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[ 警察小説 ]
ロールスロイスに銀の銃
棺桶エド&墓掘りジョーンズ/別題『聖者が街にやってくる』
チェスター・ハイムズ 出版月: 1975年01月 平均: 8.00点 書評数: 2件

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角川書店
1975年01月

角川書店
1975年11月

No.2 7点 人並由真 2020/05/18 16:06
(ネタバレなし)
 ハンサムな前科者の若い黒人ディーク・オハラは、自らをディーク・オマリー神父と詐称。仲間とともに、ハーレム内の貧しい黒人に向けて「(黒人は)アフリカへ帰ろう」運動を扇動する。ディークは、先のないアメリカでの生活に見切りをつけてアフリカでの生活を希望する各家庭から準備金の名目で1000ドルずつ徴収。合計8万7千ドルの儲けを得るが、そこに別の犯罪者の横やりが入り、ディーク当人は逃亡、金の行方も不明となる。傷痍を経て半年ぶりに現場に復帰した黒人刑事「墓掘り」ジョーンズは、相棒の「棺桶」エドとともにこの事件を追うが。

 1965年のアメリカ作品。
 本シリーズはだいぶ前に『リアルでクールな殺し屋』(「なんじ、かぐわしくあれ」)を読んで以来2冊目だが、いや~、非常に面白かった。
 ハーレムに集う犯罪者、食わせ者、一般市民、そしてエド&ジョーンズをはじめとする捜査陣、それぞれの思惑が猥雑に絡み合いながら、実にハイテンポで物語が進行。そのくせどこか、冷めた品の良さというか格調を守る文体が堅持される(翻訳の良さもあるのかもしれないが)。
 ある意味では理想の、ハードボイルド風味の警察小説かもしれん。

 ところで前回『リアルで~』読んだときにはあまり意識しなかったんだけれど、ワイルドな黒人刑事という属性の方が、つい先に目についてしまうこのシリーズ。もしかしたら黒人とか犯罪スレスレのワイルド捜査とかを抜きにしても、アメリカ警察小説史上ではかなり初期の<バディものの先駆>だよね?
 長編が中途半端な紹介に終わってるローレンス・トリートとかジョージ・バグビィとかあるので(どっちも昔に読んでるが内容はほぼ忘れてる)、その辺まで踏まえてしっかり再確認しないと。うかつなことは言えないが。

 (ホームズ&ワトスン、モース&ルイスみたいな主と従ではなく)ほぼ均等に主人公キャラを二分して描かれた刑事コンビのシリーズというのは、あるいはかなり新鮮だったのかも(まあ50~60年代の時代はさらに、87分署みたいなチームプレイ、あるいはローテーション主人公ものの警察小説の隆盛に雪崩れこんでもいたのだろうが)。

 つまみ食いでシリーズを読んでるのであまり聞いた風なことは言えないが、人種を問わず同輩の警察官たちから憧れ&畏怖&敬遠の目で見られるエド&ジョーンズの立ち位置も、彼ら二人を「(手のかかる、しかし有能な)エース」として遇する白人の上司アンダーソン警部補のキャラもいい。
 そのうちまたタイミングを見て残りの作品を読んでみよう。

 最後に、嫌味や皮肉ではまったくなく、本作に9点をつけたkanamoriさん、心から尊敬します(!)。そこまで思い切り愛情を表現できる度量の大きさが素晴らしい。
 自分もこの作品をたっぷり楽しんだつもりだけど、8点にしようか迷った末に7点なので(残りのシリーズ未読作にさらにハマるものがあることも期待して、ではありますが)。

No.1 9点 kanamori 2010/12/05 18:42
ハーレムの黒人刑事コンビ、墓掘りジョーンズ&棺桶エド・シリーズの6作目。
<アフリカに帰ろう>運動という偽神父による大掛かりな詐欺から、民衆から騙し取った現金の強奪事件に発展する大騒動。売春宿、賭博屋、安酒場など60年代の黒人街を背景に、消えた現金を巡って、詐欺師グループ、南部軍人、殺し屋、美女たち、そして墓掘り&棺桶コンビがそれぞれの思惑を交錯させて暴走します。
ハードボイルド系の警察小説というより、クライム小説の一級品でしょう。最後に漁夫の利を得るある人物の突拍子もない行動には笑った。葬儀屋青年の”イマベルへの愛”に決着をつけたエピソードが挿入されているのにも思わずニヤリ。


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チェスター・ハイムズ
1991年07月
イマベルへの愛
平均:6.67 / 書評数:3
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1975年01月
ロールスロイスに銀の銃
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