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[ 短編集(分類不能) ]
汚れた手をそこで拭かない
芦沢央 出版月: 2020年09月 平均: 6.00点 書評数: 7件

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文藝春秋
2020年09月

文藝春秋
2023年11月

No.7 6点 ミステリーオタク 2024/08/22 22:02
 短編集なのに本のタイトルがどの収録作品名でもなく「・・・集」でもない禍々しいフレーズのちょっと風変わりな体裁のサスペンス集。

 《ただ、運が悪かっただけ》
 運命論などの考察を含めて中身の濃い話だとは思うが、面白かったかと訊かれれば個人的にはチョットね・・・

 《埋め合わせ》
 倒叙物とも言える焦燥型サスペンスで捻り方も悪くないけど、最後の「嵌め込み」はあまりシックリ来ない。

 《忘却》
 物忘れと罪悪感、そして電気の問題。これも辻褄合わせが面白いと言えば面白い。

 《お蔵入り》
 このタイトルはダブル・ミーニングかな。そんな使い方はないか。

 《ミモザ》
 ある再会からの淡い焼け木杭的なストーリーかと思いきや予想外の展開へ・・・
 最後のドタバタは古い漫画チックながらなかなか面白かったが「締め」は・・・何とも言えず。


 帯の「もうやめて」という文言から相当のイヤミス短編集かとワクワクして読み始めたが、期待が大きかったためか全体的に薄味のイヤミスに感じられたのは少し残念。ただどの話も纏まりの良さとリーダビリティの高さは短編の名手(と言われている?)に相応しいクオリティだったと思う。

No.6 7点 パメル 2024/06/12 19:17
誰もが抱える心の闇と、その驚きの顛末を描いた5編からなるイヤミス短編集。
「ただ、運が悪かっただけ」余命いくばくもない妻が、残り少ない日々を夫と静かに過ごす。ある日、夫は長年抱えてきた秘密を打ち明ける。自分の行為を悔やみ続けている夫と、妻もまた苛む葛藤から出ざるを得なくなる構成が美しい。
「埋め合わせ」小学校教師の主人公は、不注意から学校のプールの水を流出させてしまう。主人公はどうにか隠蔽工作を図るが。ラスト三ページで怒涛の如く真相が分かる展開は鳥肌もの。犯行のロジックとそれを瓦解させるロジックの切れ味が素晴らしい。
「忘却」アパートの隣人が熱中症で死亡する。主人公は、誤配された隣人宛の電気料金滞納のハガキを渡し忘れていたことを思い出す。少しずつ記憶が保てなくたっていく妻の言動と相まって、忘却の悲しみ、残酷さが伝わってくる。
「お蔵入り」主演俳優の違法行為で、新作映画の公開が危ぶまれる事態に陥る。映画がお蔵入りになるのを避けようと行動をとるが。証言者の悪意がどこにあるのか、気づかないのはおかしいのではないだろうか。
「ミモザ」人気料理研究家となった主人公は、サイン会の席で不倫関係にあった男と再会する。意外な人物の恐ろしさを知り戦慄させられた。
いずれの作品でも判断と選択によって事態を暗転させていく様が端正な筆致で綴られている。読み手が身につまされるのは、人間心理とその行為がもたらす負の結果が絶妙に戯画化されているからであるが、随所で光る巧みなレトリックがなんとも心地よく、ブラックコメディ調の作品すら一抹の叙情性を帯びていくのは作者ならではだろう。

No.5 5点 take5 2024/02/10 15:56
息子が友達に進められて読み
私も読みましたが
これ小学生が読む本ではないでしょうw
前2つはまぁまぁ反転ミステリで
後ろの方はイヤミスです。

No.4 6点 まさむね 2024/01/27 17:33
 短編集。濃淡はあるけど、人の心の絶妙な悲哀を感じて、ホラーとは違った「怖さ」を感じることができます。でも、好き嫌いはあるでしょうねぇ。爽快な気分になれるものでもないですし。
①ただ、運が悪かっただけ:過去の自分に悩む夫。末期癌の妻が解き明かす真実は。嫌な奴も登場するけど、読後感は悪くないかも。
②埋め合わせ:社会問題と言ってもいい、学校のプールの水問題。教師に賠償請求するのは社会的に正しいのかねぇ…。で、この作品の主人公が悲しいほどにダメ。それに輪をかけて…
③忘却:アパートの隣人が熱中症で孤独死した。原因は…。温かさと怖さと。
④お蔵入り:色んな人が色々とダメ。嫌な気分になれます。
⑤ミモザ:元カレもダメだけど、料理研究家の主人公もねぇ…。これも嫌な気分になれます。

No.3 6点 よん 2023/11/27 12:41
収録された5編はいずれも、クレーマーや老老介護など、昨今の社会問題とオーバーラップする状況下で繰り広げられる。特に秀逸なのは、小学校教諭がマスコミ沙汰や弁償を恐れてある偽装を思いつく「埋め合わせ」。
本書の凄みは、後ろめたさを抱えた者の視点で語られていくサスペンス感と、ねじれた因果応報となる後味の悪さにある。

No.2 6点 HORNET 2021/05/09 14:14
 無理を言う客に、工務店がしぶしぶ譲った脚立で起きた転落死亡事故。うっかりミスでプールの水を流出させてしまい、その隠蔽に奔走する小学校教師。間違って来ていた「電気料金督促」の葉書、それを本人に渡せないうちに、電気代未納によりエアコンを付けず熱中症で亡くなった隣人……。
 一般人の日常(全作ではないが)から面白い着眼点で「怖さ」を生み出し、一編に編み上げる巧さはさすが。特に「埋め合わせ」(プールの水流出)は、軽微なミスを何とかうやむやにできないかと苦悩する人の葛藤や焦りが非常にリアルに描かれていて面白かった。

No.1 6点 sophia 2020/11/07 23:06
●ただ、運が悪かっただけ 5点
●埋め合わせ 7点
●忘却 6点
●お蔵入り 6点
●ミモザ 4点

各短編の核になるアイディアは悪くないのですが(最終話を除く)、ストーリー運びが淡泊ですし、真相が分かってからのオチがいまいちです。同じようなことは「許されようとは思いません」でも感じました。ただ、この方の作風は好きなのでもう一皮剥けることを期待します。


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芦沢央
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