皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ クライム/倒叙 ] 真実の問題 |
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C・W・グラフトン | 出版月: 2001年01月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
国書刊行会 2001年01月 |
No.1 | 5点 | nukkam | 2016/05/30 21:33 |
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(ネタバレなしです) C・W・グラフトン(1909-1982)は中国生まれの米国人作家で、女性探偵キンジー・ミルホーンシリーズで有名なハードボイルド作家スー・グラフトンの父親としても知られます。もっとも彼自身のミステリー作品はわずか3冊で(他に非ミステリー作品が1冊)、作家よりも弁護士が本業だったため知名度ではスー・グラフトンには遠く及びません。1950年発表の本書は彼の最後のミステリー作品ですが、過去の2作品が本格派推理小説らしいのに対して本書は犯罪小説に属する作品です。通常の犯罪小説は犯罪に至るまでを長々と描くか、逮捕されるかうまく逃げ切るかの警察や探偵とのかけひきをスリリングに描くか、この2つのパターンが多いと思います。ところが本書の場合は逮捕されてから以降をメインにしているのがユニークです。この種の作品を楽しめるかは犯人である主人公に共感できるかどうかが重要だと思うのですが、微妙に心理描写をぼかしたようなところがあって好き嫌いが分かれそうです。なお国書刊行会版の巻末解説は非常に充実していますが、「いかにして無実を勝ち得るかというハウダニット」と謎解き要素をアピールしているのはかなりの拡大解釈で、読者として謎解きに参加できたという実感は湧きませんでした。 |