皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
nukkamさん |
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平均点: 5.44点 | 書評数: 2814件 |
No.1194 | 6点 | 「老いぼれ腰抜け」亭の純情- マーサ・グライムズ | 2016/05/18 12:20 |
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(ネタバレなしです) 1991年発表のリチャード・ジュリーシリーズ第11作の本格派推理小説です。前作の「『古き沈黙』亭のさても面妖」(1989年)同様に分厚い本ですが、前作に比べて格段に読みやすく感じたのは複雑な人間関係の中でも物語の中心人物をしっかり設定しているからだと思います。ジュリーの謎解き説明もこの頃の作品の中では丁寧に犯行を再構成していてわかりやすいものです。もっとも推理にはかなり苦しいところがあるし、中盤では一時退場にされてしまうなど脇役扱いとまではいわないまでも今回は結構ひどい扱い方をされています(笑)。結末が予想だにしない「荒々しい」決着の付け方で終わっており、これには読者も賛否両論かも。それだけに強い印象を残していることは間違いありませんが。 |
No.1193 | 6点 | その死者の名は- エリザベス・フェラーズ | 2016/05/17 19:59 |
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(ネタバレなしです) 英国の女性作家エリザベス・フェラーズ(1907-1995)は活躍時期がアガサ・クリスティー(1890-1976)とほぼ20年ずれています。70冊を越す多作家であること、80歳過ぎても精力的に作品を書き続けたこと、英米両国での評価も高いことなど質量共に間違いなくポスト・クリスティー作家の一人と言える存在のようですが、ほとんどの作品がまだ日本に未紹介でその実力を十分に確認できないのが残念です。本書は1940年発表のデビュー作で、全部で5作書かれたトビー・ダイク&ジョージの第1作です。この珍コンビシリーズはユーモアたっぷりの明るい本格派推理小説であることが特徴で、これはフェラーズとしてはむしろ異色です。犯人探しであると同時に被害者探しのユニークなミステリーで、なかなか凝った造りになっています。 |
No.1192 | 6点 | わが職業は死- P・D・ジェイムズ | 2016/05/17 19:42 |
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(ネタバレなしです) 1977年発表のダルグリッシュシリーズ第7作です(出番の少ない「女には向かない職業」(1972年)もシリーズ作品としてカウントしてます)。1970年代には4作品が発表されていますが、この時期の作品は登場人物が感情を抑制したような態度をとることが多くて感情移入しにくく、重厚で晦渋な描写とあいまって私の読解力ではとにかく読みにくかったのですがその中で本書は(あくまでもジェイムズ作品としてはですが)読み易いです。まず被害者がいかにも恨みを買いそうな嫌な奴だということが最初からストレートに伝わっています。そしてある人物が密かに抱いた復讐心や、別のある人物が終盤であげた悲痛な叫びなど感情をむき出しにする場面が随所にあります。派手な謎解きではありませんがちゃんと犯人当て本格派推理小説のプロットになっています。ただハヤカワ文庫版の粗筋紹介で「密室」を強調しているのは的外れだと思います(不可能犯罪の謎解きを期待してはいけません)。 |
No.1191 | 9点 | 赤後家の殺人- カーター・ディクスン | 2016/05/17 19:19 |
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(ネタバレなしです) 1935年発表のH・M卿シリーズ第3作の本格派推理小説です。ちなみに「赤後家」(The Red Widow)というのはギロチン(断頭台)の意味だそうです。この作者得意の不可能犯罪を扱っていますが、単に密閉された部屋での殺人というだけでなく死んでいるはずの被害者が部屋の外からの呼びかけに答えていたという状況設定は絶妙な謎づくりです。第9章で語られる、部屋にまつわる伝説も物語の雰囲気を盛り上げて効果抜群だし中盤では過去の事件のトリックがH・M卿によって明らかになりますが、しかしそのトリックは現在の殺人では使えないという展開もまた謎を更に深めていきます。無茶な点、不自然な点、都合よすぎる点など問題点もないわけではありませんが、冒頭の「いったい部屋が人を殺せるもんかね」というせりふだけで私はもう十分に「ごちそうさま」でした(笑)。 |
No.1190 | 7点 | 老人たちの生活と推理- コリン・ホルト・ソーヤー | 2016/05/17 18:55 |
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(ネタバレなしです) 米国の女性作家コリン・ホルト・ソーヤーはカリフォルニアの高級老人ホーム「海の上のカムデン」を舞台にしたコージー派の本格派推理小説シリーズを8作発表しました(中には違う場所が舞台となる作品もありますが)。その第1作が1988年発表の本書です。シリーズ第1作として重要なだけでなく異色の部分もあります。辛辣なアンジェラと冷静(?)なキャレドニアの2人が主人公で、特にアンジェラのキャラクターは個性的で目を放せません。この2人がアマチュア探偵として活躍するのがシリーズの基本パターンですが、本書が異色なのはさらに2人の仲間を引きずり込んで探偵カルテットとして活動していることです。取り組み姿勢は人によってばらつきがあって足並みが乱れ気味なのはロナルド・A・ノックスの「陸橋殺人事件」(1925年)をちょっと連想させます。猛進型のアンジェラとそれに引きずりまわされる他の人たちという図式がユーモラスに描かれていて面白いです。謎解きもかなり力が入っておりその代わり「コージーっぽさを前面に押し出していない」とminiさんがご講評されているのもなるほどと思います。個人的には謎解きも充実している貴重なコージー派と評価しています。 |
No.1189 | 6点 | 社交好きの女- レジナルド・ヒル | 2016/05/16 17:32 |
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(ネタバレなしです) 英国のレジナルド・ヒル(1936-2012)が1970年に発表したデビュー作で、ダルジールシリーズ第1作です。ダルジール(Dalziel)と発音するのは誤りでスコットランド風にディーエルと発音するのが正しいというのが後年の作品で説明されましたが、ダルジールで翻訳紹介した日本の出版社はその後も誤りを訂正することなくダルジールのままで次々に翻訳しています(作者は了承したのでしょうか?)。デブ、口が悪い、下品、でも頭は切れるし時には優しさも見せるという超個性的な探偵ですが本書では後年の作品に比べればまだまだおとなしく、独身者ならではの落ち着かなさを表している相棒のパスコー部長刑事の方が印象に残りました。カーター・ディクソンの某作品を連想させるようなトリックもありますが手掛かりの追求よりも事件関係者の人間関係や心理描写に力を入れた本格派で、捜査はするけれど推理はあまりないので謎解き好き読者にはちょっと物足りないでしょう。後年作に比べればシンプルなプロットで(ヒル作品としては)読みやすいです。 |
No.1188 | 5点 | 鑢- フィリップ・マクドナルド | 2016/05/16 17:11 |
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(ネタバレなしです) 英国を代表するファンタジー小説家ジョージ・マクドナルドを祖父に持つフィリップ・マクドナルド(1899-1981)が1924年に発表したミステリーデビュー作です。読者に対して手がかりを隠さず、フェアプレーを意識した本格派推理小説の先駆的作品であるという歴史的意義はあります。しかしトリックやプロット自体はそれほど特筆するものはなく、E・C・ベントリーの「トレント最後の事件」(1913年)と同じく、現代読者にとっては何がよいのかよくわからない作品になってしまったかもしれません。本書で私の印象に残ったのは、ゲスリンが犯人を混乱させて自白に追い込むきっかけになった偽の解決です。これが実に大胆で衝撃的な解決で、それに比べると真相の方は陳腐で魅力ありません。もしも偽の解決を真相にするような工夫ができていたら、この作品の価値はもっともっと高くなっていたと思います。 |
No.1187 | 6点 | シシリーは消えた- アントニイ・バークリー | 2016/05/16 16:58 |
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(ネタバレなしです) 本書は1927年に別名義で出版されたため、バークリーの作品であることが一般に認知されたのは作者の死後だったといういわくつきの作品です。元々は「読者への挑戦付き」の作品だったそうですがガチガチの謎解き小説ではなく(トリックも大したことありません)、むしろ爽やかな冒険ロマン小説の香りを楽しむべき本格派推理小説です。ユーモアもロジャー・シェリンガムシリーズのような皮肉混じりのではなく、ストレートに微笑ましい雰囲気を演出していますので読みやすさは抜群です。 |
No.1186 | 5点 | 私が見たと蠅は言う- エリザベス・フェラーズ | 2016/05/16 16:11 |
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(ネタバレなしです) 第二次世界大戦後のフェラーズの創作はシリーズ探偵の登場しない作品が多くなります。1945年発表の長編第6作である本書はその嚆矢となった作品です。アパートの床下から拳銃が発見され、前の住人のナオミ・スミスが疑われるがそのナオミが殺され、問題の拳銃が凶器だったことがわかるというプロットです。容疑者であるアパートの住人たちはそれなりには個性的ではあるのですがその描写はどこか抑制されているように感じられます。終盤になるとこの住人たちが次々に「犯人がわかった」と自説を披露する、本格派ファンがわくわくしそうな展開になりますが、こういうのを得意にしたクリスチアナ・ブランドに比べると推理があまりに粗すぎて当てずっぽうと大差なく感じられるのが謎解きとして弱いです。 |
No.1185 | 5点 | フランス鍵の秘密- フランク・グルーバー | 2016/05/16 14:36 |
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(ネタバレなしです) 米国のフランク・グルーバー(1904-1969)は1930年代にパルプ・マガジン作家として膨大な量の短編小説を書いて成功、1940年代からは長編小説にも力を注ぐようになり、晩年の自伝(1967年発表)によると長中短編の小説、脚本、伝記本など合わせて1000作近い作品を書いた多作家です。長編ミステリーで特に人気の高かったのが、ジョニー・フレッチャー(頭脳派)とサム・クラッグ(肉体派)のセールスマンコンピのシリーズ(全部で14作)ですが、執筆にあたって作者がベンチマークにしたのがE・S・ガードナー(ペリイ・メイスンシリーズ)とジョナサン・ラティマーということもあって速いストーリーテンポ、ユーモア、そして本格派の謎解きがミックスされたハードボイルドになっています。本書は1940年発表のシリーズ第1作で映画化もされた代表作です。ハードボイルドならではのアクションシーンもありますがフーダニットとしての興味も最終章まで保たれていて、最後はジョニーによって事件の真相がかなり詳細に説明されます。もっとも推理が十分に語られているわけではなく、はったり気味に犯人を追い詰めるので本格派として評価すると採点が辛くならざるを得ませんが。 |
No.1184 | 5点 | 海の秘密- F・W・クロフツ | 2016/05/16 03:14 |
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(ネタバレなしです) 1928年発表のフレンチシリーズ第4作です。英語原題も「The Sea Mystery」ですがその割に海の場面が非常に少ないのは期待はずれと思う読者もいるでしょう。とはいえ釣りをしていた親子が死体が詰められた箱を発見し、ほとんど手掛かりらしい手掛かりのない死体からフレンチが被害者の身元に迫っていく前半の展開は「足の探偵」の本領を十全に発揮したものです。一方後半はフーダニット型の本格派推理小説となりますがこちらはやや平凡な出来で、ミステリーを読み慣れた読者には犯人当てとしては容易過ぎると感じるかもしれません。 |
No.1183 | 10点 | フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン | 2016/05/16 02:14 |
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(ネタバレなしです) 1945年に発表された本書は、架空の町ライツヴィルを舞台にした作品としては「災厄の町」(1942年)に続く作品で、内容的にも互角の傑作です(エラリー・クイーンシリーズ第17作)。有罪判決が出て一応の解決を見た事件をエラリーが再調査するというプロットはアガサ・クリスティーの名作「五匹の子豚」(1943年)を髣髴させます。登場人物がよく描けていてホームドラマとしても大変良くできていますし、事件の真相についてのクイーンの推理もお見事としか言いようがなく、鮮やかなどんでん返しから粋な終わり方に至るまでの展開には文句のつけようもありません。本書以降のクイーンは本格派推理小説としての水準が大きく落ちてしまい、しかも他人による代作もいくつかあるなど個人的にはクイーンは「残念ながら本書で一流作家時代は終わってしまった」と思っています。 |
No.1182 | 6点 | 緑のカプセルの謎- ジョン・ディクスン・カー | 2016/05/15 00:00 |
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(ネタバレなしです) 1939年発表のフェル博士シリーズ第10作はカーが得意とする密室や足跡のない殺人でなく、容疑者の大半にアリバイが成立してアリバイ崩しに挑んだ珍しい作品です。まあ鉄壁のアリバイだって一種の不可能トリックには違いないし、クロフツのアリバイ崩しミステリーと違って犯人当てとちゃんと両立させています。心理実験に隠された様々なトリックや落とし穴が謎解きの面白さを倍増させているのはさすが巨匠ならではの趣向です。また「三つの棺」(1935年)の「密室講義」ほどは有名ではありませんが、本書では「毒殺講義」があるのも興味深いですね。 |
No.1181 | 7点 | 骨と沈黙- レジナルド・ヒル | 2016/05/14 22:53 |
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(ネタバレなしです) 1990年に発表されたダルジールシリーズ第11作で、1991年のCWA(英国推理作家協会)ゴールド・ダガー賞を受賞しています。ダルジールが巻き込まれた死亡事件の他に、ダルジール宛てに次々に送られる自殺を予告する手紙の主をパスコーが探す物語、ダルジールが何と「神」の役を演じることになる聖史劇の話などが複雑にからむプロットです。死亡事件に関しては犯人当ての要素は全くなく、有力容疑者の尻尾をつかもうとしつこく追い回すダルジールと容易にはダルジールの挑発に乗ってこない手強い相手との駆け引きを楽しむ内容となっています。手紙の書き手探しの方がまだしもフーダニット要素がありますが、こちらも終盤には場当たり的に「お前が犯人だろ」告発が連発され、通常の本格派推理小説とは全く色合いの異なる結末を迎えます。実のところミステリーとしては大した作品ではないような気がしますがそれぞれの物語がそれぞれに面白く、シリーズ作品の中では個人的には結構気に入ってます。 |
No.1180 | 7点 | 旅人の首- ニコラス・ブレイク | 2016/05/14 22:35 |
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(ネタバレなしです) 1949年に発表されたナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ第9作の本格派推理小説で、首発見の場面を読んだ時にはこの作品は島田荘司の「暗闇坂の人喰いの木」(1990年)に影響を与えたんじゃないかと思いました(多分違うでしょうけど)。首なし死体の事件を扱っていますが島田作品のように不気味な雰囲気が全編を支配するわけではなく、時にはユーモアさえ混ぜています(死体発見の電報のやりとり等)。無論犯人当て本格派推理小説としてのツボはしっかり抑えてあって、どんでん返しもなかなかの切れ味です。そして最終章でのナイジェルの悩みも印象的です。読者も一緒に悩みましょう(笑)。 |
No.1179 | 7点 | 死体が多すぎる- エリス・ピーターズ | 2016/05/14 22:19 |
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(ネタバレなしです) 本書のminiさんのご講評で「物語中心の本格というのもありだと思う」とこのシリーズを統括評価されていますが私も賛成です(謎解きの魅力がないことの免罪符乱発になっても困りますけど)。1979年発表のカドフェルシリーズ第2作の本書の場合はどうでしょう?作中時代は1138年8月、94人の戦争捕虜を処刑したはずなのに埋葬のためにカドフェルたちが調べると死体が95体あったという発端は非常に魅力的です。しかし余分の死体の正体はあっさりと判明します。書き方によってはここにもっとページを費やすことも可能でしょうがそこはピーターズ、どんどん話を進行させます。前作の「聖女の遺骨求む」(1977年)が神秘宗教劇的な要素が強かったのに対して本書は冒険小説的な要素が強いです。特にカドフェルとある登場人物〇〇との、財宝を巡っての虚々実々の駆け引きは見事な出来映えです。犯人当てとしては弱く、ある登場人物が指摘したように論理的関連のない推理ですがストーリーの面白さは抜群で、結末の弱点をカバーしています。 |
No.1178 | 6点 | 検事出廷す- E・S・ガードナー | 2016/05/13 17:23 |
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(ネタバレなしです) 1940年発表のダグラス・セルビイシリーズ第4作です。事故死した(殺されたかもしれない)浮浪者の正体がなかなかわからないため、利害関係のもつれなのか愛憎関係のもつれなのかさえもとらえどころのない事件にセルビイ、大苦戦です。弁護士となったアイネズ・ステープルトンにも苦しめられます。セルビイの失脚を狙う連中に解決に手こずっているところを見せるわけにはいかず、同時に間違って逮捕もいけないと行動的ながら慎重なセルビイにシルビアならずともはらはらします。地味な捜査で少しずつ事件の全貌を明らかになる一方、どんでん返しも狙うという難易度の高い謎解きに挑んでいます。なお法廷場面は意外と短く終わってますし、そこで事件は解決しません。英語原題は「The D.A. Goes to Trial」ですが、ハヤカワポケットブック版の巻末解説で説明されているように「Go to Trial」という言い回しは出廷以外の意味でも使われるようですね。 |
No.1177 | 6点 | ある殺意- P・D・ジェイムズ | 2016/05/12 18:55 |
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(ネタバレなしです) 1963年発表のアダム・ダルグリッシュシリーズ第2作の本格派推理小説で、本書では警視に昇進しています。後年の作品に比べると本格派の謎解き要素が濃厚な作品で、結末のどんでん返しがなかなか鮮やかです。ただ「女の顔を覆え」(1962年)が家庭という極めて限定された世界を描いて背景が理解しやすかったのに対して、本書では診療所内の様々な人間関係が整理しきれず難解な印象を与えているのは否めません(それでも後年作に比べればまだまだ読みやすいですが)。 |
No.1176 | 5点 | 聖女の遺骨求む- エリス・ピーターズ | 2016/05/12 18:49 |
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(ネタバレなしです) 歴史ミステリーというジャンルはあのジョン・ディクソン・カーがパイオニアと言われていますが、シリーズ探偵を設定しなかったことが災いしたのかその時は人気を博するというところまでにはいかなかったようです。しかしウンベルト・エーコの「薔薇の名前」(1980年)やこの修道士カドフェルシリーズの成功により歴史ミステリーは市民権を得て、今では色々な作家が書くようになっています。1977年発表の本書はカドフェルシリーズの記念すべき第1作で、フーダニット型の本格派推理小説です。舞台は12世紀の英国(本書では1137年5月)ですが、さほど歴史に強くなくても十分に楽しむことができます。クリスティーを彷彿させるようなストーリーテンポが心地よく、なるほど幅広い人気があったのも納得できます。ただ謎解きとしては、ある容疑者に動機があり犯行機会があるのがわかっただけで解決へと持っていくのが強引で、やはり何かしらの決定的手掛かりが欲しかったです。 |
No.1175 | 8点 | スタイルズ荘の怪事件- アガサ・クリスティー | 2016/05/12 18:07 |
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(ネタバレなしです) 問答無用のミステリーの女王、英国のアガサ・クリスティー(1880-1976)の1920年発表のデビュー作がエルキュール・ポアロシリーズ第1作の本書です。実は1916年には既にほぼ完成されていてあちこちの出版社に送ったけど全く陽の目を見ず、ようやく1920年になって出版されたそうです。粗削りな部分がないわけではありませんが、時代を考えるとかなりハイレベルな本格派推理小説だと思います。登場人物の間を容疑が転々としていく展開が見事で、謎づくりの巧妙さと謎解きの面白さが早くも発揮されており、E-BANKERさんが「デビュー作とは思えないほどのクオリティ」、miniさんが「クリスティーはデビュー時からクリスティーだった」とご講評されているのに私も賛成です。本格派黄金時代の幕開けを飾る作品と評価されるにふさわしい作品です。 |