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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
悪党パーカー/弔いの像
悪党パーカー
リチャード・スターク 出版月: 1976年01月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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早川書房
1976年01月

No.1 7点 2020/02/11 14:32
 マイアミのホテルの自室で、シンジケート差し向けの殺し屋に襲われた犯罪者パーカー。そいつは始末したものの、彼は一緒にベッドの中にいた女、エリザベスに凶器のピストルを奪われてしまう。パーカーは、ぼう大な資金と時間とエネルギーを注ぎこんで来た表の顔、チャールズ・ウィリスの経歴を汚したくなかった。
 大富豪の一人娘である彼女はピストルをかえすにつき、新たな仕事を交換条件として提示してきた。もとはフランスのディジョン記念墓地の壁がんに安置されてあった八十二体の小像のひとつ、高さ16インチのアラバスター製〈哀悼者像〉を、父親ラルフ・ハーロウのために盗んで欲しいと。中世の塑像作品で、値段がつけられないほどのものだという。結局前金五万ドルプラスで、パーカーは仕事を請け負う。
 彼は相棒ハンディ・マッケイと共に、小像のあるワシントン・クラストラヴァ国大使館員、レパス・カポール邸に押し込む手筈を整えた。だがハウスメイドのクララをたらし込み、鍵型を手に入れるはずだったハンディは帰ってこない。やつはなに者かに捕まったのだ。
 間髪入れず部屋へと踏み込んできたチンピラ二人を叩き伏せ、相棒の居場所を突き止めようとするパーカー。だがそんな彼の前に立ち塞がったのは、クラストラヴァの国家警察警視、オーガスト・メンロだった。そして共産圏の有能なる一員・メンロは任務を機にある企みを抱き、宿敵組織〈アウトフィット〉の手を借りてすべての障害物を取り除こうと図っていた・・・
 1963年発表のシリーズ第4作。同年発表の前作『犯罪組織』の後日譚にあたるようです。本書でパーカーに「お前は信用できない。あまりにサディストすぎる」と言い捨てられるヒロイン、エリザベス・ハーロウも引き続いての登場。ラストで「これで終りだ、俺たちは」とかキメてるので切れたんでしょう。とにかく〈強い〉男と寝るのが好きで、ルックスその他は全部どーでもいいという金髪美女です。
 小像を巡るケイパー物としてはたいしたことないんですが(被害者自身も最後まで盗まれたことに気づかないくらい)、エリザベスや競争相手メンロなどのキャラクターが面白い。特にオーガスト・メンロは『マルタの鷹』に登場するレヴァント人、ヨエル・カイロのような存在で、ばかていねいな口調で喋りまくる太っちょ。敵手というよりトリックスターで、どこか憎めません。
 秘密捜査官とはいえこのアマチュアが、パーカーチームを結構なピンチに落とし込むという一種のギャップが魅力。首尾良くパーカーたちを出し抜いたものの、所詮は共産圏の田舎者。この体重234ポンド(約106キロ)、四十七歳のおっちゃんが異国アメリカで途方に暮れながら、南に向かってひたすら逃亡するのもなんかかわいいです。
 点数は7点。多少甘めだけどまあいいかな。


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