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E-BANKERさん
平均点: 6.01点 書評数: 1812件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.34 6点 猿島館の殺人~モンキー・パズル~- 折原一 2011/11/19 14:26
「鬼面村の殺人」に続く黒星警部シリーズの長編2作目。
黒星と虹子のコンビが、パロディに次ぐパロディに彩られた事件に挑む!

~東京湾の孤島・猿島で、ひっそりと暮らす猿谷家の人々。その館にフリーライターの葉山虹子が迷い込んだ。ところが主人の藤吉郎が、密室の書斎で不可解な死を遂げるや、次々と起こる変死事件。現場の状況が示す犯人は、なんと『猿』! 折しも、脱獄犯を追ってきた黒星警部と虹子が推理をするが・・・~

久し振りに再読したけど、いやぁなかなかの「怪作」って感じです。
よく言えば「遊びごころたっぷり」ですけど、逆にいえば「悪ふざけ」。
それでも、途中まではまずまずの面白さ。
「モルグ街の怪事件」(当然「猿」つながりね)と「Yの悲劇」を思いっきりパロってるとはいえ、デビュー作「七つの棺」で思いっきりパロデイ作品を連発した作者ですから、これくらいならむしろかわいい方。
ただねぇ・・・真相は相当脱力感がある。
なんだ、この「動機」と「密室トリック」は!!
(折原ファン以外なら、怒り出すレベルかも・・・)

というわけで、遊びこころを理解できる方にしかお勧めできません。
「どくしゃへの挑戦」のヤツもなぁ・・・ (小学生が、○○を△△とを間違えないだろ!)

No.33 3点 遭難者- 折原一 2011/10/21 14:11
長らく続いている作者の「~者」シリーズの1つ。久々に再読。
2分冊「箱入り」という何とも珍しい本。(出版社泣かせじゃない?)
~北アルプスの白馬岳から唐松岳に縦走中の難所で滑落死した青年・笹村雪彦。彼の山への情熱をたたえるため、彼の誕生から死までを追悼集にまとめることになった。企画を持ちかけられた母親は、息子の死因を探るうち、本当に息子は事故死なのだろうかと疑問を抱き始める。登山記録、山岳資料、死体検案
書などが収められた追悼集に秘められた謎、謎、謎・・・~

実に変わった本です。
本作の他にも、『前からでも後ろからでも読める本』(「倒錯の帰結」や「黒い森」)などもあり、「変なこと考える」作家ですよ、折原は!
ただし、本作はこのアイデアのみといってもいい凡作。
いつもの折原作品らしく、リポート風の手記やら昔の文集やらといったものがつぎつぎ登場し、いかにも「罠」が張ってますよというニオイ・・・
でも、この真相では「騙され感」がまるでない。
伏線が張られてるというわけでもないので、読者が予測できる材料も乏しくて、何となく「怪しい奴」と思っていた人物が、予想通り「意外な犯人」として究明される始末とは・・・
「~者」シリーズは、まあまあの佳作と凡作が入り混じってますが、本作は明らかに「読むだけ時間の無駄」というべきレベル。
(まぁ、ファンなら「珍品」としてどうしても手に取ってしまいますけどね)

No.32 8点 異人たちの館- 折原一 2011/08/20 16:59
折原叙述作品の1つの完成型といってよい作品ではないでしょうか。
久々に再読。
~富士の樹海で失踪した息子・小松原淳の伝記を書いて欲しい。売れない作家・島崎に舞いこんだゴーストライターの仕事・・・。依頼人の広大な館で、資料の山と格闘するうちに島崎の周囲で不穏な出来事が起こり始める。この一家にはまだまだ秘密がありそうだ。5つの文体で書き分けられた折原叙述ミステリーの最高峰!~

やはり作者の「代表作」といえるでしょう。
看板に偽りなしで、それまでに培った作者の叙述テクニックが惜しげもなく挿入されてます。
折原作品といえば、日記やら手記やら、作中作などを使い分けて読者を煙に巻いていきますが、本作では『地の文+インタビュー形式の挿話』をメインとして、そこにモノローグやら作中作が織り込まれ、徐々に騙されていくことに・・・
冒頭から「異人」を巡って不可思議な事件が起こり、メタミステリー的な雰囲気になりますが、ラストでは一応すべてが解決に導かれます。
まぁ、「脂の乗り切った」頃の作品ですねぇー
これでもかという勢いで叙述トリックを仕掛けられ、作品自体に何ともいえないエネルギーを感じさせられました。
本作が、「沈黙の教室」や「~者シリーズ」など作者の代表作の基盤になっているように思えますし、長いですが十分読み応えのある作品ではないかと思います。
(モノローグはちょっとズルイよねぇー。その共通項には気付かなかった・・・)

No.31 4点 耳すます部屋- 折原一 2011/07/20 21:44
お得意の叙述トリックにホラーテイストを若干加えた作品集。
作者のファンとして知られる女優の池波志乃が巻末解説を書いてます。
①「耳すます部屋」=ごく単純な叙述というか、単なる引っ掛け。しかもあまり怖くない。
②「五重像」=幼い頃に遭った事件を後々思い出すという、よくあるプロット。
③「のぞいた顔」=他の長編にも同様のアイデアが使われてます。
④「真夏の誘拐者」=今回は、「これ」と同様のプロットが目立つ。
⑤「肝だめし」=長編「異人たちの館」の作中作で使われた作品。出来もイマイチ。
⑥「眠れない夜のために」=雑誌の「読者相談コーナー」を使ったプロットは折原でも始めて読んだ。そこだけは面白い。
⑦「Mの犯罪」=Mとは宮崎勤のことらしいですが・・・
⑧「誤解」=どっちが殺人者で、どっちが被害者で・・・というプロット。ラストは唐突。
⑨「鬼」=これも③と同様、他作品に使われたもの。
⑩「目撃者」=まぁ叙述トリックといえばそうだけど・・・
以上10編。
中途半端で正直駄作が多い短編集という印象。
他の作品からの転用や、後々長編作品に転用されたプロットなども目立ち、「とりあえず」書きましたというような印象。
折原の場合、当然長編の方がいいわけですが、それにしてもこれはちょっとねぇ・・・
(特にお勧めはなし。敢えて言えば・・・やっぱりないなぁ)

No.30 5点 黒い森- 折原一 2011/06/05 20:20
表からも裏からも、どちらからも読める。その上、袋綴じあり!
折原らしい、というか折原しか書かないんじゃないか? そんな作品!
~「ミステリーツアーの目的地で待っている」。駆け落ちする2人の恋人に同じ内容のメールが届いた。行き先は樹海の奥、作家が家族を惨殺したと伝えられる山荘。ツアー客が1人、また1人と樹海の闇に消えていくなか、恋人が待つ目的地へ辿り着けるのか。そして、山荘の固く閉ざされた1室で待つものとは?~

「倒錯の帰結」で1度仕出かした失敗をまた繰り返してる?
確かに趣向、技巧としては相当の高レベルの筈です。
何しろ、前からも後ろからも読め、2つのストーリーのオチが「袋綴じ」の中に待ち受けているわけですから・・・
でもねぇ、いかんせん内容が趣向に追いついていないとしか言いようがない!
他の方の低評価も分かる気もします。
ただ、これこそが「折原!」というのもまた事実。叙述トリックとは、詰まるところ読者をいかに欺けるかということですから、こういう趣向にチャレンジしていくという姿勢も第一人者としては必要なのかも?(ホントか?)
相変わらず、話の盛り上げ方は巧みですし、そんなに「ヒドイ」こともないと思うんですけど・・・
(いかんせん、オチに捻りがなんだよねぇー)

No.29 8点 幸福荘の秘密―新・天井裏の散歩者- 折原一 2011/04/10 21:32
「天井裏の散歩者」の続編。
前作と共通する登場人物が"ハチャメチャ”に暴れる・・・妙な連作短編集。
~偉大な推理作家を慕い、多くの推理作家の卵たちが集まったかつての「幸福荘」を訪れた"わたし”は、花束を抱えた怪しい女性を目撃。その直後、1枚のフロッピーを手に入れた・・・~
①「密室の奇術師」=オチは脱力系。ただ、盛り上げ方はさすが・・・
②「後ろを見るな」=まさに「折原トリックの王道」といえば登場人物が途中で気絶させられるパターン。
③「最後の一人」=一人称の「僕」の正体は? これも折原叙述トリックの王道。
④「作者の死」=またも"魔性の女”登場(前作にも登場する例の彼女)。③のオチがつくが、またしても脱力系。
⑤「ファンメール」=さすがにここまでくると、オチは途中で想像できる。
⑥「実作者」=クドいほど畳み掛けられる「叙述トリック」・・・慣れない読者は、「いったいどういうこと?」と思わされるでしょう。
⑦「パラレルワールド」=まさにタイトルどおりのパラレルワールド。折原好きなら、これで最後のオチは想像がつくはず。
⑧「幸福荘の秘密」=最後の最後でまたしても脱力系のオチとは・・・こんなネタでここまで引っ張る作者の「心意気」に拍手。
以上8部に分かれてますが、連作短編というよりは、変格の長編という方が合っているかもしれません。
まぁ、これは「バカミス」ですよねぇ・・・でも、好きだなあ・・・これ。
折原ファン以外の方が読んだら怒り出すかもしれませんが、こんな遊び心たっぷりの作品、そう滅多にお目にかかれないような気がします。
(細かいアラ探しは禁物。ひたすら作品世界を楽しみましょう)

No.28 5点 蜃気楼の殺人- 折原一 2011/02/18 20:45
旧タイトル「奥能登殺人行」でノン・シリーズの1冊。
当時流行していたトラベルミステリーをベースに、叙述トリックを融合した「意欲的(?)」な作品。
~銀婚式を迎えた野々村夫婦は、新婚旅行の思い出を辿るように能登半島へと旅立つ。だが夫は殺され、妻は失踪。両親の足跡を追いかける一人娘の主人公万里子は、25年前の2人がもう1組の男女と接触していたことを知る。過去と現在が錯綜する折原マジックが炸裂!~といった粗筋。

う~ん。中途半端なんですよねぇ・・・初期は作者も何作かトラベルミステリー風味の作品を発表してますが、この手のミステリーにはお決まりのアリバイトリックではなく、得意の叙述トリックを合わせたら、「きっと面白いに違いない!」と思ったんでしょうか?
「残念」。狙いどおりにはいきませんでした。何しろ、途中でネタがバレバレ。伏線の貼り方が拙なすぎです。
何しろ、ごく最初に○○が同じ人物が登場し、よく分からないうちにフェードアウトするんですから、「何かあるな」と気付かずにはいられませんでした。
これを最後にトラベルミステリーは書かなくなりましたから、作者もこの融合は失敗という判断だったのでしょう。
(能登半島の名所がいろいろ出てきますので、その辺りに土地勘のある方にとってはシンパシーを感じるかもしれません)

No.27 6点 ファンレター- 折原一 2011/01/21 22:10
講談社版では「ファンレター」ですが、文春文庫版では「愛読者」と改題し、同社の「~者」シリーズの1つとして発売されてます。
今回は文春文庫で再読。
謎の覆面作家「西村香」をめぐって巻き起こる事件の数々が、連作短編形式で綴られます。
①「覆面作家」=徐々に高まる人間の「狂気」。折原得意のプロットですね。
②「講演会の秘密」=これも同様。オチは想定内。
③「ファンレター」=これも同様。オチも想定内。
④「傾いた密室」=「手紙」形式が最後に効いてくる。決して「密室物」ではありませんので・・・
⑤「二重誘拐」=「だから何?」
⑥「その男、凶暴につき」=北野武とは何の関係もありません。パクリでもありません。
⑦「消失」=中西智明の作品とは何の関係もありません。パクリでもありません。
⑧「授賞式の夜」=①~⑦のオチ的作品。
⑨「時の記憶」=⑧で終わりでよかったんじゃない?
以上9編+αあり。
共通するプロットが何度も登場します。全体的にシャレのような作品なので、あまり目くじら立てずに軽~い気持ちで読みましょう。
(覆面作家・西村香とは、もちろん北村薫氏のことですが、ここまで下世話に書かれて、よく出版させたなぁーと思ってしまいます)

No.26 6点 鬼面村の殺人- 折原一 2010/12/25 23:28
黒星警部シリーズの長編。
旧タイトル「鬼が来たりてホラを吹く」名のノベルズで読んで以来の再読。
~「あいつを殺してやる!」・・・黒星警部は、フリーライター葉山虹子と訪ねた鬼面村で、そう呟く異様な老婆に遭遇した。なぜか村人はその言葉に震え上がる。翌朝、奇怪な事件が起きた。5階建の合掌造りの家が、1人の男と共に一夜にして消え去っていたのだ!大消失トリック、密室殺人、驚天動地のドンデン返し!?~

本シリーズは、黒星と虹子や竹内刑事(本作では未登場)とのドタバタな絡みを中心に毎回展開されますが、プロット的には本格ミステリーの醍醐味を味あわせてくれるはず・・・
設定からすると、横溝の「悪魔の手毬歌」のパロデイ狙いに見えますが、今回のメインはあくまでも「家屋消失」トリック--
「家屋消失」については、作中でも触れられているE.クイーン「神の灯火」や泡坂「砂蛾家」、あと二階堂蘭子シリーズの短編でお目にかかったくらいで、かなり難しいプロットなのだと思います。
結局、物理的なトリックではなく、「錯誤」を取り入れた解法にならざるを得ず、本作もその線で解決されます。ただ、伏線はそれなりに張ってるのは分かるんですが、基本的に無理がある感じなんですよねぇ・・・(まぁ、これしかないかとは思いますけど)
ラストは、解決と思いきや・・・で2回ほどひっくり返されますので、その辺りはなかなか楽しめるとは思います。

No.25 6点 二重生活- 折原一 2010/12/04 19:14
妻、新津きよみとの合作作品。
作品紹介では「重婚をテーマにした男女の息詰まる駆け引きをスリリングに描く・・・」とありますが、プロット的には完全にいつもの折原作品という感じです。
他の多くの叙述作品と同じく、本作も時間軸が巧妙にずらされていて、読者を幻惑するという手法。(叙述トリックの基本ですね)
当然、ラストではその”ズレ”がうまく回収されて解決!となるわけですが、うまく説明できない箇所がいくつか残ったままでスッキリしない! といういつもの読後感を感じてしまいます。(本作では、なぜ亜紀が私立探偵を雇って○○を調べさせたのかがよく分からない)
ただ、「二重生活」というタイトルはうまい具合に「掛かって」ますね。そこは評価できます。
まぁ、せっかく新津さんとの合作なのですから、もう少し緊張感のあるスリリング感のある展開が欲しかったなぁ・・・
トータルにみて、水準級の面白さは十分ありだと思います。

No.24 6点 101号室の女- 折原一 2010/11/12 23:42
折原らしいテイストが手軽に楽しめる短編集。
全体的にはまあまあの出来でしょうか。
①「101号室の女」=よくある趣向ですが、そこは折原流にアレンジされてます。主人公と母親は後年作「暗闇の教室」でも登場します。
②「眠れ、わが子よ」=サスペンス感を盛り上げながら、ラストは反転させる・・・
③「網走まで」=「手紙」のやり取りを使った作者得意の展開。ラストでタイトルの意味が分かります。
④「石廊崎心中」=結末はすぐに分かりますが・・・
⑤「恐妻家」=交換殺人がモチーフ。妻がいなくなればという気持ちは分からないでもありませんが・・・
⑥「わが子が泣いている」=女ってこわいね!
⑦「殺人計画」=なかなか面白い趣向ですが、ラストは捻りすぎ?
⑧「追跡」=よくあるプロット。結末はすぐ読める。
⑨「わが生涯最大の事件」=折原らしいプロット&結末。ワンパターンといえばワンパターン。
以上全9編。
すべて平均的レベルという感想。「折原一入門編」としてはいいかもしれませんね。

No.23 4点 疑惑- 折原一 2010/10/14 21:24
長期間続いている「・・・者」シリーズからスピンオフした作品集。
①「偶然」=オレオレ詐欺ネタ。仕掛けはあっさりしたもの。軽~い作品。
②「放火魔」=よくある趣向。若干ひっくり返されますが、サプライズはほんの少し。
③「危険な乗客」=新宿発「ムーンライトえちご」の進行に合わせて2人の乗客の秘密があらわに・・・たいしたことはありません。
④「交換殺人計画」=これもちょっと中途半端かな
⑤「津村泰造の優雅な生活」=ラストは若干のサプライズとややブラックな読後感が残りました。
他ボーナストラック1篇の全6編。
他の書評で、「クドイ!」と書いている折原作品ですが、短編になると「クドサ」は消えましたが、逆に物足りない感じが・・・
これこそファン心理でしょうか? まさに”ないものねだり”かもしれません。

No.22 5点 倒錯のオブジェ 天井男の奇想 - 折原一 2010/10/02 00:12
「倒錯」シリーズのやや外伝的作品。
舞台はシリーズでお馴染みの(?)東十条は「メゾン・サンライズ」近くの古めかしい一軒家。
この作品、例によって時間軸がズラされており、それに気付かないまま読んでいると、「どういうこと?」と思わずにはいられない作りになってます。
「天井男」という発想は以前の作品でもありましたが、今回は2階の住人まで巻き込んで、「1階に住む老婆」⇔「天井男」⇔「2階の住人」という三重構造でより複雑化しています。
ただ、今回はちょっと(かなり?)クドイ!
「倒錯」シリーズの特徴といえばそれまでですが、登場人物が勝手な行動をし、それを読者が追い回させられ、最終的には「なんじゃそりゃ?」というラスト・・・
折原らしいといえばそれまでですが・・・

No.21 6点 灰色の仮面- 折原一 2010/09/16 23:44
初期の叙述作品。
久々に再読。
読んでると、何となく後々の「○○者シリーズ」の“はしり”を思わせる雰囲気があります。
灰色の仮面(=パンスト)を被り、独り暮らしの女性を襲う連続殺人犯、ひょんなことから犯人と間違われる主人公の2人を軸として、途中からどちらが「本当の殺人犯」なのか分からなくさせるという、作者お得意の叙述トリックです。
ラストを読んで何か違和感があったんですが、解説によると、改訂版では初版とラストが変わっているとのことで納得・・・ただ、改訂版ではスッキリしすぎて逆に味わいが薄いような気もしますけど・・・
採点は辛めですが、ラストまで読ませる力のある作品ですし、割と好きな作品の一つです。

No.20 7点 七つの棺- 折原一 2010/08/27 23:54
作者のデビュー作「五つの棺」に2編を加えて、再編集した短編集。
黒星警部-竹内刑事の迷コンビシリーズ。
作品の多くは過去の密室物名作のパロディになってます。
①「密室の王者」=ノックス「密室の行者」のオマージュ。ひじょうーにくだらない真相。
②「ディクスン・カーを読んだ男たち」=ラスト、3人の登場人物の独白が面白い。ただ、プロバビリテイすぎる!
③「懐かしい密室」=密室での死体出現を扱ってますが、この「ユダの窓」はあまりに安易。普通気付くだろう!
④「脇本陣殺人事件」=当然あの作品のパロディ。4本指の男も出てきます。真相は肩透かし。
⑤「天外消失事件」=かなり強引だと思うが、プロットは結構好き。
他2編。
辛目の書評を書いてますが、全体的には作者の遊び心が前面に出た異色の短編集といったテイストで割りと気に入ってます。

No.19 6点 黒衣の女- 折原一 2010/07/31 00:43
かなりストレートな叙述作品。
記憶を失ったある女性が持っていた1枚のメモ書き。そこには3人の見知らぬ男の名前が書いてあった・・・
3人の男は次々と殺されていき、この記憶喪失の女性との関係が焦点となっていく・・・という展開。
叙述トリック自体は王道ともいえる「記憶喪失モノ」で、ラストまで読者は仕掛けられた数々の?に付き合わされます。
時間軸をいじっているのも決して悪くはないと思うんですが、ちょっと小粒な感じは拭えませんねぇ・・・
もう少しサスペンス色が出ているほうが話しに引き込まれたかもしれません。
でも決して嫌いではないです。

No.18 5点 樹海伝説―騙しの森へ- 折原一 2010/07/22 22:44
祥伝社の400円文庫での発表作。
分量的には長編ではなく、中編といった感じです。
良く言えば、その分余計な装飾が削ぎ落とされて、「折原作品のエッセンスだけを残しました」というような内容になってます。
ただ、「だからいい!」と素直に言えないのがファン心理なのかもしれません。氏特有のしつこいくらいの叙述系技巧が薄味になっているのが逆に不満に思えてしまいます。(裏腹ですね)
ラストは割りと分かりやすいひっくり返しになっているので、適度な長さも勘案すれば、氏の入門編としてお勧めできる作品と言えるかもしれません。

No.17 5点 暗闇の教室- 折原一 2010/06/27 22:33
前作「沈黙の教室」に続く”ダークサスペンス”シリーズ。(作者がそう言ってます)
叙述系の技巧がこれでもか!というくらい盛り込まれており、「ごった煮」のような作品になってます。
それがうまく回収できていれば救われるのですが、何が何だかよく分からないうちに収束するという事態に!(氏の作品ではよくあるパターンですが・・・)
まぁ、いくらなんでもあれだけの計画的犯罪というか”仕掛け”を施した犯人が「あいつとあいつ」というのは無理がありすぎるような気がしてなりません。(能力的に)
少なくとも「沈黙の教室」のようにまあまあ納得性のあるラストがなければ、これだけの超長編を読むのは「ツライ」の一言ではないかと・・・
それでも決して嫌いではないので、この程度の評点に。

No.16 5点 螺旋館の殺人- 折原一 2010/06/01 22:51
「倒錯のロンド」「倒錯の死角」と共通の作品世界で書かれた一作。
「田宮」ってあの「田宮」でしたかぁ・・・読んでいる最中には不覚にも気付きませんでした。
他の作品中では相当不愛想な人物として書かれているせいでしょうねぇ・・・ラストで同一人物だと分かって、まさに「あっ!」と思いました。
プロットは初期の折原作品によくあるパターンです。
けど、ちょっとやりすぎかもしれませんねぇ・・・こういう手のミステリーが嫌いな人にとっては、ラストのどんでん返しは納得できないかもしれません。

No.15 7点 倒錯の帰結- 折原一 2010/05/05 13:52
「倒錯」シリーズの完結編。
本作品は「首吊り島」と「監禁者」という2作品が背中合わせになっており、2作で1作という凝った作りになっています。
いや、評判悪いですねぇ・・・
どの書評をみても、まさに「批判一色」という感じです。
確かに批判する方の気持ちはよく分かります。「首吊り島」であれだけ魅力的な謎の提示をされて、もう一歩というところで「監禁者」へ・・・そこで解決されるかと思いきや、なにやら訳の分からない展開になり、そのままラストへ・・・
数々の?に収束をつけないまま、たいへん都合のいいエンディングになってます。
まぁ、そういう批判を理解しつつ、あえて今回はこの評点としています。
何しろ、山本安雄と清水真弓と大沢芳男が出てきて、これだけ縦横無尽に(作品中で)暴れてくれれば、本望というものです。(折原好き以外には分からない感覚かもしれませんが・・・)

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E-BANKERさん
ひとこと
好きな作家
島田荘司、折原一、池井戸潤などなど
採点傾向
平均点: 6.01点   採点数: 1812件
採点の多い作家(TOP10)
島田荘司(72)
折原一(54)
西村京太郎(43)
アガサ・クリスティー(38)
池井戸潤(35)
森博嗣(33)
エラリイ・クイーン(31)
東野圭吾(31)
伊坂幸太郎(30)
大沢在昌(27)