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[ ハードボイルド ] ストリッパー アル・ウィーラー警部 |
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カーター・ブラウン | 出版月: 1962年04月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1962年04月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2021/09/01 11:40 |
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(ネタバレなし)
パイン・シティのスター・ライト・ホテル。その15階から身投げを図ろうとする二十歳前後の娘を、「おれ」こと保安官事務所所属の警部アル・ウィーラーは、すんでのところで、思いとどまるよう呼びかける。説得は成功したかに見えた。だが安心しかけた次の瞬間、娘の体は妙な姿勢をとり、地面に落下した。その娘、女優志望のパティ・ケラーを救えなかったことを気に病むウィーラーだが、検死の結果、彼女の体内から平行感覚を狂わせる薬物が検出された。他殺の可能性を含む事件性を認めたウィーラーは、パティの従姉妹でストリッパーとして人気を集めているドロレス・ケラーに対面。ドロレスから、田舎から出てきてまだ友人の少ないパティが、結婚相談所「アークライト・ハッピネス・クラブ」でボーイフレンドを斡旋してもらっていた事実を知る。だがそんなウィーラーの前に、思わぬ関係者の変死事件が生じて。 1961年のクレジット作品。 ショッキングな冒頭だけに、これは、以前に一度は読んだことははっきり覚えている。それ以外のストーリーも事件の内容も、もちろん犯人もトリック(あれば)も、完全に忘却の彼方だったが。 他のミステリ感想サイトでも語っている人がいるが、若い身空で役者になる夢の途中で墜落死したゲストヒロインのパティ。この薄幸の被害者に関係者の誰もが情愛を傾けてやらないなか、自分だけでも彼女の死の真相を暴き、鎮魂してやろうとひそかに考えるウィーラー。うん、正統派のやさしいハードボイルド探偵のようで、気持ち良い。 自殺した? パティと、もともとそんなに仲良くなかったとうそぶくドロレス。彼女が従姉妹の死をたいして悲しまない反面、愛犬を猫っ可愛がり、いやイヌ可愛がりする。これに腹を立てて、犬よりも従姉妹だろ、人間だろと怒るウィーラー。すんごくマトモな主人公だ。ドロレスも、ハッと反省はしたようである。(まあ、犬には罪はないんだけどね。)でも小説として、またハードボイルド作品として、これでよろしい。 というわけで、いつにもましてウィーラーの骨っぽいところ、真面目でやさしいところは、ステキな作品。 だけど一方で、事件もゲストキャラも全体的にあんまり冴えない。ただひとり、タヒチ美人風と評された、結婚相談所の愛らしい受け付嬢、シェリー・ランドのみは、そのはっちゃけたキャラも、陽性のエロさも、ともに良かった。 しかし(中略)に(中略)の<あのもうひとりのヒロイン>はなんだろうね。笑ったよ。 シリーズもののちょっと変わった一本としては、それなりの価値はあるけれど、一本のミステリとしては、水準作~佳作くらいか。 本作は、なんかわりと、世の中の評判はいいような気配もあるのだが。 |