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[ サスペンス ]
耳をすます壁
マーガレット・ミラー 出版月: 1990年02月 平均: 7.33点 書評数: 3件

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東京創元社
1990年02月

No.3 7点 人並由真 2020/12/09 05:15
(ネタバレなし)
 1959年のアメリカ作品。ミラーの(たしか)15番目の長編。
『眼の壁』と並ぶ<ミラー壁二部作>の片方……というのは、いま思いついた真っ赤なウソで、そんな一括りの呼称はミステリファンの間で聞いたことはない(笑・汗)。

 しかし評者は、その『壁』のどっちかを既読、どっちかを未読だったハズだが、判然としない(汗)。その曖昧さが気になって、とりあえず手近のこっちを読み出したら「ああ、こっちがすでに読んでた方だ」と序盤で気がついた(まあ初読が30年近く前のことだし、忘れていても仕方がない・笑)。
 それでもどんな話だっけ? 本サイトでは評判いいけど?(レビュアーは2人だけながら、平均点ではミラー作品のなかでベストワン!)……と思って興味が続き、そのまま最後までいっきに再読し直す。

 それで本作はミラー作品のなかでも会話が多め、リーダビリティはたぶん最高級で、いっきに読了。いや、まさかマーガレット・ミラーの長編を(再読とはいえ)3時間で読み通せる(ちゃんと人物一覧表を作りながら)とは思わなかった!

 でもって本作の評価は、もろもろの長所ポイントをふくめて先行のHORNETさんのレビューがほぼあますところなく語ってくださってるので、あまり付け加えることはないです(笑)。
 あえて付け足すなら、探偵&狂言回し役の私立探偵エルマー・ドッドの<デキる中年男>のキャラがすごくいい。

 しかしこの作品、できるなら、登場人物一覧表は見ないで読むことをお勧めします。
 今回は書庫から出してきた創元文庫の初版で再読したけれど、この人物一覧、カンのいい人には結構ヤバイかも……。
(もちろんここではあまり詳しいことは言えないが、創元の編集部は、フェアさを遵守した上でまだまだ工夫の余地はあったはずだと)。
 
 あとね、これはたぶん原書段階からの作者のポカミスだとは思うけれど、創元文庫165ページ目の描写。ここは終盤の展開と、完全に不整合だよね。これは昔、初読のとき、SRの会の年下の友人と話題にしたので覚えていた(というか正確には、今回、記憶を再確認した)。
 当時からミラークラスの作家でも、こーゆーことがあるんだと思ったものです(まあこの話題はこの辺で)。

 ラストの一行は(中略)とするのが吉だろうが、ちょっと裏読みしてみたい気もする。その余地はあるフィニッシングストローク。

 いずれにしろジェットコースター的な感覚では、たしかにミラー作品のなかでも上位の方。それは間違いない。

 さてそのうち、安心して『眼の壁』を読むことにしよう。

No.2 8点 HORNET 2020/05/17 15:43
 メキシコに旅行に来ていた親友、エイミーとウィルマ。情緒不安定なウィルマは激しやすく、旅行中も口論が絶えなかった。そしてある晩、ウィルマはホテルのバルコニーから落ちて死んでしまう。ショックで倒れたエイミーのもとに駆け付ける夫のルパート。医者がエイミーにしばらくの入院を勧めるのも聞かず、2人はすぐに帰路へ発つ。ところがサンフランシスコに帰ってすぐ、エイミーは家を出て行ってしまう。いったい何が起きているのか?ホテルで何があったのか?エイミーの兄、ギルは疑念を抱いて私立探偵・ドッドを雇って探らせようとする―

 ルパートは白なのか黒なのか?分からないまま展開されていく構成と、巧みな心理描写、人間描写が読者を惹きつけて話さない。ラスト、ルパートと一緒にいる女の正体が分かってから、その裏にある真相が解き明かされるまでも、息をつかせぬ展開で非常に面白い。
 そして、最後の最後の一行・・・!うーん!スゴい。

No.1 7点 蟷螂の斧 2014/08/26 09:25
裏表紙より~『思いたってメキシコ旅行に出かけたエイミーとウィルマ。ありふれた旅路となるはずだったが、滞在なかばウィルマがホテルのバルコニーから墜ちて死んでしまう。居合わせたエイミーも、そのときの記憶を欠いたまま失踪。一体そこで何があったというのか?調査の依頼をうけた私立探偵ドッドは失踪人の身辺を探るが…。鬼才が放つ緊迫のサスペンス。』~                            プロットは既視感はあるものの、著者の心理描写、謎の提示などの巧みな筆さばきで飽きさせません。著者の作品はこれで4冊目ですが、みな水準以上の出来で、お好みの作家になりそうです。しばらく残りの作品も読んでいこうと思っています。本作も「最後の一行」にサプライズが用意されています。感謝感激(笑)。


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マーガレット・ミラー
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