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[ 本格/新本格 ]
狂い壁狂い窓
狂気三部作
竹本健治 出版月: 1983年04月 平均: 6.10点 書評数: 10件

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講談社
1983年04月

角川書店
1993年05月

講談社
2007年08月

No.10 5点 クリスティ再読 2021/01/18 21:00
古い、朽ちかけた館。どこまでも薄暗く続く廊下。誰かが蹲っているような物陰。かすかな息づかい。そこはかとなく漂う死臭.....幼い頃から乱歩の小説を貪り読んで育った私には、そういった設定がたまらなく懐かしいものに思える(カバー折り返し著者の言葉)

という狙いの作品。ただね、竹本健治なので、乱歩のエロスはない。読んだ印象は少女怪奇漫画風なホラーに、ミステリの味付けがあるもの。語り手を伏せてぐじゅぐじゅとした描写が続いたりとか、いつの話なのかよく分からない殺人の記憶とか、そういったものの堆積でできているのだが....いちおうミステリとホラーの間を狙った内容になっている。とはいえ、相互に良さを殺し合ってるようにも思える。ミステリとしては躱されたようなヘンな真相だし、ホラーとしては解明されたら興ざめ。客観的にはキッチュだと思うけど、キッチュに徹しきれないところもある。失敗作だと思う。

けどまあ、昔の学生下宿みたいな変な建物だなあ....間取りのヘンさに、妙なリアリティを感じる。なんか懐かしい。

No.9 6点 2020/09/26 09:15
 東京・大田区の高台に樹影荘と名づけられた古びた洋館があった。かつて産婦人科病院として建てられたもので、かたわらには鬱蒼とした樫の大木が生えていた。ここには六組の入居者が住んでいた。この樹影荘で怪事件があいつぐ。トイレの血文字、廊下の血痕、中庭の白骨・・・・・・血塗られた洋館と住人たちの過去が、今あばかれる!
 ゲーム三部作シリーズ最終作『トランプ殺人事件』の翌年発表された、竹本健治の長編第四作にして狂気三部作の最終編。昭和五十八(1983)年四月、講談社ノベルスより発刊。初版巻末に当時の刊行ラインナップが載っていますが、戸川昌子や西村寿行、西村望や谷恒生等の濃いメンツと比較しても本書の内容は強烈で、講談社からは約八年後のウロボロスシリーズまでずっとお呼びがかかりませんでした。というか当時でもこんなのよく出したよな。
 しょっぱなから頭に凶器がつき刺さった死体やら、ホルマリン漬けの胎児やら何ちゃらかんちゃら。生理的嫌悪感を催すガジェットをジメジメザワザワした形容詞が彩ります。更に誰が誰やら分からないブランク描写の妄想オンパレードに加えて、連続する意味不明な事件。220P余りの本文を三十七にも及ぶ章立てで区切りまくった、目眩のしてくるような構成です。
 ただ果てしなく自問自答を重ねるような、どこか思春期風の文体なので、読んでいてそこまでの嫌悪感は無い。ニチャニチャした喋り方で容疑者に纏わりついてくる楢津木刑事とか、関西弁丸出しの住人・小野田とか、故意に俗悪にやってるなという部分はありますが。まあちゃんとカタが付くんかいという内容の割には、そこそこマトモに着地します。ただ〈被害者の足跡が無い!〉とかいくつかの謎については、上手く作者に逃げられたような気もするなあ。
 分類は本格/新本格となっていますが、犯行動機の曖昧さが語るように内容的にはよりホラーに近い作品。シャーリイ・ジャクスン『たたり』系列の、〈呪われた館〉物に挑んだ出色の和風ゴシック小説です。

No.8 5点 文生 2020/08/01 18:43
じめっとした雰囲気の和風幻想ミステリーの味わいは評価できるものの、本格ミステリとしてはこれといって面白味を感じられなかったのが残念。

No.7 5点 nukkam 2015/12/21 17:48
(ネタバレなしです) 1983年発表の長編ミステリー第5作で、「将棋殺人事件」(1981年)、「トランプ殺人事件」(1981年)と共に狂気三部作を構成しています。ホラー小説と本格派推理小説のジャンルミックス型ですがどちらかと言えば後者寄りでしょうか。作中人物が述べているように「じめじめした薄暗さ」が全編を覆っています。前半は怪現象のグロテスク描写が多いですが、やはり作中人物が「この家は狂気を招き寄せる」と述べるとおり、進行していく狂気描写が後半は増えていきます。最後は探偵役が推理で犯人を指摘する本格派推理小説として着地するのですが、巻末の作者コメントにあるように「相当濃い作品に仕上がっている」ので好き嫌いはかなり分かれそうです。

No.6 6点 ボナンザ 2014/07/16 13:17
綾辻・有栖川の復刊で。乱歩らしい雰囲気に挑戦したのがわかるが、あくまで竹本の描く世界。
偽書よりも面白かった。

No.5 6点 kanamori 2010/03/13 17:18
古い病院を改築したアパートをめぐる怪奇ミステリ。
大量血の出現とかの連続する怪異現象と、秘密を持つ住民たちなど途中までの雰囲気作りは非常によかった。
(以下ネタバレ)
終盤、アパート住民の一人がシリーズキャラクターだと判明してシラケてしまった。「八つ墓村」に金田一耕助がいらないのと同様、この小説に牧場智久は必要ないと思った。

No.4 5点 touko 2009/04/07 20:13
堕胎とか水子とか精神病とかの扱い方が、今読むと安易かつ俗悪に感じてしまうのは、古い作品だし、仕方ないのかもしれません。

No.3 9点 Tetchy 2008/01/22 23:31
とにかく怖かった、グロかったというのが第一印象。
やっぱ病院は怖いよ~!
おまけに竹本氏がわざわざ想像力をかき立てる言葉を選んで書いているので更に倍!
ホラーと思いきや、最後に論理的に落ち着くところが凄かった。

No.2 5点 蛙ライダー 2001/04/22 15:10
智久少年が出てくる話でこれを一番最初に読んだ。
その後三部作を順次読んで、こまっしゃくれてるけれどかわいい僕ちゃんと、
怪しい美少年が同一人物なのかとすっごく不思議だった。
でもこの題を最初見たとき赤江漠の殺し蜜狂い蜜だっけ?と勘違いして、買って帰ってから
同じ本買ってしまったのかと一瞬思った記憶が…

No.1 9点 すー 2001/04/13 00:07
・・前作(トランプ)で三部作終了に見せ掛けてここで牧場智久が出てくる。思いっ切り怪し気に(苦笑)繋がってると思わずに読んだ方が面白い。


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