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ミステリ初心者さん
平均点: 6.20点 書評数: 377件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.257 7点 弁護側の証人- 小泉喜美子 2021/03/13 19:27
ネタバレをしています。

 アガサ・クリスティーの作品のオマージュ作品のようですが、知らなくても楽しめます。
 私とこの本の文章の相性が悪く(笑)、序盤はなかなかページが進みませんでした。ころころ変わる時系列に独特の比喩で、やや読みづらさを感じました。時系列については、どんでん返しには必要な物だと思うので、仕方のないことだと思います。
 欲を言えば、もっと事件について、読者がいろいろと考察できる要素があると好みだったのですが、そういう類の小説ではありませんしね。

 推理小説的要素といえば、やはり叙述トリックをもちいたどんでん返しです。実は私、叙述トリック的要素がはいってくると十分に察しておきながら、しっかりと騙されてしまいました(笑)。法廷のシーンの最後、ネタバラシの文を読んだ際、「なぜこれにきづかなかったのか」「タイトルからしてヒントだったじゃないか」と、非常に悔しかったです。私は頭パープリンです(笑)。気づけただろう、気づかないといけないだろう、と思わせてくれる作品は、オマージュ元となるアガサ・クリスティーの十八番であり、この作品はそれに少しも引けを取ていません。プロットがうまく、とくにどうという大仕掛けや卑怯な文章があるわけでなく、小説の組み立てで自然と騙されてしまう感じです。
 いま気づいたのですが、63年出版なのですね…。レベルの高さを再認識しました。

No.256 5点 チョコレートゲーム- 岡嶋二人 2021/03/07 19:03
ネタバレをしています。

 本格度はそれほど高くないですが、文章がうまいのか、テンポが良いのか、一気に読了しました。
 とはいえ、内容はちょっと暗いです。主人公は息子が事件に巻き込まれた父親。それまで息子を顧みることがなく、その変化に気づけないことで息子が死んでしまいます。そのことについて苦悩するシーンがちょっと読みづらかったです。

 推理小説的要素は、中学生連続殺人事件の裏で一体何が行われていたのか?と、その犯人ですが、一番大きいどんでん返しはチョコレートゲームの黒幕です。
 チョコレートゲームの詳細がわからない序盤はいじめられっ子のような印象だったのが、後半にはライ○ーゲームのヨ〇ヤさながらに見えました(笑)。
 犯人と共犯者によるアリバイトリックはいまいちでした…。

No.255 6点 聖女の毒杯- 井上真偽 2021/02/24 00:36
ネタバレをしています。

 バカミストリックと、ロジカルな否定、多重解決もののような楽しみ方ができるシリーズです。今回は割とスタンダードな物語の入りで、前作よりも抵抗なく話に入っていけました。
 今回は毒殺ものであり、男(と1匹の雌)だけが死ぬという、なんとも不可解な状況で興味を惹かれます。図やアリバイ時間など、八ツ星聯君のおかげで丁寧に知ることができるし、容疑者たちの仮説もそれによって難なく理解できて大変読みやすいです。
 私はかねがね、いかに毒をいれられたか?が問題の推理小説が読みたかったのですが、かなりの量の毒殺方法が書かれており、その点で大変満足しました(笑)。そして、どの仮説も私の考えつかなかったものであり、そしてどの仮説にもちゃんと矛盾点を残しているあたりが素晴らしいです。アリバイトリック系と、ロジカルなフーダニットを合わせたような作風です。一番面白かったのは、フーリンの銚子に仕掛けのあるものでしたが、やや成功率に難がありそうでしたね。

 以下、難癖ポイント。
・ケチなのに高級な和服を着せるわけがない…という反証は結構弱いと思います。
・私には難易度が高すぎました(涙)。負け惜しみではないのですが、各仮説の反証と結末をすべて推理するのは不可能に思えました。

 私は論理もへったくれもなく、なんとなく小説の結末を予想し、花嫁の父が犯人なのではないかと思いました(笑)。どうやって花嫁をヒ素を入手したか?が突破できずに、すぐ諦めましたが(笑)。
 シリーズキャラクターが活躍し、さらにパワーアップした感じがあります。もっとシリーズが続いてほしいですね。
 

No.254 5点 黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集Ⅰゴシック編ー- エドガー・アラン・ポー 2021/02/15 19:28
ネタバレをしています。

 エドガー・アラン・ポーの名前は聞いたことがあったのですが、今まで読んだことはありませんでした。
 全体的に怪奇?やホラーよりの話が多く、世にも奇妙な物語的です。古典なのでしかたがないかもしれませんが、面白くなってきたところで急に終わってしまうように感じる作品が多く、個人的にもうひとひねりほしかったです。
 あと、文章が難しくまどろっこしいです(涙)。私には難解な話が多く、どれだけ理解できたのか不安です。

・黒猫
 黒猫を殺したときはあんなに動揺していたのに、どさくさにまぎれて(?)妻を殺したときは割とあっさり(笑)。そこがもう黒猫になにかしらされているのかもしれませんが。
・赤き死の仮面
 なかなか面白かったのですが、王がすぐ死んでしまって急に終わったのが残念。病気が蔓延して追いつめられる王のほうがスリリングで面白かったかも?
・ライージア
 ライージアが主人公の後妻の肉体を乗っ取る話…? ライージアがしゃべる呪詛めいた言葉はなにか関係があるのでしょうか?
・落とし穴と振り子
 パニックホラー(?)的なノリがあり、一番理解しやすかったです。振り子の話は怖くて面白いですし、脱出も見事でした。落とし穴の中には何が見えたのでしょうね?
・ウィリアム・ウィルソン
 ラストから、主人公のマネばかりするウィリアム・ウィルソンは、結局ドッペルゲンガーか自分のもう一つの側面みたいなものでよいのでしょうか(笑)。実在しないということは、カードのイカサマをばらしているのも自分? う~んよくわかりません(笑)。
・アッシャー家の崩壊
 早すぎた埋葬系。愛し合っていた兄妹の最後がアレかと思うと悲しくて後味が悪いですね(涙)。兄妹がテレパシー?なにか通じ合っている感じがあり、ロデリックは妹の蘇生のことに気づいていたのでしょうかね? 中盤、無機物も生きている的話がありましたが、アッシャー家族の全滅と関連するように家自体も崩落しました。家自体がアッシャー家族に何らかの悪影響を及ぼしていたような気がするんですが、この家は何がしたかったのでしょうか(笑)。

No.253 6点 鏡館の殺人- 月原渉 2021/02/10 19:34
ネタバレをしています。

 舞台は明治の富豪の館。クローズドサークルで、見立て殺人と密室。文の読みやすさが半端ではなく、登場人物も適度でありキャラクター設定がかぶっていないので理解がしやすい。読了まで一瞬のような感覚でした(笑)。
 すこし怪奇な感じもあり、死んだと思われた主人公の姉がずっと鏡に映っていたり、鏡に引きずられて死んでいる死体だったり、手鏡に"ころす"の文字が書かれていたりします。
 全ての謎が明らかになった後、読後感が良いのもいいですね。
 シズカのシンプルな罵倒、「死ね」が初登場?しましたね。今までで一番おもしろかったです。前作で満月にへべれけになるところを見せていましたが、今作ではまた従来のシズカになっていましたね。前作の雇用主のほうが馬が合っていたのでしょうかね。

 推理小説的要素は、3つの事件と桐花関連の叙述トリック(なのか?)がありました。
 松太郎、クララ殺しは、隠し通路という禁じ手(笑)が用いられているので、考えるに値しません。
 もっとも良い点は、通路の存在と一方通行の特性が明かされた後の理詰めでした。真昼が罪を自白しますが、シズカがそれ以前に真昼には犯行が行えなかったことを明かすのはフェアでした。真昼の服を着替えてない→返り血を浴びていないロジックは見事で、犯人が存在しなくなる→結合双生児で澄花と同じアリバイを持っていると思われた桐花が実は手術によって一人で行動できるという驚きの展開でした。
 桐花は、読者(私)には、初めは幽霊…しかしシズカは見えている?…から、結合双生児…になって、最後には普通の人になるという、3回もの想像と実際の違いを味わいました(笑)。叙述トリックならではの驚きですが、3回は初めてです。
 私は、強烈な個性を持っている桐花のことだから、まあ犯人なんだろうと勘で考えましたが、どうしてもトリックを見破ることができませんでした。


 以下、好みではない部分。
・刺殺では返り血を浴びるため、着替えるのは必須ということはわかりましたが、その死体を運ぶ際も血が付きませんか? 胴体もたなければ大丈夫かな?
・密室が密室ではない(笑)。密室状態が完璧すぎたことと、クララの発言から、うっすら嫌な予感がしました(シズカが密室にノータッチなのも(笑))。安易に密室を出すと、犯人が密室を作る必要性について考えないといけないので、書きづらいのでしょうかね(笑)。
・桐花関連はすこし強引さを感じます。桐花単体で行動できたことや犯人だったことはまあ良いとして、澄花がそうとうアレじゃなければ小説として成立しない気がしますが。
・かなりの人間が犯人に協力してしまっています。
・クララ殺しについても返り血問題で論理的な犯人当てになってますが、そもそも複数犯人は好みではありません。

 雰囲気、読みやすさ、クローズドサークルと私の好みのシリーズなので、これからもシリーズが続いてほしいですね。

No.252 7点 検察側の証人- アガサ・クリスティー 2021/02/06 18:54
ネタバレをしています。

 小学生のとき以来の戯曲ですが、あまり覚えていないため、検察側の証人がほぼ初戯曲となります。この形式の文って、本当に読みやすいですね(笑)。もう全部の小説はこういう形式にしたらいいのに(笑)。発言者の名前が書かれていると混乱しづらいし、発言の文の途中に()で感情や行動などが書かかれているのもいいですね。
 さらに、この作品は法廷モノです。テンポもいいです。
 非常に読みやすい要素が多いですが、もしかしたらアガサ・クリスティーの文のうまさのなせる業なのかもしれません。

 推理小説的には、結局レナードが犯人かそうでないかは論理的には判断がつかないので、犯人当てにはならない(というか登場人物も少なすぎるが(笑))です。アリバイトリックでもありません。しいていうなら、ローマインの真の狙いは何か?というところが考えるポイントでしょうか?
 濃厚さはありませんが、アガサ作品らしいラストのどんでん返しが簡潔に楽しめる作品です。

 しいて嫌いな点を挙げるとしたら、後味が悪いところでしょうか…

No.251 7点 虹の歯ブラシ 上木らいち発散- 早坂吝 2021/02/02 18:49
ネタバレをしています。文庫版を読みました。また、若干、○○○○○○○○殺人事件のネタバレにもなってしまうかもしれません。

 援助交際探偵上木らいちによる、エロい事件の連作短編。雰囲気が明るく、非常に読みやすく、またすこし馬鹿ミスが入っていますが、本格推理小説としてみても大変満足できるレベルの高い作品でした。

・紫の章
 アリバイトリック系。全く予想できませんでした(涙)。コピーと写真では若干の違いがあるんじゃないかとは思いますが、なかなか良かったです。
・藍の章
 服の入れ替わりはよくあるので、すぐにわかりました。この本の中では平凡。
・青の章
 全く分からず、まさからいちがカニバっている(しかも子供も?)のかと驚きましたが、叙述トリックによる大きなどんでん返しがありました。また、それが犯人断定のロジックとかかわっており、レベルが高かったです。密室は馬鹿ミス(笑)。
・緑の章
 これも叙述トリック系。麻耶雄嵩作品を思わせるような、一人多い系でした。かなり特殊な状況で、本作のテーマ(?)のエロい事件と一人多い系をうまく絡めたよい作品でした。全く予想できませんでした。
・黄の章
 ウミガメのスープ形式で出される問題。法月作品に多い形式(な気がする)。マジックが伏線になっていました。
・赤の章
 今での章の伏線から上木らいちとは何者かを推理している章。多重解決のようでもあり、後半は深水黎一郎作品を思わせる展開でした(虹の歯ブラシのほうが出版が早い?)。この章に至るまでの伏線は太字になっており、丁寧さを感じました。避妊薬を飲んでいること、薬の世話になったことないことは頭パープリンの私でも矛盾していると思いましたが、作者の発想の飛躍に完敗しました。ただファンタジーやイレギュラーな要素を入れている…のではなく、複線の文を全て真にするために矛盾を解消する必要がある→ファンタジーにならざるを得ないという流れは好みです(笑)。

No.250 6点 『瑠璃城』殺人事件- 北山猛邦 2021/01/27 18:46
ネタバレをしています。

 個人的に4作品目に読んだ城シリーズです。
 今作も城シリーズ特有の読みやすさです。テーマは生まれ変わりで、七つの大罪やゼノギアスを思い出す設定です(笑)。しかし、この作品はさらにループしています。城シリーズの中では一番きれいに話が完結している感じもあり、ファンタジー小説としても楽しめました。ラストの読後感もとてもいい(笑)。
 ラストの1行、スノウウィはマリィの重複した例外なのでしょうか?なぜ超人的能力がスノウウィにだけ添加されているのでしょうか?何時代の人物なのでしょうか?(笑)。

 推理小説的要素は大きく3つありました。密室殺人1つと、消失した死体系2つ。
 まず密室殺人。本をドミノにし、その時間差を利用したピタゴラスイッチ系密室。私は本来はこれ系はあまり好きではないのですが、今回は非常に楽しめました。ドミノは誰もが知っていることだし、想像が容易にできるところがいいですね。成功する確率が高いのかはわかりませんが。そのドミノは、犯人が直接手を汚さずに犯行を終えられるアリバイトリックも兼ねているのが素敵(?)でした。
 消失した死体1。ジョフロワによる6人の騎士を遠くの場所へ運ぶトリックです。川、十字架の建造物とその構造、塔の位置が露骨でなんとなく感づきました(笑)。私は実は最近、川の逆流を利用したトリックを目にしてしまったので、ちょっと有利でしたね(笑)。
 消失した死体2。これは…あまり必要性を感じません(笑)。

 ファンタジー、恋愛、物理トリックと、なかなかバランスが良かったです。他の城シリーズのほうが狂気的トリックや、びっくり仰天な仕掛けがありましたが、本としての総合力では瑠璃城が一番なのではないでしょうか? 6.5ぐらいつけたいですができないので…6というところで(笑)。

No.249 6点 十三番目の陪審員- 芦辺拓 2021/01/22 18:04
ネタバレをしています。

 ジャンルについて詳しくないのですが、いろいろな要素が重なった作品です。まず冤罪事件を捏造する際に用いられた方法や、遺伝子や血液などの話はサイエンスミステリ(?)。政治家、警察、マスコミの腐敗や陪審員制度を採用しない異常さなどの話は社会派ミステリ。事件を検証し、議論や舌戦や苦戦と逆転などの楽しさが味わえる法廷ミステリ。少々のサスペンスの感じもあります。
 サイエンスと社会派の部分は少々読みづらさを感じ、なかなかページが進まなかったのですが、物語にリアリティとどんでん返しなどを求めるとどうしても説明が必要なため仕方ないと思います。
 最初は冤罪事件の弁護だけかと思いきや、その裏にある大きな悪との戦いになり、最後は感動的なラストにもっていく探偵はヒーロー的でなんともかっこいい(笑)。

 以下、好みでない部分。
 私の好みは本格なのですが、この作品は本格度が少々落ちる気がします。DNA検査をすり抜けるトリックも、関心はしましたが面白いとは感じませんでした。推理小説というよりも、面白い本といったかんじで、あまりジャンル分けするべきではないかもしれません。コテコテの本格好きにとっては、やや物足りなかった印象です。

No.248 7点 鈴木ごっこ- 木下半太 2021/01/14 19:53
ネタバレをしています。

 個人的に、この本を読む前に読んだ本が非常に読みづらいものだったので、この鈴木ごっこはもう本ではなく漫画のごとく読みやすかったです。たぶん2日で読み終えました。
 文章は読みやすく、また無駄な部分が少なく、ページ数もあまりないです。それでいて、予想を超える大きな驚きが得られました。
 タイトルと導入部分から、初めはサスペンスかホラーを予想しましたた。しかし、若干のギャグ要素や、ハートウォーミングな要素もあり、鈴木になる前に家族とバラバラになっていた高額負債者が仮初の家族によって本当の家族を再認識(?)していきます(笑)。そして、感動のラスト…とは当然なりませんよね(笑)。

 推理小説的要素といえば、やはり2重の驚きがあります。
 まず、鈴木ごっこをして騙している対象が、二階堂家や近隣住民(まあ騙してるけど)ではなく、小梅以外の鈴木(男衆)だったことです。小梅には真の狙いがありました。小梅には序盤に主観の文章がありますが、明らかに秘め事がある様子でしたので、何かやっているとは思いましたが、話の展開的に自然とバッドエンドを拒否している自分がいました(笑)。終盤までの妙に明るい展開と、ラストの暗い展開の対比がいいです。
 あと、小説上のタケシ、カツオ、ダンはそれぞれ同じ時間軸にいなかった点です。カツオの娘の話は大きい複線であり、すくなくともカツオだけは違うというところまでは予想しました。しかし、全員が違っていたとは…。

 以下、難癖部分(笑)。
・小梅が毎回鈴木ごっこをするのに同じ名前を使わなければこのトリックが行えませんが、毎回同じだと他者からバレる危険性があるとおもいます。場所は動かしているようですが。二階堂家と鈴木家だけの世界ではないだろうし。
・タケシ、カスオ、ダンのそれぞれの時間軸のずらしは、その微妙な違和感を解消するよいトリックでした。しかし、その大技にしては若干地味だったかもしれません。

No.247 5点 ナイン・テイラーズ- ドロシー・L・セイヤーズ 2021/01/12 19:15
ネタバレをしています。

 文章の相性が悪く、本当に読みづらかったです(涙)。実は2020年最後の一冊のつもりで12月途中から読み始めたのですが、あまりにもページが進まないため、ビッグ・ボウの殺人に浮気しました(笑)。年間50冊目だったので(笑)。
 登場人物の多さや、文章の難しさ(個人的に)、なかなか事件が進まないテンポの悪さ、興味のない話がてんこ盛りで、正直苦行でした。

 推理小説的には、死体に謎が多くてそそります。死体は顔がつぶされ、両手が切られています。来ている服の産地が奇妙で、さらに死因がわからないという謎だらけです。犯人が誰かというより、なぜ死んでいるのかすらわかりません。
 実は、タイトルや冒頭のストーリーから、結末を予想してしまいました。当たるなよ~と思いながら読みましたが、当たってしまい残念でした…(涙)。
 この結末は事故死に近いですし、豆知識的な謎になるし、魅力を感じません。やはり私は、偶然な幸運や不運がかかわらない犯人が殺意を持って人を殺す話が好きです。探偵が殺人に関与してしまったのは面白いパターンですが。この結末だと、"顔をつぶされた死体"うんぬんが不要に思えます。

 いろいろ書きましたが、まあ要するに好みじゃなかったという話でした。

No.246 6点 ビッグ・ボウの殺人- イズレイル・ザングウィル 2020/12/28 19:38
 ネタバレをしています。

 長編としては最古の密室(たぶん)という作品だそうで、乱歩も絶賛していたとか。前から読みたかったのですが、なにやら復刻されていたようで購入(笑)。

 古典ですが読みづらさはないです。登場人物も適度で、割とすぐに密室殺人が起こります。途中、2回の法廷が挟まれ、簡単に事件の概要を理解できます。

 結末はかなり衝撃的…?というか、意外な犯人です。読者の裏をかく工夫がなされており、現代の読者でも退屈しない内容でした。
 私は、登場人物の少なさと密室の強固さから、一度はグロドマンを疑いましたが、ドラブダンプ夫人の存在のせいでグロドマンには犯行が不可能と思いました(笑)。

 以下、好みではない点。
・密室物の"どうやって入った、どうやって出た"という魅力はイマイチでした。いわゆる、心理的密室というやつでしょうか。嫌いではないのですが。
・犯人にとっての密室がアリバイ工作などではなく、他人からみて必須ではない点。最近の密室のような理由が、最初期にあったとは(笑)。むしろ評価点か(笑)。
・ドラブダンプ夫人の行動は、すべて犯人の思い通りにいくとは思えません。ドラブダンプ夫人がグロドマンを呼ばなければ事件は起こりえないのですが、グロドマンが「呼ばれなかったら殺さなかった」とか言ってます。これを推理するのは難しい。そして、ドラブダンプ夫人の見ている前で殺しが起きてます(笑)。しっかり目撃される危険性だってあったはずです(笑)。結構運に頼ってませんか?
・また例の"世界最古の密室"のネタバレがされてらぁ。

No.245 6点 七度狐- 大倉崇裕 2020/12/23 18:15
ネタバレをしています。

 私の知らない落語の世界の話が物語にかかわってきますが、物語を理解するのに必要な知識はその都度解説が入るため、全くの無知でも読みやすかったです。
 また、クローズドサークルものであり、それほど場面が移動しないため、変に複雑でないこともよかったです。それでいて、驚きの真実やどんでん返しが楽しめ、解決編を読んだ後にすべての伏線がすっきり回収されるところは、横溝ものやアガサ・クリスティーもののような良さがあります。
 最初から重要な伏線がいくつかあり、素晴らしかったです。百目関連はもっとよく考えてみるべきでした(笑)。物語後半まで読み進めたところで、百目や幽体離脱系の話をすっかり忘れてしまっていました(笑)。

 以下、不満点。
・いくら昔のことであっても、亀山は自分の存在を隠し続けることが可能なのでしょうか?(笑) 
・露骨に怪しい夢風と亀山でしたが(笑)、やはり共犯というと好みではありません。

No.244 6点 『アリス・ミラー城』殺人事件- 北山猛邦 2020/12/16 21:22
ネタバレをしています。

 城シリーズを冠するだけあって、今回も非常に変わった城が登場します。さらに、"不思議の国のアリス"や"鏡の国のアリス"が物語全体にかかわっていて、見立て殺人もあります。ただでさえ読みやすいクローズドサークルですが、本作はとくに多いページ数を感じさせないぐらい読みやすかったです。

 多くの殺人が起きますが、推理小説的見どころは、鷲羽殺しの密室と、叙述トリックです。
 鷲羽殺しの密室は、トリックのためのトリックですが、割りきって考えたほうが楽しめます。主に"どうやって鍵を室内(被害者の口に)入れられたか"の問題なのですが、解決はなんだか狂気的方法で魅力的です(笑)。ちょっと強引さも感じましたが、本書で最も好きな部分でした。
 叙述トリックについては、わりかしスタンダードな"一人増えている"系です。正直、これについては他に3作品ほど見たことがあるため、既視感が強かったです。しかし、自己紹介の場で、物語中のアリスと物語で有名なアリスを混同させて読者を惑わすトリックは好きです。アリスが本によく絡んでいると思います。また、最初に探偵の数を表記していたり(私は名前をメモしていたのに気づかなかった(笑))、チェスの駒の数を表記したり、割とデカいヒントもあったのはポイント高しです(笑)。
 

 以下、難癖部分。

・探偵が集まった意味は?(笑)
 トリックが犯人にとって必要のないもの→探偵を騙すために仕掛けた…という言い訳にはなっている(のか?)のですが、そうすると今度は、読者に伏せられていたアリスの存在は探偵は知っていたにも関わらず、誰も言及しないのか? という不可解さがあります。海上なんて、目撃してアリスだと言っておきながら皆殺ししようとする(笑)。海上のバカさが最大のミスリードかもしれません。
 また、個人的に、"探偵が集まった"とくれば、毒チョコ並みの議論合戦を期待しました。しかし物語中の登場人物は探偵とは程遠い人たちでした…(現実世界の探偵かもしれないが)。

・一人増えているトリックについて
 他作品は、あの手この手で読者を騙したり、また他のトリックと融合させたりしていました。それに比べ、本書はプラスアルファが少ないです。さんざん使われたネタをやるにしては物足りなさを感じます。

No.243 6点 猫間地獄のわらべ歌- 幡大介 2020/12/10 20:45
ネタバレをしています。

 全体的にギャグ調で明るく、難しい漢字なども使っていなく、物語を理解するのに必要な用語はそのつど説明が入るため、とても読みやすいです。読み終わるまで、一瞬のような感じでした(笑)。

 推理小説的には大きく3つの事件があります。密室(をでっちあげる(笑))事件、見立て事件、不可能犯罪。どれもダイナミックで、馬鹿ミスと呼べなくもないですが、本の雰囲気と歴史小説の雰囲気を味わえるものでした。
 密室については、初めに問題が提示され、最後に解かれるものでした。足跡問題と密室の鍵の問題を一気に解決する離れ業(?)であり、方法もその時代にしかできなさそうな物で面白かったです。
 見立て事件については、それそのものよりも、主人公=犯人系でした。講談だからいいもんというやり取りは面白かったですが、まあむりに推理小説としてフェアさを求めずに見たほうが楽しめそうです。
 屋形船内で殺される不可能犯罪は、いろいろ考えましたが、全くわかりませんでした(笑)。私も静馬と同じ田舎者なので、見当もつきませんでした。鐘の音の偽装や、館の偽装など考えましたが、どれもいまいちで(笑)。

 全体的に真相を外してきた私ですが、内侍之佑が女性であることだけわかりました(笑)。これは完全に個人的な理由ですが(またかよッ!)

 個人的な不満はないのですが、推理小説としてのフェアさや厳格さ、小説としてのまじめな雰囲気を求める人には向かないと思います。メタ展開が嫌いな人もダメですね。

※追記 どんなに古典でも、ネタが割れるようなことは書かないでほしい! この本でネタバレされている作品って、推理小説内で最もネタバレされている作品だと思います(笑)。ネタバレを回避してこの作品を読むことに成功する人っているんでしょうか(笑)。

No.242 6点 眠りの牢獄- 浦賀和宏 2020/12/05 00:29
ネタバレをしています。

 非常に読みやすい文章で、すぐに読了しました。割とページ数が少ないですが内容は薄くなく、楽しめました。

 物語中の事件は、過去の転落事件と、主人公を含めた3人がシェルターに閉じ込められた際の事件、交換殺人の3つあります。それが、浦賀によって小説化され、作中作のような感じで進んでいきます。
 過去の転落事件は、あまり考えることができないので、シェルター内の事件と交換殺人との関連を考えながら読み進めることになります。
 シェルター内での事件は、中に3人しかおらず、作中作を信じるならば犯人は明らかです。しかし、首をカニバった理由や、北澤の遺書を偽装した方法などは面白かったです。
 交換殺人との絡め方もよかったですが、匿名でのメールのやり取りや、小説内での名前の表記(名字だけや名前だけの人物や、"お兄さん"などの表記の人物)がいるため、ある程度展開が予想できてしまうのがマイナスでした。
 大きなどんでん返しとして、浦賀が女性であるということがありますが、○○シーンから予想できました(笑)。

 全体的に"彼女は存在しない"よりも好みですが、過去の推理小説の要素を少しずつ入れたような感じであり、もう一押し欲しい作品でした。

No.241 6点 Killer X- クイーン兄弟 2020/11/30 22:41
ネタバレをしています。文庫版を買いました。

 割と多いページ数であり、クローズドサークルでありながら事件が起きるまでが遅く、テンポの悪さがありました。しかし、文章が非常に読みやすく、頭にすっと入ってきます。決して長すぎるということはなく、むしろ短いぐらいに錯覚するレベルでした。

 推理小説的には、冒頭部分の"誰がシゲルちゃんを殺したか"の密室と、"誰がシゲルちゃんを転落させたか"がメインに話が進んでいきます。アナザーストーリーに連続突き落とし犯の話が出ますが、これはそれほど絡んできませんし、ちょっと予想がつきました。
 大きな謎とは関係なく、もうこれでもかというくらいに読者を欺く叙述トリックが盛り込まれています。推理小説家が日記を書いているならば、絶対叙述トリック説ありますねぇ(笑)。いちおう嘘は書いていないし、主人公は目的があってしたことですが…。叙述トリックのにおいを隠そうともしない小説でしたが、私はまるでわかりませんでした(涙)。服部のシゲルちゃんに対しての応対から、ほんのすこしだけ女性を感じたのですが、もう少し考えるべきだったかもしれません…とはいえ、赤子を使ったアレは、到底気づくのは不可能でしょうね(笑)。

 以下、好みではなかった部分。
・冒頭で密室を期待したのですが、残念でした。
・読者に登場人物の性別を錯覚させることはすでに前例があるし、割とよく出てきますよね(笑)。出産した赤子を死んだ人間の代わりにさせるのはさすがに今回初めて見ましたが、それに近いような叙述トリックは前例があるし、もう少し大トリックに絡めてほしかったです。この小説ならではのものが欲しかったです。

 読者をだまそうとしたどんでん返しは、そのほとんどが何かしらのアンフェアさを使わないといけないし、すべて推理可能という小説はありえないかもしれません。なので、この小説も、魅力的などんでん返しのある多重解決ものとしてみたらよい作品です。ただ、どんでん返しや叙述トリックを許容するならば、もっともっと奇想天外でまるで見たことのないようなものを求めてしまいます。あと、結末が暗すぎるのがちと堪えました(笑)。

No.240 6点 琥珀の城の殺人- 篠田真由美 2020/11/20 22:11
ネタバレをしています。

 1775年のハンガリーが舞台のミステリです。雰囲気が良く、それでいて全く読みづらくなく、時代も国の知識がなくてもすいすいページが進みます。
 クローズドサークルというわけではありませんが、一つの城で物語が完結するため、クローズドサークルばりの読みやすさがあります。
 他にも、当主の死亡、伯爵の後継者争い、遺産争い、過去の事件性のある出来事、伝説、手記パート、意外な犯人など、ミステリファン垂涎の要素がてんこ盛りです。
 私はほとんどわかりませんでした。ベアトリーチェが怪しいこと、アンドレアスが女性なこと以外はさっぱりです(笑)。
 
 以下不満点。
 不可能犯罪が2つあります。どちらも密室…?なのですが、これがいまいち(笑)。伯爵殺しは大多数の人間がかかわっており、イザーク殺しは助手の考えが一部当たってしまうほど他愛ないものです(ビリビリを使って~というのは魅力がありません(笑))。
 どんでん返しがあるのはよいことなのですが、どんでん返し系ミステリって多少無理をしないとどんでん返せないんですよね。あと、ミスリードも過剰になりがちです。まあそんなことを言っていてはアガサは読めませんが(笑)。

 全体的に読みやすく、物語面では楽しめましたが、推理小説としては好みとは違いました。
 

No.239 6点 犬神館の殺人- 月原渉 2020/11/12 19:40
ネタバレをしています。

 旧作の本格推理小説の雰囲気と、すらすら読める文章で、個人的に好きなシリーズです。本の厚さはそれほどでもないですが、それほど変に軽くなくていいです(?)。
 今回はシリーズ過去作よりももっと変わったシュチュエーションです。3年前と非常に似た事件で、3重の密室であり、最深部には凍った死体があります。興味を引く要素が満載です。
 また、シリーズ過去作品よりも、もっと"なぜやったのか?"がストーリー面でも語られている気がします。
 あとは、シズカの特徴"満月の夜にへべれけ"、"猫が嫌い"、新ロシア語罵倒の"アホ"が登場しました(たぶん初のはず?)。

 以下、あまり好みではなかった部分。
・3重の密室はかなり特異な設定の密室ですが、結局は犯人の自殺で終わっており、密室というよりかは狭いクローズドサークルみたいな感じでした。結末も"まあ、そうだろうな"の範疇であり、少なくとも犯人がどうやって入りどうやって出たのか?という問題を楽しむことではありませんでした。
・シズカの隠した3年前の情報は、叙述トリック的演出ですが、とくに大きくトリックにはかかわってきませんでした。バッドエンディングを予想していた読者を裏切ってのハッピーエンドという演出には貢献しています。
・地図が欲しかったです(笑)。

No.238 7点 霧に溶ける- 笹沢左保 2020/11/06 18:21
ネタバレをしています。

 文章は読みやすく、また多くの殺人事件が起こるため、テンポが良く、読了までにそれほど時間がかかりませんでした。また、話の構造が複雑ですがわかりやすく、衝撃の展開ですがそれほど無理がないです。非常に満足度が高いです!

 推理小説的部分も、密室があったり、海を使った時限装置的仕掛けがあったり、とても濃厚です。それでいて、変に馬鹿ミス調ではなく、現実に成功率が高め(と思わせてくれる)なトリックであり、それでいてしっかりと読者に解く余地をもたらすヒントも十分あります。
 小河内殺しの密室は、本格的な密室であり、時計のヒントも好印象ないい密室でした(笑)。普段、全く当てられない私ですら時計のヒントから気づきましたが、フェア度が高いという裏返しかもしれません。
 逆に川俣殺しはよくわかりませんでした。海の満ち引きを利用したところまでは予想しましたが…(笑)。
 殺人を計画し、教唆した共謀者が2人いて、さらに殺人者が3人…そして殺人未遂者が一人と、かなりの人物が殺人にかかわってしまっています。本当なら私の好みではなく、単独犯のほうが好きなのですが、ちゃんと伏線も張ってありまり、読後感としては「ありだな」と思いました(笑)。私は、"川俣を殺せたとしたら穂積"→"穂積は殺されている"ということから、被害者3人がお互いを殺しあったところまでは予想できました。ただ、新洞の主観の文から、新洞を首謀者から外してしまいましたし、波江が出てくるとは思いませんでした(笑)。今思うと、静子が新洞を狙っていたことはミスリード的効果がありますね。

 どうやって殺したか? 誰が殺したか? 何が起こっているのか? 全て楽しめる良い作品だと思いました。カーとアガサが一体となっているような(というと言いすぎか(笑))。

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ミステリ初心者さん
ひとこと
 有名な作品をちょこちょこ読んだ程度のミステリ初心者です。ほとんど、犯人やどう殺したかを当てることができません。


 高評価・低評価の基準が、前とは少し変わってきました。
 犯人を一人に断定で...
好きな作家
三津田信三 我孫子武丸 綾辻行人 有栖川有栖 鮎川哲也
採点傾向
平均点: 6.20点   採点数: 377件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(16)
三津田信三(14)
歌野晶午(13)
綾辻行人(11)
エラリイ・クイーン(11)
東野圭吾(10)
東川篤哉(10)
鮎川哲也(10)
西澤保彦(9)
有栖川有栖(8)