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[ 警察小説 ] 消えた消防車 マルティン・ベック |
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マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー | 出版月: 1973年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 3件 |
角川書店 1973年01月 |
KADOKAWA 2018年04月 |
No.3 | 6点 | クリスティ再読 | 2020/12/13 15:39 |
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マルティン・ベック第5作。連続少女暴行殺人、銃器による大量虐殺、と派手な事件が続いたのとは一転、今回は地味。でもこの地味さがマルティン・ベックらしくて、いい。今回はベック自身よりも、部下の刑事たちの話が主力。
肉体派刑事のラーソンが助っ人として監視を命じられた家から、突如炎が燃え上がった! ラーソンの面目躍如の大活躍で家の住人たちを救助して表彰されるのだが、それでも4人の死者を出した。死者には監視のターゲットが含まれていたが、どうやらこの男がガス自殺を図ったのが、何かで引火したという結論で落着しかけた。しかし、鑑識が精巧な放火装置をターゲットのベッドから見つけだす....自殺した後で焼き殺された男、偽通報でわざと到着が遅らせれた消防車、不審な点が浮かび上がり、事態は複雑な様相を示してくる...マルティン・ベックの名前が書かれた紙を残して自殺した男はどうこの事件に関わる? そんな話。今回前半はラーソン大活躍。海軍軍人あがり、というのが87のコットン・ホースと同じで役回りも似ているが、ラーソンは実は名家の出身で独身で富裕、ファッションセンスもなかなか...と本作では意外な面を見せる。いやこういう刑事キャラ設定のちょっと捻ったあたりが、キャラ造形が王道な87と違う、このシリーズの個性だと思う。だし、刑事たちも仕事は仕事、プライベートはプライベートで、しっかり休暇も取って、と「仕事命」で刑事はビンボじゃないと、な日本人とは違うあたりが、なんかマブしい。 殉職したステンストルムに代わって配属された新人のスカッケは、古狸なコルベリにイビられて、ベックがたしなめたりするのも、このシリーズらしさ。本作のオチは、このコルベリ&スカッケのコンビでつけてみせるが、警察小説のリアリティってのは、「物事、きれいには進まないや」と、犯罪者も愚かな振る舞いを重ね、捜査側も失敗だらけの中で、どれだけ人間臭さが立ち上るか、ということなんだろう。 (個人的には、冴えないのに探し物の名手で、ゲスト的に登場するモーンソンがご贔屓。今回、ルン刑事の息子が無くしたオモチャの消防車を見事見つけだす) |
No.2 | 6点 | mini | 2010/09/27 09:44 |
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発売中の早川ミステリマガジン11月号の特集は、”北欧ミステリに注目!”
スティーグ・ラーソンやへニング・マンケルも読んでみたいんだけど、なかなかそこまで手が回らないので、同じスウェーデン作家ということでお茶を濁そう ラーソンと言えばこの作では冒頭の派手な火事場面からラーソン刑事が大活躍 前作「笑う警官」に比べるとやや焦点が散漫なのが気になるが、題名に二重の意味を持たせたり、地道な捜査過程などは前作とそれほどは遜色ない 所轄管轄の違いが絡む点などもいかにも警察小説らしくて微笑ましい 冒頭が派手な割には余韻を残すようなラストは、はっきり決着しないと気が済まない本格読者には合わないかもしれないが、これもまた警察小説らしいラストと言えるだろう |
No.1 | 6点 | 空 | 2010/06/20 09:43 |
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マルティン・ベック・シリーズの第5作。しかし、久々に読み返してみると、彼が特に主役というわけでもないなと思いました。スウェーデンのエド・マクベインといった趣もありますが、マクベインに比べるとていねいで厳格、地味な印象です。
タイトルにもかかわらず、メインである放火事件に関して、消防車は決して「消えた」わけではありません。ただ火災現場に到着しなかっただけです。この消防車の件から少しずつ事件がほぐれていくあたりはなかなかおもしろく読ませてくれます。短い第1章での自殺事件との絡みも、意外性はありませんが自然でした。一方、本当に不可解な消え方をしたルン刑事の玩具の消防車の行方も、最後にはわかります。 ただ、これ以上ストックホルム警察では手の打ちようがなくなった後のラストの決着は唐突ですね。 |