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[ サスペンス ]
死刑台のエレベーター
ノエル・カレフ 出版月: 1958年09月 平均: 5.62点 書評数: 8件

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東京創元社
1958年09月

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1962年01月

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東京創元社
2010年07月

No.8 5点 ◇・・ 2024/08/07 20:33
アプレ社長が金銭上の動機から殺人をするが、数々の偶然が働いて、全く覚えのない事件によって死刑にされるという物語。
この筋自体に作者の皮肉な眼が感じられるし、筆致もそうである。面白いことは間違いないが、無理に凝った破局へもっていこうとするために、説得力に欠けるところがある。

No.7 8点 人並由真 2022/04/03 01:27
(ネタバレなし・途中まで)
 カレフ作品はこれが初読み。3冊ある既訳のうち、最初に読むならまあこれからだろうと以前から思っていたが、例によって大昔に購入した創元文庫の旧カバー版が見つからない。それで半年~1年ほど前に、21世紀の新カバー版(新作邦画のスチールを用いた幅広の帯がついてる)をブックオフの100円棚で見つけて買ってきた。

 それで思い付きで、昨夜のうちに一気に読んだ。
 読後に本サイトのみなさんのレビューを拝見すると、創元文庫の巻頭のあらすじに物言いがつけられているようだが、自分は該当の本を読もうと決めた、あるいはそう思ったら、もうあらすじは、なるべく目にしないようにしているので(ネタバレ回避のため)、くだんの禍根はまっやく問題なく回避できた。実を言うと、現時点でもマトモに、創元文庫巻頭のあらすじは(少なくともこの数十年以上)読んでおりません。

 で、本作に関して感想を言えば、話の骨格が見えてくるにつれて読み手のテンションもじわじわと高まっていくタイプの作品。
 少しずつ増えていく主要な登場人物の面々をジヴラル刑事を除いて、男女二人で一組のユニット単位にしている構成もうまい。最終的に物語がそこにいく、主人公ジュリアンの(中略)を浮き出させる演出の一環だろう。
 読んでいるこちらとしてはちょっとずつ新たな男女コンビが出てくるたびに、話が弾み、ドラマが螺旋状に降りていく感覚で、このあたりがとても面白かった。

 しかし……
(以下、多少ネタバレ?)




 主人公が犯罪を企てて実行したものの、その悪事の実態の方で罰を受けるのではなく、皮肉で残酷な運命、あるいは他人の意志によって、思わぬ方向から足をすくわれる、というのは、本作の最初の訳書の叢書である「創元・旧クライムクラブ」のあの名作まんまではないか? その辺が見えてきたあたりから、読んでいて、当時の植草甚一は何を考えて、こんな<似たようなもの>を同じ叢書にセレクトしたんだろとも一瞬だけ、思ったりもした。

 ちなみに今回、手に取った創元文庫の21世紀新装版の巻末では小森収が解説を書き、本作のクロージングをやはり同じ旧クライムクラブの『〇〇〇』に例えている。
 でまあ、個人的には、その旧クライムクラブの別作品に比べるなら『〇〇〇』でなく『◎◎◎(または『●●●●』)』だろう、と思う訳で。
 
 とはいっても、趣向や主題、主人公を(中略)、(中略)な演出が近しいと確信・実感しつつも、作劇のひねりなどはあくまで本作独自のものであり、1950年代の新古典作品として普通に十分に面白かった。
 もしも21世紀の現行作家の完全新作で、まんまこのストーリーを読むことになったらさすがに古いとは思うが、50年代だったら、まだその技巧ぶりの新鮮さを主張できた一作であろう。そんな熱気は、そのまま今回も読むこちらに伝わってきた。
 
 末筆ながら、本作の映画はいまだ観てない。中学生のころから厨二的にカッコイイ題名だとは思っており、興味もフツーの世代人程度にはあったのだが、なんか鑑賞の機会を逃し続けていた。
 miniさんのおっしゃる通り、小説を先に読んで良かったと思う。

No.6 6点 HORNET 2020/03/21 21:56
 着想・発想が面白い。けど裏を返すと、その一点勝負、かな。
 普通の倒叙物と思わせておいて、まったく意外な展開になっていくスリルはあり、ライブ感のある面白さだった。最後に冤罪として主人公に降りかかるもう一つの犯罪の方のカップルのバカさ加減も面白く、そういう意味では一粒で二度おいしい小説とも感じる。
 冤罪と本当の罪との間でせめぎ合うところからをむしろ中心的に描いてくれるとさらに面白かったかもしれない。

No.5 7点 クリスティ再読 2018/09/02 23:07
「見たら死にたくなる映画」って考えたら、評者はそのツートップがルイ・マルの「死刑台のエレベーター」とその続編みたいな「鬼火」になってしまう...ほら、マイルズ・デイヴィスの有名なテーマが、本当に死にたくなるような音で鳴ってるよ。頽廃美とかアンニュイとか、そういう面じゃ最強の映画だと思う。ま、ミステリ映画の傑作でしかもヌーヴェルヴァーグの到来を告げた一般映画史上も大変な重要作、というような映画はなかなか少ないしね。
と映画の方を思わず書きたくなるような作品なんだけど、映画の頽廃美は原作には、ないな。それよりも多視点の切り替えで描かれる、登場人物たちが揃いも揃ってヤな奴らばっかりで、それぞれがエゴイスティックに振る舞うことで、誰も意図しないのに、のっぴきならない罠が出来上がってしまう皮肉みたいなものが、より感じられる原作だ。完全犯罪を成し遂げたのにもかかわらず、それが完全犯罪であるがゆえに、冤罪から逃れられなくなる...これ究極の選択の部類だよ。詰んでる。アイルズの「殺意」に近い作品かもしれない。
で皆さん文庫のトビラの紹介に文句つけてるけど、評者に言わせればさあ、70年代くらいまでは「死刑台のエレベーター」の原作読むのは、趣味が翻訳ミステリ&洋画&モダンジャズの三つ揃い、な層で、小説読んでなくても映画で話のスジなんて先刻承知だったわけなんだけどね。だからこれ、映画のスジに近い紹介になっているわけさ。営業的な意味がないわけじゃなかったんだが...

No.4 6点 蟷螂の斧 2016/09/15 09:39
結末の皮肉がいい!滑稽でもあり好みです(笑)。このようなモチーフの作品は他にないのでは・・・。やや中盤に退屈感があったのが残念。その分は後半で盛り返したか?。「大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト150」(1991版)では、第5位となっており映画の方が有名ですね。

No.3 4点 青い車 2016/02/13 15:58
文庫の扉のあらすじで「絶対ダメだろ!」と思うほど話の核心に触れるネタバレがされていたので少しも楽しむことができなかった恨みのある作品。てっきりその先に何かあると思っていたのですが、まんま真相とは…。これが『アクロイド』のように巧みな伏線を拾いながら読める作品なら良かったのですが、これのように非本格で皮肉な味を見るべき作品では絶対にいけないミスです。作者の落ち度ではありませんが、厳しめな点数で。

No.2 5点 E-BANKER 2012/01/15 15:21
1956年発表のサスペンス。
元々映画の方で有名だった作品ですが、近年日本でも映画化され話題に・・・

~緻密に練り上げた完全犯罪を実行したジュリアンは、その直後に思わぬことからエレベーターに閉じ込められてしまう。36時間後にようやく外に出た彼を待ち受けていたのは、思いもよらない身に覚えのない殺人容疑だった。エレベーターに閉じ込められていた彼にはアリバイがない。しかも、閉じ込められた理由は決して話せないのだ。偶発する出来事が重なる中で追い詰められていく男の焦燥と苦悩を描き切ったサスペンスの傑作~

決して「つまらない」わけではない・・・という微妙な読後感。
ストーリーは、主人公であるジュリアンのほか、彼の妻や兄、そして2組のカップルと多視点で語られていくが、中盤まではジュリアンが苦境に追い込まれる過程が分かるのみ。
そして、終盤はにっちもさっちもいかなくなり、袋小路に追い込まれていくジュリアンの姿が描かれていく。

個人的には、本作一番の読み所はサスペンス要素ではなく、登場人物たちの「エゴイズムのぶつかり合い」ではないかと思います。
正直、サスペンス的にはたいしたことはない。
「男の欲望」と「女の欲望」が、それぞれ嫌らしく交錯し、1人の人間がついには罪を負ってしまうことの刹那・・・
その辺が、映像化に向いているところなのでしょう。
(とにかく、ジュリアンの妻・ジュヌビエーブが嫌な奴・・・)

No.1 4点 mini 2010/10/08 09:49
明日10月9日に映画「死刑台のエレベーター」が、吉瀬美智子・阿部寛らの主演で封切り公開される
元々はフランス版の有名な映画で、リメイク版が制作されるのは日本が初
またオリジナルのフランス版も改訂版の映画が制作され、こっちも明日から公開予定らしい

原作者ノエル・カレフは、ミシェル・ルブランやジャプリゾらと並ぶフレンチ・サスペンスの王道を行くような作家の1人である
「死刑台のエレベーター」は有名な作品なので名前だけはかなり昔から知ってはいたが、映画公開に合わせて最近読んだ
映像作品を先に観てから原作をおさらいするという順序は嫌いなのでね、私は必ず原作を先に読む

創元文庫の紹介文はちょっと誤解を招くんじゃないかな
紹介文ではさ、”エレベーターからやっと脱出できた男に殺人容疑が”ってなってるけど、これではさぁ、その後の展開がどうなるのかって話に思えるでないの
ところがさぁ、その紹介文が全体の全てなんだよ(苦笑)、つまりさ、エレベーターからの脱出は終盤で、閉じ込められてる間に何が起こったかって話なわけ
それに脱出も自力ってわけじゃないし、まぁこれ以上はネタバレになるから言えないが
でさ、そのエレベーターの中に閉じ込められた男の視点で終始語られるんじゃなくて、複数多視点ものだし、別の若い男女カップルの話が結構分量を占める
要するにエレベーターにサスペンスが凝縮してるんじゃなくて、複数の人間たちのドラマが一つに結び付くってタイプの物語に近い
題名から受ける先入観のイメージとは大分違うな、つまり脱出のサスペンスとかじゃないんだよな、いかにも仏作家らしい結末の皮肉が利いた作品というジャンルだ
この創元文庫の見開き紹介文は絶対マズいだろ


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