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[ ハードボイルド ]
イマベルへの愛
棺桶エド&墓掘りジョーンズ
チェスター・ハイムズ 出版月: 1991年07月 平均: 6.67点 書評数: 3件

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早川書房
1991年07月

No.3 6点 人並由真 2020/12/20 14:15
(ネタバレなし)
 1950年代のアメリカ、ハーレム。葬儀店の従業員で28歳のジャクソン青年は、内縁の美人妻イマベル・パーキンスのため金儲けを企む。だが彼の虎の子の1500ドル、さらに店から盗んだ200ドルを南部から来た3人組の詐欺師チームに巻き上げられてしまった。ジャクソンの双子の兄ゴールディは普段は修道尼に女装して寄付金詐欺を行う男だが、よそ者の犯罪者たちに対抗。さらにハーレム警察の凄腕刑事コンビ、墓掘りジョーンズと棺桶エドもこの事態に絡んでくる。

 1957年のアメリカ作品(ただし先行して同年に? フランスで出版)。エド&ジョーンズものの第一弾。

 あくまでアメリカの大都会の一角ながら、イカれたことがごく日常的に頻繁しそうな異郷ハーレムの描写っぷりは、すでにこの作品のなかでほぼ確立。ジャクソンは親のおかげで地元の大学まで卒業した一応の学士で、いくら50年代の話とはいえケチな詐欺に引っかかるにはあまりに世知がなさすぎるとも思ったが、当時の作者&読者の視点ならこれはこれでリアルなのか?
 ほぼ全編が小悪党たちによるすったもんだのバーレスクという感触で、主人公はあくまでジャクソン。エド&ジョーンズの出番はそれほど多くないが、彼らが悪徳刑事でもダーティコップでもなく、ただのワイルドな捜査官だというキャラ設定はきちんと一貫している。

 シリーズ第一弾ということで、エドが顔に硫酸を浴びる有名なシーンも登場。実にあっさりした叙述が、妙に逆説的に凄惨である。

 やや悪趣味なノワールコメディという趣も強く「87分署」の変化球的な一編みたいなストーリーを、いきなり初弾に持ってきた感じだ。
 評者は本当にたまたま本作の直前に、カーの1958年作品『死者のノック』を読んだが、この2つがほぼ同じ時代に同じアメリカで書かれたのか。なんか笑う。
 
 ブラックなジョークで全編を彩りながら、ときどき人間の普遍的なほっとする一面を見せてくれる物語の心地よさ(本作で言えば、逃走中のジャクソンにちょっとやさしくしてくれる屑屋のじいちゃんの言動など)は本作にも登場。ただシリーズの出だしのせいか、ちょっと話のこなれがよくない印象もある。評点はこのくらいで。

【追記】本書のポケミスの人物一覧では
墓掘りジョーンズが「墓掘りジョンソン」
棺桶エドが「棺桶エド・ジョーンズ」
とそれぞれ表記。愉快……でもない間違い。

No.2 7点 kanamori 2010/11/13 17:26
ハーレム(黒人街)の黒人刑事コンビ、墓掘りジョーンズ&棺桶エドが登場するシリーズ第1弾。
主人公は葬儀屋に務めるお人好しで真面目なクリスチャンの黒人青年ジャクソン。詐欺師3人組に騙され、内妻イマベルの裏切りに気付かず、愚直にイマベルへの愛のためハーレム中を霊柩車で暴走する。猥雑な黒人街のリアルな日常描写とともに、修道女に変装し小銭を稼ぐジャクソンの双子の兄、罪を告解するジャクソンに対し警察へ行けと逃げる牧師などの脇役キャラも立っています。とくに、死体が増えて商売繁盛だとジャクソンの復職を許す葬儀屋の主人が最高(笑)。かえって、本作では墓掘り&棺桶があまり目立たないのですが。
ハイムズは、当初フランスで評価されベストセラーとなった作家ですが、確かにフランス人好みのノワールとシュールな雰囲気が横溢する作品で大いに楽しめました。

No.1 7点 mini 2010/10/25 10:04
ウォルター・モズリイみてぇなブルジョワ野郎が後に登場するが、黒人ミステリー作家の先駆者はハイムズだぜ
ハイムズだって黒人としちゃあ中流家庭の生まれだったかも知らねぇけど、強盗罪で服役中に小説を書き始めるたぁ筋金入りだぜ
ハイムズと言ったらハーレムの番人の棺桶&墓堀りだぜ、奴らは気に入らねぇと特製38口径リボルバーをブッ放しちまうのさ
棺桶エドと墓掘りジョーンズのコンビは最高だぜ

代表作「リアルでクールな殺し屋」は確保してあるんだが、前に古本屋で角川文庫「ロールスロイスに銀の銃」が100円で売っていたのを見かけたがその時ゃスルーしてしまったのさ
後日行ったら見事に無かったぜ、大魚を逃した気分だった、目を付ける奴は居るもんだと思ったぜ
このサイトで俺も登録しようかとかなり以前から思ってたんだが、書評書いても誰も注目しねぇ作家だろうと後回しにしてたら、他の書評者によって登録されるとは予想してなかったぜ
kanamoriさん”Good job!”だぜ


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