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メルカトルさん
平均点: 6.02点 書評数: 1771件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.131 5点 人格転移の殺人- 西澤保彦 2011/01/02 22:36
正直なところ、事前に危惧していた嫌な予感が当たってしまった。
それは、「人格転移」による混乱と煩雑さである。
余程注意深く読まないと、個々の人格と身体の識別が難しい。
その辺りは出来る限り平板に分かりやすく描いているつもりだろうが、個人的にはやや難解な部分があったことは否定できない。
また、真犯人は予想通りだったし、オチも思っていた通りで逆に驚いた。
残念ながら、驚愕を味わう事はできなかった。

No.130 5点 明智小五郎対金田一耕助- 芦辺拓 2010/12/29 23:26
はっきり言って表題作以外は、いまひとつ楽しめなかった。
フレンチ警部、フェル博士、H.M卿、ブラウン神父など著名な名探偵たちが登場するのはファンとしては嬉しいだろうが、事件そのものもそれ程興味をそそられる謎もなく、トリックも前例のあるものばかりで、正直感心しない。
結局一番美味しいところを持っていったのは、明智小五郎だろう。
やはり金田一も先輩に敬意を表して、ということなのか?

No.129 7点 風が吹いたら桶屋がもうかる- 井上夢人 2010/12/25 00:07
登場人物が事件の依頼者以外、物語の語り手のシュンペイ、心優しき超能力者ヨーノスケ、理屈屋で的外れな推理を展開するイッカクのみといった、一風変わった連作短編集。
それぞれの役割がはっきりしていて、個性もそれなりに感じさせてくれるし、何よりも読みやすいのが美点である。
事件も結構興味を惹かれるものがあり、軽めで楽しめるミステリを求める読者にとっては一読の価値はあると思う。
ワンパターンも、ここまで来ると逆に清々しい。

No.128 6点 武家屋敷の殺人- 小島正樹 2010/12/17 23:24
まず何よりも冒頭の現実離れした日記には、いかにも島田荘司氏の好みそうな滑り出しでニヤリとさせられた。
この時点ではかなりの期待感を抱かせるが、長い第二章であっさり謎が明かされるのは、構成的に如何なものかと思ってしまった。
しかし、そこにもまた作者のミスリードも含まれているわけで、まさに詰め込みすぎ、の謳い文句の本領発揮と言ったところか。
全体としては、プロットが個人的にはイマイチと感じた。
トリックもよく考えられているし、謎の解明も緻密なだけに、もう少し上手く料理すれば、もっと傑作になっただろう、そう考えると惜しい作品ではないかと思う。

No.127 4点 UFOの捕まえ方- 柄刀一 2010/12/09 23:33
表題作が長編で、他の三作品が短編という風変わりな連作短編集である。
しかしながら、表題作以外はどうという事もない凡作が並んでいる。
肝心の『UFOの捕まえ方』は、秋田県のある町でUFOの目撃騒ぎの中、内臓の一部を抜き取られた犬の死体と共に、シャンデリアの上にうつ伏せに状態で男の死体が発見されるという、一見不可能犯罪物。
いかにも宇宙人の仕業に見せかけた殺人事件かと思いきや、真相はかなりありきたりなもので、驚くには値しない。
それよりも、この人の文体は私には合わない事を改めて思い知った作品であった。

No.126 7点 神のロジック 人間のマジック- 西澤保彦 2010/12/02 23:21
序盤から中盤にかけては、ヌルいという印象しかなかった、タイトル負けしているなと。
しかし、このSF的設定と子供たちの何気ないやり取りの中に、いくつもの伏線が張られているので、油断は禁物である。
後半に入って、唐突に殺人が起こるが、それでもまだ今ひとつ退屈な感じは拭いきれない。
しかし、最後の最後で驚愕の真相が明かされる、これで私の本作に対する評価は一変した。
それまでの平板さや退屈さを見事に覆すだけの、強烈な真実に瞠目すべき作品であろうと思う。

No.125 6点 ガラスの麒麟- 加納朋子 2010/11/27 23:39
女性の作家らしい視点で描かれた佳作。
少女の心の微妙な揺れや、女性の心の奥底に潜む襞のようなものを、淡いタッチで上手に表現している。
連作短編集なのだが、どの作品も読者の心に訴えかけてくるような作風で、加納朋子女史独特の世界観で読ませる作品だと思う。

No.124 7点 赤い蟷螂- 赤星香一郎 2010/11/20 23:35
「赤い蟷螂」を見た者には必ず災いが降り掛かる、というどこかで聞いたような話である。
前作同様、ホラーともミステリとも言えない、独特の作風で読ませる希少な作家の一人だといえる。
そのリーダビリティは非常に優れていて、かなり入り組んだ構成や人間関係を煩雑さを感じさせずに一気に読ませる手腕は認めざるを得ない。
中盤までの摩訶不思議な現象をどう収束させるか、その辺りがミステリ作家としての氏の腕の見せ所だが、見事に全ての謎を余すところなく解明して見せている。
ただし、肝心の「赤い蟷螂」の正体には拍子抜けの感は否めないし、それだけの理由で自殺までするか、という疑問は残る。
しかし、過去の呪いや怪奇現象などがふんだんに盛り込まれており、ホラーファン、ミステリファン、両読者を満足させるだけの面白さを十分備えているのは間違いない。

No.123 4点 依頼人は死んだ- 若竹七海 2010/11/16 23:28
ほぼ女探偵、葉村晶の一人称で描かれる、主にホワイダニットを扱った連作短編集。
人間の奥底に潜む、醜さ、嫌らしさを容赦なく描写する作風は相変わらずである。
しかし、個人的には文章が心に響いてこなかったのは致命的だった。
もう若竹女史の作品を読むことはないだろう、さらば若竹七海。
この文体を許容できるファンの方には失礼かもしれないので、とりあえず謝っておこう、どうかご容赦願いたい。

No.122 5点 夢幻巡礼- 西澤保彦 2010/11/12 23:43
どうも読後感がもやもやしている。
事件解決まで長かったが、それ程退屈だった訳ではない、それなりに楽しめたのは事実。
しかし、解決編はSFの趣向が入り混じって、話をややこしくしているし、どこで驚いて良いのか判然としなくて、スッキリしない。
だからといって、ストーリーに整合性がないわけではないのだが、残念ながらカタルシスには程遠かった。

No.121 4点 クール・キャンデー- 若竹七海 2010/11/06 23:53
ページ数の関係もあるだろうが、全体的に希薄な印象は拭えない。
登場人物の誰にも感情移入できないのは致し方ないかもしれないが、何気に悪意に満ちているのは好き嫌いが分かれるところではないだろうか。
それがこの作者の持ち味と言えなくもないが、それにしても主人公の渚には年相応の可愛げが感じられないのは痛い。
最後の一行は確かに驚かされたが、残念ながらカタルシスは味わえなかった。

No.120 8点 幽霊人命救助隊- 高野和明 2010/11/04 23:53
泣いた、笑った、感動した、簡潔に表現するとこんな感じ。
しかし、暗いテーマを描きながら、これだけ読みやすいエンターテインメントに昇華させた小説を私は他に知らない。
うつ病、いじめ、離婚、借金、病気といった社会問題を内包しているのに、読んでいて暗い気分にならない。
それどころか、爽快感さえ味わえるシーンすらある。
勧善懲悪あり、アクションあり、笑いあり、涙ありの、読者に勇気と生きる希望を与える稀有な傑作だと思う。

No.119 10点 隻眼の少女- 麻耶雄嵩 2010/10/28 23:48
久しぶりに本格ミステリと呼べる作品を読ませてもらった気がする。
若干の疵はあるものの、それを差し引いても文句のつけようのない完成度の高いミステリらしいミステリである。
因習深い寒村で起きた連続殺人事件という、横溝正史の世界観を丸ごと取り込んで、見事に反転させる手腕は賞賛に値する。
麻耶雄嵩ファンならずとも、ミステリ読者のすべてに薦めたい稀代の大傑作である。

No.118 6点 倒錯の死角−201号室の女−- 折原一 2010/10/22 23:30
ダークな雰囲気、やや粘着質な文体、多重構造、叙述トリック、どれをとっても折原氏らしい作品である。
がしかし、期待通りの出来かと問われると、疑問視せざるを得ない。
また、最後の袋とじには全く必然性を感じない。
むしろ蛇足といってもよいかもしれない。

No.117 5点 なみだ特捜班におまかせ!- 鯨統一郎 2010/10/16 23:29
相変わらず波田煌子のおとぼけぶりは笑えるし、前作より益々磨きがかかっている。
それに反して、特捜班での活躍は見事と言える。
迷宮入りの難事件を大した捜査もしないで、次々に犯人像を指摘していく。
しかし、そのプロファイリングは冗談半分にしか思えないし、真犯人の逮捕も偶然とし考えられないような状況である。
まあ、猟奇殺人事件を扱っている割には、ほのぼのとしていて好感は持てるが。
また、特捜班のメンバーはバラエティに富んでいて、それぞれのキャラが生き生きと描かれていて楽しめる。

No.116 5点 怪痾- 雨宮淳司 2010/10/14 23:43
病院の怪談シリーズ第三弾にして完結編。
前作『怪癒』に比べると幾分トーンダウンしている感もするが、医療に従事する者のみが知りうる、実話怪談の数々は相変わらず恐ろしいものがある。
最終話は人の生死に関わる真実なので、心臓の弱い読者は避けるべきだと思う。
怖いもの見たさで興味本位に読むと後悔すること請け合い。

No.115 7点 怪癒- 雨宮淳司 2010/10/09 23:35
病院及び、医療に関する怪談シリーズ第二弾。
現役の看護師である作者が蒐集した実話を基に、怪異な現象の数々を短編集に纏めた貴重な作品。
淡々とした語り口が摩訶不思議な怪談を紡ぎ出し、下手なホラーより余程怖い。
最終話の70ページに及ぶ大作『蛇の杙』は、読み応え十分で、このジャンルにおける名作と呼ぶに相応しい作品だと思う。
おそらくみなさん馴染みのない作家だと思うが、一読の価値はあると言わせてもらおう。

No.114 5点 すべての美人は名探偵である- 鯨統一郎 2010/10/06 23:53
鯨氏が創作した、二人の美人探偵の共演ということで期待したのだが、桜川東子が早乙女静香の子分みたいになっているのは、ややがっかりした。
しかし、後半は東子の活躍で事件が解決されたのはファンにとっては嬉しい限りだろう。
トリックには前例があり、拍子抜けしたのは言うまでもない。
だが、ミステリとしての部分が意外としっかりと描かれていたのは流石と言ってよいのではないだろうか。
またこの作品は、映像化しても面白そうだ。

No.113 6点 赤々煉恋- 朱川湊人 2010/10/01 23:45
『水銀虫』と共に、朱川氏の作品の中では異端的な扱いを受けている短編集。ノスタルジック・ホラーを得意とする作者にしては、後味の悪い作品が並んでいる。
本作では愛に執着するが故に、悲惨でありながら耽美な倒錯の世界に身を投じる人間の悲しい性が、端正な筆致で描かれている。
お薦めは『死体写真師』と『私はフランセス』。

No.112 5点 インシテミル- 米澤穂信 2010/09/24 23:31
確かに前半は、特異な設定に先を読む楽しみを味わえた。
しかし、主催者が大金を叩いてまで一体何がしたかったのか、どのように監視していたのか、など疑問点が最後まで明かされなかったのはミステリとしては致命的ではないか。
各キャラの描き分けはある程度出来ていたが、細かいアラや矛盾点も目立つ。
また、状況に応じた緊迫感が欠如している気がする。
読みやすさが逆に重厚さに欠ける結果になったのも残念な要因。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 他多数
採点傾向
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