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蟷螂の斧さん
平均点: 6.09点 書評数: 1668件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.648 5点 「跳ね鹿」亭のひそかな誘惑- マーサ・グライムズ 2014/08/19 14:43
~ある村で、ペットが殺される事件が相次いでいた。そして、電話ボックスに老女の死体、小屋ではバー経営の夫人の死体が発見される。死因は心筋梗塞で事件性はないと思われたが、警視ジュリーは殺人と考える。やがて動物を愛護する孤児キャリーと出会う。~                                        何とも捉えどころのない作品でした。捜査に重点が置かれていないので警察小説でもないし、サスペンスでもない。あえて言えば、孤児キャリーの悲劇の物語と言ってよいかもしれません。ミステリー要素の点ではこの評価です。

No.647 5点 M.G.H.楽園の鏡像- 三雲岳斗 2014/08/17 12:59
裏表紙より~『日本初の多目的宇宙ステーション『白鳳』で発生した、不可解な出来事。無重力の空間をゆっくりと漂う死体は、まるで数十メートルの高度から“墜落”したかのようだった。果たして、事故なのか、事件なのか? 従兄弟の森鷹舞衣の“計略”により、偽装結婚をして『白鳳』見学に訪れていた若き研究者・鷲見崎凌は、謎の真相を探るため、行動を開始することとなる……。斬新な設定とスマートな論理的解決で、各界に衝撃を与えた本格SFミステリー。第1回日本SF新人賞受賞作品』~         本格SFミステリに魅かれて手に取りました。著者の発言「他のジャンルの読者をSFに導くような作品を書きたかった」は本格好きには成功とは言い難いか?。トリックは理科系の人なら予想はつく?と思われる。動機も後出しの感が強い(伏線が弱い)。逆転の発想は買いますが、うなるほどのものではなかった。

No.646 7点 i(アイ)―鏡に消えた殺人者- 今邑彩 2014/08/14 08:47
「裏窓」殺人事件を先に読んでいてよかった。その書評でも触れたのですが、著者は「合理的な謎解き」のお好きな人は、エピローグを読む必要はありません・・・」と言っています。本作にも当てはまるということですね。オマージュ作品でありますが、そのエピローグを比較すれば本作の方が受け入れやすいと思います。「足跡」の謎は、オカルト風味をうまく融合させたトリックで感心しました。どんでん返しは、○子の逆バージョンを予想していたのですが・・・はずれました残念(苦笑)。

No.645 5点 デッド・ディテクティブ- 辻真先 2014/08/11 20:36
本格ミステリ・クロニクル300の1冊。裏表紙より~『「審判は終わった…にもかかわらず、凶手の姿は闇に包まれたままである!」。冥界の法廷で、全ての嘘を見通すはずの閻魔大王が出した苦渋のギブアップ宣言。不可能犯罪の容疑者とされた19歳のみすずは、冤罪を晴らすべく真相究明に挑む。真犯人は誰?閻魔大王に死角は?これを読まずば死なれまい。』~                                                        設定が地獄であるので、現実の世界には戻さず、SFミステリーのままラストを迎えた方が良かったのかも。好みが分かれてしまう作品?。中身は楽しめましたが・・・。

No.644 7点 「裏窓」殺人事件 tの密室- 今邑彩 2014/08/08 09:00
中公文庫版にて。副題は「警視庁捜査一課・貴島柊志」、メイントリックからしても、旧「tの密室」の方がマッチしていると思いました(苦笑)。著者あとがきでは、構想に苦労したと語っていますが、まさにその通り構想の勝利といった作品でした。伏線もしっかりと描かれており、非常にフェアで好感が持てます。犯人の狂気も、トリックもお気に入りです。あとがきの続き~「合理的な謎解き」のお好きな人は、エピローグを読む必要はありません。(中略)読んじゃった人はさっさと忘れてください。蛇足みたいなものですので。こういう「???」みたいな話を色々想像して楽しめる人のために残しただけです。少ないとは思いますけれど・・・・・・。~カーの有名作品を想定していっているのかな?(笑)。

No.643 5点 停まった足音- A・フィールディング 2014/08/07 00:05
裏表紙より~『屋敷の一室で女主人の遺体が発見された。心臓を貫いた弾丸、傍らには被害者の指紋がついたリボルバー。争った形跡はなし。事故か自殺か、あるいは殺人か。死亡直前に被害者の背後で足を止めたのは誰なのか。ロンドン警視庁のポインターが地道で緻密な捜査を続けた結果、浮かび上がる意外な真相…』~                                                        1926年発表、オーソドックスな探偵小説です。フーダニットものですが、推論・仮説が多すぎるとの印象。保険会社の代理人の自殺説とポインター警部の殺人説が、本来軸になるはずなのですが、やや散漫になってしまった感じ。意外な犯人も、伏線が弱すぎるのでインパクトに欠ける?。

No.642 7点 まるで天使のような- マーガレット・ミラー 2014/08/01 13:01
裏表紙より~『オゥゴーマンは五年前に死にました ― ある宗教団体の尼僧から、オゥゴーマンという男の身辺調査を頼まれた私立探偵クインは、意外な答にぶつかった。事務員だった故人は、嵐の晩に車で出かけたまま戻らず、川に落ちた車だけが見つかったという。妙なのは事件だけではなかった。どうやら過去を暴かれたくない者がいるらしいのだ……多くの謎をはらむ事件の真相とは? 心理サスペンスと私立探偵小説を融合させた代表作!』~                                       探偵は、尼僧からある人物を見つけるのではなく、その身にどんなことが起きたかだけを調べてほしいと言われる。それ自体も謎であるが、その依頼により波紋が広がってゆく。やがて殺人事件が起きてしまう。「天国の塔」(宗教団体~異質な世界)に住む人々の狂気?や、小さな町の住人(オゥゴーマンの妻、横領犯の女(服役中)、その兄と共同経営の女、母親の生き様がうまく描かれていて物語に引き込まれてしまいました。エンディング・サプライズも用意されていますが、それ以上に独特の雰囲気を味わう小説であると思いました。                                            

No.641 5点 汝の名- 明野照葉 2014/07/30 18:17
裏表紙より~『若き会社社長の麻生陶子は、誰もが憧れる存在。だが、その美貌とは裏腹に、「完璧な人生」を手に入れるためには、恋も仕事も計算し尽くす女だ。そんな陶子には、彼女を崇拝し奴隷の如く仕える妹の久恵がいた。しかし、ある日から、二人の関係が狂い始め、驚愕の真実が明らかになっていく…。』~                                                              女性の嫉妬心、執念深さを描いたホラー系作品でした。スラスラと読め楽しめました。中盤で題名に係るプチサプライズとラストでも同様のサプライズが用意されていますが、おまけのようなものでしょう。

No.640 5点 赤い蟷螂- 赤星香一郎 2014/07/29 15:27
「虫とりのうた」(第41回メフィスト賞)でデビュー。その2作目でホラー系ミステリーです。50年前、10年前、そして現在の話。伝説と事件を絡めたもので、プロット的には面白いと思いました。しかし、完成度の点ではご都合主義的なところが散見されること、伏線があからさま過ぎることなど、物足りない面がありました。

No.639 8点 満潮に乗って- アガサ・クリスティー 2014/07/28 11:42
大富豪ゴードン・クロードが空爆で死亡し、莫大な財産は若き未亡人が相続した。前半は、当てにしていた遺産相続がなくなってしまったクロード一族の心理(あの未亡人さえいなくなれば・・・)がサスペンスフルに描かれています。やがて一族にとって有利な存在の人物が殺される・・・。動機、意外な真相、恋愛(複雑な心理)、アリバイトリックと盛りだくさんの作品でした。有名作品が多いので、その陰に隠れてしまったのか?・・・。佳作であると思います。                                                                                     (ネタバレ注意)1948年、日・米・英において同じモチーフを扱った作品が同時発表されていることが興味深いです。英「本作品」、米「○○との○○」(W.I)、日「○○○殺人事件」(S.A)

No.638 4点 樹霊- 鳥飼否宇 2014/07/26 20:36
裏表紙より~『植物写真家の猫田夏海は北海道の撮影旅行の最中、「神の森で、激しい土砂崩れにより巨木が数十メートル移動した」という話を聞き、日高地方最奥部の古冠村へ向かう。役場の青年の案内で夏海が目にしたのは、テーマパークのために乱開発された森だった。その建設に反対していたアイヌ代表の道議会議員が失踪する。折しも村では、街路樹のナナカマドが謎の移動をするという怪事が複数起きていた。三十メートルもの高さの巨樹までもが移動し、ついには墜落死体が発見されたとき、夏海は旧知の“観察者”に助けを求めた!“観察者”探偵・鳶山が鮮やかな推理を開陳する、謎とトリック満載の本格ミステリ。』~                                                     シリーズの前2作(中空・非在)と比べると、謎の魅力に物足りさを感じました。動機は強烈なのかもしれません。しかし、共感はできませんでした。

No.637 6点 非在- 鳥飼否宇 2014/07/26 09:09
「BOOK」データベースより~『奄美大島の海岸に流れ着いた一枚のフロッピー。そこに記されていたのは奇怪な日記だった。ある大学のサークル一行が古文書を元に、人魚や朱雀、仙人が現れるという伝説の島“沙留覇島”へ渡った調査記録だった。だが、日記の最後に記されていたのは、殺人事件を告げるSOS―フロッピーを拾った写真家の猫田は警察へ届け、大規模な捜索が行われるが、それと思しき島には誰一人いない。猫田は幻の島探しに乗り出すが…絶海の孤島を舞台にした、驚天動地の本格+ネイチャーミステリ。』~                                          題名の非在(人魚、朱雀、仙人、沙留覇島)という幻想的な雰囲気を漂わせ、数々の謎が提示されます。やや謎が多すぎて纏まりがなくなってしまっている点はもったいないと印象ですね。メインであるトリックは多重解決を狙ったのかもしれませんが、複雑になり逆効果のような気がします。よって真相(前例があるのかもしれませんが、今まで読んだ中では初めて)のインパクトがやや薄くなってしまいました。とは言え、著者の意気込みが感じられる佳作であるとは思います。エピローグで、幻想として片づけられていた謎が、合理的に語られ、きれいな余韻として残りました。

No.636 6点 サイロの死体- ロナルド・A・ノックス 2014/07/24 21:56
裏表紙より~『イングランドとウェールズの境界地方、ラーストベリで開かれたハウスパーティで、車を使った追いかけっこ〈駆け落ち〉ゲームが行われた翌朝、邸内に建つサイロで、窒息死した死体が発見された。 死んでいたのはゲストの一人で政財界の重要人物。 事故死、自殺、政治的暗殺と、様々な可能性が取り沙汰される中、現場に居合わせた保険会社の探偵ブリードンは、当局の要請で捜査に協力するが、一見単純に見えた事件の裏には、ある人物の驚くべき精緻な計算が働いていた。考え抜かれたプロットと大胆なトリック。 手掛かり索引を配し、探偵小説的趣向を満載した傑作本格ミステリ』~                      皮肉(聖職者らしい教訓か?)をモチーフにした作品のように感じました。当時としては、一捻りあるプロットであると思いますが、そのため、やや複雑になってしまった?という印象です。手がかりの索引があり、著者の丁寧な作品作りは覗えます。なお、解説において、「十戒」第5条~中国人を重要な役で登場させてはいけない。~の意味がやっと解かりました(笑)。

No.635 9点 不連続殺人事件- 坂口安吾 2014/07/24 09:44
(再読)<東西ミステリーベストの19位>内容は忘れ、、若かりし頃すごい小説を読んだという記憶のみでした(笑)。登場人物相関図を作成しての再読です。なんと乱れた関係なのでしょう!これを眺めているだけでも楽しい?。トリックの前例(不連続という題名に係るトリック?)があるということですが、チョットそれは違うのではという感覚ですね。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、それはトリックでもなく、もしトリックとして捉えても趣旨が違うと思います。かの松本清張氏に「日本の推理小説史上不朽の名作で、・・・・・・・欧米にもないトリックの創造である。人間の設定、背景、会話が巧妙をきわめ、それに氏の特異な文体が加わって、その全体が一つのトリックだと気がつくのは全部を読み終わったときである」と言わしめています。つまり本作の最大のトリックは別のところにあるということだと思います。なお、角川文庫(昭和52・16版)の解説は高木彬光氏で「メイン・トリックには一つの前例が存在する。しかし、・・・・・その作品より、この「不連続」のほうがはるかに上なのだ。」~トリック部分の解釈では、松本説を支持しますね。まあ、いずれにしても傑作であると思います。全体として10点満点としたいところですが、ある点で、ポリシー通りマイナス1としました。

No.634 5点 飛行士たちの話- ロアルド・ダール 2014/07/22 16:43
(再読)処女作品集(1946)で、第2次世界大戦を経験したパイロットたちの話です。「あなたに似た人」以降の<奇妙な味>はまだ登場せず、序章(片鱗を感じる作風)といった感じです。この作品集の中に「あなたに似た人」があり、次作(1953)の作品集の題名になっています。本作中の「彼らは年をとらない」が、宮崎駿氏の「紅の豚」の一シーンに引用されていました。

No.633 3点 どんどん橋、落ちた- 綾辻行人 2014/07/22 16:42
館シリーズを読み終えたころに、手にした一冊。イメージの落差にガックリし、そのまま評価を留保していたものです(苦笑)。お遊びの一冊として捉えています。

No.632 3点 THE QUIZ- 椙本孝思 2014/07/20 13:26
好みの問題ですが、これは駄目でしたね(苦笑)。「インシテミル」とほぼ同時期の発表で、同じサバイバルものとして期待したのですが・・・。苦手な脱力系ミステリーでした。なお、恋人・陽奈の人格に一貫性がないのが残念でした。心の変化などの描写、または伏線らしきものがあればと思いました。ジャンルは、ネタバレになる可能性があるので「BOOK」データベースにある異色ホラーミステリーをとりました。

No.631 7点 中空- 鳥飼否宇 2014/07/19 20:53
商品説明より~『第21回「横溝正史ミステリ大賞」優秀賞受賞作。主人公の植物写真家と自然観察家は、数十年に一度の開花時期を迎えた竹の花を見に、大隈半島にある竹茂という村を訪れた。7家族のみが住む竹に覆われた集落。村人は皆、中国の思想家「荘子」の精神を守って暮らしている。この平穏な村で、小動物の惨殺事件が続発し、ついには村人の首なし死体が発見された。犯人は誰か、そしてその目的は…。閉ざされた空間で、来訪者である2人が難事件に挑む。』~選考委員・綾辻行人氏選評『心地よいバランス感覚で創られた本格ミステリの秀作。』~                               デビュー作とは思えないほどの出来でした。歴史ミステリー的な要素、多重解決、叙述など濃い内容で予想以上に楽しめました。また女性写真家(ワトソン役)の一人称で語られ、ユーモアもあり読み易いです。好きな「荘子」の世界も語られているので好印象(笑)。「蟷螂の斧」の章もありました。蟷螂の斧自体の一般的な意味は、力の無い者が自分の実力も顧みず強者に立ち向かうさま、~「はかなさ」のたとえとされていますが、「荘子」では、後段に「この虫(カマキリ)が人間だったら、天下をとっていただろう」とあります。野末陳平氏(タレント・元議員~早稲田大学文学部東洋哲学科卒)の著「荘子入門」でも、一般的なネガティブな意味より、この反骨精神がいいと書かれています。私も同感でネームに使用しているところです。余談でした。

No.630 7点 針の誘い- 土屋隆夫 2014/07/18 10:53
細かいトリックの連続技で一本勝ちといった印象。誘拐された母親の心理状況をうまく利用する点はさすがです。

No.629 6点 天狗の面- 土屋隆夫 2014/07/15 18:18
読者へ語り掛ける文章が、淡々としていてやや馴染めませんでした。あえてそのような書き方にしているようですが・・・。別の書き方をすれば、もっとおどろおどろしさが伝わってくるような気がしました。毒殺トリックはまあまあでしたが、もう一つの殺人トリック(心理トリックと機械的トリックの融合)はなかなかの出来だと思います。

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蟷螂の斧さん
ひとこと
ミステリーは、作家中心では読んでおらず、話題作や、ネットでのお勧め作品を読んでいます。(2013.6追加~本サイトを非常に参考とさせてもらっています。現在は、読後、類似なトリック・モチーフの作品を探した...
好きな作家
ミステリー以外で「石川達三」、短編で「阿刀田高」、思想家で「荘子」
採点傾向
平均点: 6.09点   採点数: 1668件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(53)
折原一(48)
中山七里(34)
松本清張(28)
アンソロジー(国内編集者)(22)
歌野晶午(20)
東野圭吾(20)
西村京太郎(20)
島田荘司(20)
パトリック・クェンティン(18)