皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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miniさん |
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平均点: 5.97点 | 書評数: 728件 |
No.248 | 8点 | 葬儀を終えて- アガサ・クリスティー | 2010/11/11 10:06 |
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クリスティに関してはどうも私は当サイトでの空さんの評価と合わない傾向があって、戦後の有名作だと空さんは「予告殺人」に対しては擁護派で、この「葬儀を終えて」に関しては辛口で厳し目の御意見ですが、私は全く逆ですね
実を言うと私は真相は中途で見破っちゃった まぁ単なる直感なんだけど臣さん同様に最初に犯人に気付いた 一応クリスティという作家の癖を知っていたので、犯人は絶対こいつしかないと中盤で確信しちゃった 犯人から逆算して考えると当初のある前提について180度見方が変わる事に気付いて、さらに大胆なトリックが使われた可能性を疑った まぁ正直言うと、当初のある前提については、案外と単純にミスリードなんじゃねえのと序盤から多少は疑惑は感じてんだけどね、私も初心者じゃないからね 以上の思考順序から直感ではあるがほぼ完璧に真相は分かった しかしなんである、真相は見破っちゃったが、がっかりするどころか技巧の冴えに驚嘆せざるを得なかった 当サイトで臣さんもミスディレクションに感心しておられますが、私も臣さんに全く同感ですね 「葬儀を終えて」は例えば「ホロー荘」のような人間ドラマ的魅力や感動には全く欠けていて、とにかく技巧だけが目立つ作である そうなると方向性としては本来の私の嗜好では無いのだが、ここまで技が熟練したら褒めるしかないだろう 中心となるトリックも昔からあるトリックだが、しかし使い古されたトリックでも要は使い方次第であり、上手く使えばこんな傑作に仕立てられるのだという円熟の境地を見せられた思いだ 私は慣れた読者だから見破ってしまったが、初心者では多分見抜くのは難しいだろうね あともう一つ、私はCCの館ものや一族ものという設定に何の魅力も感じない性格なんだけど、この作品では冒頭に掲げられたあれも含めて設定自体がミスリードになっているのも好感を持った理由の一つ まぁ一族ものという設定にこれ以上言うとネタバレになるから止めとこ |
No.247 | 3点 | ゼロ時間へ- アガサ・クリスティー | 2010/11/10 10:07 |
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クリスティの有名作の中で私がとても嫌いな作品が何作か在る
以前に書評書いた「三幕の殺人」もそうだが、「ゼロ時間へ」も気に入らない1冊 この”ゼロ時間”という言葉が実に魅力的で読む前は期待したのだが、読後に期待は大きく裏切られた こんなつまらない真相だったとは 実はこの根本的な発想には、レオ・ブルースの某作に前例が有るんだよな ネタバレになるから作品名は明かせないが、レオ・ブルースの某作の方がたしか発表年は早いはずだし、内容的にもブルースの方がこの仕掛けの使い道が上手いし また人物描写もちょっと難 いや決して人物描写が弱いんじゃないよ、弱くはなくてむしろこってりと登場人物が描かれている 私は物語性主体なのが全然苦手じゃないし、パズル性だけを求めるようなタイプの読者では絶対に無い しかしだねぇ今作では物語性が良い方向に働いてなくて、ただ読者をうんざりさせるだけに終わってる感じで、定評ある作だが私には失敗作にしか思えなかったな ところで今回の主役はバトル警視 これは仕方ないよな、この話は探偵が推理を失敗する必要がある設定なので、ポアロやマープルを使うわけにはいかないしトミー&タペンス向きの話でもない、ましてや国際陰謀譚じゃないからレイス大佐ってわけにもいかんし 結局使えそうな探偵役がバトル警視だったのは納得出来る |
No.246 | 6点 | 江南の鐘- ロバート・ファン・ヒューリック | 2010/11/04 10:15 |
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冬近い晩秋、第3の赴任地に赴いた狄(ディー)判事は、公務引継ぎ書類の中からとある強姦殺人事件に目を留める
一方で副官達は町の噂に、地元の名刹である寺で、子宝に恵まれない女性が一夜を過ごすと懐妊するという奇妙な話を聞き込む これが判事に難題を突きつけることになろうとは・・ 前期5部作らしく今回も例によって3つの事件が発生し同時進行で解決するわけだが、今回が前期の他の作と違うのは、3つの事件の関連性が極めて薄い点だ 他の前期5部作では真相は別でも登場人物が微妙に絡んだりと多少なりとも関連性があったのだが、今回は独立性が強い 人間関係も相互に関連せず、3つの事件をそれぞれ個別に順次解いていく感じなので、シリーズの中ではやや多い分量の割には話の展開が分り易い 半面、良い意味での複数の話が複雑に絡み合う面白さには全く欠けているので、この辺は評価が分かれよう またポケミスの帯で”シリーズ史上最大の難事件”とあるのも大袈裟 事件の解明が難しいのではなくて、寺の妊娠事件を解決するには政治的に難しい側面が有るという意味で、謎解き面での難事件を期待すると方向性が違う 政治的な難題だったら「水底の妖」の方が国家転覆の陰謀だけに余程大事件だ ここまで書くと欠点だらけみたいだが、個々の解明などは面白く、事件が大袈裟な割には竜頭蛇尾な「水底の妖」よりはこの「江南の鐘」の方が私は好きだ ただし人間ドラマ的な要素が嫌いな読者には「水底の妖」の方が合うだろう |
No.245 | 6点 | 夜と昼- エド・マクベイン | 2010/11/01 09:58 |
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発売中の早川ミステリマガジン12月号の特集は、”警察小説ファイル13”
変り種の警察小説の書評を2冊書いたから、1冊位は正攻法なのも入れとかないとね(苦笑) ”モデュラー型警察小説”という分野がある、複数の互いに無関係な事件が起こり、同時進行で捜査が進められるというスタイルだ ギデオン警視シリーズで有名なJ・J・マリック(ジョン・クリーシーの別名義)が発明したと言われているが、おそらくこの分野に最も資質が合っていたのはマクベインではあるまいか 「殺意の楔」なども2つの事件が同時進行で語られるが、「夜と昼」はこのモデュラー方式を極限まで推し進めた作だ 多数の事件が発生するが、それらは一切互いに関係は無く個別に解決されるので、複数の事件の関連結び付きを期待するような読者には全く向いていない 要するに87分署の1日24時間の警察業務の日常はこうなんですよ、というドキュメンタリーな手法だ 「夜と昼」という題名も、勤務時間の交替からきていると思う しかしねえ、マクベインという作家に案外とリアリズムな印象を受けないんだよな私には よく警察活動の実態をリアルに描く作家として紹介される事の多いマクベインだが、たしかにテンポの良さはあるが、それがリアリティに繋がっているかってえーとちょっと疑問 極論すればむしろ”メルヘン調お伽噺”っぽく感じる時すらある この作品もリアルな感動を期待するような話とは対極の、ただただテンポとリズムに酔いしれるといった趣だ |
No.244 | 7点 | あなたに不利な証拠として- ローリー・リン・ドラモンド | 2010/10/28 10:10 |
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発売中の早川ミステリマガジン12月号の特集は”警察小説ファイル13”
便乗企画として正攻法でないちょっと変わった警察小説の2冊目 アメリカでは犯人逮捕の際、黙秘権がある事と”あなたの発言は法廷で不利な証拠になる場合がある”事を警察側が告知する義務があって、これを”ミランダ告知”と言う まるで形式論ではあるが、これを怠ると被告側弁護団から重箱の隅をつつかれて最悪の場合は逮捕自体無効になる時もあるのだと言う アメリカという社会はそうした裁判の手順にはすごくうるさいらしく、リーガルサスペンス小説などでは事件や訴訟内容よりも、裁判の手続きの方が重要視されたりするのものもある 題名はこのミランダ告知から採ったものだ この作品は女性警官だった経歴の著者が、警察内部に居て感じたことを赤裸々に綴った形式の徒然草である それも軽妙ではなくて重いテーマの徒然草だが 警察小説というジャンルにすら属さない小説かもしれない ネット書評などでは、ただひたすらつまらない、という評価もあったが、そりゃ物語性を求め過ぎな書評だな、徒然草だと思って読めば別につまらなくはない 正直言うと、前半のエッセイ風の話の方が面白くて、かえって後半に物語性が高まると悪い意味で創り過ぎな印象を持ったくらい しかしだね、この作品を本当に書評出来るのは銃社会のアメリカで元警官の経験のある人だけなんじゃないかと思えてきた 私にゃ無理だ、私に言えるのはこの作品が”文春とこのミス2006年度1位”であり、いかにも1位を取りそうなタイプの作品だという事、それだけ |
No.243 | 7点 | イマベルへの愛- チェスター・ハイムズ | 2010/10/25 10:04 |
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ウォルター・モズリイみてぇなブルジョワ野郎が後に登場するが、黒人ミステリー作家の先駆者はハイムズだぜ
ハイムズだって黒人としちゃあ中流家庭の生まれだったかも知らねぇけど、強盗罪で服役中に小説を書き始めるたぁ筋金入りだぜ ハイムズと言ったらハーレムの番人の棺桶&墓堀りだぜ、奴らは気に入らねぇと特製38口径リボルバーをブッ放しちまうのさ 棺桶エドと墓掘りジョーンズのコンビは最高だぜ 代表作「リアルでクールな殺し屋」は確保してあるんだが、前に古本屋で角川文庫「ロールスロイスに銀の銃」が100円で売っていたのを見かけたがその時ゃスルーしてしまったのさ 後日行ったら見事に無かったぜ、大魚を逃した気分だった、目を付ける奴は居るもんだと思ったぜ このサイトで俺も登録しようかとかなり以前から思ってたんだが、書評書いても誰も注目しねぇ作家だろうと後回しにしてたら、他の書評者によって登録されるとは予想してなかったぜ kanamoriさん”Good job!”だぜ |
No.242 | 7点 | 新海外ミステリ・ガイド- 事典・ガイド | 2010/10/21 10:12 |
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現在は加筆した改訂版がハードカバーで出ているが、私は古本屋で見付けた旧文庫版で読んだ
改訂版はその後に登場した作家などを加えて増補しているみたいだが、基本的な部分は大きくは変わっていないようだ、まさに仁賀ワールド全開 私はこの種のガイド本に個々の作品紹介などは求めてはいないし、紹介文に魅力を感じてその本を探すという事も無い あくまでもガイド本に求めるのは作家の位置付けであり、ミステリーの歴史の中でどの潮流に属するのかだけを知りたい性格なのだ 評価は自分で判断するので、個々の作品の評価などにはあまり興味は無い、まぁ一般的にこの作家だったらどれが代表作と言われているのかは知りたいが 何が言いたいのかと言うと、このガイド本はまさしくそういう本なのだ とにかく広く浅く、個々の作品についての深い考察などはほとんどない まずミステリーの歴史の中で各ジャンル毎の潮流が体系的に述べられ、その潮流に属する作家の顔触れが編年体式に紹介され、それぞれの作家の代表作はこれです、みたいな体系的手順になっている 全くのミステリー初心者相手にはこれでいいと思う、いやこの手のガイド本こそ必要でしょ 昨今はさぁ、ミステリーの歴史的展開など基本を理解してない読者が多過ぎ、例えばハードボイルドという言葉をアクション活劇小説と同義だと思い込んでる誤った解釈がまかり通ったりさ クレイトン・ロースンなんかもさぁ、単に密室などの不可能犯罪系専門作家としか認識していない人が多くてなぁ、ロースンやハーバート・ブリーンなどはアメリカン本格が衰微していって貧血症状を起こしていた時期の作家なんだよな このガイド本ではその辺の歴史的経緯が分かり易く説明されているし、いかにも仁賀克雄らしさが良く出ている入門書だ ただ唯一の欠点である、臣さんが御指摘の巻末索引の欠如には全くもって同意です 例えば早川のハンドブックは巻末索引にかなりのページ数を割いているが、早川のは本文が作家作品毎に分類整理されており、そうした構成なら索引の必要性は少ない しかしこのガイド本は、箇条書きではなくて文章の流れで全編解説しているスタイルなので、こうした手法こそ巻末索引が無いと不便で仕方が無い つまり読物としては良いが、事典的な使用に適さないのだ |
No.241 | 7点 | 怪盗ゴダールの冒険- フレデリック・アーヴィング・アンダースン | 2010/10/18 09:31 |
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kanamoriさんがアンソロジーでお読みになられたのは「ドアの鍵」か「幻の宿泊客」かあるいは女盗賊ソフィ・ラングものの「贋札」のどれかだと思いますが、私が最初に読んだのは『クイーンの定員』収録作「ドアの鍵」で、この時の衝撃は忘れられない
思わせぶりな序盤から話は予想とは全く違う方向に進んで行く様に、この作家はプロット構築能力が無いのではないかと疑ったものだ 後にF・I・アンダースンとはそういう作家なのだと判明した 起承転結じゃなくて”起転承承”って感じで、途中からはマトモな展開になるんだけど、出だしだけがわざと本筋とは違う書き方をするのが持ち味 結が無いのはラストも話を途中で打ち切ったかのような唐突な終わり方で、合わない読者は最後まで合わないだろうが、私にはこの変な展開が魅力の作家なのである ミステリー史的に重要だったり人気作家なのに、日本での紹介が今まで完全に遅れていた作家は枚挙に暇が無いが、アンダースンも第1次大戦後当時は人気作家であり、ホームズのライヴァル時代の古い作家の中でも本来はもっと早く纏まった形で訳されるべきだった この短篇集が現在新刊で容易に手に入る状況にもっと日本の読者は有難味を感じるべきだ 本音を言うと出来れば『怪盗ゴダール』ではなくて、クイーンの定員にも選ばれた短篇集『殺人教書』にして欲しかったな、「ドアの鍵」も含まれているし お屋敷もの館ものが嫌いなので、ジェームズ・アンダースンは未読だし今後も読まないかも知れない ミステリー作家でアンダースンと言えば、ジェームズ・アンダースンなんかじゃ決して無くて、私にとっては永遠にF・I・アンダースンを指すのである |
No.240 | 5点 | 快盗タナーは眠らない- ローレンス・ブロック | 2010/10/15 09:38 |
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kanamoriさんの御指摘で気が付いた、そうか”怪盗”ではなくて”快盗”なのか、いくら最終的に宝物を盗むのが目的とは言えどうも題名が合わないと思ったが、”快”なら納得
ローレンス・ブロックは名が売れるまでに時間がかかった作家だが、マット・スカダーと泥棒シリーズ以前の最初期に書かれたシリーズだ しかしそこは流石の天才小説職人ブロック、抑揚を抑えた流れるような筆運びはベテラン作家かと思うほど 職人肌の作家と言えば、E・S・ガードナーがメイスンものを書く以前の初期に、怪盗レスター・リースを書いていたのを思わせる 特異な人物造形だが、類推だけど先にプロットありきで、このプロットの為には数ヶ国語が話せる必要上、このような現実離れした人物を創造したのではあるまいか スパイ小説全盛期の1960年代の作なので、もしかしたら出版エージェントからスパイものの執筆を依頼され、でも一筋縄ではいかないブロックだけに、こんなの書いちゃいました、って感じ 目的は宝探しのインディ・ジョーンズ風、展開は起承転結など有って無しがごときの起転転転、政治思想などのテーマ性が有る様で実はそんなの関係無く、読んでる間だけ面白けりゃ良いだろうって割り切り感 6点以上付けられる名作では無いが、4点以下を付けるほどつまらないかってぇーと面白いっちゃぁ面白い kanamoriさんも私も5点を付けたけど、他の誰が読んでも5点位になりそうだなこりゃ |
No.239 | 5点 | 二人で泥棒を -ラッフルズとバニー- E・W・ホーナング | 2010/10/12 10:07 |
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ホームズのライヴァルではなく、ルパンのライヴァルと言う方が正しいのだろう
しかしホームズとは縁があって、作者ホーナングはドイルの妹と結婚しており、つまりドイルの義弟なのだ 昔々、創元文庫が”ホームズのライヴァルたち”という企画を立ち上げた頃、この「ラッフルズ」も予定に入っていたらしい ところが創元にありがちな予告だけして幻に終わる結果だった 月日が流れて論創社から全3巻というほぼ完全版で刊行された時は驚いた ただ内容的には時代性を考えてもイマイチで、創元が手を引いたのもそれが原因かなと邪推したものだ でもやはり時代性の考察抜きでラッフルズを語ることは出来ない 何故ならラッフルズはルパン登場に先立つこと数年前、おそらく短篇集に纏められた世界最初の怪盗ものだったからだ ここで”短篇集に纏められた”とくどい注釈を付けたのには理由が有り、雑誌に短篇が掲載されたのならグラント・アレンの「クレイ大佐」ものの方がさらに早い しかし「クレイ大佐」は短篇集に纏められたのが遅れた為、単行本的には「ラッフルズ」の方が刊行年が早いので、「ラッフルズ」のミステリー史的重要性が割り引かれることは無い 「怪盗ルパン」とは数年の差が有るので、英仏の言葉の壁があるにせよ、ルブランが「ラッフルズ」の存在を知らなかったはずは無く、「ルパン」とは内容的に全然似てないのだけれど、それは英仏両国民性の違いであって、全く影響されてなかったとは言えないと思う とにかく「ラッフルズ」は英米では「ルパン」と肩を並べる怪盗の先駆として今でも名前が残っている存在で、それが理解されてないのは「ルパン」だけが世界的人気で「ラッフルズ」をマイナーだと誤解している日本だけだろう 「ルパン」って日本以外では案外とそれほど人気があるわけじゃないと聞いた事があるし、ルブランがフランス人だけに英国では「ルパン」<「ラッフルズ」らしい |
No.238 | 4点 | 死刑台のエレベーター- ノエル・カレフ | 2010/10/08 09:49 |
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明日10月9日に映画「死刑台のエレベーター」が、吉瀬美智子・阿部寛らの主演で封切り公開される
元々はフランス版の有名な映画で、リメイク版が制作されるのは日本が初 またオリジナルのフランス版も改訂版の映画が制作され、こっちも明日から公開予定らしい 原作者ノエル・カレフは、ミシェル・ルブランやジャプリゾらと並ぶフレンチ・サスペンスの王道を行くような作家の1人である 「死刑台のエレベーター」は有名な作品なので名前だけはかなり昔から知ってはいたが、映画公開に合わせて最近読んだ 映像作品を先に観てから原作をおさらいするという順序は嫌いなのでね、私は必ず原作を先に読む 創元文庫の紹介文はちょっと誤解を招くんじゃないかな 紹介文ではさ、”エレベーターからやっと脱出できた男に殺人容疑が”ってなってるけど、これではさぁ、その後の展開がどうなるのかって話に思えるでないの ところがさぁ、その紹介文が全体の全てなんだよ(苦笑)、つまりさ、エレベーターからの脱出は終盤で、閉じ込められてる間に何が起こったかって話なわけ それに脱出も自力ってわけじゃないし、まぁこれ以上はネタバレになるから言えないが でさ、そのエレベーターの中に閉じ込められた男の視点で終始語られるんじゃなくて、複数多視点ものだし、別の若い男女カップルの話が結構分量を占める 要するにエレベーターにサスペンスが凝縮してるんじゃなくて、複数の人間たちのドラマが一つに結び付くってタイプの物語に近い 題名から受ける先入観のイメージとは大分違うな、つまり脱出のサスペンスとかじゃないんだよな、いかにも仏作家らしい結末の皮肉が利いた作品というジャンルだ この創元文庫の見開き紹介文は絶対マズいだろ |
No.237 | 8点 | ミステリー&エンターテインメント700- 事典・ガイド | 2010/10/06 10:34 |
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数年前、偶然に古本屋で格安で見付けて買っておいたのだが、とっても役に立ったガイド本
狭い意味でのミステリー作家の多くを省き、広くミステリー的な観点で選んだエンターテインメント作家を中心に紹介している だから本格系の作家は皆無で、今後も本格しか読みたくないタイプの読者にはこの本は全く役に立たない 私はガイド本に対し個々の作品の紹介などを求めてはいない そう聞くと、”おいおい、だからガイド本なんじゃねぇの?”と言われそうだけど、私は本当に作品自体のガイドなどを欲していないのだ 私が求めているのはズバリ、個々の作品ではなく作家の紹介なのである それも日本の翻訳事情に鑑みたものではなく、海外でのその作家の評価位置付けが知りたいのだ 日本の翻訳事情に準拠したものなら、ガイド本なんか無くても分かるって でも海外での作家の位置付けって、海外の評論家の選択したベスト100とかじゃないと、なかなか知り得ないしね 日本での人気ってどうしても出版事情に左右される面があるんだよな、そういう状況が私は気に入らないわけ 前置きが長くなったが、要するにこのガイド本はそうした視点が貫かれていて、私にとってはまさに”痒い所に手が届く”ガイド本なのだ 例を挙げると、冒険小説のコリン・フォーヴズなどはこの本で知った 冒険小説というとH・イネスやマクリーンの後継は一足飛びにJ・ヒギンズやD・バグリイになってしまいがちだが、上記のフォーヴズやブライアン・キャリスンやダンカン・カイルといったところを落とすわけにはいかない フォーヴズは翻訳は沢山された割には日本では今一人気が出なかったが、海外ではマクリーンに次ぐ位の評価をされているなんて、この本が無ければ見逃すところだった ホラー分野だとピーター・ストラウブなんかもそう、F・ポール・ウィルスンとかジョン・ソールとか あと例えばトマス・ハリスはレクター博士シリーズしか思い浮かばなかったが、それ以前の非シリーズに「ブラック・サンデー」というスリラーが高評価されていて、知らなかった私は早速古本屋へ行って調達してきた、もっともまだ未読なんだが(苦笑) 「復讐法廷」のH・デンカーにも「女医スコーフィールド」という隠れた逸品があるのだが、古本屋でふと見付けた時も、このガイド本読んでなかったら絶対にスルーしてたはずだ ここまで褒めといてなんだが、このガイド本には大きな欠点がある それは評価が★☆の数で表されているのだが、これが全く信用出来ない事 例えばケンリックだと、「三人のイカれる男」の評価がメチャ低いが、内容的にそれはあり得ない 「三人のイカれる男」は出版社角川の思惑で前期作なのに翻訳が後回しになった曰く付きの作で、つまりは読まれてる度が同作家比で低いわけだ 多分複数の投票者のポイントを平均値ではなく単純に合計したらしく、要するに★☆の数が内容よりも読まれてる度合いに比例している印象なのだ だから各作品に付けられた得点が妥当かどうかで言ったら、このガイド本の評価は7点でも高過ぎる位 あくまでも作家の説明に関してだけに対しての8点である |
No.236 | 7点 | 第二の銃声- アントニイ・バークリー | 2010/10/05 10:23 |
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バーディン「悪魔に食われろ青尾蠅」、クリスピン「愛は血を流して横たわる」、バークリー「第二の銃声」の3冊が創元文庫で文庫化されるらしい
昔々であるが、「殺意」などのアイルズ名義を除いて、まだ「毒チョコ」と「試行錯誤」位しか読めなかった頃、日本でのバークリーの評価はパッとしなかったらしい 「毒チョコ」は名作ではあるんだけど、名探偵のはずのシェリンガムが推理合戦の順番が最後じゃないというのが理解されなかったんだろうね、 昔はね、本格というものを堅苦しく解釈していた形式主義で保守的な読者が多かったんだろう この作が翻訳されたことで、普通の本格としての形式論を当て嵌めるのが適切ではない作家だという認識がやっと定着したのである 当サイトでもkanamoriさんも御指摘の通り、バークリーという作家が見直された契機となった作品であるし、某女流大家の某超有名作の弱点だった、語り手が手記を書く必然性を改善している点なども御指摘の通りだと思う その後他の作も続々と訳されて全貌が明らかになってきたのである その中でバークリーの特徴が直接的に出ている作としては「最上階の殺人」や「ジャンピング・ジェニイ」の方がより鮮明だと私は思う しかし特徴が出ているかどうかではなく、出来映えで言うと作者の代表作の一つかもしれない 実は肝となるトリックの一つで叙述じゃない方のトリックは見破ってしまった その部分の描写の箇所で、おっ、やってるやってる、と丸分かりだったが、おそらくその時点で見抜いた読者はかなり多いはずで、こんなのが見抜けないようでは初心者だろう しかしそのトリックだけが肝でもないから、見破れ易い点は作品としての瑕疵に入れないで置いとこ 野球の投球に例えると、変化球が続いた後、次は直球だろうと予想した打者が狙い通りだと思ったら、裏の裏でチェンジアップだったみたいな感じか |
No.235 | 6点 | 愛は血を流して横たわる- エドマンド・クリスピン | 2010/10/04 09:44 |
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バーディン「悪魔に食われろ青尾蠅」、クリスピン「愛は血を流して横たわる」、バークリー「第二の銃声」の3冊が創元文庫で文庫化されるらしい
「第二の銃声」はバークリーだけにいずれは文庫化されるんだろうと思っていたし、創元からというのも予想通り しかしあとの2冊は少々予想外な選択だなぁ クリスピンで文庫で読めるのって言ったら現状では早川文庫の2冊だけだもんなぁ、それもほとんど絶版状態だし 創元がクリスピンを手掛けるのって初めてだよな多分 イネス、ブレイク、ヘアーらと並び英国教養派を代表する作家の一人クリスピンは、ファース色の強いドタバタ調が特色であるが、この「愛は血を流して横たわる」はやや控えめな感じで、クリスピンにそういう面を求めるファンには若干物足りない でも一応中盤でドタバタは入っているし、少なくとも「白鳥の歌」よりはらしさが出ている その反面トリックなど謎解き面はちょっと地味で、謎解き部分だけなら「白鳥の歌」の方にアドバンテージがある しかし派手さは無いが端正な謎解きといい、クリスピンの中では本格として無難に纏まった佳作だろう ちょっと変わった題名だけど、被害者の名前が”Love” それにしても文庫化だったら早川がさぁ、ポケミス旧訳のままの「金蠅」を新訳文庫化しろてぇ~の! あれっ、この書評、”蠅”で始まり”蠅”で終わるのかよ |
No.234 | 5点 | 蒼い氷壁- ハモンド・イネス | 2010/09/30 09:22 |
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発売中の早川ミステリマガジン11月号の特集は、”北欧ミステリに注目!”
北欧のミステリー作家はスウェーデン以外には知らないが、英国作家が書いたもので北欧が舞台ならいくつかある ライアルの「もっとも危険なゲーム」はフィンランドが舞台だし、未読だがフランシスにもノルウェーが舞台の作がある ノルウェーが舞台だとハモンド・イネスの「蒼い氷壁」もそうだ マクリーンと比べると冒険小説作家としてのイネスは、初期のごく一部の作を除くと第二次世界大戦を背景にしたものは少なく、一般人が民間の調査や事故に巻き込まれるパターンが多いみたいだ この作品もノルウェーで鉱物資源の探索という戦争とは無関係な話である 海洋冒険ものではないからイネスの代表作ではない どちらかと言えば雪山ものに近いが、いわゆる山岳ものでもない 有名な海岸風景のフィヨルドを舞台に活かそうという狙い優先な感じで、それほどイネスの持ち味全開とまではいかない でもイネスには海洋が舞台でない作にも出来の良いものが有るらしいが、「蒼い氷壁」もまあまあ水準作だろう |
No.233 | 6点 | 消えた消防車- マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー | 2010/09/27 09:44 |
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発売中の早川ミステリマガジン11月号の特集は、”北欧ミステリに注目!”
スティーグ・ラーソンやへニング・マンケルも読んでみたいんだけど、なかなかそこまで手が回らないので、同じスウェーデン作家ということでお茶を濁そう ラーソンと言えばこの作では冒頭の派手な火事場面からラーソン刑事が大活躍 前作「笑う警官」に比べるとやや焦点が散漫なのが気になるが、題名に二重の意味を持たせたり、地道な捜査過程などは前作とそれほどは遜色ない 所轄管轄の違いが絡む点などもいかにも警察小説らしくて微笑ましい 冒頭が派手な割には余韻を残すようなラストは、はっきり決着しないと気が済まない本格読者には合わないかもしれないが、これもまた警察小説らしいラストと言えるだろう |
No.232 | 3点 | 三人の名探偵のための事件- レオ・ブルース | 2010/09/24 10:17 |
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マナリング「殺人混成曲」の物真似に堪能し書評書いたから、物真似つながりでこれもね
「三人の名探偵のための事件」はレオ・ブルースの代表作と言う人も多いようだが私は異論がある 一種の多重解決ものだけど、三人の推理をただ並べただけで、前の推理を後の探偵が覆してという趣向ではない 一応推理合戦と言えるが各探偵の推理が絡むというスタイルではない そう捉えるとすると、この作品の肝は構成よりもいかに物真似が上手いかどうかが鍵で、この辺は「殺人混成曲」と同様だ さて肝心の物真似だが、これが下手糞 例えばウィムジイ卿などはキャラが濃いから、似せようと思えばもっと何とかなったと思うが全然似ていない ブラウン神父も全く駄目、これならクリスティが「おしどり探偵」中でやったパロディの方がずっと感じが出てた ブルースはアイデアは面白いが物真似は苦手なようだ 物真似パート以外にも、ビーフ巡査の捻くれたキャラも後の作品に比べると大人しく、特徴が充分には出ていない 私にはこれがレオ・ブルースの代表作にはどうしても思えないのである 個人的には「ロープとリングの事件」を高く買っているんだけど、他のネット上の書評では概ね、「三人の名探偵」の評価が高い人程「ロープとリング」の評価は低い傾向があるんだよな 「三人の名探偵」と「ロープとリング」の評価は私は全く逆 そのうち「ロープとリング」を高い採点付けて書評書くつもりだから覚悟しとき |
No.231 | 9点 | 殺人混成曲- マリオン・マナリング | 2010/09/22 10:32 |
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この作品に関しては長文になるので御容赦、さらに最初にプチ自慢をさせて欲しい
実は本自体はかなり以前に入手していたのだが、ずっと積読 なぜかってぇーと、物真似される9人の作家を全員読むまで我慢していたのだ、我ながらストイックな奴 最後に残ったスピレインを最近読んだので準備完了、ウェントワースとスピレインは1冊だけだが、それ以外の作家は最低でも2~3冊以上は読んだし 自慢じゃないが、本書を後で新しく買ったのではなく長年所持していながら、元ネタの9人の作家を最低1冊でも全員読むのを待ってからこの作品に取り掛かったのは全国でも私を含めて少数派だぞきっと だってさ、この作品はかなり昔から刊行されていたのだが、その時点でウェントワースは刊行されてなかったし 論創社がウェントワースを出したのはずっと後だし、イネスやマーシュもまともに紹介されたのもちょっと後、下手をすると浅羽訳セイヤーズすら読まないで先にこれを読んでしまった読者も過去には居そう 今は恵まれた時代になったもんだ、まぁ、スタウトやガードナーあたりが未読だったなんてのはきっと初心者だろうから、この作には手を出さないだろうしね ここから各論へ、尚、各探偵は微妙に名前変えてあるので面倒だからもどきで統一 (1) ポアロもどきの章は雰囲気が出てるけど、やはり訳者を選任した効果は発揮されてると思うな 特に場面転換時に会話文で終わるのは原文もそうなのか分からないが、感じが出ている ただクリスティの真似としてはちょっと文章が書き込み過ぎな印象 (2) アプルビイもどきの章は他のサイトのネット評ではあまり言及されて無いが結構傑作 この作の発表は1954年、その時点でマイケル・イネスの「ストップ・プレス」や「アプルビイズ・エンド」は刊行されてるから、どうもイネス中期のファースっぽい作風を真似たようだ 大袈裟な推論を巡らす割には真相が拍子抜けなイネス中期作の真似はなかなか上手い (3) メイスン弁護士もどきの章もまあまあで、短く会話文を連ねる文章などいいんじゃない (4) アレン警部もどきの章も、ナイオ・マーシュを読まずにこちらを先に読んでしまった人は残念で、紳士を強調したり、特に部屋に一人づつ呼んでの尋問シーンが続く件などは、マーシュを既読の人ならニヤリとするはずだ (5) ネロ・ウルフもどきの章も、語り手である助手のアーチーもどきが張り切りすぎて痛い目に合うとこなんか、スタウトの元ネタにもありそうで笑える (6) ミス・シルヴァーもどきの章は元ネタ未読だった人多そう、今でも読めるのはたった1冊だからね この探偵を選んだのは、ポアロを使用済みなので、同一作家重複を避ける意味でマープルが使えず、代役かもと思ってたのだが、ウェントワースは作品数も多く、当時の英国では人気作家だったのだろう、もっと訳して欲しい作家だ (7) マイク・ハマーもどきの章はちょっと大袈裟にパロってる 1954年ならハードボイルド代表でチャンドラーも人気作家だったはずだが、マーロウではなくハマーの方を選んだのは当時は衝撃的な登場だったし、内容的にパロディに向いていたからだろう (8) クイーンもどきの章は、これは戦後後期のクイーンのイメージだと思う (9) ウィムジイ卿もどきの章だが、セイヤーズは戦後は筆を折ってしまったので、これだけが引退した過去の探偵である 最後に謎を解かせる役割なので、公平の為に現役探偵は避けたのかも クリスティとは逆で、セイヤーズの真似こそもっと大袈裟に書き込んでも良かったんじゃないか、ちょっとあっさりし過ぎ 強烈にキャラ立ちしてる探偵だからね ここから総論、作者が英国作家なせいか全体としてアメリカ作家に厳しく英国作家は敬愛しているのかパロディ度が優しい印象がある でもどの探偵にもそれなりに華を持たせ、描き分けた作者の手腕には脱帽せざるを得ない ところで他の各ネット上での評価が低いものが多いが、その理由の一つに、多重解決ではなくて連作リレー長編のような構成が肩透かしに感じるからかも 私は前評判から、これは単に物真似が主眼だと知って読んだので、物真似が上手いかどうかが鍵で、多重解決などは最初から期待してなかった ちょっと新本格風のメタな真相解明を見ても、作者の狙いは最初から物真似ありきな感じで、多重解決ものなどを指向してないのは明らかだし、本書の趣向からして動機が軽い点などを突っ込むのも野暮というものだろう もう一つは先にも述べたがスタウトやガードナーあたりは読んでいたとしても、イネスやマーシュを未読状態でこれを読んだのではないかな イネスやマーシュなどは翻訳が進んだ現在では必読でしょ、ただイネスとマーシュは現役文庫本で読めるものが無いので、ハードカバーに手を出さない人は読まないんだよな、残念ながら 1冊しか翻訳が無いウェントワースは仕方無いが、本格しか読まないハードボイルド嫌いな人だと、古本でも比較的入手容易なスピレインでもスルーする可能性あるしね 作家選択に関しては当時の作家の人気状況が分かって興味深くやはり英国らしいな、もし日本の作家がこういうの書いたら、例えばイネスやマーシュは省いてヴァン・ダインとか入れたかも 1954年には既にヴァン・ダインの人気が凋落していたに違いないし、ヴァン・ダインを今でも有難がって読んでるのは日本だけかも 逆に戦後作は無くてもセイヤーズは人気作家だったようで、こうしたパロディものには良く引き合いに出されるもんな 戦前のレオ・ブルースのパロディ作にも使われてるしな 結論としては、この作品はマイケル・イネスとナイオ・マーシュとスピレインに馴染みがあるか無いかが大きく評価を左右する気がするんだよなぁ、全体の構成とかじゃなくて 私としては読書時間ががこんなに楽しかったのは久々 |
No.230 | 7点 | レイクサイド・ストーリー- サラ・パレツキー | 2010/09/20 09:39 |
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明後日22日にMARUZENとジュンク堂渋谷店でパレツキー久々の来日記念のトーク&サイン会が行なわれる予定
翌23日は早大大隈講堂でのペンクラブ主催のフォーラムで記念講演があるらしい 正直言ってシリーズ第1作「サマータイム・ブルース」はあまり面白くなかった フェミニズム全開に筆を取られ過ぎて、事件性がつまらなかったからね しかし第2作「レイクサイド・ストーリー」はなかなか力作で、事件にも人物描写にも深みが増し格段に進歩した 本拠地がシカゴなので水運は五大湖が舞台だが、海運業を巡る事件を追ってミシガン湖から他の湖へと舞台が展開 五大湖って各湖で水位が違うので落差調整用水門付きの運河水路で繋がれているんだな 「サマータイム・ブルース」で物足りなさをを感じた人も、この第2作は満足出来る出来映えだろう ただヴィクが怪我の為、得意の武道を発揮する場面が無かったのは残念 ところで新作ではカバー画が代わったんだな、ラノベ風になっちゃったのかよ やはり江口寿史のが良かったなぁ |
No.229 | 5点 | 裁くのは俺だ- ミッキー・スピレイン | 2010/09/07 09:41 |
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スピレインは実は古本屋で格安品を見付けるたびに、ほとんどが絶版でもあるし一応入手しておいたのだが、長年積読状態だった作家でもある
別に理由は無いんだけど何となく読むの後回しになったままだったんだよなぁ 登場した頃は時代の寵児だった事もあり、本格派以外は一切読みませんみたいな読者ではない一般的ミステリーファンならば読んでおくべき作家だったのだが 今回このデビュー作を初めて読んでみたが、先入観と違う面もあり、すごく面白いとも思わなかったが、決してつまらなくもない 先入観で腕力にものを言わせて解決するのかと思っていたが、決してそうではなくて結構推理する探偵だよなハマーって 特に中盤で大学年鑑の手掛りを追って書店や図書館へ出向いて地道な調査をする件などはなかなか面白い よく暴力とサディズムとかのコピーで語られる作家だけれど、案外とそんなことなくて、ハマーの側から暴力に訴えるシーンはあまりなく降りかかる火の粉を払うだけだし、むしろ後続の私立探偵小説の方が暴力シーンが多かったりするのもあるからね 私なんかもっと派手な暴力シーンでもあるのかと期待してたら肩透かし気味だったよ もう一つの宣伝文句エロティシズムの方はそれなりに豊富 それとハマーって腕力というより良く喋る奴だぜ(笑) こんな饒舌な探偵はあまりいないよ、スペンサーやウィムジイ卿以上だな(再笑) 真犯人は見え見えなんだけど、これはなぁ、きっと毎度お約束ってことなんだろうしなぁ、仕方ないよな(再々笑) |