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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 悪党パーカー/死者の遺産 悪党パーカー |
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リチャード・スターク | 出版月: 1977年02月 | 平均: 6.50点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1977年02月 |
No.2 | 6点 | 雪 | 2020/02/13 05:27 |
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犯罪稼業から五年前に引退し、依頼者とパーカーとの連絡係を勤めていた金庫破りのオールド・タイマー、ジョー・シアー。オマハから四十マイルも離れたネブラスカの田舎町、サガモアに引っ込んだ彼から、続けて二通の手紙が届いた。ジョーの弱音から自身にとっての危険を感じとったパーカーは、昔の仲間を片っぱしから売り渡しかねない老いぼれになりさがった彼を始末するため、一路サガモアヘ向かう。いろいろと知りすぎているジョーを生かしておけば、自分自身の生皮をはぐことになりかねなかった。
チャールズ・ウィリスの名前で宿をとったパーカーは標的の家に着くが、彼はそこでシャーディンの偽名を使っていたジョーの死を知る。二度目の手紙がきたときには、老いぼれはもう死んでいたのだ。ジョーは誰かにパーカーのことを漏らしたのか? あとでめんどうのもとになりそうな人物が、今もってサガモアの町にいるのだろうか? パーカーは答えを見つけようとすぐに動き出すが、その行動のすべては地元警察の責任者、エイブナー・L・ヤンガー警部に見張られていた。さらに金庫破りの名人だったジョーの隠し財産を狙い、けちな小悪党アドルフ・ティフタスが彼に付きまとい始める。次第に悪化する状況の中、事の真相を探ろうとするパーカーだったが・・・ 『襲撃』に続くパーカーもの第6作。〈悪党の危機管理〉という主題のもと、探偵まがいの行動をせざるを得なくなる犯罪者を描いた異色作で、1965年の発表。主人公パーカーはやがて殺人事件にも巻き込まれ、ますます身動きが取れなくなります。 これまでとは違い表の顔を守るため、一般人を装い続けなければならないパーカー。五里夢中な状況の中なんとか欲呆け警部を丸め込んだものの、州警察の責任者リーガンは比較にならない切れ者で、はっきりとパーカーに目を付けています。両者の対立に付け込みリーガンの追及を躱しますが、バカな相棒を抑え込みながらのいっぱいいっぱいな状況。つのる苛立ちを隠せないのかいつも以上に容赦がありません。殺人犯人は結構意外な人物なんですが、これも訊きたいことだけ訊くと速攻で処理してしまいます。 「なにかぞっとするような気配を漂わせた男」「今まで見たこともないような冷たい目」「ひと思いに殺してしまいたい」など、一般人は騙せても、その道の人間が見れば危険で残忍な存在とまるわかりのパーカー。本書では一貫して、そうした偽装が崩れる過程での鍔迫り合いを描いています。地味な作品で特に魅力的なキャラも登場しませんが、思い切った結末でシリーズの魅力作りに貢献した作品。大元はありもしない五十万ドルの遺産にアマチュアが群がっただけというのも、皮肉な話です。 |
No.1 | 7点 | tider-tiger | 2016/10/05 20:24 |
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引退した金庫破りジョー・シアーからパーカーの元へ助けを求める手紙が来た。厄介なことに巻き込まれたらしい。ジョーは知りすぎている。しかも昔の奴ではなく、ただの弱気な年寄りに成り下がっている。やばいことになりそうだ。ジョーが、ではなくパーカー自身がだ。パーカーはジョーを始末する必要があるか見極めるために彼の元へ向かうが、ジョーはすでに死んでいた。葬式は明日の朝だという。いったいなにが起こっている? そんな時、パーカーの前に顔見知りのケチな悪党が現れ、俺と組まないかと誘いをかけてくる。なんのために組むのかよくわからないが、とりあえずパンチをお見舞いするパーカーだった。
昔の仕事仲間から助けを求められて、そいつを始末すべきかどうかを真っ先に考える。いやあ、パーカーですな。 本作では犯罪者の裏の顔(本業)ではなく表の顔(私生活)にスポットを当ててみました。攻めではなく守りの話です。悪党の危機管理(常套手段は殺し)から始まり、タイトル通り「遺産」を巡って思わぬ方向にプロットは展開していきます。今回は仕事はないので派手さに欠けますが、本作でのパーカーの非情さは際立っています。また、ジョーの身に起きていたこと、追い込まれていく過程がかなりえぐい。他にも種々の隠蔽工作や悪徳警官、模範警官それぞれとパーカーのつばぜり合いなど地味ながらも読みどころはけっこうあります。ラストの潔さもある意味かっこいい。パーカーってけっこうポカもするんですよね。 パーカーシリーズの裏名作だと思います。かなり好きな作品です。 こういう異色作は歓迎。 ただ、kanamoriさんの書評を拝読してふと思ったのですが、マンネリとよく言われる本シリーズ、実は異色作がけっこうある? 未読作品がまだまだあるもので。 最後にタイトル(邦題)について 『死者の遺産』ってなんか違和感ありませんか。飛ぶ飛行機みたいなもんでしょ。ちなみに原題はThe Jugger 金庫破りのことらしいです。こっちもちょっと本質からずれているタイトルな気がします。 |