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[ 警察小説 ]
熱い街で死んだ少女
トマス・H・クック 出版月: 1992年04月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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文藝春秋
1992年04月

No.1 6点 レッドキング 2022/10/20 16:37
1963年アラバマ。キング牧師指導の黒人運動と白人治安部隊の争乱下、射殺死姦された黒人少女の事件を追う白人警官。左翼イデオロギーにもリベラル主義にも無縁の、既に心朽ち人生を半ば諦めた・・この作者お馴染みキャラの・・警官が、主義からでなく情動から引きずり込まれる黒人への執着。それでも「想像はできるが、わかる事はできない」壁の向こう側の情景。悲惨な黒人スラム描写とキング牧師の熱いアジと白人達の残忍な言動、読者の心象に煙幕を張りながら、その裏で運動を利用して進行する連続殺人犯達の思惑。冷え切った心を焼く黒人への思いと、犯人を追う冷めた捜査が、事件の真相解明へと反転収束する。

半世紀以上が経過し、黒人差別はタブーとなり、右派・保守的発言がウリの前大統領でさえ「この私に人種差別の血は一滴も流れてない」とアピールせざるを得ない現在の米国。それでもなお根底において変わる事のない、恐怖・嫌悪と建前・偽善の錯綜混乱・・そして我が国、外見では識別できない隣国民族を侮蔑して来た我らにしたところで、邦内に「白人」「黒人」等、肌の色が違う人間が多数混入して来れば、似た様な状況となる事に違いなく・・・


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