皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ サスペンス ] 俺ではない炎上 |
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浅倉秋成 | 出版月: 2022年05月 | 平均: 7.10点 | 書評数: 10件 |
双葉社 2022年05月 |
双葉社 2024年06月 |
No.10 | 6点 | E-BANKER | 2024/02/10 12:38 |
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「九度目の十八歳を迎えた君と」のみ既読の作者。他にも「六人の嘘つきな大学生」などの話題作があるのは知っていたが、なぜか本作を先に手に取ることに・・・
SNSをプロットの主軸に据えた、というのもこの時代らしい・・・のかな? 単行本は2022年の発表。 ~ある日突然、「女子大生殺人犯」にされた男・「山縣泰介」。すでに実名・写真付きでネットに素性が曝され、大炎上しているらしい。まったくの事実無根だが、誰一人として信じてはくれない。会社も、友人も、家族でさえも。ほんの数時間にして日本中の人間が敵になってしまった。必死の逃亡を続けながら男は事件の真相を探る・・・~ ずばり「面白かった」。作者の狙いにしてやられた、という感じだ。 主な視点人物は四人。 主人公にして、濡れ衣を着せられる男・山縣泰介は別として、あとの三人が曲者。 黙って読んでいれば騙されること必至。 本作、いわゆるSNS上のやり取りを主軸に据え、いかにも最新のミステリーです、という体裁をとっているけど、振り返ってみると叙述トリックによる昔ながらのミステリーという部分が見えてくる。 (時間軸ずらしてるしね←ネタバレっぽいけど) まあでも、うまい具合に作ったよなあー 最後の最後まで騙された感が強い。そういう意味では、叙述トリックの新しい「見せ方」かもしれない。 最初から、「真犯人」=山縣泰介、に疑問を抱きながら結局解明できなかった六浦刑事がちょっと不憫。もう少し華を持たせても良かったような・・・ 作者の達者さがよく分かった本作。 (ただ、「九度目・・・」でも最後までモヤモヤが消えなかったけれど、本作でもややモヤモヤは残ったなあ) 続けて未読の作品にも手を伸ばすことになるだろう。 |
No.9 | 8点 | take5 | 2023/07/08 17:04 |
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タイトルから想像できる範疇の、
デマに踊らされる的な深みのない作品 ↑と思って前半を読んでいました。 すみません間違いでした。 考えてみれば、 前作『六人の嘘つきな大学生』の クオリティーからしてそんなわけないって 後で思いました。 ↑他の方の書評を後から読んだら 虫警部さん等似ているものがありました。 タイトルを一つ深く読むと 自分事という主題が隠れていて うまいなと。 これなら原作を担当するマンガも含めて 他の作品を読まねばと思いました。 ↑その後『ショーハショーテン』読みました。 かなり面白いです。 王道青春マンガでジャンプらしいです。 お笑いの分析も興味深いです。 |
No.8 | 7点 | ひとこと | 2023/05/28 15:51 |
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なりすましに気をつけようと自分を戒められる良い作品 |
No.7 | 8点 | まさむね | 2023/05/27 21:06 |
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「ああ、こういった展開は苦手なんだよなぁ…」ってのが、序盤の正直な感想。とはいえ、一定の加速感の中で中盤まで連れていかれ、終盤のとある表記で「?」となって以降は一気読みでした。巧みな伏線配置とミスリード。そういった技巧もさることながら、読者にとって登場人物たちの印象が次々に変化させられていく展開もお見事で、各々の人間ドラマとしても秀逸。様々に考えさせられる作品でした。 |
No.6 | 7点 | パメル | 2023/04/29 07:53 |
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大学生の住吉初羽馬は友達が引用したTwitterを見て、リツイートする。それに付された写真は本物の殺人現場を撮影したようで、瞬く間に拡散される。程なくその写真は精査され、投稿したアカウントの持ち主も特定される。その男、大帝ハウス大善支社営業部長の山縣泰介は、支店長からの緊急電話で帰社するとTwitterがとんでもないことになっていると言われる。読めば読むほど、本人としか思えない巧妙な手口に、誰もが山縣の無実を信じようとはしない。犯人は一体何者なのか。
彼がオフィスに届いていた郵便物を調べてみると、唯一助かる可能性があるとすれば、選ぶべき道は逃げ続けるだけ、と諭す見知らぬ人物からの封書があった。文末には謎の数字の羅列が。自分が悪いわけではないのに、なぜこんな目に遭うのか。ネット上で「女子大生殺害犯」の濡れ衣を着せられ、職場や自宅から必死の逃走を続ける中、幾度となくそんな思いに駆られる。物語は山縣の逃走譚を軸に展開、彼視点だけでも十分謎めいていてスリリングなのだが、視点人物は初羽馬を始め、複数存在する。泰介も初羽馬も彼らなりの信条に従って、人生上手くやってきた。だが事件の真相に近づくにつれ、彼らがほとんど意識せず、踏みにじってきたものの正体が明らかになる。 やり手の会社員で誠実な家庭人であるかのような山縣の人物像には、主観と客観でずれがあって、それが次第に露になるにつれて、彼の悲劇も、より深刻さを増していくという次第。しかもそうしたずれは、更なるずれとも呼応している。本書はただ彼が追い詰められていくだけではない。人間ドラマの面白さがある。ページをめくる手が止まらないのは、真犯人が誰なのか気になるからだけではない。彼らの生き方が、今の社会の映し鏡でもあるからだ。終盤、二人がそれぞれ一方的な被害者意識を脱して自己を見つめ直す描写に、わずかな希望が託される。ネットにあふれる言葉への言及に大きく膝を打ち、真相に胸を強く締め付けられる。 |
No.5 | 8点 | sophia | 2022/09/10 00:19 |
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ネタバレあり
SNSでの成りすましによって殺人犯の汚名を着せられるという、浅倉秋成らしくはあるのですが、安っぽい邦画のような題材に手を出したなあと読む前は思っていました。それでもさすがのリーダビリティ。視点人物の入れ替わりのスパンが短くてテンポもよく、ページをめくる手が止まりませんでした。第三者と思われるいわゆるツイ民視点から始めたのもテーマ的によかったと思います。 この作品の目玉である、終盤に待つ構図のひっくり返しは綺麗に決まったと思います。この作者はどんどん技を身に付けていっていますね。ある人物の台詞、「このままだと×××な×××の手によって殺されてしまう」というミスリードだけが引っかかりはするのですけれども。真犯人の正体に驚きと同時に強い違和感(あの人物がこんなことしたの?)が感じられてしまったのもマイナス要素ではありますが、逃亡サスペンスとして総じて出来がよかったので高評価させてもらいました。 |
No.4 | 7点 | 文生 | 2022/08/28 06:52 |
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SNSがらみの犯罪とといったアイディアも無実の罪で追われる主人公といったプロットもそれら自体は目新しいものではありませんが、2つを合わせることで読み応え満点の令和型『逃亡者』に仕上がっています。視点を変えながら真相に迫っていく展開もスリリング。個人的には話題となった『6人の嘘つきな大学生』より好きな作品です。 |
No.3 | 6点 | 虫暮部 | 2022/08/25 13:28 |
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良く出来てはいるけど、SNSにまつわる狂騒とかデジタル社会の怖さ云々と言った作品は、どれも同類項に思えてしまうんだよなぁ。題名からこの雰囲気の見当は付いたのに、つい手を出しちゃったなぁ。
と思いつつ幾分惰性で読み進めたら最後で驚いた。そっちに気を取られて手許が疎かになる、と言う意味では題材そのものがミスディレクションとして私に作用したようだ。 ところで、あの手紙で彼を山の中へ誘導するのは、確実性が低いよね。彼の手に届くか? 読むか? 数字の意味が通じるか? 信用するか? いずれも危うい描写があった。 |
No.2 | 7点 | 人並由真 | 2022/07/08 06:58 |
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(ネタバレなし)
その作品の作者ファンの視点で新作を褒める場合の常套句として「予想を裏切って期待に応えてくれた秀作」と、いうような言い回しがある。 つまり、今回もよくも悪くもいつもの作者らしい内容なんだろうなと予期していたら、意外に送り手の引き出しの広さで受け手の度肝を抜き、一方でトータルの充実度としては、従来と同等かそれ以上に確かな満足感を与える良作という意味だ。 そういう修辞を踏まえるなら、この作品はトータルとしては十分に<ただいま好調の浅倉秋成の新作>という期待には応えてくれたものの、一方で予想の方は、あんまり裏切ってくれていない、という感じか。 優秀作だった前作『六人の嘘つきな大学生』でまたひとつ評価を上げた作者の新刊として見るならば、とにもかくにもミスディレクションや小説上のテクニックが、前作と横並びすぎる(こう書いても、ミステリとしてのネタバレにはなってないと思うが)。 とはいえ<その辺>は恣意的にハズす訳にもいかないだろうし、ソコらは作者も編集者も苦労した上であれこれ採択したんだろうなあ、という感じ。 次の作品は高木彬光でいうなら『魔弾の射手』か『白妖鬼』レベルの、あるいは横溝なら『吸血蛾』レベルの、肩の力を抜いたズッコケ作品を書いてくれてもいいんだけれどね。その方が作家としては長持ちしてくれそうだし。 でもなかなかそうも、行かないんだろうなあ。 一編の作品としては十分に、面白かった&心に響いたけれど、いろいろとメンドクサイことをつい考えてしまった新作でありました。 |
No.1 | 7点 | HORNET | 2022/06/25 22:08 |
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ある男のTwitterに、殺害現場がupされた。有名人でもない男の投稿にはじめは反応が鈍かったが「これ、ガチじゃない?」というリツイートとともに次第に広まり大炎上に。ところがツイートの主とされている男・山縣泰介はTwitterすらやっておらず、何がなんだがわからない。しかし写真をさらされ、殺人犯と認識され、追われる身に。いったい誰が、どのようにしてこんなことを―?
現代的なツールを素材として、ミステリを巧妙に組み立てている。完全な冤罪でありながら、このことを通して自身の生き方を省みる泰介の姿や、どこか見下していた取引先会社の社員に救われるくだりなど、挿話的に描かれている泰介の人間ドラマも複線として非常に効果的。 仕掛けの方法は昨今よく見るやり方だが、呼称のトリックや叙述の技術の合わせ技で精巧に作りこまれており、感嘆した。ただラストまで読み進めても、その仕掛けの全容を正しく理解するのには多少の時間を要した… |