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[ 本格/新本格 ]
ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!
改稿・改題版「最後のトリック」
深水黎一郎 出版月: 2007年04月 平均: 6.32点 書評数: 31件

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講談社
2007年04月

河出書房新社
2014年10月

No.11 6点 江守森江 2010/01/31 15:17
「読者が犯人」設定を成立させた作品は数作存在するが、それを納得させ得た作品は初めてだった。
但し、「一般読者が犯人」な設定で成立した作品だと納得しただけで、「読者が犯人」設定の肝である「読者=自分」の部分では全く納得できていない。
それでも、タイトルにある‘あなた’が、自分にではなく新聞の一読者への訴えである叙述は賞賛する。
物理的因果関係が立証されないある種の超能力を前提条件にした以上、適用ルールの開示が博士の記述という伏線から悟らせる形式なのはアンフェアの謗りは免れない。
一方で、適用ルールを明記すれば全く驚けない作品に成り下がるジレンマがあり、どう転んでも傑作にはなり得ない。
虚仮威し的設定でのデビューに残念な思いを感じる反面、文体の書き分けや叙述を仕込む技巧に見所があり、読者として次作以降への期待は高い。
※ボヤキ
「読者=自分=犯人」が成立かつ納得できる作品を将来読む事が出来るだろうか!!

No.10 7点 band box 2010/01/15 19:38
フェアかアンフェアかはともかく、面白い試みだった。もっとたくさんの方々の目に晒されるべき作品だと思う。
ただ、博士の超心理学講義は興味深い内容ではあるが個人的にはもう少し簡潔にまとめてもよいのではと感じた。

No.9 6点 touko 2009/07/30 23:52
無理目な設定ですが、楽しく読めました。
文章は端整でとても読みやすいのですが、お涙ちょうだいのラストにやや唐突感があったので、手紙を送ってくる人物の造形をもう少し親しみやすいものにして、タイトルもキャッチャーなものにしていたら、もっと一般受けする作品になっていそう。
ミステリとしての評価と関係なく、作品(商品)として売れ線になったかもしれないのに、惜しい気が。

No.8 7点 レイ・ブラッドベリへ 2009/06/21 11:35
【ネタバレを含んでいます】
…でも的外れで、僕だけがそう思っているのかもしれませんが…(笑)
一応、未読の方はご注意を。

 この作品は作家である「私」と、「香坂誠一」なる男性が主な登場人物。
「私」は作中で新聞小説を連載しており、その小説には香坂氏が書いた手紙と手記が
そのまま書き写されている。
作中後半で香坂氏は死亡するが、実はこの新聞小説の(不特定多数の)読者が
犯人であったというもの。

 「読者が犯人って、まあこんなものだろうな」と思った。
犯人である「読者」とは作中の「新聞小説の読者」
であり(私やあなたなどの)「本作の読者」ではないのである。
またその殺害トリックも
「作者がそう言い張るんならオレはそれでもいいや」と思う位のものだった。
でも読後、なんとなく引っかかるものがあり最初から読み直してみることにした。

 本作は「私」と香坂氏の一人称で記述される。
そして「私」が掲載している新聞小説には日常で起きたことがそのまま書いてあり、
いわゆる私小説のような内容なのだ。
そのため新聞小説内の出来事と、本作での出来事がはっきりと区分できず、
読んでいるうちに少し不安な気持ちになっていく。
それでこの小説の本文と、新聞小説の部分がどこなのか、確認してみることにした。

 作中で「私」が、「何ページと何ページは『新聞小説』の箇所です」と指摘している。
(もちろん、そのページ数は講談社ノベルスで出版された本作のものであり
作中の新聞小説のものではない)。
そして「私」が明言している文脈で読むと、どの箇所もすべて新聞小説のように思えるのだ。

 そこで視点を変えて「章立て」に着目した。
本作はⅠ章からⅤ章までで成り、それぞれが1、2のように数字の節に分かれている。
だが Ⅳ章の4節の後と、Ⅴ章の1節と2節の間に ’***’ で区切られた節が
挿入されているのに気がついた。
特にⅣ章では
「私と香坂氏とは他人である」というこれまでの書き方に反して
「誠一よ、どうするつもりだ?」と心配そうに呼びかけている。
…きっとこの2ヶ所が本作の「地の文」なのだ。

 でもそうだとすると、本作の全文318ページのうち
「小説としての本文はわずか7ページ」ということになるではないか。
(のこりの大半は、すべて作中作ということになる!)
これは一体どういうことか…

 本作では作中作が入れ子のように重なり合っている。
すなわち
①私やあなたの住む世界>②本作の小説世界>③新聞小説の世界>
④新聞小説の中の香坂氏の手紙と手記の世界
の4層構造となっている。

 そのような構造においては、作者の「小説としての地の文を記述しない」という意図により、
②の「本作の世界」が希薄化することになる。
そしてこのために①の世界の私たちは、直接、③の新聞小説を読んでいるような錯覚に陥る。
 また④の香坂氏の手紙も一人称で書かれており、その文中で、しきりに
「あなた」と呼びかけている。
これは本来、新聞小説を読んでいる読者(②の世界の読者)に向けてのものなのだが、
②の世界の希薄化により、①の世界の読者(=私やあなた)に語りかけているように思えてくる。
 ここにおいて「作中の読者」と「本作の読者」とが重なりあい、
現実世界の「私やあなた」が犯人となってしまう(ように思わされる)
 すなわち作者が狙ったのは「トリックを成立させるための被害者の設定」ではなく、
記述の力で「読者を犯人」と思わせることだったのだ。

 ところで本作の「私」の氏名と、作中の新聞小説の題名は明記されていない。
しかし前述したように「本作と作中作の境界線を消滅させ、
作中作をそのまま作品内容とする」ことが
作者の企図したものだとするならば、自ずとその作品の題名と「私」の名前は想像できるだろう。
そしてそれを明記せず、読者の想像力(僕のは妄想力)に委ねるのは、
作者の意図によるものなのだろう。

 これは「メタ」を巧妙に取り扱った「叙述ミステリ」だと思った。

No.7 6点 シーマスター 2009/04/24 20:47
なーるほどね・・・

あっと驚くという代物ではないし、コレで読者を【犯人】にするのも当然無理な話だが、可能な筈もないのに古くから提唱されているこのテーマに果敢に挑み、具体的な形を呈示してみせたことは、それだけで十分評価するに値するだろう。

それにアレは特殊な能力なんかにせずに、極度の〇〇〇ということだけにすれば「本当にあり得る話」になると思うんだけどな。
つまり「貼り出し事件」のように「△△れている時間に・・・する不思議な現象」ではなく「今(あるいは今日)△△れていると思うと・・・」だけでいいんじゃないか、ということですよ。

「博士の専門的な話」(読み流していいでしょう)以外は全体に読みやすい文章で、描写スタイルなども含めて個人的には好感がもてる作品。(ただ本当に、アンフェアな記述はなかったかな?)

No.6 8点 yoshi 2009/02/20 04:19
読み終わって、思わず「もったいねー」と叫んでしまった。これ、ノベルスじゃなくて本当に新聞連載でやったら、歴史に残る大傑作になってたんじゃ??? 装丁がよくない(内容とミスマッチ)のと、誰がつけたのか副題(犯人は~)がダサイので二点減点。 

No.5 9点 abc1 2008/09/24 13:21
面白かったです。超能力を出したら何でもありになってしまうという意見はもっともですし、事実これが超能力で人を殺す話だったら糞でしょうが、この作品ではそれが逆になっているのがナイスアイディアです。今までこの手の作品で、読み終わって自分が犯人だと思えたことは皆無でしたが、この作品は確かに自分が犯人だと思いました。それだけでも凄腕です。

No.4 3点 ElderMizuho 2008/05/04 02:07
試みは評価しますが・・やはり無謀でした
さすがにこのトリックはないです。
これ許したらなんでもありでしょう・・・。
超能力の話を混ぜ込んで無理やりトリックの自然さを装うとしているのが涙ぐましい・・・

No.3 8点 dei 2008/04/28 20:00
面白かったなぁ~アンフェアだとは思うけど

No.2 8点 深夜 2008/04/27 22:17
究極の意外な犯人もの。
まあトリックとしては反則かもしれませんが、この試みは最大限に評価したい。

文章もスマートでスラスラ読めるし、「覚書」やラストも良い。面白い小説でした。

No.1 6点 VOLKS 2008/04/06 20:40
「究極のトリック」なるほど。
確かに、こんな犯人は未だかつていなかっただろうし、こんな殺害方法もなかっただろうけれど、実際にこれは可能な殺害方法なのだろうか?
面白かったので別に良いのですが、読み終わってから若干疑問・・・


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