皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
メルカトルさん |
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平均点: 6.04点 | 書評数: 1828件 |
No.1608 | 6点 | ポオ小説全集4- エドガー・アラン・ポー | 2023/03/29 22:56 |
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アメリカ最大の文豪であり、怪奇と幻想、狂気と理性の中に美を追求したポオ。彼は類なき短編の名手である。推理小説を創造し、怪奇小説・SF・ユーモア小説の分野にも幾多の傑作を残した彼の小説世界を全四巻に完全収録した待望の全集!
Amazon内容紹介より。 こんな私でも『黄金虫』や『黒猫』は知ってますよ。小学生の時に読みましたからね。どちらもなかなか面白かったです。『黄金虫』はまさか暗号が絡んでくるとは思ってませんでした。記憶もあやふやでしたし。『黒猫』はよく覚えています、特にラストはやはり忘れられません。そして『盗まれた手紙』、デュパンが登場した時は思わずおっ!?となりました。が、オチを知っていたので余計に、自身の推理を正当化する様な御託を並べていたのが、何だかなあという気持ちになりました。警察はそんなヘマはしませんよねえ。 『メロンタ・タウタ』はややこしい天文学を比較的分かり易く解説してくれて、かなり興味を持てましたし、『ミイラとの論争』のオチは好きです。その他はストーリー性や情緒と云ったものと無縁の世界で、見た事もない熟語が出てきたり、作者のやりたいことが全く分からない作品もありました。それはつまり、自分にとっては意味のない、厄介な作品群であり、読んでいていい加減嫌気が差してきたのが正直なところです。又、全体的に会話文が極めて少なく、文字も小さく改行も少なくびっしりと連なる文字列を前にして、読む気力が失せてしまい、辟易としました。 |
No.1607 | 6点 | 大東京三十五区 夭都七事件- 物集高音 | 2023/03/26 22:56 |
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浅草に天から降った死骸、天神坂に出現する髑髏、日本橋の橋上で人間消失―早稲田の不良書生・阿閉君が持ち込む、珍聞奇聞から選りすぐった「夭都東京」の七事件!サテ、下宿館主人の“縁側探偵”こと間直瀬玄蕃は如何にしてその綾を解きほぐすのか?近代化を遂げんとする昭和初期の帝都を舞台に、猟奇の謎と仰天の推理が冴える“本格”探偵小説の傑作。
『BOOK』データベースより。 前作を読んだのが20年以上前になりますか。今でも最後のお話のトリックが印象に残っています。ですが、それだけで他は全く記憶にありません。まあそこそこ面白かったのと、独特の文体だったのは何となく覚えているくらいですね。で、久しぶりにこの作者の作品を読んだ訳ですが、謎だけ取ってみればまさに奇想天外と言える魅力的なものでしょう。ところが真相となるとまるでバカミスの様な感覚で、何とも説得力に欠ける感が否めません。説得力というかその様を想像すると、現実感が全く伴わないんですよ。 でもそれ程読み難くはありませんし、何も考えずただひたすら読書に勤しもうとする姿勢であれば問題なく楽しめると思います。良い意味で時代を感じさせてくれますし、珍品として少数派の読者には持って来いの作品じゃないでしょうか。 |
No.1606 | 6点 | 猫は心配症- 高橋由太 | 2023/03/24 22:54 |
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時は幕末、江戸の町にニセ金がはびこり、悪党たちは横行。為す術のないゆるゆる町奉行所に、有能すぎる与力がやってきた。人呼んで「鬼銕」の豪腕に、おネエ同心・中村様は真っ青。闇では新仕事人も暗躍、元仕事人の化け猫まるは、おちおち惰眠も貪れない―。書き下ろしシリーズ第3弾。表題作をはじめ3篇&おまけを収録!
『BOOK』データベースより。 シリーズ3作目からいきなり読みます、いえそんな事はどうでも宜しい。確かにそれまでのエピソードがどんなものだったのかは気になりはしますが、後から読んでも別段問題ないと思いました。一応一話完結の連作短編集ですし、それが少しずつ繋がりを持って来る手法もなかなか堂に入っており、流石安定の面白さだと感じ入りました。 物語としては化け猫のまるとその猫仲間達が仕事人として暗躍するものであり、全くもって必殺仕事人シリーズの丸パクリと言っても過言でありません。殺し方までそのまんまで、読んでいる身にとっては内心にやりでした。読む前から気になっていたのが、どうやって猫が人間と対決出来るのかという疑問ですが、これは読めば納得します。 本家では主人公中村主水の姑と嫁がせんとりつで戦慄だったのが、まるの飼い主である南町奉行所の同心佐々木平四郎の妻と娘の名前がさくとらんで錯乱というちょっとした言葉遊びまでする徹底ぶりに、成程となりました。 また、上司である筆頭同心の中村様も当然田中様のパクリで、完全なオカマです。 |
No.1605 | 7点 | 異世界の名探偵 1 首なし姫殺人事件- 片里鴎 | 2023/03/23 22:59 |
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元警察官でミステリマニアの私立探偵の「俺」はくだらないもめごとに巻き込まれて死んでしまい、記憶を持ったまま異世界の住人として転生し、ヴァンと名乗る。転生した先は、剣と魔法、モンスターとダンジョンがある世界。そこでヴァンは、持ち前の魔術の才能に前世からの知識や記憶を活かして、王都の名門校に入学する。入学から3年。王女から表彰を受けるほど優秀な成績を収めたヴァンだったが、その表彰式のさ中、惨劇は起きた。不可解と言えばあまりに不可解なこの事件を解決できるのは果たして誰か!
『BOOK』データベースより。 タイトル通り異世界での事件なので、まずそれを念頭に置かなければなりません。つまり魔法が使える一種の特殊設定ものと捉えて、物語のどこかで何らかの形でそれが駆使されると覚悟して読み進めて頂きたい作品です。しかし、魔法がまかり通る世界では何でもアリではないかとの懸念も持たれる向きもあろうかと思いますが、ミステリとして決してアンフェアではありません。 本作は密室、首なし死体と云った本格ミステリの王道を往くものであり、間違っても色物とは言えない佇まいを持った印象を受けます。 事件後早々に登場した宮廷探偵団の副団長であるゲラルトが、らしくないのが残念です。仮にも名探偵と呼ばれる人物であるなら、もう少し個性的でそれなりの推理を披露して欲しかったところですね。まあそれは良いとして、問題はエピローグです。何とも曖昧なエンディングであり、読者によっては混乱を招きかねないものだと思います。いささか不親切な気がしました。正直もっとはっきりして貰いたかったです。 |
No.1604 | 6点 | 12星座殺人事件- 光藤ひかり | 2023/03/21 22:49 |
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ミステリーと占星術のコラボレーション! 雑誌やテレビの星占いではあまり触れられない、占星術のダークサイドに焦点を当てて、ミステリー小説と星座解説を執筆しました。本当は怖い占星術!? さあ、その中身は? 12星座の物語の主人公はすべて男性です。お笑い芸人から美容師、刑事、作家など様々な職種の男性たちが恋愛のもつれで恋人を殺してしまうという設定で、光藤ひかりがちょっとエグい12本の短編小説を書き上げました。それぞれの星座に特徴的な性格から、殺意や殺し方も千差万別。小説の末尾には占星術家・水谷奏音が執筆した解説で、それぞれの星座の特徴がバッチリ分かります。ミステリー小説を楽しみながら星座の勉強にもなる一石二鳥の一冊。さあ、今宵、あなたが彼に殺されないために(笑)、さっそく読んでみてください。
Amazon内容紹介より。 西洋占星術の12星座ごとに、一人ずつその星座の典型的な性格をした男を主人公にした連作短編集。シチュエーションこそ違えど、男が恋人や許婚の女性に殺意を抱いて破滅に至るまでの物語であるのは固定されています。トリックやオチはない代わりに、12星座別の性格や言動を描写するのに腐心しており、ミステリと言うよりサスペンスフルな短編が多いです。 幾つかのアイテムや名前は同じで役どころを変えた人物が、複数の話で出てきているのが特徴的かと思います。各星座に水谷奏音(知らんけど)の解説が付帯して結構痛い所を突いていたりしてちょっと楽しめます。 個人的に記憶に残ったのは牡牛座、蟹座、天秤座、魚座辺り。最後の魚座ではそれまでなかった皮肉なオチが見られます。 私は今日の占いとかは殆ど信じませんが、占星術自体は半分くらいは信じています。だからそれなりに楽しめましたが、全然信じてない人は読んでもあまりピンと来ないかも知れません。そもそもそういう人は本作を読まないと思いますけどね。 解説は島田荘司。 |
No.1603 | 4点 | 希望荘- 宮部みゆき | 2023/03/18 23:00 |
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家族と仕事を失った杉村三郎は、東京都北区に私立探偵事務所を開業する。ある日、亡き父・武藤寛二が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を調査してほしいという依頼が舞い込む。依頼人の相沢幸司によれば、父は母の不倫による離婚後、息子と再会するまで30年の空白があった。果たして、武藤は人殺しだったのか。35年前の殺人事件の関係者を調べていくと、昨年発生した女性殺害事件を解決するカギが隠されていた!?(表題作「希望荘」)。「聖域」「希望荘」「砂男」「二重身」…私立探偵・杉村三郎が4つの難事件に挑む!!
『BOOK』データベースより。 そこはかとなく眠気を誘う、物凄くゆる~い連作中短編集。正直こんなに詰まらないとは思いませんでした。あ、飽くまでマイノリティの意見です。優しいんですよ内容が。その辺宮部みゆきの人間性が滲み出ていると云うか、今一つ人間の深奥に踏み込めないところにこの人の限界を感じてしまうんですよね。 まず杉村の年齢が分からない、多分中年なんだろうけど。彼の人間味はとても感じられますが、手付金が五千円とか信じられません。あり得ないでしょう。そんな親切な探偵が主役なので、まあ人情ものみたいな物語になるのはやむを得ないでしょう、その分中身がヌルいと感じられて仕方ありません。 得意の社会問題を取り上げたり東日本大震災を背景に語ったりしていますが、ミステリとして伏線を回収するとか、意外性を追求するとか、そうした姿勢が全く感じられず、いささか退屈でした。 もうね、自分の感性が信じられなくなりそうです。これだけ世間的に高評価なのに、私にはその面白さが理解できない、何度こんな苦汁を味わわなければならないのでしょうか。長尺だった分余計に辛さが増しました。 |
No.1602 | 6点 | The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day- 乙一 | 2023/03/15 22:47 |
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この町には人殺しが住んでいる―。町の花はフクジュソウ。特産品は牛タンの味噌漬け。一九九四年の国勢調査によると人口は五八七一三人。その町の名前は杜王町。広瀬康一と漫画家・岸辺露伴は、ある日血まみれの猫と遭遇した。後をつけるうち、二人は死体を発見する。それが“本”をめぐる奇怪な事件のはじまりだった…。乙一が渾身の力で描いた『ジョジョの奇妙な冒険』、文庫で登場。
『BOOK』データベースより。 私はこれまで一度も少年向け漫画雑誌というものを買ったことがありません。子供の頃一度だけ母親に買ってもらった少年何とかを読んで、高校野球の漫画が大層面白かった記憶があるくらいですね。では何故今さら『ジョジョの奇妙な冒険』なのかと言えば、単に著者が乙一だったから。 昔友人が貸してくれた週刊少年ジャンプに多分連載され始めたばかりだったのが『ジョジョの奇妙な冒険』で、第一印象は妙にくねくねした絵だなと思ったくらいで、10ページほど読んだけれど面白くなさそうだったので、それ以来全く読む事はありませんでした。私が気に入っていたのは『ゴッドサイダー』でした。 前置きが長くなりましたが、本作は全然乙一らしさが出ていないのが誠に残念です。これなら誰が書いても良かったのではないかと思う程です 話が分散しているし、複数の視点で描かれている為、何処に焦点を置いているのか途中まで判然としません。所々面白いなと感じるシーンがあったり、終盤のバトルではなかなか熱くなれましたので、総合的に判断して6点としました。ただ描き様によってはもっと高得点が狙えた気もします。 余談ですが最後に言いたいのは、又しても煙草臭にしてやられたという事です。どうしたらこれ程の臭いが染み付くのか不思議でなりません。まあどこぞのヘビースモーカーの密閉された部屋に長年放置されたせいだろうとは思いますけどね。この臭いは100年経ってもいや、1000年経っても消えないでしょう。ちなみに読み始めてすぐに気付いて、ゴミ箱に叩き込んでやろうか、それとも即ブックオフ行きにしてやろうかとも思いましたが、我慢して読んだ自分を褒めてあげたいです。110円でしたしね、仕方ないです。購入時点で気付かなかった自分が悪かったと思うしかありません。 |
No.1601 | 7点 | なめらかな世界と、その敵- 伴名練 | 2023/03/12 22:54 |
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いくつもの並行世界を行き来する少女たちの1度きりの青春を描く表題作や、ありえたかもしれないもう1つの日本SF史を活写する「ゼロ年代の臨界点」、伊藤計劃の『ハーモニー』にトリビュートを捧げた「美亜羽へ贈る拳銃」、未曾有の災害が発生した新幹線の乗客と取り残された人々のドラマ「ひかりより速く、ゆるやかに」など、人の心の隔たりと繋がりをめぐる奇跡の傑作集。
Amazon内容紹介より。 ハードSFに苦手意識のある私ですが、これは「読め」ました。難解でもないですが流し読みを許さないクセの強い文章の作品、如何にも青春していますと云ったラノベ風の作品など、一体この作者のスタイルはいずこにあるのか疑問を持たずにはいられない、バラエティに富んだ短編が並んでいます。どれが突出しているという訳でもなく、いずれも一定の水準をクリアしている佳作揃いです。 まあ個人的には気軽に読める表題作が最も親しみ易かったでしょうか。第二次世界大戦下での姉妹の絆を、妹の手紙のみで表現した異色作『ホーリーアイアンメイデン』も良かったですね。多分他の方とは随分好みが違うと言われそうですが。やや敷居が高いと思われますが、SFファンなら読んでみても損はないでしょう。 |
No.1600 | 6点 | 叔母殺人事件 偽りの館- 折原一 | 2023/03/09 22:57 |
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煉瓦造りの洋館で起きた驚くべき殺人事件。屋敷には底意地の悪い実業家の女主人とその甥が住んでいた。叔母の財産を狙う甥の殺人計画はいかに練られていったのか。その手記を入手するため、取材者の“私”は屋敷に住み込み、事件を追体験していく―そして明かされる衝撃の真相!!名手の叙述ミステリー。
『BOOK』データベースより。 叔母を亡き者にしようと計画する甥の日記と、その事件があった館に住む「私」の一人称の交互で綴られる折原一の最も得意とするミステリの形。どうですか、如何にも何かの仕掛けがありそうでしょ。匂います、プンプンと。それを承知で何とか作者の目論見を見破ろうと目を皿のようにして、どこかに綻びがないものかと邪推しながら読み進めました。結果、惨敗でした。 まさか読み始めた辺りでこの様なカタストロフィを迎えようとは思ってもみませんでした。 登場人物はそれほど多くないのに、これだけの物語を作り上げてしまうのは流石だと思います。ただ、舞台が固定しているだけに閉塞感は禁じ得ませんが、それもこの人持ち味だと考えれば問題ないでしょう。 尚類似したタイトルの『叔父殺人事件』がありますが、それとは全く趣が違います。どちらがどうとも言えませんが、個人的には『叔父』の方が好きです。 |
No.1599 | 6点 | 運命しか信じない!- 蘇部健一 | 2023/03/07 22:54 |
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六篇の短編連作で綴るドラマチックなラブストーリー。仙波莉子と京川俊は、絶対に出逢うはずのない二人だった。しかし、ある朝、太一の猫、タマがミルクをこぼしたことをきっかけに、いくつもの偶然が積み重なり、二人は恋に落ちる(「もしタマがミルクをこぼさなかったら…」)。風の強い日に、パンティが向かいのベランダに飛んでいったことが縁で、藍川奈都は入江敦広と出逢うことに(「パンティは風に乗って―」)。運命の恋を信じたくなる恋物語が満載。全ての短編を読み終えた瞬間に気がつく衝撃の結末。
『BOOK』データベースより。 もしあの時ああしていたらとか、こうしていなかったらこんな事にはならなかったかも、と云う割と誰にでも起こり得る現象が重なり合い、ハッピーな出来事に出会うある意味バタフライ効果的な男女の物語。偶然の連続の結果を運命と呼んで良いのなら、それは必然であるのかも知れません。 全体的に薄味で中身が希薄な気はしますが、まあたまにはそんな恋愛小説も悪くないでしょう。何かに付け「これは運命の出逢い」とか宣っているのが若干ウザかったりもしますが、それも恋に恋する乙女のあるあるだと思えば許容範囲ですかね。 最後にある仕掛けが施してあるのは秘密です。 |
No.1598 | 8点 | 密室は御手の中- 犬飼ねこそぎ | 2023/03/05 22:49 |
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事故によって弱体化した新興宗教『こころの宇宙』。瞑想中の修験者が密室をすりぬけ、山中で発見されたという逸話が数少ない拠り所だった。新たな密室殺人が起きるまでは――。第一期デビューの阿津川辰海のブレイクで注目を集める新人発掘プロジェクトKappa-Two、その第二期デビュー作。大胆なトリックと偽名の探偵の推理力に瞠目せよ!
Amazon内容紹介より。 Amazonでは賛否両論あるようですが、私は全面的に本作を支持します。まず、山奥にある新興宗教の拠点が舞台であるものの、そこまで狂信的とかではないので物語が安定しています。そして教団代表の少年がなかなか魅力的で、自ら探偵役を買って出て、女名探偵との実質的な対決の構図が見えてきます。これだけでも心躍るものがあり個人的にかなり好みの範疇に収まる事に。 そして丁度良いタイミングで起こる密室バラバラ殺人事件。更にテンポよく次の事件へと移行していき、その間に二人の探偵が活躍するという、絵に描いたような新本格ミステリのスタイルと言えそうです。 密室トリックは、これがなかなか難しくて捉え方が色々あると思います、過去にあったトリックのバリエーションと言えなくもないですが、私にとっては斬新だと感じられました。 ロジックも申し分なく伏線を回収していますし、動機の点でも評価に値するものだと思います。そして、二転三転する怒涛の展開や多重推理には心奪われました、何度も心中でアッと言わされたり思わずニヤリとさせられたりと、そりゃあもう心酔でしたよ。 |
No.1597 | 5点 | 時間島- 椙本孝思 | 2023/03/03 22:44 |
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「お前たちは島から生きて出られない」―廃墟の島『矢郷島』でのロケ中、突如送られてきた動画メール。『5年後の未来』にいるという『ミイラ男』が、ロケ参加者9名が皆殺しにされると予言する。やがてその言葉通り、出演者、スタッフが次々と殺されていく。誰が殺しているのか。なぜ殺されるのか。一体この島で何が起きているのか。息つく暇もない展開、予想だにしない衝撃の結末!異色ホラーミステリー。
『BOOK』データベースより。 冒頭これは期待できると思いました。時間島と呼ばれる所以が語られ、真面なミステリではないのかも知れない、しかしそれも仕掛けの一部だろうと受け取りました。それが裏目に出ましたね、ガチガチの孤島ミステリかと思わせておいて、実はサスペンスじゃん。しかも、最後には現実と乖離した独特の世界観を強引に見せられて、ちょっと期待を裏切られた感じでしたね。 ただミイラ男の正体には驚かされました。しかしそれだけ。私の頭が固いのか、単なる説明不足なのか、どうにも納得できないしこりの様なものが残りました。そしてご都合主義が酷くて、そんなに上手くいくものかという疑問やわだかまりを覚えました。後味スッキリとは真逆の結果に、出来れば読みたくなかったと大袈裟ですが思いました。 |
No.1596 | 5点 | 死ぬほど怖いトラウマTVマンガ大全- 事典・ガイド | 2023/03/01 22:57 |
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やたら過激だった80年代のアニメ
恐怖をあおり過ぎな覚せい剤の警告CM 殺人シーンが生放送された昔のニュース 本当は怖かった映画版ドラえもん…… 本書は、かつて見たテレビ番組やCM、マンガのなかから、 わたしたちの心に大きな傷を残した作品や放送事故、怪事件などを 年代順にまとめたものです。 Amazon内容紹介より。 1ページ或いは見開き2ページを使ってTV番組や映画、ゲームなどを紹介しています。中身はタイトル、サブタイトル、解説、作品の紹介、そして肝心の画像で構成されています。半分くらいが幾つかの画像で占められており、トラウマになりそうなものばかりを並べていますね。なりそうなというのは、私自身ほとんど観ていないものばかりなので、正直本当にそんなに恐怖心を煽るのだろうかと疑問に思うからです。 それでは掲載されている作品をほんの一部紹介します。 アニメから『天才バカボン』映画版『ドラえもん』映画版『北斗の拳』『まんが日本昔話』劇場版『エヴァンゲリヲン』『妖怪人間ベム』『ちびまる子ちゃん』『ダメおやじ』などメジャーからマイナーまで。 特撮ものから『ウルトラQ』『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンタロウ』『仮面ライダー』シリーズ『超人バロムワン』など。 TV番組から『笑っていいとも』『探偵!ナイトスクープ』『ねるとん紅鯨団』など。他はCMが多いですね。 たまに教育番組や『みんなのうた』なんかもチョイスされています。 内容は生首が転がる、手足がもがれるなどのスプラッター、所謂心霊現象的なもの、例えば何かしらの霊や不自然な人間の顔が映り込んでいたりするものなんかです。 一番感心したのは、というのも何か変ですが赤塚不二夫の『天才バカボン』ですね。これは何と言うか、ブラックユーモアかホラーか分かりませんが、とにかく作家らしい発想が素晴らしいと思いました。あのギャグ漫画でこれをやるのかというね。 |
No.1595 | 6点 | スメル男- 原田宗典 | 2023/02/28 22:59 |
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岡山から上京して東京の大学に通うぼく・武井武留は、母親を亡くした喪失感のためか、無嗅覚症になっていた。東大で作物の研究をしている親友・六川が、ぼくのために「臭い」の研究もしてくれるが研究所で事故死する。悲嘆にくれていると六川の恋人だったというマリノレイコが現れ、六川からぼく宛の荷物だと言ってシャーレを持ってきてくれる。マリノレイコによるとチーズの匂いがするというシャーベット状の中身に触ったときからぼくの身に異変が起こり始める。最初は犬が騒ぎ出し、次にはぼくの臭いを嗅いだ人がみんな嘔吐。住んでいるマンションに警察が調べに来たり、ついには東京都内を巻き込む異臭騒ぎにまでなってしまう。解決の糸口が見つからないまま、こんどは謎の組織に狙われることになり、なぜか味方になってくれた天才少年たちやマリノレイコといっしょの逃亡劇に!
Amazon内容紹介より。 SF、ファンタジーの要素を含みつつ、最初は些細な出来事から次第に大事に発展していく様は正にパニック小説ではないでしょうか。そしてその原因が主人公本人にあるという珍しい設定となっています。匂いを感じられないというのも結構難儀な物のようですが、事態はそれどころではなくなって、人前に出る事も叶わぬ程の臭さに苦悶します。しかも重要人物と思われた六川が早々に舞台から退場し、これからどうなるのかとやきもきさせられました。 全体的に抑揚に富み、ジェットコースター的な緩急が素晴らしくよく描かれていると思います。武井の一人称で描かれるため、彼の心理は手に取るように分かりますし、他の主要登場人物の個性も際立っており読み飽きるという事がありません。特にIQ200超えと400超えの天才少年が突如現れてから更に面白くなります。子供なのにまるで老成した大人の様な二人の振る舞いにちょっと感動してしまいました。 |
No.1594 | 6点 | ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件- 橋本治 | 2023/02/25 22:57 |
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長らく入手困難だった橋本治による幻の傑作が遂に復刊!!
僕、分ったんです。人を探るということは、実は、それと同じ分だけ、自分自身を探るということが必要なんだということに。 これが僕の探偵法、だったのです―― 1980年代、東京――東大出のイラストレーター・田原高太郎が、鬼頭家で起こった殺人事件の謎を解く、橋本治による青春ミステリーの傑作! Amazon内容紹介より。 これはアンチミステリの亜種でしょうかね。 同じ事を言葉を変えて二度三度繰り返し、しつこく念を押す表現方法が特徴的。くどいとも言います。加えて一章丸ごと使って私小説を書いてみたり、余分な東京の地下鉄の路線図を挿したり、色々捏ねくり回している印象が強いです。殺人事件自体は至ってシンプルで、謎めいたところもありますがそれほど魅力的な物ではありません。 後半で漸く主人公と刑事と下宿の私立の大学生による推理合戦が始まると思いきや、単なる捜査会議に終わってしまっているのは残念な限りでした。つまり、あらゆる可能性を論っているだけで、特に推理している訳ではなく、その辺りはアンチミステリとしてやはり弱いと感じました。もっと多重推理をやってくれないとダメですよ。せっかく盛り上がってきたと思ったら、脱線して興を削がれます。まあ読み易くはあったので、長尺があまり気になりませんでした。それが救いでしょう。 動機は分かったような分からない様な、ちょっとモヤモヤした読後感でした。『獄門島』+『犬神家の一族』の趣向は面白かったですけどね。 |
No.1593 | 6点 | 永遠のディーバ- 垣根涼介 | 2023/02/22 22:28 |
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リストラ面接官・村上真介の今度の相手は、航空会社の勝ち組CA、楽器メーカーでくすぶる元バンドマン、ファミレスの超優秀店長、おまけに、破綻した証券会社のOBたち。企業ブランドも価値観も揺らぐ時代、あなたは明日をどう生きる?全ての働き人たちにパワーを届ける、人気お仕事小説第4弾!
『BOOK』データベースより。 単行本『勝ち逃げの女王』を改題した文庫で読了。最初のCAを被面接者とする単行本表題作を読んだ時、流石にマンネリ化は避けられないとの思いを強くしました。どう見てもワンパターンで、しかも今回は面接官で主役の筈の村上の影が薄い。その分、各被面接者の人生模様が色濃く描かれており、人間ドラマとしては楽しめます。 本シリーズは次作で終わっているようですが、作者もこれ以上続けるのは色んな意味で難しいと考えたのだと思います。正解でしょう。好評だったシリーズですが、一つ外すと読者は離れていくものですからね。人気を保ったまま終止符を打ったのは英断だった気がします。と言ってる間にいきなり復活するとかのサプライズはあるかも知れません。しかし、最終作を読んでみて、この人がどんなピリオドを打ったのかが分からないまま、勝手な事を書いても意味がないのでこの辺りでお終いにしましょう。 |
No.1592 | 8点 | 名探偵のままでいて- 小西マサテル | 2023/02/19 22:46 |
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「認知症の老人」が「名探偵」たりうるのか?
孫娘の持ち込む様々な「謎」に挑む老人。 日々の出来事の果てにある真相とは――? 認知症の祖父が安楽椅子探偵となり、不可能犯罪に対する名推理を披露する連作ミステリー! Amazon内容紹介より。 第21回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。 基本的に私は『このミス』受賞作を信用していないので、なるべく敬遠するようにしています。しかし本作は何故か私の琴線に触れるものがある気がして購入しましたが、結果的にこれが大正解でした。面白い、いや面白過ぎる。ベースは日常の謎の範疇に収まる連作短編集だと思いますが、殺人など物騒なテーマを扱った作品も含まれており、単純に日常の謎に一括りにする訳にはいきません。 なにしろ、レビー小体型認知症を患いながら、孫娘楓の話を聴くや否や事件の全貌を視認して解決してしまう老人(おじいちゃんと呼ばれるだけで名前は不明)が凄いです。様々な毛色の異なる事件をあくまでロジカルに詰めていく本格ミステリ的趣向は、日常の謎と本格ミステリの融合を思わせます。ただ、第五章に顕著に現れていますが、どうしてそこまで見通せるのか、これだけの手掛かりしか与えられていない筈なのにというジレンマはありますね。 余談ですが、この作者は相当なミステリ愛好家の様で、随所にその愛着ぶりが見られます。そしてその幅広い知識は只者ではない事を匂わせます。それもそのはず、本作は鮎川哲也賞の最終選考まで残った作品を改稿しての受賞だから。 |
No.1591 | 6点 | 量子人間からの手紙 捕まえたもん勝ち!- 加藤元浩 | 2023/02/18 22:47 |
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元アイドルの捜査一課刑事・七夕菊乃と天才にして壊滅的な変人・アンコウこと深海安公。二人が挑むのは、密閉された倉庫や監視カメラの密林をすり抜けて殺人を犯す「量子人間」と、警察官僚の権力争い!?捜査の舞台はアメリカから日本へ。FBIもお手上げの連続不可能殺人を阻止し真犯人を追い詰めていく。ミステリ漫画界きってのストーリーテラーが放つ本格ミステリ第二弾!新感覚警察小説!
『BOOK』データベースより。 これ程不可解で不可能趣向の高い密室殺人ミステリは滅多に出会えるものではありません。特に第三の、厳重な警備の中何もない所から弾丸が飛び出して、防弾チョッキを通過して被害者の身体にめり込むという、とんでもない現象にはかなり興味を惹かれました。全四回に及ぶ密室殺人、七人に及ぶ被害者、非常警戒態勢の警察を嘲笑うように暗躍する見えない敵量子人間。この様に書くと物々しい雰囲気の怪奇趣味に溢れた作品と思われるかもしれませんが、そうではありません。意外と軽いタッチですんなり読める小説と思って下さい。 で、肝心の密室トリックですが、結論から言えば脱力系。ややバカミス系と言っても良いでしょう。緻密なようで意外と雑、それよりも警察の杜撰な捜査ぶりが目立って、ツッコミどころ満載です。普通に捜査していれば(特に鑑識)、簡単に絡繰りがほどけるはずですよ。 まあそんな事より真犯人の正体には驚きましたけどね。最後の最後まで謎のままで、結局そんな馬鹿な、みたいな結果に。ハウダニットよりもフーダニットとして楽しめました。 |
No.1590 | 6点 | ゴスロリ幻想劇場- 大槻ケンヂ | 2023/02/15 22:35 |
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ロマンティックで残酷。せつなくて思わず号泣!!『ゴシック&ロリータバイブル』の人気連載が一冊に。怪奇、不条理、愛、狂気、恋、永遠の可愛い夢。書き下ろしの短篇5本を含む、全15篇を収録。
『BOOK』データベースより。 冒頭からゴスロリのグラビア写真が何枚か掲載され、どれも可愛く改めてゴスロリファッションの魅力を実感しました。其処には当然モデルの質の高さがあっての事ではありますが。その勢いでロリの世界に引き込んでくれるのかと期待しましたが、実際それ程ではありませんでした。各掌編が主人公を含め、多くがゴシックロリータ様式の洋装をしており、しかしながら全く違和感がありません。まあ出来不出来の差は大きいと言えるでしょう。中身はオカルト、ファンタジー、メルヘン、探偵、殺人、可憐、儚さ等々で構成されており、まさに分類不能の短編集です。 十五篇収録されていますが、ほとんどがすぐに忘れてしまいそうであまり印象に残りませんでした。逆に言えば再読に耐え得る作品集、忘れた頃にまた読んで気分を新たに出来るものだと思います。 心に残ったのは『ゴンスケ綿状生命体』『戦国バレンタインデー』『月光の道化師』『奥多摩学園心霊事件』『爆殺少女人形舞壱号』。特にミステリ要素の最も強い『奥多摩』は短い中にぎっしりオカルティック・ミステリが詰め込まれていて最もお気に入りの一編となりました。 |
No.1589 | 5点 | チェスナットマン- セーアン・スヴァイストロプ | 2023/02/14 22:24 |
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コペンハーゲンで若い母親を狙った凄惨な連続殺人事件が発生。
被害者は身体の一部を生きたまま切断され、 現場には栗で作った小さな人形“チェスナットマン"が残されていた。 人形に付着していた指紋が1年前に誘拐、殺害された少女のものと知った 重大犯罪課の刑事トゥリーンとヘスは、服役中の犯人と少女の母親である 政治家の周辺を調べ始めるが、捜査が混迷を極めるなか新たな殺人が起き――。 Amazon内容紹介より。 まず文章が回りくどすぎて、兎に角じれったいです。そして衝撃のシーンでも生々しいシーンでも同じテンションで描かれていて、終始淡々とした文体で抑揚がありません。ですから長尺という事もありますが、大事な場面で読み落としそうになり、というか実際集中力が続かなかったのは否めません。 主役の刑事トゥリーンよりも相棒のヘスの方が好感が持てました。まあどっちもどっちですけどね。それ程人間描写に重きを置いていないと思いますし。 チェスナットマン(栗人形)の謎や手足の切断の理由などにはあまり期待しない方が賢明でしょう。何となく暈かしている感じもしますし、何らかのトリックがあるかと言われると・・・です。そして、意外な犯人かな?これ。そうでもなかった人すみません。 |