皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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mozartさん |
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平均点: 6.02点 | 書評数: 208件 |
No.128 | 5点 | 希望の糸- 東野圭吾 | 2019/09/12 20:44 |
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加賀恭一郎シリーズ(メインキャラは松宮ですが)としては、全体的にやや「薄味」だったかな、という印象です。松宮の出生に纏わる話もそれほど感動的ではなかったし。
事件を取り巻く「糸」の中心にいた人物が、最後に真実を知った上で「それって、そんなに大事なこと?」と言い放った後、「とりあえず、今は」と付け足したのは、いずれ事件の当事者たちや松宮のように彼女も「血の繋がり」の重さを知る時が来る、ということなのかも。最後の松宮の話も含めて、結局はそれが大きな位置を占めているというストーリーになっていたし。そう考えると行延や哲彦の「糸」はどうなってしまうのかと、ちょっと気が重くなってしまいました。 全然関係ないですが、中学生に対する「脂肪が全くついていない身体」という表現に、著者も自分の腹回りを気にしているのかなと思うと、妙に「共感」してしまいました。 |
No.127 | 8点 | 沈黙のパレード- 東野圭吾 | 2018/11/02 08:38 |
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久々のガリレオシリーズ長編でしたが、期待を裏切らない水準の作品に仕上がっていて、作者の力量に改めて感服しました。ひねりを効かせた殺害方法に対する湯川の「科学的洞察(?)」による解明などは従来通りだし、背景になった真の動機の「意外性」やページが残り少なくなってからの「どんでん返し」なども十分に楽しめました。今作でも「真夏の方程式」同様、ガリレオの「偏屈さ」が影を潜めていましたが、その理由も「容疑者Xの献身」の結末を受けてのことであると分かったのはシリーズ愛読者としても良かったと思いました。
湯川がギターを弾く場面とかフレミングの左手とかは、内海刑事の「活躍」が目立ってきたことと同様、ドラマ化ないしは映画化を意識してのことだろうと思いますが(バーでの湯川と内海のやりとりなどドラマでの福山雅治と柴咲コウそのものだし)、これもまた作者一流のファンサービスの一環であると好意的に捉えることにしました。 |
No.126 | 7点 | 贖罪の奏鳴曲- 中山七里 | 2018/08/28 18:20 |
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図書館の予約の都合上「追憶~」、「悪徳~」と読んでからこの「贖罪~」を読むに至りました。法廷でのどんでん返し、その後のさらなる真相の提示など、本シリーズに共通するもの(お決まりのパターン?)で、これらについては文句なく楽しめました。ただ、最初に読んだ「追憶~」で主人公の(表面上の)キャラクターが刷り込まれていたので、医療少年院時代のエピソードは意外と「普通」でむしろ新鮮でした。もっと暗く屈折した心情の揺らぎや変容がその後の彼の行動原理つながっているのかと思っていたのですが・・・。 |
No.125 | 5点 | 友達以上探偵未満- 麻耶雄嵩 | 2018/08/19 13:16 |
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久々に麻耶作品を手にしました。収録された3作品とも割と真っ当なフーダニットものと言った感じです。いずれも私のような年寄りには俄に頭に入って来ない筋立て(特に「夢うつつ~」)がいかにも麻耶作品らしいと言えなくもないのですが、仕掛けの「破壊力」のようなものを期待すると肩透かしを食らうことなるでしょうね。探偵役のあおと「探偵未満」のももが主人公なのですが、二人がJC時代の「夏の合宿~」におけるあおのももに対する見方の変化が、ある意味著者のユニークなミステリー観の一端を表しているのかも知れません。
それにしても、探偵未満とは言えワトソンではないのだからももにもう少し点数の高い推理をさせてやっても良いんじゃないでしょうかねぇ。 |
No.124 | 7点 | 悪徳の輪舞曲- 中山七里 | 2018/08/17 16:02 |
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「追憶の夜想曲」がとても面白かったので本作を読みました。本当は「贖罪~」と「恩讐~」を先に読むべきなのかも知れませんが、図書館での予約の都合上やむを得ず・・・。
およそ不可能と思われる無罪判決を主人公の「前歴」との関係を絡めながら土壇場で勝ち取るというパターンや、その裏に潜む切なくも重い「真実」など、「追憶~」と同様ですが、最初の場面につながる「どんでん返し」はちょっと迫力に欠ける感が否めませんでした。妹の依頼による母親の弁護という特殊なシチュエーションの中で困惑していた主人公が最後に倫子に口走った言葉が実は一番の「どんでん返し」だったのかも。 |
No.123 | 8点 | 追憶の夜想曲- 中山七里 | 2018/08/05 20:50 |
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御子柴礼司モノとして前作や次作(次々作)があることを知らずに本作を読み始めてしまいました。主人公の「特異」なキャラ設定やその極めて不透明な行動原理にモヤモヤ感を抱きつつ、緊迫したストーリー展開にグイグイ引き込まれて、気が付いたら一気読みしていました。本「犯行」の背景にある「おぞましい行為」についてはやや生理的に受け付けないものがあるのですが、伏線の回収や不可能と思われた状況が見事にひっくり返る結末など、大いに感服させられました(細かな点で気になる箇所がいくつかあったのも事実ですが)。前作(や次作・次々作)も是非読んでみたいと思いました。 |
No.122 | 7点 | 碆霊の如き祀るもの- 三津田信三 | 2018/08/03 10:07 |
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久々の刀城言耶シリーズ長編で、大いに期待して読みました。過去作と比べて迫力不足の感は否めませんが、ページが残り少なくなってからの七十項目におよぶ謎の羅列とか、くどいほど謎解きを試行錯誤で繰り返しながら真相に迫っていくシーンなどは、本シリーズの「伝統」はしっかり守られていると思います。
祖父江偲については、好みが分かれるところでしょうが(世の中には偲ファンもいるのでしょうが)、今作では本筋での絡みが(一点を除けば)言耶との「掛け合い」のみだったので自分としてはまぁ許容範囲内でした。 |
No.121 | 8点 | 屍人荘の殺人- 今村昌弘 | 2018/07/23 13:11 |
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読み始めからぐいぐい引き込まれて久々に一気読みしました。鮎川哲也賞選考委員全員が推した傑作というのもうなずけます。第2の殺人で何でそこまでするかという犯人の動機(ホワイダニット)についても「本格」作品としては十分許容できる範囲だと思います。ただ、個人的には探偵役のキャラ設定(「青春ミステリー」的味付け?)がちょっとアレでしたが。 |
No.120 | 5点 | 探偵さえいなければ- 東川篤哉 | 2018/01/29 17:14 |
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久々の烏賊川市シリーズということで期待が大きかったのですが、短編集だったせいか、レギュラーメンバー間のやりとりも少なく、「本格度」も「ユーモア度」もちょっと薄味だったかな、という印象です。同シリーズでは、できれば長編を読みたいところです。 |
No.119 | 3点 | 名探偵の証明- 市川哲也 | 2018/01/16 14:34 |
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これは何とも・・・。「ミステリー」としての出来もさることながら、後味の悪い結末に持って行くこじつけのような動機付けとか。自分にはちょっと残念な印象ばかり残りました。 |
No.118 | 5点 | 危険なビーナス- 東野圭吾 | 2017/08/17 11:15 |
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図書館で予約していたのですが、すっかり忘れた頃に貸し出し可能の連絡があって早速ゲットし、例によってすんなり読了。読みやすさは相変わらずです。色々伏線が敷かれていて最後の方でことごとく回収されていく、というパターンは同じ著者の「夢幻花」に通じるものがありますが、全体としてはかなり軽く感じました(楓のキャラ設定によるところが大きいかも知れませんが)。これはこれで悪くないのですが、「没落しつつある名家」の遺産相続問題や複雑に入り組んだ癖のある親族の存在等から、某作家の世界を著者らしくひねった展開を期待して読んでいたのでちょっと肩すかしを食らってしまいました。 |
No.117 | 5点 | 黒面の狐- 三津田信三 | 2016/11/29 10:29 |
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戦前から戦後にかけての炭坑関連の記述については、「幽女の~」の蘊蓄に比べるとそれほどくどくなく、比較的読みやすかったと思います。ただ、最後の「多重解決&棄却」は、やや「言耶シリーズの劣化版」の感が・・・。トリックもちょっとご都合主義ぎみだったし。肝心のフーダニットもひとひねりがあったとはいえ、その破壊力はイマイチでした。
とはいえ、久々に「言耶テイスト」を味わうことができたのも事実で、次作では是非とも「首無」を凌ぐような言耶ワールドを(もちろん言耶の「~の如き」シリーズで)現出してもらいたいものです。 |
No.116 | 4点 | ラプラスの魔女- 東野圭吾 | 2016/11/18 18:22 |
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相変わらず読ませ上手であることは確かです。ただ、いつものような、読者の感情に直に訴えかけてくる「あざとさ」はちょっと希薄でした。その割に、「全てを予測することのできる『超常者』であったとしても(上から目線?であったとしても)この世に無駄な個体などない」、というテーマが何とも薄っぺらく感じるのは、やはり設定に現実味がないせいでしょうか。
それにしても青江教授、地球環境学の講義をするということは「理系」だと思うのだけど、「ナビエ-ストークス」を知らなかったとは・・・(汗)。 |
No.115 | 7点 | 鍵の掛かった男- 有栖川有栖 | 2016/02/08 17:27 |
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これまで読んだ作家アリス+火村のシリーズの中では、質・量ともにずっしりとした内容で、読後感もそれほど悪くなく十分楽しめました。アリスがじわじわと梨田の過去と正体(?)に肉薄していくあたりは、関係者への聞き込みが中心の「捜査」で、ちょっと社会派ミステリー風でしたが、火村が登場して来てからは、天才探偵によるジグソーパズルのピースをしかるべき場所にはめ込んでいくという「通常の」本格ミステリーになっており、ある意味「二度」美味しい作品と言えるかも。 |
No.114 | 5点 | 猫柳十一弦の失敗- 北山猛邦 | 2016/01/08 20:58 |
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行書体(?)で書かれた出だしの「稲木村縁起」と「龍姫拷問三景屏風」から、よっぽどおどろおどろしい話になるのかと身構えて読み始めたのですが、結構ライトな内容でちょっと肩すかしを食らった感じでした。ただ、十一弦とクンクンの雰囲気や、この作者らしい「力技」の仕掛けもあったりして、そこそこ楽しめました。 |
No.113 | 6点 | 人魚の眠る家- 東野圭吾 | 2015/12/31 20:59 |
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結構重いテーマだったわりには読後感がそれほど暗くならなかったのは、最後の方で「傍目には狂った母親」が実は一番真剣に娘の死と向き合っていたのだと思えたせいかも知れなせん。読み返してもじわじわと感動する作品だと思います。 |
No.112 | 7点 | さよなら神様- 麻耶雄嵩 | 2015/12/09 13:41 |
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「犯人は○×だよ」から始まるパターンにようやく慣れてきたと思ったら「バレンタイン昔語り」の仕掛けで度肝を抜かれました。しかも真犯人が・・・。前作の「神様ゲーム」は未読なのでこちらも読んでみたいと思います。 |
No.111 | 8点 | オルゴーリェンヌ- 北山猛邦 | 2015/11/27 19:12 |
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前作「少年検閲官」ではその世界観にちょっとなじめなかったせいか、余り楽しめなかったけれど、本作はハウダニット、フーダニットとも著者の面目躍如といったところで、文句なく楽しめました。もう一度前作を読み返してみようと思います。 |
No.110 | 5点 | 化石少女- 麻耶雄嵩 | 2015/11/27 19:07 |
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各話ともまりあ先輩の独断と偏見に基づく「迷」推理が開陳され、それはそれで一応の説明はつくのだけど、すっきりしない形で話が進むので、最後にどうオチがつくのかと思っていたら、こういう形で来るとは……。著者が著者なので、一見ラノベ風でも何か仕掛けがあるに違いない、とは思っていましたが。 |
No.109 | 5点 | 探偵部への挑戦状 放課後はミステリーとともに2- 東川篤哉 | 2015/09/26 16:27 |
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本格テイストは薄味ですがすらすら読めました。作者のギャグ感は結構自分のような「高齢者」向きなのかな、と。涼とうるるの「対決」もなかなか面白かったけど、もうひとひねりあっても良かったと思いました(特に二度目)。 |