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[ クライム/倒叙 ] 二人で泥棒を -ラッフルズとバニー 怪盗ラッフルズ |
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E・W・ホーナング | 出版月: 2004年11月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 3件 |
論創社 2004年11月 |
No.3 | 7点 | 弾十六 | 2020/12/23 04:55 |
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単行本1899年出版。収録8篇と少なめだが単行本丸ごとの全訳版。ラッフルズものの短篇集全三冊を完訳する、という企画は素晴らしいのですが、翻訳は繊細さが不足していて残念。まあこれは論創社の編集の問題だろう。創元で上質な翻訳をあらためてお願い…と思ったけど、創元なら選集になっちゃうよね。それも嫌だなあ。
この翻訳でも肝心のバニーのドキドキ感は損なわれていない。まあでも、もっと手練れなら、もっとバニーの心の動きがスッと染み込んでくるんじゃないか、と思う。そこが惜しい。 本書のキモは盗みのテクニックではなく、勝手な男に魅了されてしまった平凡な主人公の無様な振る舞い、だと思う。そーゆー人間関係ってあるよね。腐れ縁というか。 ところでパブリックスクールでのあだ名Bunnyって、どういうイメージなんだろう。「うさちゃん」なんだからねえ。可愛い顔の足の速い男の子、という感じなのか。あだ名の由来って意外なのが良くあるから判らないが。(Raffles Reduxによるとクリケット用語。ルールをよく知らないので、読んでもニュアンスがわからない。11番目の打者らしい。) (2021-1-3追記: へたっぴいな打者で打順が最後、ということらしい。他に強打者なのに特定の投手に極端に弱い場合に使われる。例: バースは尾花のBunnyだ) 初出は二作を除き英国月刊誌カッセルズ誌(FictionMags Index調べ)。連載タイトルはIn the Chains of Crime、イラストはJohn H. Bacon。なおRafflesシリーズの注釈とイラストが満載のWebサイト“Raffles Redux”(以下Redux)を発見した。色々な画家のイラストがあり一見の価値あり。各話ごと1ページに原文(英Gutenberg)とイラストと注釈をまとめていて非常に便利。 トリビア(及び翻訳へのイチャモン)はじょじょに埋めます。 (1)The Ides of March (初出: Cassell’s Magazine 1898-06)「三月十五日」: 評価6点 タイトルはシーザー暗殺の日を意味する表現(シェークスピアに用例あり)。英語辞書では「(古代ローマ暦で)3月・5月・7月・10月の15日, および他の月の13日」とのこと。古代ローマ暦はなかなか面白い。Wiki「ローマ暦」参照。 二人ともよく分かっていることを、曖昧な会話で進めるスリル。第一話として素晴らしい。翻訳のせいで惜しくも減点。crackは「金庫破り」が原意。ジャンポール・ベルモンドの『パリの大泥棒』(1967)のワンシーンをちょっと連想した。 Reduxによると1891年3月15年の事件。 p1 非合法のバカラ賭博のテーブル(baccarat-counters)♠️「非合法の」は不要。counterはチップのことでは?(複数形だし…) p1「どうしたんだ?忘れものかい?(Forgotten something?)」♠️ラッフルズの初セリフ。何で余計な「どうしたんだ?」を付加するかなあ。こういうセンスがこの翻訳のところどころに顔を出す。 p2 彼をそのまま自室に押し戻した(pushing past him without ceremony)♠️彼の脇を勝手に進んだ、という意味では? 翻訳ではwithout ceremony(挨拶なく、遠慮なしに)が抜けている。(2020-12-24訂正: push past〜は「〜を前に押す」で、本書の訳が正解。試訳: 彼を押すように遠慮なく進み…) p2 学校では君のために尽くしてきたし(I fagged for you at school)♠️fagはパブリックスクールで下級生が上級生の雑用をすること。試訳: パブリックスクールでは君の雑用をこなしたし… 英wiki “Fagging”参照。 p2 サリヴァン(Sullivan)♠️Sullivan Powellのタバコか。このブランドの詳細は調べつかず。(ReduxによるとAlbany付近のBurlington ArcadeにあったタバコメーカーSullivan, Powell & Co.のことだという) p3 二百ポンド♠️英国消費者物価指数基準1891/2020(127.89倍)で£1=16898円。200ポンドは338万円。 p3 大分お金を持ってやってきたと聞いていたがね(I heard you had come in for money?)♠️試訳: 君は遺産を相続したと聞いたが? p4 もはやぼくには、家族なんていないんだ(I have no people)♠️すぐ後ろを読むと、両親とも亡くなっており一人っ子だとわかるはずだが… 試訳: 家族はいない。 p4 家を捨ててでてきちゃったのさ(I came in for everything there was)♠️come in forを再び誤訳。試訳: 財産は全て相続済みだ。本書の翻訳はこんな調子。キリがないのであとはなるべくトリビアに絞って書く。 p5 ラッフルズも僕も金持ちの行く名門私立校のアッピンガム・スクールにかつて在学していた♠️この一文はGutenbergの原文に無い。訳者の(親切な)付加か? p6 ラッフルズは戸口の前にドンと立ち塞がったのだ♠️こういう大袈裟な形容は、たいてい訳者の付加と思って良い。原文はシンプルにRaffles stood between me and the door. p8 ピストル(pistol)♠️原文では後の方でrevolverと判明する。小さめのブルドック・リボルバーを推す。(Reduxのイラストでは割合大きなリボルバーに見えるが) p11 君は学校ではちょっとした悪ガキだった(you were a plucky little devil at school)♠️pluckyは「勇敢な」、devilは軽い意味で「(=fellow)やつ」と解釈したい。 p12 ワッツの絵画「愛と死」やロセッティの「聖少女」の複製(reproductions of such works as "Love and Death" and "The Blessed Damozel")♠️前者は1885-1887ごろの、後者は1875-1878の作。 p15 えーっ!今夜か?ラッフルズ?♠️原文はTo-night, Raffles? なお、本書での綴りは全てハイフン入りでto-night。 p15 ボンド・ストリートにある友人からせびり取るのさ(From a friend of mine here in Bond Street)♠️「せびり取る」は全く不要。会話の妙が台無しだ。 p16 なにしろ恐ろしいことをやるんだからね(It's a beastly ordeal)♠️ここで犯罪の実行を仄めかすのはズレてる。曖昧な言葉に留めておきたい。試訳: とっても厳しい試練だ。 p16 シェークスピアの名文句の引用のある、日めくりカレンダー(a Shakespearian calendar)♠️ああ、そーゆーのが当時もあったんだ。日めくりではないと思う。(バニーに渡しながら「今日は何日だったっけ」と尋ねている) ヴィクトリア時代のシェークスピア引用付きの月カレンダーはWebに画像があった。なお続くバニーとラッフルズの掛け合いは バ: March 15th. 'The Ides of March, the Ides of March, remember.' (沙翁Julius Caesar, Act IV, Scene III “Remember March, the Ides of March remember”の引用) ラ: Eh, Bunny, my boy? You won't forget them, will you? p18 明日の朝でいいじゃないか(Surely the morning will be time enough!)♠️バニーが深夜の行動の意味をよくわかっていない感を出したい。試訳: きっと朝でも間に合うよ。 p18 何しろ夜に出歩く、悪事の好きな男(He's the devil of a night-bird)♠️devilは「やつ」p11と同様のズレた訳。 p30 金庫にしまっておいた(were in the Chubb’s safe)♠️Reduxによると当時イングランド銀行などにも採用されていた一流メーカー。始祖はCharles Chubb(1779-1845)。 p30 指紋(finger-marks)♠️ここでは「沢山の指の跡」が正解だろう。なお訳注に「ロンドン警視庁が指紋のファイルを製作したのは20世紀にはいってから」とあるが正確には1901年スタート。 p31 キーツの詩に登場するオウム(Keats's owl)♠️The Eve of St. Agnes(1819)にThe owl, for all his feathers, was a-coldとある。フクロウだよねえ。 p32 弾の入ったカートリッジを抜き取り(pick out the cartridges)♠️「弾丸を抜き取り」で良いよね。まあ間違い表現とは言い切れないが、知らない人はオートマチック拳銃のマガジン(弾倉)を連想するかも。 p34 血の味がした(I’d tasted blood)♠️まあぼんやり意味はわかるが「〈猟犬・野獣などが〉血の味を覚える、〈人が〉(刺激の強いことを)初めて経験する; 味をしめる」という意味の慣用表現。試訳: 血の味を知ってしまった。 p34 ウィリアム・S・ギルバートの詩を引用するのはひどく嫌だが、泥棒を讃えた彼の詩は、深い部分で正しい(I'm sick of quoting Gilbert's lines to myself, but they're profoundly true)♠️試訳: ギルバートの歌詞を僕に寄せて引用するのはとても嫌だが… Reduxによると“The Policeman’s Lot” from “The Pirates of Penzance”(1879)のことらしい。 p35 ぼくは両腕を動かしてカッカとする頭を抱えようとした(I turned on my heel, planted my elbows on the chimney-piece, and my burning head between my hands)♠️試訳: ぼくは背を向け、暖炉に肘をついて火照った頭を抱えた。 (2020-12-24追記) ▶▶︎▶︎▶︎▶︎ (2)A Costume Piece (初出: Cassell’s Magazine 1898-07)「衣装のおかげ」: 評価6点 『クイーンの定員1』(浅倉久志 訳 1984)で読んだ時は、ずいぶん荒っぽい、と思ったけど、シリーズのこの位置に来るならピッタリだ。 原タイトルは「当時の衣装を着けて演じる史劇」のこと。翻訳は立派な先行訳があるのに変テコなところがところどころ。後述するが翻訳抜けもかなりある。編集は何してたんだろ?gutenberg版を忠実に翻訳している浅倉版をお薦めする。 Reduxによると1891年4月の事件。 p37 リューベン・ローゼンタール(Reuben Rosenthall)♠️書きっぷりからモデルがいるかも?と思ったらRedux情報でBarney Barnato(1851-1897, 本名Barnett Isaacs)と書いてあった。英Wikiに項目あり。名前からわかるようにユダヤ系だ。ここでの描写も「巨大な鉤鼻… すごい赤毛」と典型的。 p41 ロンドンの貧民街の人たち(Tom of Bow and Dick of Whitechapel)♠️調べて18世紀ロンドンの追い剥ぎ(highwayman)Tom King(1712-1737)& Dick Turpin(1705-1739)のことか、と思ったが、Tom KingとBow Streetはあんまり関係なさそう。 p48 アトラスの乗り合い馬車(an Atlas omnibus)♠️Reduxによると実在した馬車会社。 p49 ラッフルズが最初にしたのはガス灯をつけないことで、明かりが灯ると…(The first thing I saw, as Raffles lit the gas, was…)♠️まあなんか勘違いしたんだろう。浅倉訳「ラッフルズがガス灯をつけたとき、最初に目に入ったのは…」 p52 あまり品のよからぬ、声の大きな女たちだ(Ladies with an i, and the very voices for raising Cain)♠️浅倉訳「カインでも呼び起こしそうな声の持ち主」 p54 ガーデニア(Gardenia)♠️架空の名称か。調べつかず。続く「カジノ・バー」は参照した原文になし。 p54 最悪、君は悪魔として十分通用するよ。訳の分からない呪文を唱えられればね(You’ll pass for Whitechapel if the worst comes to the worst and you don’t forget to talk the lingo)♠️浅倉訳「万一、最悪の場合になったら、ホワイトチャペルの住人になりすますんだぞ。隠語を使うのを忘れるな」 p54 気分を一新してかかろうぜ、わがスターよ!(please our stars, there will be no need)♠️浅倉訳「おれたちの星々よ、どうかそんな必要が起きませんように」please Godで「神もし許したまわば,順調にいけば;場合によったら」が辞書にあった。ここら辺、数行の訳し抜けあり。 p57 明かりを消せ!(Out o’ the light)♠️浅倉訳「おい、そこはじゃまだ」get out of the lightで「じゃまをしないようにする」と辞書に載っていた。舞台用語? p57 散々苦い目に合わされているんだ♠️このあと「ぼくはその隙に」の間に数行の訳し抜けあり。さらにp58以降ラストまでにもかなり多くの抜けがある。 p59 窓の外に向けて立て続けにピストルを撃ち続けた♠️例えばこの文、相当する原文が無い。訳者が勝手に端折ったか、gutenbergより短い原文(もしかして雑誌初出版?)があるのか。 p59 オックスフォード大学時代に(at Oxford)… ボートレースで使ったからね♠️Reduxによると後年の作(The Field of Philippi 1905)でラッフルズはケンブリッジ大学出身だと明かされたという。「ボートレース」のくだりはgutenbergになし。 (2020-12-26追記) ▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎ (3)Gentlemen and Players (初出: Cassell’s Magazine 1898-08)「ジェントルメン対プレイヤーズ」: 評価5点 数日かけてクリケットについてお勉強。古い映像もちょっと見てみた。世界では二番目にファン人口が多いスポーツだと知ってビックリ。大まかなルールがわかったので本作もさらに楽しめる、かな? 翻訳者はどうやらクリケット知らずのようだ。折角のクリケットもので普及にも資する歴史的作品なのに、非常に残念。(フットボールねたが多く登場する作品を蹴球知らずが訳して間違いだらけだったらファンは怒るよねえ。) 評価点は翻訳の不備で星一つ減点。 Reduxによると1891年7〜8月の事件。八月十日月曜日(p70)とあり1891年で間違いない。 p61 彼は投手として優れていただけでなく、名野手として活躍した。しかも、常に試合を有利に導く戦略家であった(Himself a dangerous bat, a brilliant field, and perhaps the very finest slow bowler of his decade, he took incredibly little interest in the game at large)♠️試訳「自身は危険な打者、素晴らしい野手、そして当代最高のスロー・ボウラーなのだが、ゲーム自体には驚くほど全く興味がなかった。」slow bowlerはfast bowlerじゃ無い方、という理解で良いのかな? 野球でいう速球派と技巧派の違い? p61 ローズ・クリケット・クラブに行く(went up to Lord’s)♠️St. John’s WoodにあるMarylebone Cricket Club(1787年創設、以下MCC)の本拠地Lord’s Cricket Groundのこと。1814年設立、The Home of Cricketと称されているクリケットの聖地。 p62 打たれることを覚悟して投げたら空振りしてウイケットが倒れてくれた(taking a man’s wicket when you want his spoons)♠️投手(bowler)はwicket(マトの三本杭)を狙いボールを投げ、当たると打者(batsman)はアウト。打者はボールを撃ち返して後ろのウイケットを守り、かつ得点を狙う、というのが基本プレイ。なおボールがウイケットに当たれば良く、倒す必要はない。spoonはボールを掬い上げるように打つこと(ゴロじゃなく飛球なら捕球でアウトに出来るので投手にとって良い)。この文なら、飛球狙いで投げて思惑通りアウトを取った、という感じだろうか。 p62 ピース(Mr. Peace)♠️Charles Frederick Peace(1832-1879)のこと。英国の著名強盗殺人犯。一本弦のfiddleの演奏で有名だったが、動物を可愛がる(taming animals)はガセらしい(Redux情報)。 p63 実際、彼がクリケット場に現れるときには、彼ほど自分のチームを勝たせたいと熱中するプレイヤーはほかに見当たらなかった(Nevertheless, when he did play there was no keener performer on the field, nor one more anxious to do well for his side)♠️試訳「しかしながら、実際にプレーすると、球場で彼以上にゲームに熱中し、チーム・プレーに徹している選手はいないのだった」前の文章を逆接で受け、口ではそう言うが… ということ。 p63 彼はひと試合終わる前に…♠️以下、色々誤りあり。ここに書かれてるのは、ラッフルズはシーズン最初の試合の前の打撃練習(net)の時、bail(ウイケットにボールが当たると落ちる判定用マーカー)の代わりにソブリン金貨をウイケット杭(stump)の上に起き、ウイケットに当てることが出来たチームメイトにその金貨を賞金として与えた、というエピソード。味方の投手強化のために身銭すら切る、というラッフルズの姿を描いている。ソブリン金貨は1ポンド(=16898円)。 p63 次の日には57ポンド稼ぐ(made fifty-seven runs next day)♠️runはcricketの「得点」本番の試合では57点獲得した(大活躍だった)、ということ。打った後、球が野手から返ってくる間にサイドからサイドまで(約20メートル)走って1点獲得。返球までの間に何度でも往復して走れる。面白いのは打者二人がそれぞれバットを持ちサイドの両端に立っていて、片方が打ったら反対サイドに向かってペアが同時に走ること。なのでペアの走る、止まるの呼吸合わせも重要。なお野球のエンタイトルツーベースっぽいboundary(ゴロでグラウンドを越える)は4点、ホームラン(飛球でグラウンドを越える)は6点。 p63 ジェントルメンとプレイヤーズ♠️ReduxによるとThe “Gentlemen vs Players” gameは最初1806年に、1819年からは毎年行われたMCCの企画試合。アマチュア選抜(the Gentlemen)対プロチーム(the Players)という試合。アマチュアは上流階級、プロは下層階級がメンバーらしい。英国のアマチュア重視って貴族制度と切り離せないんだよね。 p65 ジンガリ・クラブの金と黒と赤のストライプの入ったブレザーコート(the Zingari blazer)♠️I Zingariは英国アマチュア・クリケット・クラブ(1845年創設)。Webで派手なブレザーの写真あり。 p67 われわれの対戦相手はフリー・フォレスターズです。まあドーセット州のジェントルメンに当たりますかな(We play the Free Foresters, the Dorsetshire Gentlemen)♠️ Reduxによると両方とも実在のクラブ。 p69 四十一回のランで三回倒した(three for forty-one)♠️いろいろ投手のスコアを調べてみて「3ウイケット(=アウト)41失点」が正解だろうか?投手は(外れ球を除き)6球で別の投手に交代するので一試合に必ず複数の投手が投球する。ひと試合のアウト数は10回だが投手成績にはカウントされない走塁アウト(run out)などもある。Reduxによると初出誌ではthree for thirty-eight。これでは良すぎ、と思った作者が補正したのか。 p70 ドーセット州のミルチェスター・アベー(Milchester Abbey, Dorset)♠️架空。 p76 メルローズ侯ドウェイジャー夫人(The Dowager Marchioness of Melrose)♠️ dowagerは(貴族の)未亡人、marchionessは侯爵夫人。 p76 アマーステス夫人の隣にいて大声で喋っていた(sat on Lord Amersteth’s right, flourishing her ear-trumpet)♠️試訳「アマーステス候の右に座り、補聴器が目立っていた」当時の補聴器はWebで(ear-trumpet 1900)。 p81 ジェントルメンとプレイヤーズが、ウイケットを倒すのにしのぎを削るようなものだ(Gentlemen and Players at single wicket)♠️英wiki “Single wicket cricket”参照。クリケット個人打撃戦、で良いか。最高得点の打者が勝つルール。 p83 次のイニングには走者に出ることもできた(made a run or two in my very next innings)♠️runは得点。inningはここでは打席(my付なので)。試訳「すぐ次の打席では一、二回得点できた」 p89 ゴムの快適なタイヤをつけた馬車(a hansom with noiseless tires)♠️John Boyd Dunlopがpneumatic tireを始めたのは1888年から。当時、最新式タイヤの馬車なのだろう。都会のイメージ。 p90 本話でも最終部分に多くの訳し漏れあり。 (2020-12-27追記) ▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎ (6)Nine Points of the Law (初出: Cassell’s Magazine 1898-09)「合法と非合法の境目」: 評価6点 バニーのドキドキがたまらない。 原タイトルはPossession is nine points of the law(占有は九分の強み)という諺から。 p141 切手と違って五シリングかかる(My answer cost me five bob)♠️電報代5シリングは4225円。Reduxによると手紙なら1〜2ペンス程度(141〜282円)だという。 p142 セキュリティーという暗号は{XX(ネタバレ防止)}のことでね(Security’s that fellow {XX})♠️試訳「“セキュリティー”の正体は{XX}という奴だ」この電報で初めて正体がわかった!という場面。 p142 六週間も法すれすれの弁護をやってのけた(got six weeks for sailing too close to the wind)♠️際どい弁護過ぎて六週間(の罰を)食らった、という意味なのかも? p143 爵位はつかないんですな(Not up at Lord’s)♠️Lord’sはp61にも登場した有名クリケット競技場。試訳「ローズでその名前は見てませんが」 p143 そういえば、投げて私をアウトにしたんでしたな(So you have bowled me out in my turn?)♠️「これは一本取られましたね」という意味だろう。bowl me outは「(投手の)投球で(打者の)私をアウトにする」(2021-1-3追記: これは単なるアウトではなく、球を打ち返せず、ウイケットに当てられてアウト、という表現。打者としては完敗。野球だと空振り三振のイメージ) p151 私には休憩が必要だったが、あなたは休まずに投げ続けましたね(I go up to Lord’s whenever I want an hour’s real rest, and I’ve seen you bowl again and again)♠️ああ勘違い。試訳「一時間本当に休憩したくなったら、いつもローズに行っていました。あなたの投球を何度も何度も見たのです」 p151 リージェント・ストリートのカフェ・ロワイヤル(the Café Royal)♠️1865年開業の有名レストラン。 p153 メトロポール・ホテル(Métropole)♠️1885年開業。Northumberland AvenueとWhitehall Palaceの角にある。現在はCorinthia Hotel London。 p154 嘘をついて殴り殺されたアナニアス(Ananias)♠️『使徒行伝』第5章に出てくる嘘つき。文語訳5:5「アナニヤこの言をきき、倒れて息絶ゆ」ペテロの叱責で死んだのだが… p162 二三十年(two hundred and thirty years)♠️二百三十年の誤植。 p162 収集家のジョンソン(Old Johnson)♠️すぐ後に「オーストラリア一の収集家といわれるジョンソン爺い(old Johnson)」と補い訳をしているのだが、米国ペンシルヴァニアの有名な絵画コレクターJohn G. Johnson(1841-1917)のことだろう。John G.はここに出てくる絵の(弟子が描いた)模写を保有しており、本物を見たら眼を剥くぞ、ということだろう。自慢してる男がオーストラリア出身の金持ちだからこういう余計な補い訳になったのか。 p164 サボイ・オペラのくだりに数箇所の訳し漏れあり。物語後半になると訳者の集中力が低下するのだろうか。 (2020-12-27追記) ▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎ (7)The Return Match (初出: Cassell’s Magazine 1898-10)「リターン・マッチ」: 評価6点 これもバニーのドキドキが見どころ。 p168 十一月の夕べ♠️いつのことかはわからない。Reduxにも記載なし。 p169 腕をぼくの腕の下に差し入れ(his arm slid through mine)♠️ヴィクトリア朝の紳士は腕を組むのが普通。 p174 短い赤毛のてっぺんは禿げている(an unbroken disk of short red hair)♠️短く切った赤毛のヘアスタイル(囚人の?)が円盤のように見えた、ということだろう。unbrokenなので禿げてはいない。Reduxに載っているイラスト参照。 p177 同時に殺(や)られる(‘blow the gaff’)♠️Reduxによるとto divulge a secret(秘密をバラす)という隠語。 p181 「何かお役に立てることがありますか?」(“Ye have the advantage o’ me, sirs,”) / 「そう願いたいものです」とわが友、マッケンジーは言った(“I hope you’re fit again,” said my companion)♠️試訳「どちらさまで?」/「お元気になられたようですね」わが友は言った。 どうしてmy companionが警部のことだと思うのだろう? p187 乗馬用の長いコートを着ていった…♠️この文章以下、翻訳では「ぼく」の思考のようになっているが、原文では現実の場面。ぼくが窓から見ていると、彼が乗馬用コートを着てアパートを出てゆくところで、警官に鍵を渡していた、というシーン。全く酷い翻訳だが、不思議と話全体として意味はなんとなく通じる。物語自体が薄味だからだろう。 (2021-1-2追記) ▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎ (8)The Gift of the Emperor (初出: Cassell’s Magazine 1898-11)「皇帝への贈り物」: 評価7点 いやーこれは… なんと言ったら良いのか。 Reduxによると1895年6月〜7月の事件。 p192 人食い列島(the Cannibal Islands)♠️ReduxによるとFijiのこと。 p193 島の首都フリンダー(flinders)♠️意味不明の翻訳。 p193 ぼくはロンドンのアパートはそのままにして、川を眺められるという楽しみから(I had let my flat in town (...) on the plea of a disinterested passion for the river)♠️試訳「都会のフラットを賃貸し、純粋に川を楽しみたいという口実で(田舎に引っ込んだ)」貧乏を悟られたくないための言い訳。 p194 殺人は止めにしたし、何も隠すものはなかった(The murder was out; there was no sense in further concealment)♠️突然の「殺人」。ちゃんとした編集がついていれば確実に避けられる誤訳。試訳: 秘密がバレた。これ以上隠す意味はなかった。 p195 それからしばらくの間…♠️以下、翻訳では数ヶ月が経過したことになっているが、原文ではラッフルズがバニーの住んでいる田舎に来て、ボートに乗り、夜11時に駅で会話したのは同じ日の出来事。この前会ったのが数ヶ月前(It was months since we had met)という文を誤解して、創作翻訳している。 p199 髪が黒く、目のきれいな若い女性(a slip of a girl with a pale skin, dark hair, and rather remarkable eyes)♠️「白い肌の」が抜けている。実は後で「褐色の肌を持つ顔(brown face)」(p207)と形容している。このbrown faceは茶色の髪色(と目?)の表現なのだろうか。なおa slip of a girlは「ほんの小娘」すでにバニーの反感が読み取れる。 p208 クリケットに例えれば… 出塁すらできていなかった(never had his innings)♠️試訳「まだ打席にすら立てていなかった」 p208 (Aは)すいすいとウイケットを倒してみせ… (Bを)圧倒していた(bowling him out as he was “getting set”)♠️試訳「(Bが)打席に立って構えるなり、(Aは)投球でアウトにしてしまった」bowl... outは投手が打者に投げた球がウイケットに命中して打者がアウトになること。打者にとっては最も気分の悪い音(投手にとって最も気持ちの良い音)が球場に響く。 p210 しかし、彼のユーモアはよく理解できた(I noted, however, the good-humor of his tone, and did my best to catch it)♠️試訳「だが、上機嫌な声だなと感じたので、調子を合わせることにした」いじらしいバニーの心情を汲み取って欲しいところ。 p210 何かをするつもりだ(making his century this afternoon)♠️make... centuryはクリケットの1打席で打者が百点以上獲得すること。凄い活躍をする、という意味。 p210 別の魚をフライにする(had other fish to fry)♠️他にもっと大事な仕事がある、という慣用句。 p214 原文ではここの会話は終始X嬢について。翻訳はいつものように勘違い。「その声を聞くたびに(With that voice?)」は「あんな声の女と?」だろうし、最後の「君は幸せに生きてるんじゃないの?(Do you think you would live happily?)」は「幸せになれると思うのか?」だろう。 p219 去年の11月に(last November)♠️前作の事件は去年のことだと言っている。Reduxは本作を1895年6月〜7月としているのだから前作は1894年11月の事件となる。ただし本作が1895年だという根拠はわからない。 p223 大きなコルトの短銃(the huge Colt that had been with us many a night, but had never been fired in my hearing)♠️that以下は訳し抜け。「沢山の夜、ぼくらと一緒だったが、一度も発射音を聞いたことはない」当時のコルトならSAA(いわゆるピースメーカー)か。M1892だと新しすぎる。 p227 本篇もラストに訳し抜け多し。大事なところで勘違いもあり(男女の誤り!など)。ネタバレになるので細かく書けないが、一例を挙げると最後の部分は翻訳では10行、原文は12行。個々の文章も端折っている。作品の途中でも抜けはところどころあるが、概ね逐語訳。なのに最後に来ると大胆な超訳。不思議だなあ。 (2021-1-3追記) ▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎ (4)Le Premier Pas (短篇集The Amateur Cracksman, Methuen 1899)「ラッフルズ、最初の事件」: 評価5点 ラッフルズのドキドキが語られる。いつもの荒っぽい話。当時の警察の捜査技術でも逮捕されちゃうんじゃない? 読んだ印象では次作同様、単行本にまとめるときに書き下ろした感じ。 Reduxは1881年クリスマス期間の話としている。 p93 古いオリエント汽船の名札(an Orient label)♠️Orient Lineは当時オーストラリア行きで有名な客船。 p95 ユダヤ人(Jews)♠️Reduxによるとmoneylenders(高利貸し)の意味で使っているようだ。 p95 試合中、アウトコースのボールを打とうとして手にボールを当ててしまった(I was cut over on the hand)♠️そういう意味なのかなあ。素直に「手の表面を切った」では?外科医(surgeon)が治してるし、後段でこの怪我はthird finger that was split and in splintsだと書いている。 p96 汽車はないのですか?(Can’t I go by train?)♠️Reduxによるとイエイ(Yea)まで汽車が開通したのは1883年。 p97 でも太った馬はお嫌でしょうね(and then I should know you’d have no temptation to use that hand)♠️「(穏やかな馬なので)その(傷ついた)手を使う必要はないと思います」という感じ。 p100「ラッフルズさんじゃありませんか」…「ラッフルズだよ!」ぼくは思わずにっこりしながら、固い握手を交わしたのさ♠️原文は‘Mr. Raffles?’ said he. / ‘Mr. Raffles,’ said I, laughing as I shook his hand.となってる。本作のキモなんだけど、訳者には全然わかっていない。試訳「ラッフルズさんですか?」…「ラッフルズさん」ぼくは笑って握手した。 続く会話も調子を変えて欲しい。ラッフルズは丁寧に喋っているのだろうし、相手はもてなす風に話してる感じで。この翻訳では最初からバレバレ。 p101 そういうあんたも強そうだな(They would in you)♠️ラッフルズとしては強盗を撃退した、という支店長のエピソードが頭にあるので、このセリフ。「あなたには敵いませんよ」くらいか。 p108 彼は決して不摂生な人間ではなかった(he was at all intemperate)♠️ここら辺、ラッフルズが人を酔い潰そうと苦労してる場面。相変わらずズレまくった訳文が続く。ローゼンタールとの違いを逆に捉えている。 p108 だからベッドに入ってとにかくテンションを鎮めた♠️この文は相当する原文無し。訳者の勝手な創作。しかも結構訳し抜けあり。原文では、見通しが立たない中で会話に苦労した…ということをクリケット用語なども使いながら語って。いる。 p109 鍵は二つあって… もう一つは業務日報の日曜日のページにはさんでおく習慣(he had a dodge worth two of that. What it was doesn’t much matter, but no outsider would have found those keys in a month of Sundays)♠️楽しい珍訳。試訳「彼にはうまい隠し場所があって、まあそれほどでも無いんだが、でも部外者が今までずっと鍵を見つけたことは無かった。」辞書に載ってる成句を良く調べていない。業務日報、何処から出てきた? p113 締まり扉の具合を確かめ…♠️ここも原文に無い。これではアレっ?てなる。そして結構な訳し抜け。相変わらず後半に集中力が欠けている。 (2021-1-13追記) ▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎ (5)Wilful Murder (短篇集The Amateur Cracksman, Methuen 1899)「意図的な殺人」: 評価6点 荒っぽい話だが、泥棒には信頼できる故買屋が必要だ。レスター・リースはどう切り抜けていたんだろう。 ▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎ ところで、今頃見つけたのだが、Wikiに紹介されている雑誌連載開始時のタイトル画のキャプションがBeing the confessions of a late Prisonner of the Crown, and sometimes accomplice of the more notorious A. J. Raffles, Cricketer and Criminal, whose fate is unknownとなっている。じゃあ最初からそーゆー構想だったのね。 (2021-1-14追記) 単行本には献辞あり。TO A. C. D. / THIS FORM OF FLATTERY サー・アーサーに捧ぐ(これが我が賞賛方法)、という感じか。 |
No.2 | 6点 | おっさん | 2012/01/24 15:28 |
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かつて創元推理文庫が、シリーズ企画<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>の第二期分として刊行を予告しながら、幻に終わってしまったのが、『ラッフルズの事件簿』。
コナン・ドイルの義弟にあたるE・W・ホーナングによる、悪漢系ライヴァルの作品集でした。 心の片隅に、ずっとこのラッフルズのことは引っかかっていたので、21世紀に入って論創海外ミステリから、ラッフルズもの全短編集3冊が続々訳出されたのは、まことに嬉しいオドロキでした(同叢書の、業界へのゲリラ的な参入には、もの申したいことが山ほどあったのですが・・・ラッフルズの件で、ひとまず許しましたw)。 本書は、第一短編集The Amateur Cracksman(1899)の翻訳ですが、直訳すれば『素人強盗』となるタイトルを『二人で泥棒を』とし、これを3冊を通してのシリーズ・タイトル(以下『またまた二人で泥棒を』『最後に二人で泥棒を』と続く)にしたのは、お見事。 怪盗ものを、ホームズ、ワトスン流のバディ形式で描くという、ホーナングの狙いをきちんと理解し、シリーズの軽妙さ、キャラクター小説としての側面まで伝えています。 賭博で大きな借金を背負ったバニーは、友人の青年貴族ラッフルズに助けを求めるが、じつはラッフルズには裏の顔があり、そんな彼が提示した解決策は、“二人で泥棒を”というものだった! かくして、冒険の幕が開く・・・ 収録作は―― 1.三月十五日 2.衣装のおかげ 3.ジェントルメン対プレイヤーズ 4.ラッフルズ、最初の事件 5.意図的な殺人 6.合法と非合法の境目 7.リターン・マッチ 8.皇帝への贈り物 1898年にCassell's Magazine に発表された6編に、新たに2編を追加したものです。 最初に断わっておくと、本書にハウダニット(どうやって盗むか)的興趣を期待すると、裏切られます。ホーナングの関心は(少なくともこの時点では)、トリッキーな手口にはありません。 あくまでアマチュアの紳士として、報酬ではなく誇りのために、スポーツと同様のスタンスで盗みに挑む(結果として成功もあれば失敗もある)ラッフルズの、独特のウエイ・オブ・ライフを、既成の道徳・価値観に縛られ揺らぐバニーの視点で描きだす――その面白さなのですね。 あえてシビアに言ってしまえば、一編一編に、ミステリとして特記すべきものは何もありません。 でも。 短編集として、作品の積み重ねが醸し出す味わいがあり、作者がシリーズものの醍醐味をきちんと把握した、職人的ストーリーテラーであることを窺わせます。 その意味で、本書を代表するのが、3と7。前者で、アマチュアのラッフルズに漁夫の利をさらわれた、その道のプロが、後者では脱獄し、ラッフルズに会いに現れます。この両者の“対決”が、「ジェントルメン対プレイヤーズ」「リターン・マッチ」というタイトルが示すように、ラッフルズの得意とするクリケットの試合になぞらえられている点に妙味があります。 そして――悼尾を飾る8(のちの、モーリス・ルブランのルパンもの第一話を想起させる、船上ミステリ)のエンディングの、強烈な意外性。 悲しくも美しい、ラッフルズ版「最後の事件」です。 「えーっ、このあとどうやって続けるんだよ!」と叫んだら、アナタはもう、ホーナングの術中に。 ミステリとしては平凡だから、と見限らないで、この、尻上がりに良くなるユニークな怪盗譚を読み進めていただければ幸いです。 まずは6点からスタートしますが、お楽しみはこれからですよ。 |
No.1 | 5点 | mini | 2010/10/12 10:07 |
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ホームズのライヴァルではなく、ルパンのライヴァルと言う方が正しいのだろう
しかしホームズとは縁があって、作者ホーナングはドイルの妹と結婚しており、つまりドイルの義弟なのだ 昔々、創元文庫が”ホームズのライヴァルたち”という企画を立ち上げた頃、この「ラッフルズ」も予定に入っていたらしい ところが創元にありがちな予告だけして幻に終わる結果だった 月日が流れて論創社から全3巻というほぼ完全版で刊行された時は驚いた ただ内容的には時代性を考えてもイマイチで、創元が手を引いたのもそれが原因かなと邪推したものだ でもやはり時代性の考察抜きでラッフルズを語ることは出来ない 何故ならラッフルズはルパン登場に先立つこと数年前、おそらく短篇集に纏められた世界最初の怪盗ものだったからだ ここで”短篇集に纏められた”とくどい注釈を付けたのには理由が有り、雑誌に短篇が掲載されたのならグラント・アレンの「クレイ大佐」ものの方がさらに早い しかし「クレイ大佐」は短篇集に纏められたのが遅れた為、単行本的には「ラッフルズ」の方が刊行年が早いので、「ラッフルズ」のミステリー史的重要性が割り引かれることは無い 「怪盗ルパン」とは数年の差が有るので、英仏の言葉の壁があるにせよ、ルブランが「ラッフルズ」の存在を知らなかったはずは無く、「ルパン」とは内容的に全然似てないのだけれど、それは英仏両国民性の違いであって、全く影響されてなかったとは言えないと思う とにかく「ラッフルズ」は英米では「ルパン」と肩を並べる怪盗の先駆として今でも名前が残っている存在で、それが理解されてないのは「ルパン」だけが世界的人気で「ラッフルズ」をマイナーだと誤解している日本だけだろう 「ルパン」って日本以外では案外とそれほど人気があるわけじゃないと聞いた事があるし、ルブランがフランス人だけに英国では「ルパン」<「ラッフルズ」らしい |