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[ ハードボイルド ] 宇宙から来た女 私立探偵リック・ホルマン |
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カーター・ブラウン | 出版月: 1968年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1968年01月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2021/12/18 15:16 |
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(ネタバレなし)
「おれ」ことハリウッドのトラブル・コンサルタント、リック・ホルマンは、面識があるタレント・エージェンシー(映画のキャスティングプロデュース業)会社の副社長ヒューイ・ランバートに呼び出される。ヒューイの上司である女丈夫の美人社長アンジェラ・バロウズが語るに、会社はドイツでタレント性のある美少女モニカ・バイヤーを女優としてスカウトし、あまりに強烈な容姿ゆえに、アメリカで「宇宙から来た女」として売り出そうと画策。すでに大作映画の主演契約も締結したという。だがそのモニカが行方不明になり、映画の企画進行も間近に迫っているそうだ。ホルマンはモニカ捜索の仕事を請け負って動き出すが、調査の場はモニカの出身地の西ドイツにまで及ぶ。 1965年のコピーライト作品。 リック・ホルマンものの第12弾で、日本ではシリーズのここまでが全部訳出されていた。以降はまったく未訳。 ちなみにホルマンシリーズの邦訳は、順番がバラバラに出たのだが、本書のあとがきで訳者の山下愉一が現在「The Wind-Up Doll(邦題『ベビー・ドール』)の翻訳に取り掛かっている、とある。 が、実際の『ベビー・ドール』の翻訳は別の人(信太修一郎なる御仁)であった。加島祥造=一ノ瀬直二=久良岐基一みたいなペンネームというコトはないよね? 何らかの事情で担当が交代したか? さらにもう一作、山下はホルマンシリーズの翻訳はこの『宇宙から』が最初だが、付き合ってみたら先輩アル・ウィラーやダニー・ボイドみたいに親しみを感じたと語り、当時の近作でシリーズ第17弾の「The Deadly Kitten」も面白そうだと語っていたが、これは未訳のまま終わった。 閑話休題。本作のタイトル「宇宙から来た女」から、今回はフレドリック・ブラウンの『死にいたる火星人の扉』みたいな火星人を自称する不思議系キャラクター(それもたぶん美女)が登場するのか? 『安達としまむら』のヤシロ(ヤチー)みたいだ、と予期していたが、実際にはただの人並外れた美人という意味合いであった。宇宙SF要素皆無だし、ただの修辞じゃないか。 とはいえお話そのものはかなりぶっとんでいて、なかなかオモシロイ(というか評者とウマが合う)。ホルマンが依頼人のアンジェラ公認の経費持ちで、モニカの出身地である西ドイツにまで向かう海外出張編というのはさすがにびっくりしたし、後半、怪しいメインゲストキャラクターのクルース兄弟が設置した当時の最先端の電子機器仕掛けのお化け屋敷が舞台となるあたりも、妙なほどに趣向が凝っている。なおお化け屋敷のいやらしい風圧ギミックで、魅力的なメインゲストヒロイン、キャスィ・フリックのスカートがめくれてパンティが丸見えになり、ホルマンの目が釘付けになる描写は、中学時代に読んでいたら興奮したろうな。いや、今でも楽しいが。 ミステリとしては、例によって事件の全貌がなかなか見えないなかで、ホルマンが窮地に陥るなどの見せ場が連続(西ドイツでの活劇場面がなかなか強烈だ)。 そして終盤には、かなり意外な犯罪の構造が明らかになるが、カーター・ブラウン作品の多くのように、ホルマンのぶっとんだ想像がいきなり正鵠を射てしまう流れで、読者が推理できる余地はほとんど無い。まあそれでも意外性としてはかなり面白かった(ただし主犯が誰かは、ほぼ見え見え)。 ギミックの豊富さでのちのちまで印象に残りそうな一本だが、トータルとしてはシリーズ内の中の上か上の下くらいかな。 カーター・ブラウン、読めばやっぱり、オモシロイ。 |