皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
いいちこさん |
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平均点: 5.67点 | 書評数: 557件 |
No.297 | 5点 | 羊たちの沈黙- トマス・ハリス | 2016/11/30 16:30 |
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収監中の連続殺人犯を探偵とし、主人公を助手とした変則的な安楽椅子探偵形式であり、その着想は評価。
また、サイコ・サスペンスの金字塔と謳われるだけあって、サスペンスにも一定の評価はするものの、真犯人や犯行動機を小出しにするプロットの影響で、衝撃的なサプライズは演出できていない |
No.296 | 5点 | 天帝のやどりなれ華館- 古野まほろ | 2016/11/25 18:35 |
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メイントリックは、アイデア自体は平凡であるものの、テクニカルな点では評価できる。
一方、前作よりマシではあるものの、やはりリアリティの欠如、つまり舞台設定が奇抜すぎ、登場人物の特殊能力が万能すぎるのが決定的に難点。 本シリーズ自体が、言わばドラゴンボール化していて、シリーズ序盤の緊迫感が顕著に失われている。 視点となる登場人物の変更から、個性的でリズミカルな独特の叙述が影を潜めている点も減点材料 |
No.295 | 5点 | どんなに上手に隠れても- 岡嶋二人 | 2016/11/22 17:34 |
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う~ん、微妙。悪くはないが良くもない。
多くの登場人物の思惑を絡みあわせ、サスペンスとしての盛り上がりや、プロットとしての妙味を高めている点は買うのだが、その結果として犯行計画の偶然性が高まり、フィージブルでない点が大きな難点。 それでいて、真犯人が思わせぶりすぎて直感的にわかってしまう点や、アリバイトリックの破綻も大きな減点材料。 「あした天気にしておくれ」はもちろんのこと、「99%の誘拐」にも遠く及んでいない印象 |
No.294 | 4点 | 13階段 - 高野和明 | 2016/11/15 15:32 |
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叙述自体が決して上手くないこと、司法制度に対する問題認識の踏み込みが浅いこともさることながら、依頼人の不可解な行動やプロットの前提における破綻が、致命的なレベルであるように思われる。
ミステリにおいて、その舞台設定や事件の展開がご都合主義的になるのはやむを得ないところだが、本作は許容範囲を大きく超え、かつそれに対して読者を説得する努力・工夫が見られない。 テレビの2時間ドラマのような表層的な作品という印象が強い |
No.293 | 4点 | 本所深川ふしぎ草紙- 宮部みゆき | 2016/11/08 11:51 |
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私の宮部みゆき読書のいつものパターン。
一個の読物としては相応の完成度であり、特に不満もないが、ミステリとしては淡泊すぎて高い評価はできない。 作者が、どの程度ミステリであることを意識して、本作を執筆したのか不明であるが、本サイトではミステリとして評価 |
No.292 | 4点 | GOTH リストカット事件- 乙一 | 2016/11/08 11:48 |
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各処で高評価の本作。
ダークな内容にもかかわらず、胸焼け感が残らない乾いた筆致に、筆力の高さをうかがわせるのは確か。 一方、ミステリとしては、仕掛けのテクニックの巧緻さは光るものの、誤導の手法が極端にワンパターンなのは大きな減点材料。 また、その効果として世界を反転させるような鮮やかな衝撃がなく、「安易」な印象を強く残したため、やや批判的な評価となった |
No.291 | 8点 | オリエント急行の殺人- アガサ・クリスティー | 2016/10/27 20:37 |
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クリスティ再読さんの書評に共感。
本作の真相が比類なく独創的で衝撃的であることに疑いの余地はなく、これだけで9点・10点の評価に値する。 また、12名の乗客を書き分ける筆力と、それに起因するリーダビリティにも最高級の評価。 ただ、探偵の真相解明プロセスにおいて、多くの巧妙な伏線が活かされているものの、大筋としては極めて直感・情緒的なもので、論理性を欠く点は大きな減点。 その結果、作品中盤で多くの紙幅を割いた乗客への尋問や調査が十全に活かされたとは言えない。 犯行時間が極めて長くなることで、容疑者が抵抗し、また探偵が察知する可能性がある点等、犯行のフィージビリティにも疑問が残る。 以上を加減算してこの評価 |
No.290 | 5点 | 盗聴- 真保裕一 | 2016/10/25 17:13 |
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すでに多くの方が指摘されているとおり、尺の割りにプロットを欲張りすぎているため、最終盤が尻すぼみ気味で中途半端な印象が強い。
また、各短編とも最後に捻りを効かせたどんでん返しを用意しているが、同質性が高く単調な印象を受けた。 最後に収録されている「私に向かない職業」に良さを感じて1点加点したが、長編のクオリティには達していない |
No.289 | 7点 | 月と蟹- 道尾秀介 | 2016/10/19 16:52 |
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純文学への指向性が極めて強く、ミステリの色彩が希薄であるため、本サイトで高く評価されない点や、賞狙いの作品と邪推されてしまう点には納得。
ただ、少年の触れれば斬れるような繊細の心を抉り出す作者の手腕は健在。 誰しも心に他人に言えない闇を抱え込んでおり、それがある日残酷な言動を惹き起こす危うさ。 そうした闇を「殻」に押し込めて大人になっていく現実。 こうした少年の成長の日々には共感できるものがあった。 それだけに、やや拍子抜けとも言える結末だけは残念さが残る。 本作にはより破局的な結末こそが似つかわしいと思う |
No.288 | 5点 | マルタの鷹- ダシール・ハメット | 2016/10/19 16:48 |
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リーダビリティの高さや、読者を引っ張っていく求心力は感じるのだが、殺人事件の底が浅く、「マルタの鷹」を巡る駆け引きともうまく噛み合っていない等、ミステリとして高い評価は難しい |
No.287 | 6点 | 満願- 米澤穂信 | 2016/10/12 15:59 |
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あまりにも高すぎる世評が災いし、期待外れの印象を受けるが、それなりに楽しめる水準に達していることも確か。
ただ、いずれの作品も、一定水準には達しているものの、突出した作品は見られない。 ブラックで捻りが効いた、似通った性格の作品が並んでいることが、単調な印象を助長している |
No.286 | 6点 | どちらかが彼女を殺した- 東野圭吾 | 2016/10/12 15:58 |
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「最終盤まで犯人候補を2人残しつつ、真犯人を特定しない」というアイデアの勝利。
本作を執筆するうえでは、このアイデアが厳しい制約条件となる訳だが、本格ミステリとしても、エンタテインメントとしても、一定の水準を保持した筆力を評価。 容疑者が限定的であり、真犯人を特定する手がかりがわかりやすい等、プロットが平易で一本調子であることは確かだが、広く読者が推理に参加するためにはやむを得ない配慮だと思う |
No.285 | 7点 | ジャンピング・ジェニイ- アントニイ・バークリー | 2016/09/28 13:09 |
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明かされた真相や、そのためのお膳立ては至って平凡であるが、探偵が真相の隠蔽に奔走し、多重解決形式を採用した騙しのテクニック等、変則的なプロットの妙を評価 |
No.284 | 5点 | 鍵の掛かった男- 有栖川有栖 | 2016/09/26 19:48 |
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Yoshiさんのご意見にほぼ同感。
長く地道な捜査が、新たな事実の発見それ自体を目的としており、最終盤までは直接的に謎の解決に向かわないプロットなので、盛り上がりや緊張感に欠けるのは確か。 それを考えると、ここまでの尺が必要であったか、やはり疑問が残るし、それでいて括目するほどの真相でもない。 読者を結末まで引っ張っていく求心力や、展開の手堅さには見どころがあり、作品全体として決してつまらない訳ではないのだが、これ以上の評価は難しい |
No.283 | 5点 | 日曜の夜は出たくない- 倉知淳 | 2016/09/20 19:14 |
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各処で指摘されている「空中散歩者の最期」におけるメイントリックの破綻はご愛嬌として、各短編とも水準には達している。
ただ、著者の作風である「真相の飛躍と、その論理性・納得感の高さ」において、代表作(と私が勝手に評価している)「猫丸先輩の推測」には遠く及んでおらず、この評価。 読了順が逆だっただけに、後日の作者の飛躍を感じさせる印象 |
No.282 | 4点 | 大穴- ディック・フランシス | 2016/09/15 19:47 |
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原作と翻訳のいずれに起因するのか不明だが、全体に叙述が舌足らずで、話の筋が極めて見えづらいのが非常に難点。
また、サスペンスとしても、ミステリとしても、盛り上がりに欠ける印象が強い。 競馬場の買収を阻止するというプロットも、作品全体における位置付けが弱く、必ずしも必然性は感じられない。 全体として世評ほどの作品とは思えなかった |
No.281 | 7点 | 邪魔- 奥田英朗 | 2016/09/08 14:33 |
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1つの事件を巡って、3人の登場人物がすれ違いつつ、最後に1点に収束するプロットは「最悪」と同様。
本作では主婦の人物造形が群を抜いてよい反面、少年が弱く、「最悪」ほどの効果を挙げているとは言い難い。 ただ、エンタテインメントとしてはやはり一定の水準に達しており、一読の価値のある佳作 |
No.280 | 6点 | 警官嫌い- エド・マクベイン | 2016/09/05 18:32 |
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リーダビリティの高い叙述と、サスペンスフルな展開に良さを見せる警察小説。
脱力モノの捜査プロセス、真犯人を示唆する露骨な人物造形、真相解明の論理性の欠如等、本格ミステリとしては高く評価できない作品だが、本格ミステリとして読む作品ではない |
No.279 | 6点 | 嗤う伊右衛門- 京極夏彦 | 2016/08/29 19:11 |
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作品の性格上、本サイトではこれ以上の評価は難しいが、名作「四谷怪談」を現代風にリメイクした手際に、作者のセンスが光る佳作 |
No.278 | 7点 | 樽- F・W・クロフツ | 2016/08/29 19:10 |
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トリックがやや拍子抜けで、犯行プロセスの各処でフィージビリティに疑問を残すものの、至ってシンプルな仕掛けで、冒頭の魅力的な謎と、樽の複雑な動きを演出した手際は見事。
紙幅の大半が地道な捜査過程に費やされるが、無駄のない叙述が生むスピード感が退屈さを感じさせない。 早々に犯人候補が2人に絞られ、読者視点では事実上1人に特定されている点は大きな難点だが、世評に違わぬ佳作と評価 |