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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
悪党パーカー/死神が見ている
悪党パーカー
リチャード・スターク 出版月: 1976年01月 平均: 5.50点 書評数: 2件

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角川書店
1976年01月

No.2 6点 2021/10/16 20:27
 パーカーに死神がとり憑いた!?
 キーガンは全身に煙草の火を押しつけられ、壁に釘で打ちつけられていた。ブライリーは自宅で撃ち殺された。今度の "仕事" に関係した仲間のうち、これで三人が殺されたことになる。
 仕事は上首尾だった。だが、その数日後から、身を隠した仲間が次々と殺されはじめたのだ。だれの仕業なのかも、目的は何なのかもわからない。まるで死神にとり憑かれたようだった。
 死神の魔手が次はパーカーを狙っていることは明らかだ。正体不明の敵、残虐な殺しの手口――パーカーは最大の危機に直面して立ちあがった!
 悪党パーカー・シリーズに新境地を拓く、サスペンスあふれる意欲作!
 Scoreシリーズ最終作『怒りの追跡』から二年後の1971年、『殺人遊園地』と同年に発表されたシリーズ第十三作。巻頭には「呪いをこめて、ジョー・ゴアズに捧ぐ」という、ちょっと凄い献辞がある。これは作中で互いの主人公、パーカーとダン・カーニーを交差させたお遊びを指すものと思われるが、ゴアズがDKA探偵事務所シリーズ第一作『死の蒸発』を発表するのは翌1972年のこと。従ってこの時点で既に双方了承済みだったのだろう。
 今回は犯行の手口から推察がつくように、敵役の二人組が狂気じみているのがやや異色。頭の回るボスのジェサップとヤク中のマニー、支離滅裂で何をしてくるか分からない存在を相手取る、ホラー映画的な怖さがある。手に入れた片田舎のマイホームで主人公の留守中彼らに襲われるクレアの立ち回りと、彼女の救出作戦とが本編の骨子。
 とは言えしょせん異常者なので、じっくり読んでゆくとパーカーの相手としては不足気味。どちらも二十代なかば過ぎとまだ若く、野獣の不気味さはあっても行動も甘く忍耐力に欠ける。凶暴性は突出しているので見くびる事はできないが。作中描写からマニーは漠然と大男に思えたけど、実際にはきゃしゃな兄ちゃんなのね。その最後でも分かる通り、典型的な薬物患者と言える。
 第三部まではかなりの緊迫感をもって進むのだけれど、暗闇の中でのパーカーとジェサップ、二人の対決シーンを見るとやはり〈役者が違うな〉と思ってしまう。二対一なので簡単には決着しないが、この時点で相手の底が判明し、パーカーの方に大きく振り子が動くのは否めない。その面では序盤のロックコンサート襲撃計画の方が良く練られており、より勝負のアヤがあった。
 いつも通り面白いけれど、緩さもあって総合的にはギリ6点。ただし最初から最後までアクションてんこ盛りで、飽きさせはしない。

No.1 5点 tider-tiger 2016/10/03 18:00
ロックコンサートの売り上げをかっさらったパーカーと仲間たち。だが、解散後、仲間の一人キーガンが切羽詰まった様子でパーカーを探しはじめた。気になることあってパーカーは彼を訪ねたが、彼は壁に磔にされて死んでいた。この後も今回のヤマに関わった仲間が次々と殺されていく。どこのどいつだ? どうしてなんだ? パーカーにも順番が回って来ることは確実だった。奴らがクレア(愛人)を一人残した家にやって来るかもしれない。避難を命じるパーカーだが、クレアは家から離れたくないと駄々をこねる。

シリーズ十三作目にして異色作の一つ。
緊迫感があり、アクションも冴えている。要はいつも通り。今回の敵は愚かで凶暴性ありな男と用心深く小狡い男。かなりステレオタイプな連中でこちらも新味はない。
コンサート会場を襲う、その仲間たちが何者かによって次々に消される、パーカーの反撃、と単純なプロットではあるが、ここに新たな要素が持ち込まれる。家と女である。
パーカーの優先事項は一に自分の安全であり、二に金である。仲間はあくまで道具であり、自分の身に脅威が及ぶことなければ、彼らがどうなろうと無関心である。女にしても人格など認めていないようなところがあった。
このような非情さを徹底したところがこのシリーズの特異な点であり秀逸な点である。
ところが、今回のパーカーは女と家によって非情に徹し切れなくなっている。
「わたしはこの家を離れたくない。犬とライフルを買うから大丈夫」というクレアの主張に負けてしまう体たらく。
これはパーカーが堕落したわけではなく、彼にも守る家が出来たのだとかなんだとか小鷹さんがあとがきで必死に弁護していたが、悪党パーカーにマイホーム……どうも調子が狂う。日曜日の朝は庭で洗車をしたりするのだろうか。
シリーズ六作目の『死者の遺産』と並ぶ異色作の一つであり、ファンの間でも賛否両論となりそうな作品。私はどちらかといえば否定派。採点は面白さでは6~7点といったところだが、マイナスして5点。
シリーズも後半に差し掛かり、マンネリ回避のために新機軸を打ち出したのかもしれないが、パーカーの軸がぶれてしまうのは感心できなかった。また、クレアがあの状況で逃げずに家に残ると主張するのは非常に不自然。どう考えても誰であろうとも逃げるはず。
ただ、納得度は低いが面白さはいつもとそんなに変わらない。


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