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[ 本格/新本格 ]
密室の鎮魂歌
岸田るり子 出版月: 2004年10月 平均: 5.75点 書評数: 8件

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東京創元社
2004年10月

東京創元社
2008年05月

No.8 6点 ミステリ初心者 2022/04/29 19:26
ネタバレをしております。

 タイトルにある通り、密室ものです。3つの密室が登場し、豪華(?)です。
 物語は、基本的には麻美が主人公の文章で進みます。ちょっと自己肯定感の少なめなキャラクターで、いろいろな苦悩が書かれており、すこし読みづらさも感じました。麻美の心情が良く書かれているかと思いきや、高木のや一条の死体に対するリアクションは淡泊な印象をもちました(私だけかもしれませんが)。
 また、真相が明かされると、殺人者たちの汚い部分が細かく書かれております(笑)。

 推理小説的な要素について。
 密室が3つ。あとは、意外な犯人とその真相。5年前の事件と、現在の2つの事件では全員犯人が違うという複雑な物語でした。

 密室について。
 3つの密室がありましたが、最初の1つは拍子抜けするというか、あまりにも古典的というか、古典的過ぎてわからなかったぐらいです(笑)。
 2つ目の密室が最も凝っていて、私もわからなかったですし、面白くも感じました。密室の外から死体を動かすのは前例がありますが、キャスター付きの椅子を利用するのは盲点でした。ただ、小説のように成功するかはちょっと疑問ですね。
 3つ目の密室は、頭パープリンな私には理解できませんでした(笑)。どうやったんですかコレ? 解説が無いようなのですが?

 総じて、ストーリーや殺人者が殺人を犯すに至るまでを細かく書かれていて、かつその伏線もよく張られていたと思います。タイトルに密室とつけるにはやや力不足な密室という感じは否めませんが、邪道ではない密室なので好感が持てました。

No.7 5点 メルカトル 2017/05/04 22:14
過去現在含めて四件もの密室事件が起こる、豪華?な一冊です。が、いささかタイトル負けしていますね。いえ、個人的な感想ですが。
全編無味乾燥な文体で綴られる、一見複雑そうな、事件てんこ盛りな本作ですが、意外と単純な構造をしていると思います。デビュー作らしく、完成度が高くありません。京都が舞台なのですが、全然そんな感じがしないのは、情景が浮かんでこないせいなのか、まあ描写不足なのでしょう。やたら地名が出てくるだけで、土地勘がある私でも、あああの辺りか~程度にしか思えません。
最後の最後まで誰が探偵役なのか判然としないのは、逆に興味を惹かれますし、多分この人が探偵役なんだろうと思わせて被害者にするところなどは、なかなか面白いです。(すみません、ややネタバレ気味ですかね)ただ、この解決の仕方は個人的にあまり好みではないです。
密室も第一の事件は一捻りしてあり、好感が持てますが、あとはどうということのない平凡な事件です。密室は最早物理トリックのみでは物足りませんね。何か新味を感じさせるトリックや意外な動機でもない限り、密室そのものの存在意義はないと思います。

No.6 6点 人並由真 2017/03/26 20:44
(ネタバレなし)
 密室からの人間消失~そのまま失踪? という怪異な状況から五年を経て、ある時、新規に再開される連続密室殺人事件。この蠱惑的な設定にまずゾクゾク。

 まあ、作者の何らかの意向か、あるいは不況時代のぬかみそサービスか知らないが、女性主人公(リストラにあった37歳のアートデザイナー)の悩みの種の貧乏ぶりがいささか度を越して辛気臭い感じはあったけど。

 それで肝心のミステリ部分は、二つ三つ反則的な箇所もあるが、真相の露見後に事態を整理していくと……うん、なかなかこれはよく出来ている。
(たしかにE-BANKERさんのおっしゃる不満のふたつめなど、そこはちょっと不自然な印象の箇所もあるが。)

 数を絞った名前ありキャラクターが総じて際立った個性を与えられ、こういうタイプの人物なら後半…になるんだろうな、と思いきや、良い感じにいくつか予断を外してくる。そういう手際も悪くない。
 事件の真相の相当部分が、作中人物の手記でいっぺんに説明されちゃう構成はちょっと乱暴な気もするが、終盤の物語の異形感は印象深い。
 日下圭介とかをもうちょっと悪趣味にしたような作風といえるかも。 

No.5 5点 蟷螂の斧 2014/06/18 11:06
真相は面白いと思いましたが、全体的に後出しの印象が強いですね。伏線が弱いことと、探偵役が不存在?(推理が弱い)の点が原因か?。倒叙物であれば、第2の密室を仕掛けることにより、犯人を追いつめるということが読者に伝わるのですが、ミスリードのためとなればあまり効果はなかったような気がします。密室自体も面白くはありませんでした。女性の心理(嫌な面)はさすがにうまく描かれています。

No.4 6点 いけお 2013/04/14 22:25
謎が魅力的だが、そもそもトリックの完成度が厳しいのが惜しい。
人物の心理面の詳細描写が多いが、キーポイントになる性癖は後出しなのもどうか。

No.3 7点 E-BANKER 2011/11/13 20:09
第14回鮎川哲也賞受賞作。
作者の実父は、インターフェロン等の研究で有名な医学博士、岸田綱太郎氏とのこと。(だから?)

~世界的に成功したある女流画家の個展会場で、『汝、レクイエムを聴け』という作品を見た女性が、悲鳴を上げて失神した。失踪した自分の夫の居場所をこの画家が知っているに違いない、というのが彼女の不可解な主張だった。しかし、画家と失踪した男に接点はなかった。5年前の失踪事件は謎に満ちていた。そして5年後、再び事件の現場だった家で事件が起こる。今度は密室殺人事件。さらに密室殺人は続く。問題の絵に隠された驚くべき真実とは何か?~

デビュー作としては衝撃的な内容ではないでしょうか?
(もちろん、アラはいろいろあるにしても)
まずは、密室トリックが云々というよりは、作品のプロットが新人離れしていると感じた。
5年前の失踪事件と、現在の連続密室殺人が有機的に結びついていて、伏線の張り方もなかなか見事。
いかにも女流作家らしい細やかな心理描写や、醜い女性同士の争いなど、特に終盤はたたみ込むように迫ってきます。
「絵画」が事件の「カギ」になる、という趣向は先行例がいろいろありますが、本作では「紋章」の件ではなく、絵画製作自体の秘密という趣向が面白かった。

(で、ここからは不満点なわけですが・・・)
まずは「密室」。3番目(イタ飯屋のヤツ)はともかく、2番目もちょっといただけない。真相解明ではアッサリ説明しているが、現実的に可能かというとかなり怪しい気がする。4番目は問題外。最初のヤツが1番マトモ(=現実的)。
あと、動機につながる肝の部分(2人の○の関係)。あれほど嫉妬深い妻がそれをほっとくかねぇ? それを全く知らなかったという設定はちょっと首肯し難い。
もう1つ言うなら、最初の登場人物表。「あまりにも少なすぎるだろ!」。フーダニットに対する読者の興味を引っ張るためにも、もう少し人物増やせなかったかなぁ?(これは無理か・・・)
中盤以降は犯人がほぼ自動的に分かってしまった。

などと不満点を述べましたが、トータルでは本格ファンなら、とにかく1度読んでみるべしという感想ですね。
(鮎川賞の受賞作家はレベル高い)

No.2 7点 nukkam 2010/02/15 17:16
(ネタバレなしです) 十代のほとんどをフランスで過ごした岸田るり子(1961年生まれ)の2004年のデビュー作である本書は創元推理文庫版で300ページ程度とコンパクトで登場人物も決して多くはありませんが重厚さを感じさせる本格派推理小説です。心理サスペンスの要素も濃厚な作品で、クリスチアナ・ブランドの某短編を連想させるような幕切れは結構衝撃的です。謎解きが粗くて説明が少々中途半端なところがブランドレベルにはまだ到達していませんが、デビュー作としては上等の出来映えだと思います。

No.1 4点 江守森江 2009/05/22 05:36
密室物で、鮎川賞受賞作だが、期待して読むとガッカリするかも。
※以下ネタバレで作品を貶します!
一つの密室の解決が秘密の地下室な時点で本格を謳う鮎川賞には相応しくない作品と断言する。
タイトルに密室と銘打った時点で「作品の肝ではないから」との言い訳は通用しない。


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