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[ ハードボイルド ] ミストレス アル・ウィーラー警部 |
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カーター・ブラウン | 出版月: 1960年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1960年01月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2022/10/07 16:12 |
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(ネタバレなし)
おなじみパイン・シティ。「ぼく」ことアル・ウィーラー警部の上司であるレイヴァーズ保安官の自宅前で、うら若い美人の射殺死体が見つかった。それは保安官の姪リンダ・スコットの亡骸である。20代半ばのリンダはラス・ヴェガスの賭博場「蛇の眼」で美人の胴元として働いており、先日、同店の経営者ハワード・フレッチャーを保安官に紹介した。フレッチャーの用件はパイン・シティに「蛇の眼」の支店を出したいので、まず親しいリンダとの縁をツテに、保安官に根回しに来たようだ。だが保安官は、賭博場の開設に断固反対。その仕返しにフレッチャーが嫌がらせでリンダを殺し、死体を保安官の自宅前に放置したのではないか? 保安官から事情を聞いたウィーラーはフレッチャーのもとに向かうが、彼にはかなり確かなアリバイがあった。 1959年のクレジット作品。ミステリ書誌サイト「aga-search」によればウィーラー警部ものの7番目の長編。 これも大昔に読んだはずだが、例によって全く内容は忘れてる。本作は数年前に本サイトに登録され、そのままレビューもこないのでアナを埋めるつもりで再読してみた。 ウィーラーと、姪を失った悲しみにくれるレズニック保安官が最初に嫌疑をかけた男フレッチャーはシロらしい? 以降はそのフレッチャーが名前を挙げた関係者をウィーラーが訪ね、さらにそのまた……と足で情報を稼いでいく作劇の流れ。なおフレッチャーはさる事情からかなりの逆境にあり、ラス・ヴェガスに本命の彼女といえる超美人のストリッパー「ガブリエル」を残してパイン・シティに来ている。タイトルのミストレス(情人)とは、このガブリエルのこと。 前述のように関係者を嗅ぎまわるハードボイルド私立探偵小説っぽい作りで、ウィーラーは今回の事件の流れゆえ、当然のごとくラス・ヴェガスにも出張。なかなかの荒事師ぶりを見せる。 ミステリとしては途中から物語の表面に出てきたさる要素の方に比重が傾いていき、それなりの意外性で幕を閉じる。 とはいえ登場人物の頭数は少ない(なんせ本文160ページちょっとだし)上に、事件の関係者もそれなりに退場して(殺されて)いくので、犯人そのものは見当がつけやすいかも。 まあまとまりの良い作品ではあった。 レズニック保安官の自宅そのものも後半に改めて登場し、保安官の奥さん(名前は不明)まで登場するのが本シリーズのファンにはちょっと目新しい(そーいや、劇中には登場しないもののポルニック部長刑事が既婚者で、細君がいるのも初めて? 意識した)。 保安官の秘書でシリーズレギュラーのツンツンヒロイン、アナベル・ジャクスンの出番がそれなりに多いのは嬉しい。 なおポケミスの裏表紙のあらすじの最後の数行、殺されたリンダには恋人レックス・シェイファーがいて、彼は事件当夜から行方不明云々の部分は大ウソ。シェイファーは新聞記者だが、特に失踪することもなく、随時劇中に顔を出す。 どーせ当時の早川の編集部が翻訳者から梗概だけもらってあらすじを書いたものの、字数が足らず、最後のところをいい加減にでっち上げたんだろ? 編集担当者の名前を知りたい。 ちなみに本書の翻訳は、宇野利泰。かなりの大物でこんな人がカーター・ブラウンを担当してたんだっけ? とちょっと虚をつかれた。評者は「カーター・ブラウンの翻訳家の名前を10人あげろ」という大学入試の問題が出たら、ぎりぎり正解・合格できる自信はあるが、宇野の名前はかなりあとあとに出てくるだろうと思う。訳文的にはテンポよく、特に問題なく楽しめたが。 |