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[ クライム/倒叙 ]
悪党パーカー/犯罪組織
悪党パーカー
リチャード・スターク 出版月: 1968年01月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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早川書房
1968年01月

早川書房
1976年01月

No.2 7点 tider-tiger 2022/09/25 16:15
~組織がよこしたケチな殺し屋をどうにか捻ってやったが、こんなことの繰り返しはゴメンだ。組織が二度と手を出してこないようにする必要がある。パーカーは組織に攻撃をかける決断をした。

1963年アメリカ。悪党パーカーシリーズの3作目にして初期の秀作。原題は『The Outfit』本作に登場する組織(Outfit)とやらは言うまでもなくマフィアだろう。全米各地にチェーン店のある巨大組織を敵に回してのパーカーのプランが小気味よく成功していくさまは非常に痛快。エンタメとしては第一作目の『人狩り』よりもこちらの方が面白いと思う。
いつもながらのスピーディーな筋運びに緊張感ある会話もいい。整形後のパーカーに戸惑う旧知の悪党たちの戸惑いぶりも面白い。
本作はパーカー不在の第三部の出来が特にいい。小粒ながらもさまざまなアイデアが惜しみなく注ぎ込まれている。スタークもノリノリだったんだろうなあ。本作の完成度の高さはこの第三部の出来が証明している。
また敵方の間で交わされる犯罪組織の在り方に関する議論がなかなか興味深い。現在の日本の防衛論にも応用できそうな話だ。

マフィアの残虐性、執念深さ、狡猾さなどを聞きかじった身としては、本作を読んでマフィアはこんなに甘くないだろうとは思った。特にラスボスが……ブロンソンという名前のわりには『邪魔する奴は指先ひとつでダウンさ』というわけにはいかなかったようで。

マフィアの存在が公になったのは1950年代半ば以降らしい。それまでは口にするのも憚られたという。1963年の本作出版当時はどんな感じだったのだろうか。
日本では『北朝鮮拉致』なんかが近い扱いだっただろうか。うちの母親は1980年代からしばしば北朝鮮拉致に言及していたが、まさかそんなことあるわけないと思っていた。

No.1 7点 2020/12/14 15:40
 整形手術で顔を変え偽名を名乗っても、《アウトフィット》の巨大な手は目障りなパーカーを消そうと執拗に迫ってくる。これ以上逃げ隠れできないし、したくもない。もはや逆襲あるのみ! パーカーはアメリカ中に散らばる犯罪者仲間に連絡をとり、各地の《アウトフィット》支部を一斉に襲撃させる。と同時に彼は騒然となった組織の中枢にのりこみ、一気にその心臓部に喰らいついた!
 アメリカの暗黒街を舞台に、冷酷非情な一匹狼の姿を描いた、リチャード・スターク会心のクライムシリーズ。原題 "THE OUTFIT"。『悪党パーカー/逃亡の顔』に続くシリーズ第三作で、1963年刊行。この年には上記二作に加え第四作『悪党パーカー/弔いの像』と、ウェストレイク名義の『その男キリイ』が発表されています。
 前作は未読なので組織との因縁がどう進展したのか不明ですが、今回はシリーズ一作目から続く対アウトフィット完結編。フロリダで女といるところを消音器つきピストルで襲われたパーカーは、送り込まれた殺し屋を始末するやすかさず当地の責任者をも葬り去り、反撃の手筈を整えつつ北上しながら『人狩り』で締め上げたニューヨークのボス、ジャスティン・フェアファックスを再度襲撃。 彼を通じて組織ナンバー2の地位にある西海岸のウォルター・カーンズと談判したのち、〈トップが死んでカーンズが跡目を継げば、二度と再びパーカーには手を出さない〉という確約を取り付けます。 
 続いてパーカーに煽られた犯罪のプロたちが組織に百万ドル以上の打撃を与える犯罪見本市が開催されたのち、ニューヨーク州バッファローに居を構える組織のボス、アーサー・ブロンソンの首を獲るまで一直線。いつも以上に一気にアイデアを叩き込んで読ませる作品で、シリーズ前半の節目だけあってかなり贅沢。賭博クラブ襲撃・ナンバーズ・ゲームの現金が集まるオフィスビル攻略・ヘロイン代金受け渡しの現場を狙った鮮やかな略奪劇・馬券のレイオフ用キャッシュ(客が大穴を当てた時のノミ屋の保証金)強奪と大きな四つのケイパーに、本命・ブロンソンの豪邸攻撃が加わります。
 とはいえ組織の構成員はアウトローの自覚を失い絶賛サラリーマン化中。受け身に回ればパーカーたちには到底太刀打ちできず、終盤でブロンソンと分析者クイルの間で交わされるのが次の会話。

 〈たとえば、この家の外の通りをこえたところで通り魔、殺し屋、放火犯人の三人がバクチを行っているとしましょう。私がそのバクチの現場にでかけていって、その連中にピストルをつきつけてカネをうばうとします。この結果はどうなると思いますか〉
 〈連中はお前の心臓をつかみ出してひき裂くだろうよ〉
 〈そのとおりです。それが今のわたしたちの、組織の立場なんですよ(大意)〉

 警護のボディ・ガード達も全員モノポリイに興じており、このやり取りも隣室に潜むパーカーと相棒のハンディ・マッケイにバッチリ聞かれる有様。狂乱の一九二〇年代を乗り越えのし上がったブロンソンの、「あの頃の俺たちは、いまのパーカーとよく似ていた」というセリフが涙を誘います。
 それでも流石にボスだけあって、後ろに立つパーカーを見ても苦笑いに留まるのが良い感じ。ある意味世代交代的な、犯罪者哀歌の趣もあります。8点でもいいんですが、『殺人遊園地』でも7点なのにどうだろと思ったんで7.5点。


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