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[ 警察小説 ]
バルコニーの男
マルティン・ベック
マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー 出版月: 1971年08月 平均: 6.00点 書評数: 4件

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角川書店
1971年08月

KADOKAWA
2017年03月

No.4 5点 モグラの対義語はモゲラ 2021/08/14 14:08
真っ当な警察小説で満足した。
連続強盗事件と連続女児強姦事件が同時進行し、それらが関わり合い結構濃密なストーリーになっていて面白いと思った。当時の(もしかしたら今でも同様な)スウェーデン社会の暗部や歪み、それらに対するスウェーデン警察としての態度や現代にも通じる風刺も良い味付けになっていると思う。
実際にあった事件をモデルにしてるからか、かなり吹っ飛んだ事件であり捜査も結構偶然に頼っているものなはずなのに、そこそこリアリティを感じて読めるのも良い。まあむしろ実際の事件程偶然に助けられる要素が多いのかもしれないが。
嫌いな作品ではないのだが、ほんのちょっとコミカルというか、事件の重大さや社会の暗さを描く割に、ルンドグレンの証言の信ぴょう性を確かめる件などほんの少し滑稽劇的な展開や文がありそれが浮いているような気がしたのでこの点数。
でも気分が沈み過ぎずに読めると考えたらむしろ評価点、かも。

No.3 6点 斎藤警部 2021/02/05 14:38
リアリティ磐石に落ち着いた書きっぷりで、被害に遭った少女とその親の悲惨さにも、証言する男児の可愛いさにも、殺人鬼の異常さにも強盗犯の兇悪ぶりにも焦点が偏らない、道の真ん中を往く不偏不党のストーリー。その所為かこんなバーッドな犯罪がテーマでも意外とあっさり風味。警察小説ならではの展開意外性も発揮。悪くない。

クリスティ再読さんの
> 「偶然も絞られていって、蓋然的に必然に近づいていく」という風に読むといい
に強く賛同です。実生活の仕事等でもその側面は大きいですよね。

No.2 6点 クリスティ再読 2020/10/17 17:26
久々にマルティン・ベック。日本での紹介は本作が一番最初だったわけだから、マルティン・ベック日本初登場の作品である。「ロセアンナ」の時にも書いたが、このシリーズはスエーデンの国情を反映してか、70年代の性解放を先取りしたところがある。なのでおそらく「少女の敵」連続少女暴行殺人事件をテーマにした作品ということでは、最初の作品になるんでは?と思う。どうだろうか。アメリカは性道徳がキビシイために、エンタメで性犯罪を扱うのが難しいところがあったからね。
そう見ると、本作がシリーズ中でも最初に紹介された、というのはやはりセンセーショナルな目的があったのでは、とも感じる。その次の紹介が大量虐殺の「笑う警官」だから、性犯罪の本作が比較上霞んでしまうが、海外ミステリ紹介では後れを取っていた角川が、海外ミステリでも存在感を出したのがやはりこのマルティン・ベック、という印象があるんだよね。
思い出の深いシリーズでもあるので、作品以上にその周辺について語ってしまうけど、本作からベックも管理職、ラーソンも初登場と「マルティン・ベックらしさ」が確立した布陣の作品。ステンストルムは残念ながらバカンス中で、はがきを送ってくれただけ(だけど、このはがきがナイス小道具)。そういえば新訳はメランデルがメランダーなんだ、どうも感じが出ないや...
犯人割り出しプロセスや逮捕などが偶然、なのを「傷」みたいに言いたくなるかもしれないけども、警察小説だからね、物量と組織による捜査を通じて、「偶然も絞られていって、蓋然的に必然に近づいていく」という風に読むといいように思うんだ。福祉社会スエーデン、というのもあって、社会と政府の間が近くて、警察の側も「社会を維持するための必要悪」みたいな覚悟があるあたりが、とても好ましい。だから本作でも「娘を守るために」市民が自警団を作って...というエピソードがあるけども、この心得違いの自警団に、ベックがキツいお灸を据える。
「健全な警察」ってこういうものだと思う....

No.1 7点 2012/02/23 21:09
第1章は、バルコニーの男が夏の夜明けにストックホルムの街を見下ろしている思わせぶりなシーンです。この夜明け、午前2時45分というのが、まさに北国らしいところ。で、その後は公園に出没する強盗から、本筋の幼女連続殺人事件へと話は進展していきます。ここでも午後9時に、まだ明るいから子どもたちが外で遊んでいるという状況が最初の殺人のきっかけ。
第1章が事件にどう絡んでくるのかは、読者にはすぐに見当がつきます。そこにマルティン・ベックがなかなか気づかないのは、読者に比べて情報が少ないので、しかたありません。なお、後に『消えた消防車』で大活躍するラーソン警部は初登場だそうで、署内ではあまり評判がよくないようですが、個人的には彼の豪放さには好ましい印象を持ちました。
最後の犯人逮捕が完全に偶然頼みなのは、いくら「本格派」じゃないと言ってもね、という気はしますが、全体的にはコクのある、よくできた作品だと思います。


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マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー
1979年02月
テロリスト
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1978年04月
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1976年01月
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唾棄すべき男
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1975年01月
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ロセアンナ
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1973年01月
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1972年07月
笑う警官
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1971年08月
バルコニーの男
平均:6.00 / 書評数:4