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[ 本格 ]
ウナギの罠
ドゥレル警部シリーズ
ヤーン・エクストレム 出版月: 2024年03月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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扶桑社
2024年03月

No.1 8点 nukkam 2024/03/31 11:08
(ネタバレなしです) 広告業界で成功を収めていたスウェーデンのヤーン・エクストレム(1923-2013)がミステリー作家として活躍したのは1960年代から1990年代前半にかけてで、1967年発表のドゥレル警部シリーズ第5作である本書(扶桑社文庫版)の巻末の作品リストにはわずか15作しか紹介されていませんが、スウェーデン・ミステリー・アカデミーの創設にも関わるなどスウェーデンミステリー界の重鎮と目されていたようです。本書は施錠されたウナギの罠の中で死体が発見されるというユニークな設定の密室殺人事件が扱われ、作者が「スウェーデンのカー」と称されるきっかけになった作品で、第3章では作者直筆の立体図で罠の構造が説明されています。しかし密室の謎解きに期待をかけ過ぎると前半は拍子抜けを感じるかもしれません。なぜなら罠は外から施錠する構造で、単純に犯人が鍵を持って行ったという仮説が成立するのです。中盤になって被害者の衣服のポケットから鍵が見つかってもドゥレルは別に予備鍵があるだろうと推理しています。しかしその可能性も否定されてついに強固な不可能犯罪の謎が立ちはだかり、第9章でドゥレルが密室トリックを次々に考案しては自ら否定していく推理の自問自答は密室好き読者ならきっとわくわくするでしょう。犯人当てとしても充実していて様々な証拠と証言が集められ、一体どれが真相につながるのか読者を大いに悩ませます。終盤の劇的な展開も印象的だし密室トリックも個性的、難点を挙げるならミステリー作品として注目を集めそうにないタイトルですがスウェーデン最高の本格ミステリーのひとつと評価されているのも納得の内容です。


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ヤーン・エクストレム
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