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[ 社会派 ]
永遠の仔
天童荒太 出版月: 1999年02月 平均: 7.71点 書評数: 7件

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幻冬舎
1999年02月

幻冬舎
2004年10月

No.7 4点 レッドキング 2023/10/13 07:56
これを採点しよう思っているうちに数年が経ってしまった。同年の何かの賞(?)争いで「白夜行」に勝った(負けた?)とか。話としてはあっちの方が全然面白かった。ミステリとしては・・うーん、「意外なWho」を評価点として掬い・・。多くの読者から自身の過去を綴った手紙が寄せられ、「自分は、傷を負った人々の為に存在する作家だと自覚した」とか。その自覚が、優れたミステリを紡ぎ出す結果に繋がる事を、願って已まない。
※最近の喧しい「ジャニーズ問題」報道と、偶々、このサイト評でアンドリュー・ヴァクスを眼にして・・彼も同じ事に拘っていた・・この作品思い出した。

No.6 8点 猫サーカス 2022/10/30 18:15
霧に包まれた霧峰を一人の少女が登ってゆくところから始まる。少女には、まるでそれを守護するように二人の少年が付き添っている。三人はアダルト・チルドレン、親の虐待を受けて心を病んだ子供たちである。三人は少女の父親を殺そうとしているのだ。十七年後、三人はそれぞれ看護師、弁護士、刑事となって再会する。そしてあたかも審判のように事件が起こる。本当に父を殺したのか、なぜ父を殺そうとしたのか、これから起こるすべてを破滅させる雷火のような事件とは何か。少年と少女たちが収容されている「動物園」と呼ばれる治療施設での生活と十七年後をカットバックしながら、現代の地獄めぐりのストーリーは圧倒的な力で迫ってくる。それは人間がどうしてもそこから逃れられない親子・兄弟姉妹の絆という根源的なものが小説の強固な軸となっているからだ。救済はないが、素晴らしく感動的な個所がいくつもある。

No.5 9点 斎藤警部 2016/11/11 12:06
地上の空中楼閣に化ける前の武蔵小杉やら、地下の鼠小屋に押し込まれる前のオープンエアー東横渋谷ホームやら'ミレニアム'前後のノスタルジックな舞台が嬉しい、心を病んだ女子一人と男子二人が「落とし前」の落とし場所を捜す物語。 こう言っちゃ不謹慎かも知れんが、摑んで放さぬ圧倒的な面白さ。始まりから 大いなる中盤を経て 終わりまで。

かまびすしい狂気。おとなしい狂気。
ある知見の有る無しを峻別する、最低限の、本来無色透明の一言。まるでイニシエーションなんとかのラストを彷彿(おモわセ)るその冷静で温かい台詞が中盤ど真ん中に。これは効いた!

自分騙しも自分騙せずも本当に複雑明快で、単純混濁で。
新旧時代のガッツリした事件がある所で一気に交わるから、たまらんのですよ。沈黙させられちまったぜ。。

これ言ったらネタバレだけど、、   物語が最後にまさかの「意外な犯人」暴露で締まったのはグッと来た。広義だろうと狭義だろと一級品のミステリ長篇。素晴らしい。

No.4 10点 sophia 2014/04/13 18:01
採点者数がたった3人なのに驚きました。
超長編作品に傑作なしと個人的には思っているのですが、これは例外。
長さが全く苦にならなかった。
読了すると憂鬱な気分になるのだがそれでも読みたくなる。
ただ一言言うならば、「白夜行」を抑えてこのミス1位になりましたが、ミステリー部分がメインの作品ではないですね。

No.3 6点 メルカトル 2012/03/16 21:38
長い、さすがに文庫本5冊分は長い。
しかしながら最後まで飽きることなく読めたのは、やはり作者の力量が並ではないということなのだろう。
帯の「ミステリーの最高峰」の謳い文句は大袈裟だが、心に残り続ける、というのは決して間違ってはいないと思う。
要所要所に、問題提起やちょっとした感動を呼ぶサイドストーリーが散りばめられていて、いいアクセントになっている。
全体としてはさして複雑なストーリーではないが、丁寧に描かれているため、この長尺はやむを得ないのかも。
だが、個人的には誰にも感情移入できなかったのはマイナス点だろうか。

No.2 8点 E-BANKER 2009/08/21 22:24
文庫版で5分冊という長さの間に、「親子の愛情」や「人間の業」という深いテーマをたっぷりと感じさせてくれます。
子供の心って、こんなに傷つきやすくもろいものなんですね。最後に罪を告白する主要登場人物のひとりには同情を禁じえませんでした。
著者は昨年やっと直木賞を受賞しましたが、遅すぎっていうかんじですねぇ。

No.1 9点 白い風 2009/01/27 23:27
私は高評価をつけましたが、ハマル人とそうでない人は分かれそう(でも、ハズレは無いと思うけどね)
特に男性と女性、また子供を持っている方とそうでない方とも感想は違ってくると思う。
でも、誰もが必ず通ってきた幼年時代…色々考えさせられます。
少なくとも私には心を揺さぶる物はありました。
今回は犯人探しのミステリより、容疑者(犯人)になった者たちの心情表現にポイントをおいた評価をいました。


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天童荒太
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