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[ 警察小説 ]
クリスマスのフロスト
フロスト警部
R・D・ウィングフィールド 出版月: 1994年09月 平均: 6.36点 書評数: 11件

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東京創元社
1994年09月

No.11 6点 ROM大臣 2021/07/29 13:24
ロンドンから70マイル離れたところにある地方都市デントン。このありふれた田舎町の警察署に勤めるジャック・フロストが主人公。
ユーモラスな会話や巧みな語り口を武器に読者を引き込んでいく様は、処女作とはいえ作者の確かな技量を感じさせる。それは、人間味にあふれ、次第に悲壮感さえ帯びてくる主人公のフロストはもちろんのこと、その脇役たちにも十分な魅力があるからである。次期警察長を目指し、上昇志向のあるマレット署長、フロストに翻弄されっぱなしの部下のクライヴ。彼らとフロストのやり取りは皮肉なユーモアにあふれていて実に楽しませてくれる。もう少し毒気があってもよいかと思うが、シリーズ一作目としては十分すぎるほどの出来栄え。

No.10 7点 レッドキング 2020/04/26 08:14
薄汚くかつ下品・・それも署長秘書に浣腸くらわしたり、たん壺の中味を飲んだ奴のエピソードを食事中に披露する程の半端ないレベルの・・下品な中年警部が主人公。警察長の甥の青年巡査を引き連れて、若き娼婦の8歳になる娘の行方不明事件を追ううちに、数十年前の銀行強殺事件に行き当たり、森に棲む魔女の様な霊媒師や怪しげな聖公会司祭もからみ、ホワイトクリスマスに向かってドタバタと事件が収束して行く。シナリオライター上がりの作者による、巧みな多重エピソード展開で、数頁に一度の割合で爆笑させられ、たまにシンミリさせられ、それでいてわざとらしい偽善に陥ることなく、シビアな人間性現実から目をそむけない、実に見事なる「警察小説」。ミステリとしての要素はたいしたことないけれども、大いにオマケ付けちゃいたくなる。

No.9 7点 陽炎 2019/04/14 12:53
ロンドンから70マイル離れた所にある地方都市デントン。
このありふれた田舎町の警察署に勤めるジャック・フロスト警部が、この「クリスマスのフロスト」の主人公。

その特徴といえば、40代後半の頭の禿げた冴えない男で、格好はいつもだらしがない。その上、怠慢で口が悪く、その無責任さを隠そうともしない。
簡単に言えば、彼はデントン警察署の厄介者なのだ。

私はこの本を読みながら、ジョイス・ポーターのドーヴァー警部やレジナルド・ヒルのダルジール警視が脳裏をよぎりましたが、このフロスト警部は彼ら先達の特徴をいくらかソフィスティケイトした、より現実味のある、我々と等身大の主人公として描かれているなと思います。

実際のところ、彼は非常に有能な警官で、興味を持てば仕事熱心になることもあるし、彼のことを認めている人も、あるいは彼のことを慕っている人も少なくないのだ。
その勇敢な行動に対して勲章さえもらっているし、妻を亡くすという悲しみを乗り越えてきてもいる。
フロストとはそんな愛すべき人間なんですね。

この物語は我々読者の意表をつくところから始まります。
クリスマスを目前にしたある日、なんとフロスト警部が民家に不法侵入したあげく、家の主人に銃で撃たれ瀕死の重傷を負ってしまうのだ。
そして、その滑稽とも言える事件に至るまでの顛末が順を追って描かれていきます。

その事件の4日前、最短距離で刑事に昇進したクライヴ・バーナードは、デントン警察署に着任するため、はるばるロンドンからやって来た。
警察長の甥であるため、デントン警察署にとってはいささか扱いに困る人物だった。

ちょうどそんな折、子供が行方不明になったという通報が娼婦の母親から入る。優秀なアレン警部が捜査を指揮することになり、クライヴの世話は、やむを得ずフロスト警部に任されることに。

町では他にも銀行の押し込み未遂事件が起こっていたが、クライヴを引きずり回しながら二つの事件の間を休むことなく行き来するフロストは、やがて新たな事件まで掘り当ててしまうのだった--------。

ユーモラスな会話や巧みな語り口を武器に、我々読者を小説の世界に引き込んでいくさまは、R・D・ウイングフィールドの処女作とはいえ、作家としての類稀なる技量を感じさせてくれます。
それは、人間味にあふれ、次第に悲壮感さえ帯びてくる主人公のフロストはもちろんのこと、その脇役たちにも十分な魅力があるからなんですね。

次期警察署長を目指し、上昇志向のあるマレット署長。フロストに翻弄されっぱなしの部下のクライヴ。
彼らとフロストとのやりとりは、皮肉なユーモアにあふれていて、実に楽しませてくれます。

欲を言えば、もう少し毒気があってもいいかなと思いますが、シリーズの1作目としては十分すぎるほどの出来栄えで、英国警察小説の醍醐味を味わうことができましたね。

No.8 5点 蟷螂の斧 2013/04/14 13:46
(東西ミステリーベスト43位)最初の事件は、少女が行方不明になる。その捜査の間に他の事件が発生したり、日常のフロスト警部のダメぶりが発揮されたりする。さらに行方不明の事件を利用する者も現れるなどしますが、どうも事件に集中できませんでした。そのような類いの小説ではないということなのでしょう。ダメぶりや下ネタも最初の方は楽しめましたが、ちょっと長すぎて途中で飽きてしまいました。

No.7 5点 あびびび 2012/01/05 19:13
読んでいて楽しい。しかし、フロスト警部が自分の上司、あるいは部下だったらとても楽しめたものではない。いや、最悪である。

確かに構成はしっかりしており、事件の行方も興味深かったが、どんでん返しがある訳ではなく、終わりよければすべてよし。今、手元に次の「フロスト日和」という本を手にしているが、これが文庫で700ページ。

いや、次は別な本にして、また暇なとき、読む本がない時にしよう…と思った次第である。

No.6 6点 りゅう 2011/12/25 07:01
 翻訳作品と思わせないような名訳で、文章は流麗、ストーリー運びも軽妙、非常にリーダービリティの高い作品でした。だらしのないフロスト警部のキャラクター、彼の下品でユーモラスな発言、無作法な行動、直感型で思いつきの捜査などが、作品の魅力になっています。クリスマス前の日曜日から木曜日までの5日間に起こった出来事や捜査の過程が描かれているのですが、それぞれの1日が非常に長く感じられ、追体験することで超過勤務をしたような気分になりました。真相は5日間に起こった様々な出来事をうまく関連付けたもので、意外性はありません。刑事の生きざまや警察内部の人間関係、捜査過程を描いた警察小説で、謎解きの要素は皆無と言ってよく、個人的嗜好からは外れているので、この程度の点数にしておきます。

No.5 6点 江守森江 2010/12/24 22:33
皆様「メリークリスマス」
クリスマス・イヴにミステリーの書評をアップする時点で本作のフロスト同様パッとしない・・・・「違うんだよ俺は!妻子ある身だし、一緒に家族パーティーして責任は果たしたんだから!浄土真宗だし、息子もサンタクロースは存在しないと、とっくに悟ってるしね!」
AXNミステリーでドラマ最終話放送(済)に先駆け8月に初回から再放送してた(ドラマ版でも本作が最初のエピソード)が視聴契約の関係で後半のエピしか観ていない(また再放送するのを首を長くして待つ)
本作は、9月に古本屋の50円文庫棚で見つけクリスマス・イヴまで待機していた。
そんな状態で原作を読んだのでストーリー自体は完全な初読になった。
いや〜驚いた!ドラマ版以上に原作のフロスト警部が冴えない為に脳内変換に戸惑った。
行き当たりばったりで何となく事件を解決するフロスト警部は運を以て才能を制する凄い名探偵だ!(←「名探偵コナン」の毛利小五郎に並びうる)
そんな風に思わないとクリスマスにツラレて読んだ私はミジメだ。
それでも、結構厚い文庫なのに面白くスラスラ読めたからヨシとしよう。
※余談
クリスマス・イヴの為に一年越しで霧舎学園シリーズの12月も予定していたが時間が無く11月も未読な為に断念した。

No.4 6点 mini 2009/12/23 10:03
* 季節だからね(^_^;) *

フロスト警部初読み
他サイトの書評で”これは警察小説ではなく一風変わった構成の本格だ”という書評を見たことがあるが、う~んそうかな、やはりこれ警察小説でしょ
筋の運び、謎の解決法、複数の事件が同時発生などモデュラー型の警察小説という一般的な分類で合ってると思う
それにしても話の進め方が上手い作家だな
流石に本職が脚本家だっただけに、場面展開のスピーディーさは抜群で、一つの話が行き詰ると絶妙のタイミングで別の話題が持ち上がるなど、飽きずに頁を繰る手が止まらず、やや厚めの文庫なのに長さが全く気にならなかった
正直言ってユーモアはあまり面白いとは思わなかったが、一応キャラは立っているし、やはりこの物語展開の軽快さが持ち味なんだろう
ところで最初はメインと思われた事件が次第に脇筋に回り、途中から明るみに出た別の事件が終盤で重要になるなど、前半と後半とでそれぞれの事件の役割が変わってくる
一つの事件で首尾一貫して無いのでこうした構成を考えると、冒頭に置かれたショッキングな章はあまり意味を成していないと思えるのだが

No.3 7点 itokin 2009/09/07 20:18
フロスト警部のキャラクターで読ませる作品。びっくりするようなトリック、展開はないが構成はしっかりしていて最後まであきさせない、作者のユーモアは、一級品。

No.2 8点 あい 2009/05/08 23:23
面白かった。とにかく話の構成が抜群に良くて、まったく飽きることなく読めたし、フロスト警部のキャラクターも面白かった。話の終わり方がまたカッコいい

No.1 7点 ロビン 2008/12/21 22:12
フロスト警部シリーズの第一弾。大抵こういった「一見ダメ風」な刑事は、実は中身は頭の冴える名刑事だったりするのだけど、彼の場合は本当にダメみたい笑。そんな彼の魅力的なキャラクターで本書は読ませる。
ミステリー的にはさほど目新しいところはないが、複雑的にいくつもの事件が絡み合い、エンタテインメント性に溢れ、非常に面白かった。
次作も読みたいと思います。


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R・D・ウィングフィールド
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