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[ サスペンス ]
その女アレックス
カミーユ・ヴェルーヴェン警部
ピエール・ルメートル 出版月: 2014年09月 平均: 6.82点 書評数: 11件

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文藝春秋
2014年09月

No.11 7点 猫サーカス 2017/07/15 20:27
冒頭部分の陰惨な場面に続き、犯人の自殺という衝撃的な出来事で一気に心をわしづかみにされたストーリーは、そのあと予想もしない方向にねじれていく。ネタバレになるので詳しくは語れないのがもどかしいが、多くの読者が途中で謎の女アレックスの正体をとらえたと確信すると思う。しかし作者はさらにひとひねりして物語に奥行きを与えている。構成と語り口の巧みさにうならされた作品。

No.10 9点 itokin 2016/12/30 11:45
いやァ、久しぶりに面白い作品に出会いました。1,2,3部になっている意味がわかりました。普通、話の切り替わりは少し引いてしまうのですがすぐにのめり込めました。2部の終盤での悲しみがもっと強調されると3部の盛り上がり読者の共感がさらに高まったと思われますが、物語の展開、各自のキャラの立て方、細部までの表現の仕方この作家只者ではないですね。事件が少しグロテスクでありえないと思えるのを差し引いても私はこの点数で評価します。

No.9 7点 斎藤警部 2016/07/14 12:27
この通俗流行りモンは悪くない。警察の三人+一人も魅力有る。キツネに摘ままれる感じのタイミングで唐突に緩やかに視点が変わったりして、、、各章の長さ短さが行ったり来たりなのも、悶えるほど掴まれてしまいます。。ネズミ群との覚醒した戦記は恐怖の一方でなかなかの知的興味を惹く。血の確保って、それか。。「封筒に入れて云々」「レーニンです」気だるい様で勇気も見せるユーモラスな言葉達もちらほらと。

常識の底力でちびりちびりと露わにされる、ある種の壮大さ有る違和感。奇妙な、大きな消失トリック。。または移動トリック。。? と思ったら。。 決してそこに大きな謎が横たわっていたというわけでもなく、、いやそんな所だけではない、原始少年さん仰った通り後出し、後付けの「逆伏線」めいたものに最後一気に襲われるような感覚。かと思うと伏線になり得たであろう数々の事柄(これがまた、いっぱいあるのよ)がミステリ的には結局放ったらかしのままだったり。。ストーリーの構成も何かにつけてバランス欠いてるよね。。でも私は嫌いじゃない。読んでて面白いんですもの!こいつ飛ばしてるよね!!

見えない「読者への挑戦」、確かに受け取りました、第三部の前で。 お よ よ よ よ・・ですよ。 こんだけ話をとっ散らかしといて最後のコースじゃ気持ちいいくらい論理攻め、って何よ! 復讐方法とカットバックの合わせ技でサスペンス古典の「○と●」を彷彿とさせもしたかな。
最後の最後、嫌な役回りだった判事がよくぞの一言を放ってくれた。主人公も微笑んだ。忘れえぬシーンだ。





【最後、未読の人は絶対に覗いてはいけないネタバレ】


アレックスは幼い頃に局部を硫酸で焼かれていた、という終盤で明かされるショッキングな事実から、ひょっとして元々アレックスは「男子」だったのでは。。との線も疑ってみたのだが。。 違いましたね。。

No.8 4点 原始少年 2015/04/30 17:38
誘拐されたアレックスの心理と、ユニークな刑事三人組を中心とした捜査が交互に語られる第一部、意外な展開を見せる第二部、取り調べでの神経戦が見ものの第三部と、楽しめる内容だった。特に、 第一部でのアレックスのネズミとの睨み合いによる恐怖描写が印象的。物語の進行とともに、アレックスに対する見方が二転三転し、面白いと感じた。
しかし、真相を知った時、この物語は完全に破綻していることを知った。第三部は有りえない真相に基づく蛇足にすぎない。
なお、この作品には伏線らしきものは全くない。真相につながる事実はすべて後出しだし、あるのは、読者をインチキな記述で惑わす逆伏線のみ。


(ネタバレ注意)
実を言うと、最後まで読み終えた時、アレックスの死亡原因が「兄による他殺」なのか、「自殺」なのかがよくわからなかった。
第二部49を読み返し、「兄による他殺に見せ掛けた自殺」だということがわかった。そうだとすると、相当無理、無茶苦茶な設定と言わざるをえない。第三部での取り調べ、冤罪による誤認逮捕という意外な結末につなげたいがためのご都合主義にすぎない。
これだけ残忍な復讐劇を繰り広げてきたアレックスが最も憎み、残忍な方法で殺害すべき人物は兄、その人に他ならない。その人だけを自ら手を下さずに、警察が取り上げるかどうかもわからない不確実な証拠をねつ造した上で、警察による逮捕、司法の裁きの可能性に委ねるということは全くありえないこと。警察が自殺として処理する可能性の方が圧倒的に高いし、警察がアレックスの意図を読み取ってしまう可能性もあるし、裁判で証拠不十分で無罪となる可能性も高いし、何らかのアクシデントで兄にアリバイができる可能性すらある。こんな低い可能性に賭けるわけがない。

No.7 7点 2015/03/26 10:02
路上で拉致され、倉庫で檻に入れられ、天井から吊るされる女アレックス。そんなふうに第1部が始まる。そんなアレックスがその後どう変貌していくか、物語がどう進行していくのか。これは予想もつかなかった。

いままでは、どんなタイプのエンタテイメントであっても、ラストがだめなら、たとえ中盤がよくても、がっかり感が大きかったが、最近では成長したのか、小説を読んでも、ドラマを観ても、中盤の面白さを味わえるようになってきました。
本書もまさにそれに当たる(別にラストがだめというわけではないが)。
ラストに向け、読者を飽きさせることなく、ぐいぐいと引っ張ってくれるところを高く評価したいところです。
中盤のサスペンスで、あまり考えることなく一気に読ませるところが爆発的人気の理由なのでしょう。たしかにストーリーの予想はつかないが、全体として複雑なところはなく、自然に物語の中に入り込んでいけます。
主人公アレックスの正体の隠し方と、ばらし方にはちょっと不満はあるが、こういう流れの小説なのだからそれも良しとしましょう。

もうひとつ評価できるのは、刑事たちのキャラクタです。
なかでもリーダーのカミーユがいちばん。身長145cmの超小型サイズ。
わりあい硬派だし、過去をひきずってもいるのだが、いすに座ると足が床に届かずブラブラ、これが映像として浮かんできて笑えてしまう。
部下には、金持ちの坊ちゃん刑事のルイ、とことんケチなアルマン。
とんでもない組み合わせだが、チームワークは抜群だった。

No.6 8点 あびびび 2015/02/18 20:54
その女アレックスは、最初は被害者の女、次は殺人狂の女、そして最後は悲しみの女と、変わって行く。

なんだ、この女は!と思っていたら、最後は読み手の感情の中に食い込んできた。そして、その女アレックスの儚い人生に、思わず目を閉じてしまった。自分的には、どんでん返しとはまたちがう、考えさせられた一冊となった。特に最後の、「真実より正義」は、この事件に最もふさわしいと、同調した自分がいた。

No.5 8点 蟷螂の斧 2015/01/19 10:02
読者の予想を覆す展開(どんでん返しではないが・・・)が新鮮でした。映画化されるようですが、グロテスクなシーンはどのように映像化するのか、それだけが心配です(苦笑)。一般読者には、あまり好まれない題材だと思っていましたが、6冠(日本4、フランス1、イギリス1)を制したということは、読者(日本)が変化したのかなあ?。それとも警部にまつわる話が良かったのか?・・・。まあ、「101ページ以降の展開は誰にも話さないでください。」とありますので、あまり書くことはできません(笑)。採点は、印象に残る作品となりうるか?という私的採点基準で+1、8点としました。

No.4 6点 makomako 2015/01/04 13:26
フランスのミステリーは久しぶりです。お話が二転三転してとんでもない方向に流れていくのに興味深く一気に読みました。
 まあ面白かったですね。ただ私のような感覚の人間からするとフランスって警官を含めとんでもない輩がいっぱいいるんだなあとつい思ってします。まあ彼らもひどい場所というのに「日本人観光スポットの超目玉」という形容を使っているので、彼らから我々もそんな風にみえるのでしょうからお互い様なのかもしれない。
 それになんといっても残酷。やり方が悪趣味すぎるのではないかなあ。お話としては良かったのですが、この残酷さがマイナスでした。

No.3 6点 メルカトル 2015/01/01 22:21
正直、それほど傑作とは思えなかった。世間的には、というか世界標準的にはサスペンス+警察小説+イヤミスの合わせ技一本といったところだろう。確かにそれぞれのジャンルで秀でているものがあると思うが、衝撃度或は、サプライズ感という点ではやや物足りなかった。
しかしながら、アレックスや捜査班の面々は十分に個性的でよく描かれているし、意外な展開という意味ではなかなかの出来だと思う。また個人的には本筋とは全然関係ないが、班長カミーユの飼い猫ドゥドゥーシュが癒し系でいい感じである。
ストーリーには触れない。これから読む人に恨まれたくないからね。また、Amazonのレビューも読まないほうが身のためであろう。本書を十分に楽しむためには、予備知識はいらない。まっさらな状態で挑んでいただきたいと思う。

No.2 6点 HORNET 2014/12/30 16:04
路上で突然拉致され、狭い木枠の箱に全裸で閉じ込められたまま放置される女、アレックス。あまりにも残酷で痛ましい扱いの描写に、アレックスへの同情と犯人への憎悪が否が応にも高まる第一章。ところが、物語は意外な展開へ―
 序盤を読んでいくと、昨今よくある誘拐猟奇犯罪ストーリー、サイコサスペンスの典型のように思うが、その予想が見事に覆される。アレックスの視点と、事件を追うカミーユ警部の視点との部分が交互に描かれて物語が進行するが、カミーユ側で明らかになってきたことに合わせてアレックス側で新展開に入る構成もよい。カミーユ警部をとりまくルイ、アルマンら捜査員の面々のキャラクターも面白く、複線的に描かれている有名画家の息子としてのカミーユの人生もよい色を添えていた。
 ただ、第三章で一気に真相に迫るのだが、そこまでの丁寧な展開に比べるとやや飛躍的すぎる気はした。そこで示される事実が、第一章、二章でもう少しうまく伏線として描かれているとよいと思う。(鈍感な私が気付いていないだけか?)

No.1 7点 kanamori 2014/12/10 22:59
非常勤の看護師アレックスは、パリ市内の路上である男に拉致され、倉庫の天井から吊るされた檻の中という過酷な状態で監禁される。一方、カミール・ヴェルーヴェン警部ら捜査班は、目撃者の通報を受け必死の捜索を行うも、所在はおろか被害者女性の身元さえ掴めなかった----------。

今年の主要ミステリ・ランキング全て1位、史上初の4冠を達成した話題のフランス・ミステリ。ですが、個人的には4冠よりも「本ミス」にもランクインしたことが驚きです。本書は、本格ミステリ読みにはあまり好まれないと思われるタイプの、残虐なシーンや重い題材を含んだクライム・ノヴェル+警察小説なのですから。
”あなたの予想はすべて裏切られる!”とキャッチコピーに謳うように、あらすじ紹介の監禁事件はほんの発端で、第2部、第3部と移る度に物語の様相が180度変転、読者の先入観を利用したサプライズ展開が本書の最大の読ませどころです。
また、人称代名詞の「彼女」をまったく使用せず、全て「アレックスは~」「アレックスの~」とした文章も特徴的で、(作者の正確な意図は分からないが)何度も変転するヒロイン像に対する感情を、読む者に強く惹きつけ続けさせることに成功していると思う。


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