海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1240 6点 なぎなた- 倉知淳 2010/10/24 17:18
ノン・シリーズの短編集。
アンソロジーで既読の「闇ニ笑フ」が編中の個人的ベスト。道尾の某有名短編とネタが被ってますが、こちらが先。
ほかに、刑事コロンボ第1作へのオマージュだという倒叙ミステリ「運命の銀輪」、完成度の高い非ミステリ「眠り猫、眠れ」、長文の「あとがき」(笑)が印象に残りました。

No.1239 7点 暗闇にひと突き- ローレンス・ブロック 2010/10/24 16:52
無免許のアル中探偵マット・スカダーシリーズの第4作。
アイスピックで殺害された娘の真犯人探しを父親から依頼されることで物語が動き始めます。しかし、その本筋の謎解きはオマケのように思えてしまうほど、刑事を辞職することとなった過去の事件を悔い、飲酒に逃避する中年探偵スカダーの心情描写に重点が置かれ、陰影のあるマンハッタンの情景とともに印象に残る作品。
シリーズ初期の重要な役割を担う女性彫刻家ジャニスや、AA(アルコール中毒者の自主治療協会)との出会いなど、代表傑作といわれる次作「八百万の死にざま」のための前奏曲となっているように感じました。
田口俊樹氏の翻訳は素晴らしいのですが、このタイトルは軽すぎて泥棒バーニィシリーズを思わせます。

No.1238 6点 月と蟹- 道尾秀介 2010/10/23 21:43
例によって暗いトーンの物語。なにせ、二人の小学生が神様に見立てたヤドカリを火で炙って、願い事をするという話だから。
中傷の手紙の犯人特定のロジックとか、”操り”の構図などにミステリの要素がないこともないですが、純文学寄りの傾向がより強くなっていると感じました。
少年視点で語られる物語ながら、とても小学4年生の思考とは思えない大人っぽい心情描写が、時々出て来るのが多少気になりました。

No.1237 6点 カーデュラ探偵社- ジャック・リッチー 2010/10/22 23:29
欧州某国の伯爵だったという謎の私立探偵カーデュラが登場する8編ほか全13編収録の短編集。
やはり、私立探偵のカーデュラ(Cardula)シリーズが面白い。探偵活動は夜間のみ、日光が嫌いで十字架も苦手、昼間は棺桶で眠るという変わり者。作者は、最後まで正体を明かしてくれず非常に気になった(笑)。
当シリーズは既刊の単行本3冊に分散収録されていながら、今回文庫で1冊にまとめられた。河出書房さん、ほんとに商売上手。

No.1236 6点 逆回りの時計- 藤桂子 2010/10/21 18:46
菊地警部シリーズの第4作は、15年前の4人の女子中学生が絡む些細な事件を要因に、連続して女性が殺害される「黒衣の花嫁」タイプのミステリ。
ある女性の視点による物語と菊地警部ら捜査陣の物語が交互に描かれる構成や、機械的密室殺人トリックの挿入など、シリーズ共通のプロットです。多くの女性が登場する中、最後の女性は伏線不足で唐突な感じがしました。
当時(1991年刊)新本格派が競って奇抜なアイデアの作品を出している中、この”昭和のミステリ”そのものの様な作風は売れなかったでしょうね。
創元推理文庫は国内ミステリにも英語タイトルを付けていますが、本書の”Had not it rained that day"はなかなか秀逸です。

No.1235 7点 女刑事の死- ロス・トーマス 2010/10/21 18:16
車に仕掛けられた爆弾による女刑事の死という幕開けこそ派手ですが、妹の死の謎を突きとめるため故郷へ帰った兄ベンジャミンの調査が語られる序盤の展開は地味です。途中からもう一つの帰郷目的である政府関係の仕事に物語の重心が移り、関係者の連続殺人が起こるあたりからスリリングな展開となりますが、結末は、これまでのB級感のあるクライム小説とはちょっと違う大人のハードボイルドという感じでした。
物静かで妹の死に対しても感情を表わさない主人公というのも作者の作品では珍しいですが、それを最後のページで一気に表現させた手際には唸るしかありません。泣けます。

No.1234 6点 動機、そして沈黙- 西澤保彦 2010/10/20 18:10
ノン・シリーズのミステリ短編集。
初期のものから書き下ろし作品まで、発表年代が幅広いですが、いずれもグロテスク&エロチックなテイストで統一されています。
表題作の「動機、そして沈黙」が、刑事と妻によるロジックのこねくり回しというプロットで一番作者らしい力作。オチも良く出来ていると思います。ホワイ・ダニットに意外性のある「未開封」や「死に損」も印象に残りました。

No.1233 7点 エコー・パーク- マイクル・コナリー 2010/10/20 17:47
ハリー・ボッシュ刑事シリーズ最新作の第12弾。
前作「終決者たち」でロス市警に復帰、今回も未解決事件班として過去の事件に対峙します。
前半は、逮捕された連続殺人犯の自供の真偽が焦点となる、比較的おとなしめのプロットが終盤は怒涛の展開に。検察による証拠の改竄という日本の読者にとってタイムリー過ぎるミスディレクションが図らずも効いています。
本格パズラー並みの伏線の張り方は、年々巧くなり文句はないのですが、初期の”ハード・ボッシュ”が懐かしい気も。しかし、ベトナム従軍が40年前という記述で愕然、ボッシュも60歳近い年齢になったということか。

No.1232 6点 空想オルガン- 初野晴 2010/10/19 18:15
学園ものの連作ミステリ、”ハルチカ”シリーズ第3弾。
高校の吹奏楽部メンバーが遭遇する”日常の謎”が4編収録されていますが、「序奏」として前2作のエピソードのおさらいがあり、主要部員の紹介がされていて本編に入りやすい。
収録作のなかでは、幽霊アパートの謎を扱った「ヴァナキュラー・モダニズム」が好み。ある個性的な人物の登場と島荘的奇想が楽しめる。最終話の「空想オルガン」は、連作特有の仕掛けもあるが、哀切で美しい結末が印象に残る作品でした。

No.1231 6点 踊る黄金像- ドナルド・E・ウェストレイク 2010/10/19 17:45
南米某国の博物館から盗まれた黄金のアステカ像を巡って、ニューヨーク市中で悪党どもが争奪戦を繰り広げる。某復刊ドットコムではドートマンダーシリーズと紹介されていますが間違いで、ノンシリーズのスラップスティック・ミステリです。
レプリカの黄金像が多数混入し収拾がつかない大騒動が面白いですが、70年代半ばの流行「ハッスル」ダンスから派生した数々のスラングのニュアンスは、時代性とともに日本人読者には分かりずらいところがあります。
「このミス」で上位に入り、ウエストレイク再評価のきっかけとなったという点では意義のある作品だと思います。

No.1230 3点 長弓戯画- 滝田務雄 2010/10/18 18:31
漫画家とその担当女性編集者コンビが探偵役を務める軽本格ミステリ長編。
きもいキャラの主人公でいきなり萎えます。前作「田舎の刑事」はギャグや文章は酷いなりに、ロジックには感心する点もありましたが、本書はロジックにも見るべきものがありませんでした。

No.1229 6点 レスター・リースの冒険- E・S・ガードナー 2010/10/18 18:13
怪盗レスター・リースもの中編4編収録のシリーズ第1弾。
まず、リースに仕える従僕で警察のスパイでもあるスカットルがいい。リースには手玉にとられ、本来の上司アクリー部長刑事には手柄を横取りされたり、失敗の責任転嫁を受ける苛められキャラで、ある意味このシチュエーション・コメデイの主役といえます。
ミステリ的には、新聞記事から事件の真相を見抜く安楽椅子探偵ものであり、真犯人からどのように物品を横取りするかというハウダニット趣向もミスリードと伏線が充実していて楽しめました。

No.1228 6点 逃亡者- 折原一 2010/10/17 18:30
殺人を犯した女性主人公が、整形で姿を変え各地を転々としながら時効まで逃げ延びようとする逃亡サスペンス。

最近は惰性で読んでいる感じの折原一ですが、本書は福田和子事件をモチーフにしたような数々の逃亡劇のエピソードがスリリングでなかなか読ませます。途中に挿入されるいわくありげなモノローグがなければ、危うく”折原=叙述トリック”ということを忘れさせる程です。結末もサプライズがあり、最近の作品の中では比較的楽しめました。

No.1227 5点 脱獄九時間目- ベン・ベンスン 2010/10/17 18:04
看守を人質にして監獄内に籠城した脱獄犯たちと州警察の対峙を描いた警察小説。
いやあ、渋い警察小説とは聞いていましたが、この設定でここまで地味な内容になるとは思いませんでした。いくらでもサスペンスを盛り上げることが出来るのに、ほとんど動きがない。主人公の刑事部長パリスと脱獄犯らの交渉の過程と心理状態をていねいに描写するうちに9時間が経過したという感じです。
入手したあと2冊、当分積んどく状態だなこれは。

No.1226 4点 プラチナデータ- 東野圭吾 2010/10/16 20:37
登録されたDNAデータによって殺人捜査が容易になった近未来を舞台にしたサスペンス小説。
主人公である男性研究員の特異な病症など、扱われているネタがいずれも陳腐で、中盤以降のあまり意味のないような逃亡劇も単なる水増しのためのエピソードとしか思えなかった。
人気作家ゆえのやっつけ仕事という感じを受けました。

No.1225 5点 怪盗ゴダールの冒険- フレデリック・アーヴィング・アンダースン 2010/10/16 20:23
「百発百中のゴダール」ほか、怪盗ゴダールシリーズ6編収録の連作短編集。
アンソロジーで1編を読んで興味がわいたシリーズですが、1914年刊ということもあって、新訳のわりに状況が分かりずらい描写があり、とっつきにくい感じがする。ただ、第1話から順に並べて読むと、ゴダールの存在が語り手の作家アーミストンの想像上の人物ともとれるメタ構成になっているところは面白い。

No.1224 7点 粘膜蜥蜴- 飴村行 2010/10/15 18:35
エログロ・ホラーという評判もあって若干及び腰ぎみに読み始めましたが、滅法面白いジャンルミックス小説でした。
たしかに、地下の死体処理場のシーンとか退いてしまう描写もありますが、主人公の大病院の御曹司・雪麻呂少年の比類ないエゴ、爬虫人・富蔵のとぼけた造形、東南アジア某国での秘境冒険譚など思わず引き込まれ、リーダビリティは抜群。鬼畜系のエピソードが博愛の物語になってしまうというエンディングも予想外でした。

No.1223 6点 氷の天使- キャロル・オコンネル 2010/10/15 18:03
NY市警のクールな女刑事マロリーシリーズの第1作。
だいぶ前に竹書房というマイナーな版元から文庫で出た「マロリーの神託」の改題・新訳版。「クリスマスに少女は還る」の評判がよくて、急遽再販されたのでしょう。
元ストリート・キッドが養父母に引き取られ、刑事である養父同様に刑事(探偵)になるという経緯は、ニール・ケアリーの女性版という感じですが、クールでストイックな美貌の天才ハッカーという造形はニールとだいぶ異なります。
正直、本筋の事件の真相はあまり憶えていないが、マロリーと彼女を見守る周辺の人々との交情(特に養父の旧友3人組がいい味)が読み心地のいい物語にしています。

No.1222 7点 隻眼の少女- 麻耶雄嵩 2010/10/14 18:27
因習が支配する人里離れた寒村を舞台に、村の現人神の後継者候補である娘たちが次々と首切り死体となっていく連続殺人事件に、隻眼の少女探偵が対峙するというフーダニット・ミステリ、という横溝正史(最近では三津田信三)ワールドの構図自体をミスディレクションにしてしまった異端の本格編。
次々と繰り出される犯人特定のロジックや、二転三転する真相などオーソドックスなパズラーとしてもそこそこ面白い。事件の構図がひっくり返る最後の仕掛けには驚いたが、腹話術と影武者には唐突な感じも受けました。

No.1221 5点 快盗タナーは眠らない- ローレンス・ブロック 2010/10/14 18:02
主人公は頭部に銃弾を受け眠りを必要としなくなった語学の天才という設定、スカダーや泥棒バーニィよりも10年以上前に書かれた初期シリーズの第1作です。
巻き込まれ型のスパイ冒険小説で、舞台のヨーロッパ各地をめまぐるしく変転させながら、テンポよく読ませます。これ1作だけでは判断が難しいですが、後の作品群と比べると、しゃれた会話や文章にブロックらしさが見られなかったのは残念。

キーワードから探す