皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] 兇人邸の殺人 剣崎比留子シリーズ |
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| 今村昌弘 | 出版月: 2021年07月 | 平均: 7.40点 | 書評数: 25件 |
![]() 東京創元社 2021年07月 |
![]() 東京創元社 2025年10月 |
| No.5 | 7点 | ミステリ初心者 | 2021/09/20 18:26 |
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| ネタバレをしています。
待望のシリーズ第3作! 非常に読みやすい文章に、丁寧な描写や館見取り図、ワトソン役葉村による容疑者タイムテーブルなど、全くストレスがありません。かつ、今回も現実には存在しない巨人や、人体実験を受けた生き残りなどをうまく絡めつつの犯人当てや不可能トリックは健在です。 非常に濃厚な本格要素がおおいです。主に4つあり、それぞれすべて水準が高かったです。 前半の、探偵剣崎比留子による犯人当ては、倒叙形式でのミステリになっており、これだけでも1冊分の価値がありました。正直いって、この部分が一番出来が良かったです。ただ、挑戦状、あるいはそれを示唆する文が無かったために(自分はそう感じましたw)、私があれこれと考える前に比留子が解いてしまいました(涙)。読者と共に解く本というよりかは、探偵比留子が勝手に解くのを眺める小説のようで残念です(笑)。まるで、石持浅海。挑戦状がついていれば大幅加点するのですが、この作者は従来の推理小説を揶揄することを多く書いており、絶対に挑戦状などつけないでしょうね。 次に、誰が雑賀を殺したか?という犯人当てについてです。中華包丁関連の話や、不木の首切りなど、非常に論理的で隙が無い犯人当てでした。たとえ、雑賀の首の謎(いつ切ったのか、いつ運んだのかなど)がわからなくても、とりあえず犯人当てはできるという趣向(?)であり、フェアさを感じました。 雑賀の首はいかにして切られたか、については、密室などと同じ系統の不可能犯罪ととらえて読みました(笑)。血のトリックによる、首を切られた時間の詐称は盲点でした…。剛力が雑賀の死体の発見した後では、首を切るのは非常に難しくなってしまうため、むしろ剛力が発見した時点で切れていたのではないかとも考えてしまいましたが、それだと馬鹿ミスですね(笑)。ただし、生き残りは出血死しない的な要素がありますが、これは説明不足と思います。あと、巨人が雑賀を発見して首を切るか?は偶然の要素が絡みますし、第一犯人の狙った通りの時間ではなかった偶然もあっての不可能犯罪なので、どちらかというと好みではありません。 最後に、いかにして鍵をゲットするかという問題。まるで、北山猛邦氏のような狂気じみた方法で、大変気に入りました(笑)。負け惜しみですが、北山猛邦作品だったなら、解いた自信があります(笑)。 総じて、個人的シリーズ最高傑作の魔眼の匣よりかは劣るものの、推理小説としての密度と水準は依然として高く、早くも次の新作が待ち遠しいです。 |
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| No.4 | 9点 | sophia | 2021/08/16 00:23 |
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| 「屍人荘の殺人」と同じくクリーチャーによって人の行動が支配される特殊設定ミステリー。今作は更にホラーサスペンス色が強いです。毎度映画に例えてすみませんが、これは「バイオハザード」ですね。読者を引き付ける力は作を重ねるごとに上がっています。
恒例のクローズドサークルものでもありますが1、2作目とは性質の異なる第3のクローズドサークルです。なぜテーマパークのど真ん中などという雰囲気の出ない開けたところを舞台にするのかと思っていましたが、そうすることでむしろクローズドサークルになるという逆説的な舞台設定です。 殺人事件の解明は、恒例の細かい論理の積み重ねによる消去法推理です。著者にこの辺りの基礎体力がしっかりあるから奇抜な設定も生きるんですよね。しかし「犯人は探偵の敵なのか」の言葉通り、この作品において犯人当てはさほど重要ではありません。目玉は巨人の正体と鍵を取り戻す方法であり、考え抜かれた建物の複雑な構造がそれを下支えしています。そしてそれは読者を驚かせるのみならず人間ドラマにも繋がっていくのです。これぞ館ものミステリーではないでしょうか。 この作品で語られる名探偵論は阿津川辰海の葛城シリーズと似通ったところがあります。葉村の考えは葛城寄り、比留子は飛鳥井光流寄りでしょうか。しかしながら「雨降って地固まる」で最後に二人の信頼関係が深まったのは良かったと思います。「彼を侮るな」には心を打たれました。 もったいないのは終盤のとある伏線です。あそこまで話が進んだ上でのあの描写ではこの人物が××だと教えているようなものでした。あれはいらなかったかも。最後になりますが、未解決の大きな謎が一つありますね。比留子さん、トイレどうしたんでしょうか。 |
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| No.3 | 6点 | 文生 | 2021/08/14 10:53 |
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| スプラッターホラー仕立てのストーリーは大いに楽しめましたし、ミステリーとしても決して悪い作品ではないのですが、前2作と比べると目玉となる仕掛けに欠けていた点に物足りなさを覚えます。
一応、兇人邸からの脱出方法が目玉かなとは思うものの、殺人事件の方にも独創的な仕掛けが何かひとつほしかったところです。手数だけ多くてごちゃごちゃした印象を受けてしまったのが残念。 |
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| No.2 | 6点 | じきる | 2021/08/12 13:20 |
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| 決して悪い作品では無いし、それなりに面白く読んだのですが、『屍人荘』『魔眼の匣』に比べると物足りなさを覚えてしまいました。 | |||
| No.1 | 7点 | HORNET | 2021/08/11 17:17 |
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| 葉村譲と剣崎比留子は、とある企業に依頼され、テーマパークに隣接する異形の館「兇人邸」へ行くことになった。邸には、2人にも因縁深い戦後の極秘組織「班目機関」の重要資料があるという。さらにそこでは近年、テーマパークの従業員が何人も行方不明になっているとのこと。真相を暴き、資料を回収するために兇人邸へ赴いた葉村らだったが、そこで待っていたのは、とてつもない怪力をもったモンスターだった――。
班目機関の研究によって生まれたモンスター、閉ざされた空間内で繰り広げられる惨劇、という点で1作目に似た雰囲気の本作。邸の間取りが複雑なうえ、その間取りがアリバイや犯行の可不可に絡んでくるので少々読むのに手間取った。そうした間取りや、モンスターの性質など、数々の特殊条件が設定されていることから、それを生かしたロジックで推理を展開していく手法は本作者の特徴か。 多少の複雑さはあったが、論理的な推理を組み立てて犯人を明らかにしていく点ではよい意味でオーソドックスで、本格ミステリを安心して楽しめた。 |
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