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[ 時代・歴史ミステリ ]
江南の鐘
ディー判事 別題『中国梵鐘殺人事件』
ロバート・ファン・ヒューリック 出版月: 1989年09月 平均: 5.50点 書評数: 2件

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三省堂
1989年09月

早川書房
2008年09月

No.2 5点 nukkam 2016/06/19 01:57
(ネタバレなしです) 初めて国内に紹介された時は「中国梵鐘殺人事件」というタイトルの1958年発表のディー判事シリーズ第2作です。「半月小路暴行殺人事件」、「仏寺の秘事」、「鐘の下の白骨死体」の3つの事件を扱っていますが、順繰りに解決されることもあって初期作品の中では構成がシンプルです。本格派推理小説らしさが感じられるのは「半月小路暴行殺人事件」のみ、しかしそれも一般的な犯人当てを期待すると肩透かしを食らう真相です。一筋縄ではいかない悪役の登場や大捕り物など全体的には壮大な時代劇の印象を残します。巻末の「著者あとがき」を読むと時代描写に細心の注意を払っているのがよくわかりますが、前作の「中国迷路殺人事件」(1956年)と同じく処刑の場面を丁寧に描写しているのは好き嫌いが分かれると思います。それも作者が参考にしている中国の犯罪小説では珍しくないのかもしれませんが。

No.1 6点 mini 2010/11/04 10:15
冬近い晩秋、第3の赴任地に赴いた狄(ディー)判事は、公務引継ぎ書類の中からとある強姦殺人事件に目を留める
一方で副官達は町の噂に、地元の名刹である寺で、子宝に恵まれない女性が一夜を過ごすと懐妊するという奇妙な話を聞き込む
これが判事に難題を突きつけることになろうとは・・

前期5部作らしく今回も例によって3つの事件が発生し同時進行で解決するわけだが、今回が前期の他の作と違うのは、3つの事件の関連性が極めて薄い点だ
他の前期5部作では真相は別でも登場人物が微妙に絡んだりと多少なりとも関連性があったのだが、今回は独立性が強い
人間関係も相互に関連せず、3つの事件をそれぞれ個別に順次解いていく感じなので、シリーズの中ではやや多い分量の割には話の展開が分り易い
半面、良い意味での複数の話が複雑に絡み合う面白さには全く欠けているので、この辺は評価が分かれよう
またポケミスの帯で”シリーズ史上最大の難事件”とあるのも大袈裟
事件の解明が難しいのではなくて、寺の妊娠事件を解決するには政治的に難しい側面が有るという意味で、謎解き面での難事件を期待すると方向性が違う
政治的な難題だったら「水底の妖」の方が国家転覆の陰謀だけに余程大事件だ
ここまで書くと欠点だらけみたいだが、個々の解明などは面白く、事件が大袈裟な割には竜頭蛇尾な「水底の妖」よりはこの「江南の鐘」の方が私は好きだ
ただし人間ドラマ的な要素が嫌いな読者には「水底の妖」の方が合うだろう


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