皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
蟷螂の斧さん |
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平均点: 6.09点 | 書評数: 1667件 |
No.1267 | 7点 | 事件- 大岡昇平 | 2019/11/15 17:59 |
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(再読)「東西ミステリーベスト100(1985年版)」の第23位、2012年版ではランク外です。私の気持ちに似ているかな?。再読前は9点くらいの作品とのイメージ(記憶)がありました。当時は黒沢明監督の作品のような重厚でリアリティのある映像や、社会派といわれる松本清張氏の作品が好みでした。本作は裁判の過程をリアルに、かつドキュメンタリー風に描いたもので、当時の好みにマッチしていたと思います。しかし、今はエンタメ系の方が好みとなっています。よって7点どまりとなりました。小説はフィクションであるので本物のリアリティは求めません。嘘でも本物っぽく描かれていれば十分ですね。本作は映画化されており、若い大竹しのぶさんの演技にビックリ仰天した記憶があります。 |
No.1266 | 8点 | 疑惑- 松本清張 | 2019/11/13 19:48 |
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裏表紙より~『雨の港で海中へ転落した車。妻は助かり、夫は死んだ―。妻の名は鬼塚球磨子。彼女の生い立ち、前科、夫にかかっていた高額な生命保険についてセンセーショナルに書き立てる記者と、孤軍奮闘する国選弁護人の闘い。球磨子は殺人犯なのか?その結末は?』~
TVなどでは、悪女・鬼塚球磨子がメインとして描かれてますが、原作では記者がメインです。原題「昇る足音」の意味がよく分かりました。当時(1982年)の車は、水圧で窓ガラスが割れてしまったんですね。車内にあったスパナや、脱げた靴などの小道具の扱い方が巧い。本格ものの匂いがプンプン(笑)。なお、ジャンルはリーガルがないのでサスペンスに一票。 |
No.1265 | 9点 | コピーフェイス- サンドラ・ブラウン | 2019/11/12 18:51 |
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裏表紙より~『私は別の女性の運命を生きることになった。あの恐怖の瞬間から―飛行機墜落後、収容された病院で上院議員候補夫人と取り違えられたTVリポーターのエイブリー。形成手術によって夫人の顔に変貌した彼女の耳には病床で聞いた「夫を殺す」の一言が残っていた。この家族は何かが狂っている…夫人になり代わったエイブリーを待っていたのは驚愕の真相だった。』~
飛行機事故で他人と間違えられるという導入部分はウィリアム・アイリッシュ氏の「死者との結婚」に似ています。その後の展開は選挙戦、家庭問題、恋愛、そして殺人計画などバラエティに富んでいます。エンタメに徹し、かつサスペンスフルなストーリーは楽しめました。ラブ・サスペンスの名手ということで、ラブ・シーンはかなり濃厚です(笑)。NHKでドラマ化されたそうですが、その辺は当然カットでしょうね。 |
No.1264 | 6点 | 内海の輪- 松本清張 | 2019/11/11 18:10 |
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(再読)裏表紙より~『新進の考古学者・江村宗三は、元兄嫁の西田美奈子と十四年ぶりに再会し、情事を重ねていた。彼女は二十も年上の男と再婚していた。ある日、宗三は美奈子から妊娠を告げられる。夫と別れ、子を産む決意だという。順風満帆の生活が瓦解する恐怖に、やがて宗三の心に殺意が芽生えていき……。』~
これほど手垢のついた内容を小説にするということは、よほどの自信の表れなのでしょう。解説(阿刀田高氏)で、著者の作品には考古学者、不倫、偶然が多いと言っています。本作も偶然が重要な要素なのですが、これは許せる範囲(笑)。殺人までの心理描写よりも、事件後の考古学者らしい心の動きがポイントですね。 |
No.1263 | 9点 | 悪魔の手毬唄- 横溝正史 | 2019/11/09 15:38 |
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「東西ミステリーベスト100」の第75位。「不連続殺人事件」以来の相関図を作っての読書でした(笑)。
【ネタバレあり】 本作における「見立て殺人」の意義は著者による読者へのレッドへリングであると思います。冒頭に「手毬唄」を載せることで「何故、あるいはどのように見立て殺人が行われるのか?」と読者の注意をひきます。メインの動機などから目をそらす目的ですね。「見立て」自体は、犯人にとって重要な意味もなかったし、次の被害者たちに恐怖を与えるものでもなかったし、さらに探偵側も真剣に謎を解こうとすることもなかったわけですから。やはり対象は読者ということになるのでしょう。白眉は複雑に絡み合った動機ですね。まったく予想もできませんでした。完敗。 |
No.1262 | 7点 | 霧の中の館- A・K・グリーン | 2019/11/07 18:07 |
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1878年「リーヴェン・ワース事件」の発表により「探偵小説の母」といわれるアンナ・キャサリン・グリーン(1846~1935)の短篇集。
「深夜、ビーチャム通りにて」(1895)クリスマスイブ、夫人ひとり残された家に二人の不審者が登場。一捻りあるサスペンス。 「霧の中の館」(1905)霧に迷い訪れた家では遺産相続人が集まっていた。昔、あるところに・・・に通じるファンタジーと狂気。 「ハートデライト館の階段」(1894)富豪の溺死体が3体続けて発見される。その謎は?裏家業と島田荘司氏に通じる仕掛け。 「消え失せたページ13」(1986)書類紛失が意外な展開に。「探偵小説の父」ポーの「盗まれた手紙」「アッシャー家の崩壊」へのオマージュか?。 「バイオレット自身の事件」(1915)女性探偵誕生秘話。娘の肖像画を見る父の姿が感動的。 著者の特徴は一般的なミステリーとはニュアンスの違う展開にあるような気がします。 |
No.1261 | 5点 | Dの複合- 松本清張 | 2019/11/06 18:12 |
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(再読)この道はあまりにも遠回りではありませんか?。まあ、「一気に殺すよりも、その秘密を知る第三者が、この世にいることを思わせて、徐々に恐怖に陥れたほうが効果が強い。」と犯人に言わしめてはいますが・・・。浦島伝説や羽衣伝説などを絡ませていますが、その効果は如何に。 |
No.1260 | 3点 | 花実のない森- 松本清張 | 2019/11/04 17:14 |
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(再読)裏表紙より~『会社員の青年・梅木隆介はある夜、夫婦と名乗るヒッチハイクの男女を車に乗せた。高貴さをも漂わせる美女と粗野な中年男は、まるで不釣り合いなカップルだった。好奇心が燃え上がる梅木は、車に残された万葉の古歌が彫られたペンダントから女の正体を突き止めようとする。だがそれは、甘い死の香りが漂う追跡行だった。謎が謎を呼ぶロマンチック・サスペンスの傑作!』~
今では単なるストーカーの話ですね。身元の分かるような小道具を、二人とも車の中に落としていたというのは、偶然過ぎて笑ってしまいます。そして謎の女性に、どうしてそんなに駆り立てられるのかが伝わってこないのが弱いところです。そしてその正体も、うーんどうなんでしょう・・・といったものです。残念。 |
No.1259 | 5点 | 殺人犯 対 殺人鬼- 早坂吝 | 2019/11/03 14:49 |
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様々な要素を取り込む姿勢、努力はおおいに買いますが、まるで緊迫感がないのが玉に瑕でした。信頼のおけない一人称ですから、素直に読めない(笑)。よって騙され感もそれほどでもなかった。同じ○○トリックでは「○x8殺人事件」(6点)に軍配なので、この評価です。 |
No.1258 | 4点 | 死者はよみがえる- ジョン・ディクスン・カー | 2019/11/03 08:13 |
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あらすじだけを捉えればバカミスですね。カーという名前と書かれた時代を考慮すれば、まあ許容範囲内か?(苦笑)。主人公は死体の第一発見者ですが、すぐ容疑者から外れてしまいます。これには驚き!。主人公に関する前書きが長かっただけに、物語の興味や面白みを失ってしまいました。本作は意外な犯人がメインですけれど、もし、主人公が犯人であったら満点!?。 |
No.1257 | 6点 | 時間の習俗- 松本清張 | 2019/11/01 19:00 |
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(再読)本作は、「点と線」と同様に書かれた時代(1962年)を考慮しなければならないでしょう。その時代でなければ成立しないような物理トリックがあります。反対に心理トリックはいつの時代でも通用するのが強みかもしれません。今となってはトリックよりもアリバイ崩しの過程や、崩しの爽快感を楽しむ方がベターな作品と言っていいでしょう。 |
No.1256 | 6点 | 最後の銃弾- サンドラ・ブラウン | 2019/10/29 20:56 |
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裏表紙より~『北米一美しい街、サヴァナ。殺人課刑事のダンカンは真夜中に、レアード判事の邸宅に呼び出された。侵入犯を撃ったのは判事の美しい妻エリース。正当防衛を主張する彼女には多くの謎がある。事件の背後に浮かんでくる犯罪組織の親玉サヴィッチ。だが、ダンカンはしだいにエリースに惹かれていった。判事の妻で、しかも殺人の容疑者に…。』~
ベストセラー作家らしく、二転三転の筋の運び方は巧い。600頁超の長編ですが飽きさせない。容疑者の美しい人妻は嘘つきで浮気性?。彼女に惹かれてしまった刑事は冷静に事件を解決できるのか?。相棒の女性刑事が辛辣でいい味を出しています。 |
No.1255 | 8点 | 球形の荒野- 松本清張 | 2019/10/27 12:51 |
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(再読)有名どころでは、本作が一番著者の力量が発揮された作品ではないかと思います。善悪の反転など、ストーリーテリングが秀逸ですね。またラストが泣かせます。なお、TVドラマ化の回数は今のところ「砂の器」「ゼロの焦点」「黒い樹海」などを抑え第一位。このあたりも作品の質の良さを表しているのでは?。ヒロイン役では栗原小巻さんが一番印象に残っています。 |
No.1254 | 6点 | 殺人保険- ジェームス・ケイン | 2019/10/25 20:04 |
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彼女は顔を真っ白に塗りつぶし、目のへりに黒い隈をつくり、唇と頬に真っ赤な紅をさした。おお怖っ!!(笑)。彼女の方が主人公より上手だったようですね。本作は「郵便配達は二度・・・」より複雑ですが、後者に軍配。 |
No.1253 | 8点 | 白衣の女- ウィルキー・コリンズ | 2019/10/24 18:42 |
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この時代(1860年)の小説は長いのは致し方ない?(苦笑)。まあ、ずっと気になってた一冊であり、読み終えてほっと一息。本作は、予想以上にプロットがしっかりしているのにビックリ。一応、現代に通じるトリックも用意されています。ただし、当時はトリックとして意識されていないので、あっけなくネタバレしまっているところが実に面白いところ。ちょっぴり不満点。真のヒロインであるマリアン(よく頑張りました!!(笑))の処遇を何とかできなかったのか???・・・。 |
No.1252 | 8点 | 郵便配達は二度ベルを鳴らす- ジェームス・ケイン | 2019/10/22 16:44 |
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(再読)「東西ミステリーベスト100(1985年版)」の56位。かすかな記憶はボニーとクライド(1934年に銃殺)に似ていたような?でした。訳者あとがきによれば、本作(1934)並びに「殺人保険」(1936)は1927年のルース・スナイダー事件(保険金殺人)にインスパイア―されているようですね。題名については、脚本家から郵便配達員がいつも二度ベルを鳴らすという話を聞いて、本作では重要な出来事が必ず二度起きることより、タイトルに相応しいと思ったとのことです。
(ネタバレあり) 二度目の殺人、二度目の裁判、二度目の自動車事故など。 ミステリー的には裁判が一番楽しめました。歪んだ愛情で結ばれた風来坊フランクと人妻コーラ。本物の殺人が過失となり、本当の過失が殺人となる。因果応報。○○メーターでは、恋愛物語などとの評が多いのですが、フランクの”二度の裏切り”(調書での保身、コーラ不在中の浮気)があり、彼に愛を語る資格などない(笑)。 |
No.1251 | 4点 | 波の塔- 松本清張 | 2019/10/22 08:20 |
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(再読)~愛した女性は被疑者の妻だった。衝撃の事実は若き検事を悩ませる。現代社会の悪に阻まれる悲恋を描いたロマンチックサスペンス~とありますが、サスペンス色はほとんどありません。純愛不倫物語といって良いのでしょうか。 本作は「女性自身」に掲載されたもので、当時はこういったものが受けたのでしょう。時代を感じます。なおミステリーとしての採点です。 |
No.1250 | 6点 | 黒い樹海- 松本清張 | 2019/10/20 17:04 |
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(再読)~仙台へ旅行のはずの姉が、浜松のバス事故で死んだ。不審に思う妹が姉の交友関係を探る。~
社会派と言われる諸作品と趣を異にしており、旅情ミステリーに分類されるのか?と思います。本作は「婦人倶楽部」に掲載されたもので、当然と言えば当然なのですが、やはり女性を意識して書かれた内容になっています。「波の塔」(1960年)や「花実のない森」(1964年)も同様ですね。著者は「女性心理を描くのは得意ではない」と言っていたらしいのですが、そんなことはありません。なお、題名の「樹海」は登場しませんが、同年発表の別の作品で重要な舞台となっています。 |
No.1249 | 5点 | 蒼い描点- 松本清張 | 2019/10/19 12:39 |
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(再読)本作は若者向け雑誌に連載されたもので、著者らしい重厚さがあまり感じられないロマンチック・ミステリー風味な作品です。ジャーナリストの変死に始まり、その妻および女流作家とその夫が行方不明となる。章題は「誰もいなくなった」・・・と言っても本家のような展開にはなりません(笑)。 |
No.1248 | 6点 | 眼の壁- 松本清張 | 2019/10/17 20:28 |
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(再読)手形のパクリ事件は2年後(1960年)に発表された「白昼の死角」(高木彬光氏)の方が印象に残っています。本作の印象はやはり死体トリック!!(笑)。この作品が経済犯罪ものの走りであったようですね。「点と線」と本作で著者の人気が不動のものとなり、この作品の背景が以後に発表された「砂の器」に発展していったものと思います。 |