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[ クライム/倒叙 ]
悪党パーカー/襲撃
悪党パーカー
リチャード・スターク 出版月: 1976年01月 平均: 6.33点 書評数: 3件

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早川書房
1976年01月

No.3 6点 2020/12/16 15:05
 三方が垂直の崖にかこまれ袋のようになった谷のなかにあり、出口は一本の道路と鉄道だけしかない町、ノースダコタ州コパー・キャニオン。入口のひとつしかないこの箱は銅鉱山と精錬所で成り立っており、金庫に入った給料と二つの銀行と三軒の宝石店、金融会社やデパート、商店、商社、それらを全てひっくるめると最低に見て二十五万ドルはかたい仕事だ。難攻不落の立地に甘え、警備はまるでなっていない。おまけに少年犯罪をしめだすために、夜間外出禁止令により真夜中になると全戸消灯の鐘が鳴ることになっているのだ。これで目撃者もいなくなる。
 警察署、電話局、工場の夜警、それから消防署。真夜中のうちに、市の境界線ぞいの州警察分署に繋がる場所を押さえて逆に町を外部から封鎖し、その間に何もかも洗いざらいかっさらってしまう――それがエドガーズという男が、パーカーを初めとするプロの犯罪者たちに持ち込んだプランだった。
 だがパーカーは不満だった。第一に計画を立てたのがアマチュアだし、人数も多すぎる。いつものルールのほとんどすべてを破った、きちがいじみた仕事だ。それでも検討していくうちに、プランは次第に形をなしていく。残ったわずかばかりの問題を解決しさえすれば、たしかにやれないことはない。彼らは思考を積み重ね、一歩また一歩と障害を取り除いてゆく。
 そして一抹の不安を抱えながら始動する、大胆極まる襲撃作戦。それでも計画は手筈通り順調に進み、九分九厘成功していたのだが・・・
 『弔いの像』の後を受けたシリーズ五作目で、1964年発表。同年にはウェストレイク名義の第五長編『憐れみはあとに』も刊行されています。大掛かりな仕事なので信頼できる仲間をと、前回撃たれたハンディ・マッケイに声を掛けるシーンがありますが、気を引きやがるなと言いながらももう引退したからと断わられます。最終的に集まったメンバーは総勢十二人。ハンディの代役として登場するのは、ハンサムな俳優強盗グロフィールド。
 人数が多いだけに問題も頻出。当初から腹に一物ありそうだったエドガーズはまだしも、個人的には「グロフィールドお前・・・」という感じ。既に相棒を務める作品を読んでいるので、もう少しマトモな奴かと思ってたんですが。ホントによく許したよな。
 これは大荒れかなという展開にしては無難な感触で、派手な割にはそこまで縺れたりしません。むしろシリーズのスタイルを確立させた作品と言えるでしょう。今回も色々と犯罪者向け豆知識が出てきますが、その中の一つ、"刑務所に行きたくなきゃ税金だけは払っとけよ"には深く納得しました。

No.2 7点 tider-tiger 2016/05/01 11:21
エドワーズという男がパーカーに仕事の話を持ち込んだ。
山間のどんづまりにある小さな町、出入り口を封鎖して警察署や電話局を押さえてしまえば銀行に宝石店、全てをかっさらうことができると。
与太話だ。パーカーはこの話に乗るつもりはなかった。ところが、ものは試しと仲間たちと計画を詰めていくうちに話は現実味を帯びていった。
それでもパーカーはエドワーズについて一抹の不安を感じていた。
悪党がかっこよく見えてくる極めて不健全なシリーズの五作目です。

エドワーズをもう少しうまく使えなかったかなと思いました。彼がなにかやらかすことはわかっていましたが、ちょっと単純過ぎる。彼が●●だったことをもっと活かして面白くできたように思えます。もっとも複雑なプロットを楽しむタイプの作品ではないんですけどね。
それから、町を封鎖、うまいこと考えたものだと思いますが、この町には一つ規則があって、その規則があればこそこの犯罪も成立し得る。無茶な規則ではありませんが、ちょっとご都合主義かな。でも、この壮大な計画には浪漫を感じます。通信手段が発達した現代では不可能な話なんで。

プロットは単純過ぎると感じるかもしれません。現代の読者からすると捻りが足りないと。ですが、このシリーズの読みどころはパーカーの人物造型と単純明快痛快なプロットであり、その二つにさらに勢いを与えるきびきびした文体だと考えます。
無口で冷徹なパーカーにピッタリの文体。そうはいっても三人称多視点の小説なんですが、なぜか私は文章のあらゆる部分からパーカーの影を感じ取ってしまうのです。

No.1 6点 kanamori 2010/05/24 21:50
悪党パーカーシリーズの第5弾。
今回の標的は山間の町全部。仲間を集め、計画を練って、襲撃するが、思わぬアクシデントが発生し・・・という恒例のパターンが本書で確立します。
俳優強盗グロフィールドの初登場作でもあり、節目の一冊といえると思います。


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リチャード・スターク
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