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まさむねさん
平均点: 5.86点 書評数: 1156件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1036 5点 カミサマはそういない- 深緑野分 2022/11/10 22:21
 短編集。「カミサマはそういない」というタイトルどおり、救いようのないダークな短編がほとんど。でもこのタイトルは「カミサマがいないわけではない」とも読めるわけで、最終話の「新しい音楽、海賊ラジオ」だけは爽やかな気持ちになれましたね。

No.1035 7点 風琴密室- 村崎友 2022/11/05 21:18
 ああ、びっくりした。純粋に驚いちゃいました。確かに、よく考えればそうだったのだろうけどもねぇ。過去の密室も印象深かった。ハウのみならず、「なぜ密室となったのか」という点がストーリーに綺麗にフィットしていることに感心しました。ラストのシーンもいいな。
 でも、突っ込みたくなる点も。

(以下、未読の方は注意)
 まず、現在の密室について。密室にする必然性がよくわからない。プールに運んだ点も同様。針金は何だったのかもスルー?(私が読み飛ばしたのかな)
 そして、犯人に関しての驚きはなかったですね。いくらなんでも、あまりにアレ過ぎて不自然でした。読中「で、どうなったのさ」と気になってしょうがなかった。
 とはいえ、久しぶりに印象深い青春ミステリを読ませていただき、感謝です。

No.1034 6点 天井裏の散歩者 幸福荘殺人日記- 折原一 2022/10/31 22:46
 入れ子構造の中、現実と虚構の境目が不確かなまま終盤へ。でも、結末に衝撃的な驚きがあったかと問われると、消極的な返答になりそう。そういった展開で延々読まされましたしね。各短編?は、個々としてはバカバカしさが嫌いじゃないのだけれども、似たものを何遍も読まされると辛い。結末も含めて「しつこさ」を感じた面は、正直ございます。
 とはいえ、「結末を知りたい」と気になったのは事実だし、作者らしさを存分に感じることができたので、楽しめたとは言えるかな。

No.1033 8点 密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック- 鴨崎暖炉 2022/10/28 21:41
 これでもかと密室ハウをぶち込んできたド直球の本格作品。一方で語り口は軽快でコミカル。好き嫌いは分かれると思うのですが、私は支持したいですね。純粋に?トリックを味わう読書は、個人的には久しぶりのような気がします。ドミノ密室が特にお気に入り。密室愛に敬意を表して加点します。

No.1032 6点 動機探偵- 喜多喜久 2022/10/22 23:07
 人工知能を進化させるため、人間の行動の「なぜ」を解き明かそうとする准教授・名村&特任助手・若菜。動機、というか行動の理由を追い求める調査を行っていきます。名村は人間の感情が理解できないというオマケ付き。その設定はなかなかに面白いと思います。
 4つの短編とも、特筆すべき程の驚きの展開はないのですが、読み心地の良さを評価してこの採点とします。

No.1031 7点 その殺人、本格ミステリに仕立てます。- 片岡翔 2022/10/18 19:50
 本格モノとして純粋に面白かったですね。ユーモアタッチも嫌いじゃないです。映画監督や脚本家として活動されている方だけに、ミステリとしての見せ方も達者で、飽きさせません。(でも、館内部の描写がもっと分かり易いとよかったかな。)内容について敢えて多くは書きませんが、個人的には好きなタイプの作品。
 ちなみに、探偵役のキャラクターがなかなかに楽しく(逆に嫌な印象を持たれる方もいらっしゃると思うけど)、続編を期待したいところですが、難しいのかな。

No.1030 6点 モップの精は深夜に現れる- 近藤史恵 2022/10/12 22:59
 前作「天使はモップを持って」は、連作短編として一応完結しているのだけれども、好評だったからなのか、続編が作られた模様。
 前作の語り手は、会社員である梶本大介。社内で出くわした事件を、出入りのビル清掃員キリコに相談し、解決していくというストーリーでしたが、本作で梶本大介が語り手として登場するのは最終話の「きみに会いたいと思うこと」のみ。あざといと言えばあざとい短編なのだけれども、それはそれで悪くなかった。
 で、他の3短編については、語り手が一話ごとに変わります。キリコが清掃員として様々なビルに派遣されているという設定で、それぞれのビルで働く方々が語り手を務めるわけですね。キリコは、探偵役としてはもちろん、それぞれの語り手の悩みや心の疲れまでをも解決する活躍ぶり。作者の別シリーズ(整体師探偵シリーズ)に近寄っているような気もするのですが、読み心地もよいので、こちらのシリーズも読み進めることになりそう。

No.1029 6点 殺人偏差値70- 西村京太郎 2022/10/08 22:51
 ノンシリーズの短編集で、1964年から1982年までに発表された8短編が収録されています。短編集への初収録作品は「高級官僚を死に追いやった手」のみで、他の短編はこれまでの何らかの短編集に収録済みです。清張風の作品が多く、小品揃いとはいえ、味わいはあります。
 マイベストは1作品目の「受験地獄」か。2作品目の「海の沈黙」のテーマは、短編集「歪んだ朝」収録の「蘇える過去」と同じでした。作者として強い問題意識を持っていたのでしょう。

No.1028 6点 入れ子細工の夜- 阿津川辰海 2022/10/04 19:46
 ノンシリーズの短編集。バラエティに富んでいて、読み得ではあるのですが、こねくり回し過ぎでは?と感じる短編もあって、好き嫌いは分かれるかもしれません。
1 危険な賭け
 ハードボイルド調。転換も含めて好きなタイプの作品ではある。ちなみに、副題は「私立探偵・若槻晴海」。作者は若竹七海ファンか。
2 二〇二一年度入試という題の推理小説
 作中作である「煙の殺人」は、大学入試問題として書かれた犯人当て小説という設定。その扱いが秀逸で面白い。
3 入れ子細工の夜
 うーむ。考えられているのだろうけど、だから面白くなっているのかといえば、そうでもないような気が。
4 六人の激昻するマスクマン
 学生プロレスを題材にした作品。コミカルで嫌いではないけれども、飛距離は短め。

No.1027 5点 時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2- 大山誠一郎 2022/09/28 21:52
 テレビドラマ化された「アリバイ崩し承ります」の続編。死亡推定時刻が都合よすぎるだろうとか、こねくり回しすぎではとか、なぜ犯人はそこまでするのかとか、突っ込みたくなる部分はあるものの、その辺りを割り切って、アリバイクイズものといった感覚で読めば、楽しめると思います。サクサク読めるのもいい。

No.1026 6点 出版禁止- 長江俊和 2022/09/25 21:15
 グイグイ読まされました。一方で、何かスッキリしない印象もあったかな。根本となる設定の一部に釈然としない所があるのですよねえ。敢えて多くは書かないですけど、私だけなのかなあ?それとも私の読み方が足りなかっただけなのかな。

No.1025 5点 隠花の飾り- 松本清張 2022/09/24 21:06
 昭和53年から54年にかけて、小説新潮に連載された11作品を収録した短編集。晩年期の作品集ですね。
 テーマは女性と愛。私のセンスの問題もあろうかと思うのですが、平凡と評さざるを得ない短編も正直ありました。一方、いかにも清張といった短編もあって、そういう観点では読みごたえがあると言えるのかも。一定の齢を重ねて読むのがいいような気がしますね。

No.1024 6点 ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~- 三上延 2022/09/20 23:36
 扉子シリーズも3作目。「扉子と虚ろな夢」との副タイトルも付されているのだけれども、メインは扉子の後輩に当たる「樋口恭一郎」か。いや、扉子の母・栞子なのか。否、祖母の智恵子が正解かもしれない。
 その点は別としても、まぁ綺麗に纏めていますね。その纏め具合(綺麗さ加減)の好き嫌いはありそうだけれども。次作への繋ぎ(と思われる)も織り込んでいたので、シリーズ読者としては、次作も期待したいと思います。

No.1023 5点 化学探偵Mrキュリー8- 喜多喜久 2022/09/11 20:50
 Mr.キュリーこと沖野准教授と、大学庶務課職員・七瀬舞衣のコンビのシリーズ8作目。今回の短編集は、「いかにも」という話ばかりで、とってつけ感も強く出過ぎていたかな。シリーズがここまで続いていることには、一定の敬意を表するものですが。

No.1022 7点 歪んだ朝- 西村京太郎 2022/09/10 10:19
 デビュー作や新人賞受賞作など、作者初期の作品を収録した短編集。個人的には、作者の原点を感じられたので収穫大。
「歪んだ朝」:第2回オール讀物推理小説新人賞受賞作。山谷を舞台とした社会派小説で、口紅の謎が響く、好作品。水上勉は選評の中で「この作者のリアリズムには歌がある。文書もいい。」と記しています。現在に通じるテーマ性。
「黒の記憶」:第2回宝石賞候補作。入選は果たせなかったものの、作者にとっては活字化された初の小説(のはず)。結末には、ちょっと無理があるかな。
「蘇える過去」:想定の範囲内の流れではあるものの、「歪んだ朝」と同様に社会派小説としては好印象。
「夜の密戯」:実際の事件をモチーフにしたようで、推理の過程は悪くないけれど、中途半端な印象は拭えない。
「優しい脅迫者」:エラリー・クイーン編の「日本傑作推理12選」に選ばれた作品。転換が効果的かつ印象的。

No.1021 7点 あやし~怪~- 宮部みゆき 2022/09/03 14:46
 ホラーとも、怪奇小説とも、怪談とも言えるのだけれども、人情も絶妙に挟み込まれていて、市井の人々の人生を感じることができます。その辺りは流石に宮部さんといったところ。
 陰湿ながらミステリとしての味付けもある「影牢」、怖いながら温かさも感じる「布団部屋」、人生の機微を感じずにはいられない「安達家の鬼」、カボチャが心に沁みる「女の首」、鬼とは何か「時雨鬼」あたりが印象的。

No.1020 5点 天使はモップを持って- 近藤史恵 2022/08/23 20:34
 連作短編集。女性視点でのお話が多く、好き嫌いは分かれそう。個人的には、若くお洒落な清掃人キリコと、社会人1年生の大介のキャラもよく、二人の会話も楽しめました。でも、ミステリとしては薄味か。
 最終話「史上最悪のヒーロー」で、短編集として一応の区切りはついているのだけれど、何と続編もあるようですね。そのうち読んでみようかな。

No.1019 6点 元彼の遺言状- 新川帆立 2022/08/21 21:12
 「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という、元彼の残した遺言状をめぐる物語。数百億円ともみられる遺産を勝ち取るべく、「犯人選考会」に代理出席する女性弁護士が主人公。つかみも良く、次々と展開される面白さはあります。色々なタイプの女性同士のやり取りや、主人公の心情の変化は、好き嫌いはありそうだけど、個人的には悪くはないかな。巧く組み立てられていると思います。

No.1018 7点 午後の脅迫者- 西村京太郎 2022/08/15 21:23
 「西村先生の短編集って、トラベル系しか読んだことがないのではないか」と気になってしまい、講談社文庫の新装版を手にした次第です。
 9作品で構成。嗚呼、いいな。まずは表題作「午後の脅迫者」の鮮やかさ。ラストのセリフもグッとくる。「密告」の締めの一言もいいが、これは「二一:〇〇時に殺せ」も併せて警察小説としての妙味か。「美談崩れ」は横山秀夫を彷彿(その随分前の作品であることがすごい)。「柴田巡査の奇妙なアルバイト」のブラックさも印象的。「私は職業婦人」は、男女雇用機会均等法施行のずっと前の時代の作品であると考えると凄い。個人的には、ラストを飾るショートショート「マルチ商法」に唸った。最後の一言の切れ味が素晴らしい。
 そうでもない短編もありつつも、総合的にこの採点で。西村短編は、もう少し読んでみようかな。

No.1017 7点 虚像のアラベスク - 深水黎一郎 2022/08/11 21:39
 中編2本で構成。
 1作目「ドンキホーテ・アラベスク」。冒頭からバレエの専門用語の解説が山盛りで、結構辛いのですが、諦めずに読み切るのが吉。お話としては、まぁ普通。
 2作目「グラン・パ・ド・ドゥ」。語り口から一定の想定はしていたのですが、その遥か上から一気に叩きつけられた感じ。この類の読書は久しぶりだぁ。何やら清々しいぞ。エピローグ「史上最低のホワイダニット」も含めて、私は好きです。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.86点   採点数: 1156件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(55)
有栖川有栖(43)
東川篤哉(41)
森博嗣(37)
道尾秀介(26)
伊坂幸太郎(26)
米澤穂信(22)
島田荘司(22)
歌野晶午(21)
西村京太郎(19)