸作はまだしも見所があったが、後半いいとこ第五弾の本作ともなると露骨な創造的疲弊がそこかしこに垣間見え。特に表題作の虚脱座り込み真相のやり切れなさは何処の裏山に捨てて来いと仰るのか。鮎川さん、もういいですからゆっくりお休みください、そして「アレ」を完成させる英気を養っていてください、とレイトエイティーズ(昭和末期!)に遡って後ろ向きのエールを送りたくなる、(小説家としては)晩年作。そっかこの頃って故PRINCEの全盛期かァ~ 鮎川さんは聴いてなかっただろうなァ。

だけどまあ、最後の作品群だと思えば(この後十数年ご存命とは言え)何とも言えない寂しさの様な感慨が走ってしまいます。

No.38 8点 偽りの墳墓- 鮎川哲也 2016/12/30 23:09
長篇諸作の中でも深みと渋みが際立つ、黒光りの力作。
真相暴露の扉が重くてなかなか開かないんだ、これが。

出だしから旅情たっぷり、その澄んだ空気に決して寄りかからない厳然たるサスペンスと謎の迫撃ぶりが頼もしい。本格流儀で絶妙に錯綜したストーリー。そして社会意識鋭い『ある偏見』への異議申し立て。 (←この社会派事項が今となっては時代がかった話に聞こえるのは素晴らしい進歩の証し。)

アリバイ粉砕がね、最後犯人の自白で一気にもたらされるという構図はね、折角鬼貫警部がいるのにちょっとアッサリし過ぎの感有りですよね。しかもそのアリバイ偽装の核心にちょっとイージーなナニが。。だもんで力んでも9点までは押し上げられませんが、中盤の剛健さを味わうだけでも幅広く本格ミステリファンに薦めたい、魅力の一冊です。

No.37 5点 裸で転がる- 鮎川哲也 2016/12/05 23:03
さて昔日の角川文庫で「名作選」と銘打たれていた鮎川短篇集は元来第一巻から堂々第十三巻までの全短篇網羅を目論んでいた。ところが折からのセックスピストルズ解散(1978)が影でも落としたか、文字通りの名作群が集まる筈だったであろう第一巻から第六巻は計画頓挫、どちらかと言うと拾遺集であろう第七巻以降のみ無事刊行された。後世から見ると、レア作品網羅という意味では案外結果オーライだったのかもなァ。

死に急ぐもの/笹島局九九〇九番/女優の鼻/裸で転がる/わるい風/南の旅、北の旅/虚ろな情事/暗い穽(あな).
(角川文庫)

速い展開を見事に凝縮「女優の鼻」。百ベージの中篇は読み応えの表題作「裸で転がる」。締まった推理クイズに人情からんで「わるい風」。犯人の意外性が緩いだけに突然のエンディングが響き渡る「南の旅、北の旅」。世知辛い話が何故だかじんわり味わい残す「虚ろな情事」。推理クイズをスリリングに仕上げた「暗い穽」。他二作も、特筆はしないがまァそこそこ悪かない。

ウナ電、トテシャン、黒眼鏡、スケコマシの容疑で逮捕。。イカした昭和死語の数々も彩りを添える。

それにしてもこの本の表紙「裸で転がる鮎川哲也」と目に入るもんでその絵面を想像すると何だか可笑しッくって。

No.36 7点 消えた奇術師- 鮎川哲也 2016/11/23 22:02
密室の星影龍三篇。

「赤」「白」と並べられると「青い密室」は少し落ちよう。創元推理文庫の超弩級アンソロジー「北村薫セレクションx2」から漏れたのは頷ける。とは言え詰まらない代物では無い。つっても全体通して見ると「赤」「白」が突出してるかな。。いやいや「黄色」もなかなかどうして。

赤い密室/白い密室/青い密室/黄色い悪魔/消えた奇術師/妖塔記
(光文社文庫)

No.35 8点 悪魔はここに- 鮎川哲也 2016/10/20 23:33
重厚なる傑作撰、星影龍三篇。特別ゲストに鮎川哲也氏。まぁ損はせんよ。

道化師の檻/薔薇荘殺人事件/悪魔はここに/砂とくらげと
(光文社文庫)

「薔薇荘殺人事件」は花森安治の解答篇付き! 

No.34 6点 灰色の動機- 鮎川哲也 2016/09/22 18:03
人買い伊平治/死に急ぐもの/蝶を盗んだ女/結婚/灰色の動機/ポロさん
(光文社文庫)

割と気軽い作品が並ぶ「其の他」系短篇集。鮎川ファンなら読んでみたいところ。「結婚」はレアなSFです。

推理小説ではないけど、氏の処女作でしたっけ掌編「ポロさん」。ちょっと泣けるサドゥン・エンドにはうっすらとミステリの薫りも漂います。言ってみりゃ日常のホヮットダニット。

No.33 9点 硝子の塔- 鮎川哲也 2016/08/19 10:10
濃度高↑↑の名作撰ですね~~ 切ったらトマトジュースのドロッとしたやつだか血だかがドゥリュン!と飛び出そう。 『初めての鮎哲』には持って来いの一冊じゃないでしょうか!
※創元さんの北村薫セレクション#2と完全に被ってます(並び順までほぼ同じ)!
尚、「硝子の塔」という標題の作品は収録されておりません。がっかりしないでください。

赤い密室/碑文谷事件/達也が嗤う/誰の屍体か/金魚の寝言/他殺にしてくれ/暗い河
(光文社文庫)



【「達也が嗤う」に関してネタバレ考えオチ】

川崎フロンターレサポの私としては、「達也」はちょっと縁起でもない一品ですね、今年は特に!

No.32 9点 時間の檻- 鮎川哲也 2016/08/19 09:52
これぞ洗練! キリキリと時間が捩れる音、サラサラと時刻の剥がれ落ちる音が耳に届きそうな。。アリバイ偽装とその突破の大傑作撰!

五つの時計/白い密室/早春に死す/愛に朽ちなん/道化師の檻/悪魔はここに/不完全犯罪
(光文社文庫)

え? 「白い密室」ってのが入っているじゃないか、ですって?  はハァん?

No.31 7点 死者を笞打て- 鮎川哲也 2016/06/24 18:48
冒頭喰い道楽のシーンがやけに印象に残る、、、ちょっとした怪作。
「鮎川哲也」氏が登場し、あからさまに特別枠の異色作であると匂わせます。当時の人気作家連(名前はどれも軽くもじってある)が社交仲間役で大勢出演、当時既に幻の域だった(それこそ後年鮎川氏がその発掘に心血を注いで自己の創作を疎かにした)消えた作家達の名前も多数登場、これは魅力です。前述の「鮎川哲也」氏の著作『死者を笞打て』にまさかの盗作疑惑が掛けられます。終戦間もない幻の時代の或る女流作家がオリジナルの作者だと言うのですが。。??

んで・・・・・・・普通だったら見え透く筈の犯人が、 この異様な雰囲気に呑まれてか最後まで全く分かりませんでした。人の心というのは不思議なものです。
代表長篇短篇群をいくつも読んだ後に手を出せば、なかなかに愉しいでしょう。


【ネタバレ】
「無名の作家」という存在を実に巧みにミスディレクション(ほとんど叙述トリック)に活かしている作品ですよね。

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斎藤警部さん
ひとこと
昔の創元推理文庫「本格」のマークだった「?おじさん」の横顔ですけど、あれどっちかつうと「本格」より「ハードボイルド」の探偵のイメージでないですか?
好きな作家
鮎川 清張 島荘 東野 クリスチアナ 京太郎 風太郎 連城
採点傾向
平均点: 6.70点   採点数: 1303件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(57)
松本清張(53)
鮎川哲也(50)
佐野洋(39)
島田荘司(36)
西村京太郎(34)
アガサ・クリスティー(34)
島田一男(27)
エラリイ・クイーン(26)
F・W・クロフツ(24)