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獏の耳たぶ
芦沢央 出版月: 2017年04月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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幻冬舎
2017年04月

幻冬舎
2020年02月

No.1 5点 HORNET 2019/06/08 15:00
 我が子を帝王切開で出産した石田繭子。喜びの出産のはずなのに繭子は、これまでの周囲とのやりとりから、自然分娩でなかったことを異常に後ろめたく感じるようになってしまっていた。そして思いつめた繭子は、新生児室の我が子を同じ日に生まれた別の新生児と取り替えてしまう。取り替えた新生児は、母親学級で一緒だった平野郁絵の子だった。
 すぐに己がとんでもないことをしてしまったことに気づき、正直に告白して元通りにしようと思うが、言い出せないまま退院の日を迎えてしまう。子は「航太」と名付けられ、繭子の子として育てていくうちに、航太が愛しくなっていく。やがて四年がたった時、産院から繭子のもとに電話がかかってくる。
 一方、取り換えられた郁絵は「璃空」と名付けた子を自分の子と疑わず、保育士の仕事を続けながらも、愛情深く育ててきた。しかし、突然、璃空は産院で「取り違え」られた子で、その相手は繭子の子だと知らされる。突然のことに戸惑い、悩む郁絵。果たして二人の子は、いったいどうなるのか―

 というように、「この先どうなるのか」ということはあるが、純粋なミステリではない。第一章が取り換えた石田繭子の視点、第二章が取り換えられた側の平野郁絵の視点で描かれており、それぞれの立場からの苦悩や葛藤がよく分かる。
 「新生児の入れ替え」はこれまでもいろんな作品等で扱われてきたであろうから、新鮮味はないが、人間心理の描写巧みな筆者の筆力でそれはカバーされている感じがする。


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芦沢央
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