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[ 警察小説 ] 悲しみのイレーヌ カミーユ・ヴェルーヴェン警部 |
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ピエール・ルメートル | 出版月: 2015年10月 | 平均: 6.20点 | 書評数: 5件 |
文藝春秋 2015年10月 |
No.5 | 7点 | Akeru | 2018/07/12 00:10 |
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このシリーズは「悲しみのイレーヌ」→「その女アレックス」→「傷だらけのカミーユ」の三部作になっているが、実質のところ2部作に近い。
何が言いたいのかというと、「悲しみのイレーヌ」と「傷だらけのカミーユ」は姉妹作なのだが、「その女アレックス」は浮いてしまってる。 この中では図抜けて「その女アレックス」の評判が良いが、これは2作目であり、「じゃあ1作目の「悲しみのイレーヌ」から順番に読むか」などと思ってると罠にかかる。 つまり、1作目の「悲しみのイレーヌ」と3作目の「傷だらけのカミーユ」を読むための間隔を開けるべきではない。 連続して3作を短期間に読むのが理想的だが、それが出来ないのではれば「その女アレックス」を先頭、ないし最後に持ってくることを強く勧めておく。 また、この作者はとにかく表現が上手い。 文学的、と端的に評してもいいが、皆様の中には「文学的」と聞くと、表現を華美にしすぎた結果、むしろ滑った文章を思い起こす人もいるのではないだろうか。 だがしかし、この作者に関してはそれが一切ない。 絢爛豪華ではないのだが、的を外すことのない人物、心情描写には瞠目した。 またそこから同時に訳者の実力の高さも伺える。 半面、ストーリーに関しては手放しで褒めることはできない。 処女作の「悲しみのイレーヌ」に関してはほぼほぼ陳腐とけなしてもいいような内容で、「その女アレックス」はヒネリを効かせてサスペンス的なワクワクを加味した点までは認めるが、プロット自体に賛辞を贈る気にはならない。 そして「傷だらけのカミーユ」はそれら二つから更に一段階落ちる。 だが、いずれも「文章に目を通すこと自体が悦びになる」ような作品ばかりで、図らずも三部作全てを一気読みしてしまった。 ピエール・ルメートルは「この10年で最も着目するべき推理作家」の一団に入ることはほぼ間違いないように思われる。 |
No.4 | 7点 | tider-tiger | 2017/01/18 23:06 |
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その現場は、こうした「仕事」には慣れっこになっているはずの彼らでさえ、かつて見たことのないほど凄惨なものであった。捜査班の指揮を執るカミーユはマスコミに煽られるもなかなか進展しない状況に焦っていた。猟奇殺人、快楽殺人としか思えない事件であったが、なにかがおかしい。そして、カミーユはふとした切っ掛けでとんでもないことに気付くのであった。
アレックスよりもこちらの方がいい(傷だらけのカミーユは未読です)。 なかなか興味深いネタだった。そして、大掛かりな仕掛け、そのアイデアに寄りかからず、丁寧に仕上げたことをさらに評価したい。無駄がなく、展開力(特に中盤は面白かった)もある。登場人物もなかなか魅力的。動機をもう少し入念に構築してくれればさらに高評価だったのに。 第一部は犯人に神の御加護でもあるが如くなにごともうまくいきすぎ(目撃者不在など)なきらいはあるも許容範囲。このまま終わってもなかなか読ませる作品になっていたと思う。 どうでもいいことだが、個人的に気になったことが、 1リンゴ、ジャガイモなどの消化器の残留物までも一致させた犯人の手管を知りたい。 2マイクル・コナリーの『ザ・ポエット』は良作だとは思うけど、古典とか傑作というのは違うような……。 第二部はキビキビとした仕上がりに好印象。手に汗握る緊迫感が凄い。最後の場面の舞台はなるほどねと思わされた。ただ、奴の仕事の見せ方(挿入の仕方)にはもう少し工夫の余地があったように思える。また、第一部と第二部の食い違いをもっと鮮明に浮かび上がらせればさらに面白かったのでは。 こういう作品で優れた仕事への愛(殺人への愛ではありません)を表明するのは、いかにもひねくれた(私見です)フランス人らしいと思った。 最後に日本語タイトルについて。 「明日にでも変更すべし」 原題は直訳すると『丁寧な仕事』『入念な仕事』みたいな意味らしい。 丁寧な仕事、入念な仕事では内容がわかりづらいというのであれば、仕事を殺人と置き換えて、丁寧な殺人、入念な殺人とでもすれば良かったのでは。 悲しみのイレーヌ、悲しいのはこっちだよと言いたい。 |
No.3 | 3点 | makomako | 2016/03/04 17:48 |
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ああこの小説は私には合わない。その女アレックスよりさらに残酷なシーンの連続。異常な趣味の犯人と大嫌いな結末。
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No.2 | 7点 | HORNET | 2016/01/23 15:59 |
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多くの人が恐らくそうであるように、私も「アレックス」「死のドレスを…」を読後に、遡る形で本作を読んだ。これまでの2作が話全体に仕掛けを施すパターンだったので、それが作者の特徴だと思っていたが、デビュー作(?)の本作はさすがに一応フーダニットだった。とはいえそこはルメートル氏、猟奇的殺人、犯人とのやりとり、名作ミステリを絡めたミッシング・リングなど、そこに一色も二色も味が加えられており、展開部分が読み物として非常に楽しめる。だから、フーダニット作品であったにもかかわらず、読んでしばらくしたら、物語の概要は覚えているが、犯人は誰だったか忘れてしまっていた(笑)。ただちゃんと「犯人は誰か」というメインの謎も十分驚きに値する結果である。
まだ出版作品が少ないということもあり、これで一応、出版作品は網羅していることになったので、ルメートル作品は続けて読んでみようかと思う。展開部分を読み進めるのが楽しい作家だと思う。 |
No.1 | 7点 | 蟷螂の斧 | 2015/12/30 19:34 |
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今年ラストの書評は、2014週刊文春ミステリーベスト10・海外部門第1位「その女アレックス」に引き続き、2015も同第1位を獲得したピエール・ルメートル氏の「悲しみのイレーヌ」です。著者のデビュー作とのこと。原題(邦訳)は「丁寧な仕事」となるらしいのですが、編集者の思惑で???・・・。「その女アレックス」を読んでいる者には酷な題名でした(苦笑)。内容は壮絶としかいいようがない。ある仕掛けがあるのですが、もっと判り易いものであれば印象も違っていたかも。 |